
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
連載第6回目はレンズのお話です。どんなカメラでも、レンズが付いていないと結像しません。コンデジでも一眼デジカメでも、大なり小なりレンズが付いています。
レンズには、いろいろな数字が記載されていますが、なんだかよくわからない数字が並んでいますね。今回はそうしたレンズの表記の説明と、レンズごとのオススメ被写体を紹介します。
レンズの表面には、さまざまな数字が表記されています。これは、主に写せる範囲(「画角」と呼びます)や、レンズの明るさなど。一例を挙げて解説していきましょう。
コンデジでも一眼用レンズでもこうした表記は必ずあります(メーカーにより表記は異なります)。一例として《ニコン》のレンズ、「AF-S NIKKOR24-120mm f/3.5-5.6G ED VR」で説明していきます。
まずは1のメーカー名。これはそのレンズのブランド名が英語表記されているのがほとんどです。基本的に、レンズとデジカメボディは、同一メーカーでないと、レンズとボディを固定する「マウント」と呼ばれる部分が適合しません。(レンズだけを製造し、各デジカメメーカーのマウントに対応するメーカーもあります。)
《ニコン》のレンズシリーズの名称。各メーカーのレンズのシリーズ名「AF」はオートフォーカスの略。《ニコン》では、「S」が付くと超音波モーター内蔵のレンズという意味です。ちなみに「キヤノン」ではレンズ名の最後に「USM」と表記されています。
レンズが写せる範囲「画角」を表示したもの。数字が二つ書いてあるものは、画角を変化させられるズームレンズ。28mmや、60mmマクロレンズなど、一つしか数字が書いていないものは、画角が変化できない「単焦点レンズ」と呼びます。
数字が小さいほど広く写せます。一般に50mm前後よりも数字が小さいレンズを広角レンズ、大きいレンズを望遠レンズと呼びます。
「F値」、「絞り」と呼ばれる、光の入ってくる量を調整する機能を表した数字です。動物の瞳孔のように、大きく開いたり閉じたりして調整する部分です。数字が小さいほど明るいレンズとなり、お値段もアップ。それに伴い画質、描写力もアップします。
《ニコン》のレンズシリーズの区分で、絞りの機能をカメラ本体側で制御するレンズに書かれています。他にも「E」や「D」などがあります。
《ニコン》の画質を高めるために、特殊ガラスを使用したレンズに表記される略号。よりよい画質にするために、特殊なガラスなどを用いてレンズを構成しているときに表記されます。
《ニコン》の手ブレ補正機能が搭載されているレンズにつく略号。《キヤノン》では「IS」というのが手ブレ補正機能付きレンズの略号です。
同一距離から撮影した画角の違い
焦点距離とは、画角を表した数値のこと。小さいほど、画角が広いレンズとなり、逆に大きい数値のレンズは、望遠レンズと呼ばれ、遠くから被写体を大きく写すために用いるレンズとなります。レンズに書かれている焦点距離は、カメラの機種によりバラバラです。これは、画像を記録する撮像素子の大きさにより、焦点距離の計算方法が異なるためです。つまりそのまま数字を見てもそれが広角レンズなのか望遠レンズなのかがわかりません。そこで、取り扱い説明書のレンズの焦点距離の項目を見てみると、焦点距離の後ろに、「35mm判換算」という言葉を目にします。ではこの「35mm判換算」という言葉は何なのか。これは、フィルムカメラで一般に使われていたフィルムを「35mm判」と呼んでいたため、そのサイズを一定の基準にしようと考えたからなのです。35mm判のフィルムが24×36mmというサイズなので、それと同サイズの撮像素子をフルサイズと呼ぶのもこの理由からなのです。
それより小さな撮像素子(APS-Cやマイクロフォーサーズなど)は、フルサイズより小さいため、フルサイズと同等の大きさに拡大して計算しなくては、レンズの焦点距離が正しく示せません。よって、APS-Cであれば、1.5から1.6倍、マイクロフォーサーズであれば、2倍の換算計算で、35mm判サイズであれば何mmになりますという表示としています。
例えばコンデジのレンズでこのように表記されていても・・・
