
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
皆さん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
連載第5回目はストロボのお話です。陸上での撮影では、ストロボを使うときは暗いときや、室内など明るさを補うためというのがほとんどです。しかし、水中ストロボを発光させる一番の理由は、水中で光に吸収されてしまった、生き物の本来の色を再現するためです。また、被写体への当て方ひとつで写真の印象が大きく変わる要素の強い機材でもあります。今回は、そのストロボの使い方を紹介します。
水中では、赤から順に色が失われていくというのはダイビングを始めるときのオープンウォーター講習で習いましたよね? だから、水中では赤い魚も黒っぽく見えるわけです。他の色も同じように青みがかった色で見えてしまいます。これを写真用語で「青カブリ」と呼びます。
そこで、活躍するのがストロボ。これは、太陽光に近い色で発光するように作られていて、水中で発光させれば、そのもの本来の色を再現できるようになります。陸上ではあまりストロボを使って撮影しないという人も、水中ではぜひ活用してほしい機材です。
陸上の撮影では、ストロボは通常「オート」に設定してあることが多いと思います。つまりデジカメが暗いと判断すれば、自動的に発光してくれるモード。陸上ではこれで問題ないのですが、水中では「オート」のままでは不都合なことがあります。例えば、浅い水中での撮影時。水深が浅いと、水中も明るいですよね。そうすると、デジカメは、ストロボを発光させる必要がないと勝手に判断してしまいます。浅い水深といえど、水を透過して来た光ですから、被写体本来の色は失われているわけで、青カブリした写真になってしまいます。
そこで、ストロボの設定を「オート」ではなく「強制発光」に設定しましょう。これはシャッターを切れば毎回必ずストロボが発光するというモード。これなら、被写体の色をしっかり再現してくれます。
これはプランクトンや、舞い上がった砂など海中に漂う浮遊物。ストロボの光に反射してしまったのが原因。特に、内蔵ストロボだけでの撮影時に起こりやすい現象です。ストロボの位置がレンズと近いと、浮遊物に反射した光が直接レンズに入ってきてしまうのです。
対策としては、外部ストロボを使用して、ストロボとレンズの距離を離し、角度をつけて発光させるのが効果的。外部ストロボは、内蔵のストロボよりもパワーもあり、広範囲に遠くまで光が届くので、浮遊物の写り込みの軽減はもちろん、大物や群れなどの撮影にも役に立ちます。
外部ストロボを使用すると、よく耳にするのが、被写体にストロボが当たっていないということ。
これは、被写体に対してストロボの角度が合っていないことが原因。カメラの設定や被写体のことは気になっても、ストロボの角度まで気が回らないという人が結構見かけます。特にマクロ撮影のときほど角度の調整が必要になるので注意したいものです。
皆さん、いかがでしたか?ストロボは、色鮮やかな水中写真を撮る上で、マストアイテムと言っていいでしょう。セッティングも操作も簡単ですし、使ったときの効果が大きい機材なので、ぜひ活用してみてください。
次回は
第6回 レンズの読み解き方
についてお話します。
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。