取り扱い説明書を見ると、「4.5mm~18.0mm」とありますが、35mm判換算では25mmから100mm相当までのズームレンズということがわかる
それでは、被写体やシチュエーションごとにどういったレンズを使うと効果的な写真が撮れるか説明していきましょう。
群れや大物はダイバーの憧れ。せっかく海で出会えたら、バッチリ写真に残したいものですね。そんな時に重宝するレンズが、ワイドレンズ。非常に広い画角を有していますので、被写体との距離を離さなくても広い範囲を写せるのが特徴です。ワイドレンズというと、陸上では、28mmくらいから短ければ、ワイドレンズらしさが出るものなのですが、水中ではそのくらいの画角ではむしろ狭く感じることでしょう。35mm判換算で、20mmよりも短いレンズがいいでしょう。
また、コンデジであれば、ワイドコンバージョンレンズの使用をおすすめします。これはコンデジハウジングの外側に取り付けることでデジカメ単体のときよりも広い範囲が写せるようになるアクセサリーレンズ。ワイド好きにはマストアイテムと言えるでしょう。ハウジングの外から取り付けるので、被写体に応じて水中での着脱も可能です。ワイドコンバージョンレンズを取り付ける際は、内蔵ストロボが隠れてしまうことが多いので、外部ストロボを使用するのがいいでしょう。
さらなる広い画角を求めたいという方には、フィッシュアイレンズというものがあります。先端のレンズが半球型のドーム状になっていて、独特のレンズの歪みが作品にも表れます。ただ、かなりクセのある写真になり、使いこなすのにも技術が必要となるので、まずはワイドレンズの使用をおすすめします。
コンデジにワイドコンバージョンレンズを取り付けた例。内蔵ストロボは隠れてしまうので、外部ストロボを準備しよう
コンデジ単体でも、いろいろな被写体が撮れる。例えばヨスジフエダイの写真ですが、全体を写し込もうとすると、被写体からかなり離れなくてはいけません。しかし、そこは考え方を変えて、群れの一部分だけ切り取るように撮影すれば、群れだって撮影できるのです。また、最近のコンデジはAF(オートフォーカス)のスピードも速く、精度も高いので、動き回る魚でもしっかりと撮影することができます。
コンデジで撮影するときは、全体を撮ろうとするとかなり引かないといけない(遠くなる)ので、群れの一部を切り取るということを考えましょう。前後に切れていても群れが続いている印象を受けませんか?
動きの速いスパインチークアネモネフィッシュでも、しっかりとピントを合わせることができるのが最近のコンデジのすごいところです
ウミウシや、カクレエビなどの小さな生き物を、大きく撮りたいと思ったら、コンデジ本体にアクセサリーパーツを追加装備するといいと思います。このとき、取り付けるのはクローズアップレンズと呼ばれるレンズです。ワイドコンバージョンレンズと同様、ハウジングの外から取り付けます。デジカメの取り付ける部分の直径が、レンズの直径と異なったり、形状が違っても、さまざまなアダプターがありますので、自分のハウジングと取り付けるにはどうしたらいいか調べて購入しましょう。
小さな生き物を撮るときは、ピントがシビアになりますので、しっかりとしたピント合わせを心がけてください。
ワイドだけでなく、マクロ撮影でも外部ストロボは大いに役に立ちます。内蔵ストロボよりもパワーが強くなるのはもちろん、発光させる位置を変えられるので、ライティングの工夫もできるようになります。接続も光ファイバーケーブルでつなぐだけで、面倒な配線も不要。きれいな色を再現した水中写真を撮りたい方には必携のアクセサリーパーツです。
今回のお話はいかがでしたでしょうか。レンズに書かれている略号は、意味がわからないとチンプンカンプンかもしれませんが、少しずつでも機材や撮影の知識をつけていくと、さらに水中写真が楽しくなると思います。
次回は
第7回 マクロ撮影、基礎の基礎
についてお話します。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!
「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
ご応募はこちらの窓口から!ご意見・ご感想からお寄せください
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。