
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。 前回は、透明度の高い冬の海でワイドの練習をという話をしました。今回は水温の低さを逆手に取って、この時期ならではのマクロ生物を撮ってみましょう。
冬の海は、夏に比べると、透明度はいいものの、太陽光の日差しは弱く、水中も太陽サンサンということは少ないでしょう。晴れた日でも太陽の高さが低いので、すぐに薄暗い海中になってしまいます。そこで、手ブレを防ぐためにもISO感度を上げ、手ブレしにくい設定にしましょう。手ブレ補正機能がついているデジカメは、それも活用するといいですね。
また、岩陰にいる生き物などは、暗いとピントが合いません。そんな時に持っていると便利なのが水中ライト。明るく照らすことで、生き物を見つけやすくなるだけでなく、ピント合わせの補助光としても使えますので、冬の海には持っていきたい撮影機材です。
デジカメのISO感度設定を高めにして、手ブレを防ぎましょう
筆者のマクロ撮影機材。明るい海ならば、水中ライトはつけませんが、冬の近海での撮影には、ストロボのほかに水中ライトをセットして、ピント合わせの補助光として活用しています
ウミウシは通年いる被写体ではありますが、各地のガイドさんの話や、今までの取材からみても、冬場の水温の低い時期の方が、ウミウシの数が多い気がします。冷たい水温の中で見つかるカラフルな被写体は、撮影意欲を駆り立てますね。ウミウシの撮り方として注意したいのは、ピントを合わせる位置です。魚を撮るときは、目にピントを合わせるのが、基本ですが、ウミウシの場合は触覚にピントを合わせましょう。どこが触角かわからないときは、まずはよく観察し、体の部位を確認してから撮影しましょう。魚のように泳いで逃げてしまうことがないので、観察してどこから撮るといいか構図も研究しましょう。
色のきれいな被写体ですから、ストロボや水中ライトで色をしっかりと再現してあげることが大切です。
冬の大人気被写体と言えば、ダンゴウオ。わずか1cm前後の生き物が、それを見たいがために水温の低い海へ人間を誘うなんて、ものすごい求心力ですよね。せっかくがんばって潜って出会うのですから、いい写真を撮って帰りたいもの。しっかり準備と練習をして撮りに行ってください!!
まずは機材準備から。これだけ小さな被写体になってしまうと、デジカメのマクロモードだけでは、小さくしか写りません。クローズアップレンズを取り付けて撮影しましょう。また、近距離まで被写体に接近できる機能があるコンデジも有利です。被写体までの距離が近すぎると、内蔵ストロボの光が画面全体に当たらないこともあるので、外部ストロボや水中ライトを使用するといいと思います。このとき、いつも以上にピントの合う範囲が狭くなり、シビアなピント合わせになりますので、注意して撮影してください。
次に撮影する高さですが、見下ろすような角度で撮影すると、あまりかわいらしさが表現できません。口元が見える高さで撮影すると、より一層被写体の個性が引き出せると思います。また、「天使の輪」がある幼魚のときや、これ以上大きく撮れないという状況のときは、空いた空間をうまく利用しましょう。具体的には、被写体を画面中央に配置せず、位置をずらすことで、空いた空間に意味を持たせるのです。体の色に近い環境にいることが多いので、背景に溶け込まないように絞りを開けて背景をぼかすというのも、被写体を目立たせるコツです。
ダンゴウオの撮影ではクローズアップレンズは必携です。ピント合わせは陸上で練習しておきましょう
ダンゴウオと同じ目線で撮ることで、口元まで見え、表情がわかるようになります。
撮影地:葉山
被写体が大きく撮れないときは、背景の処理などで、ダンゴウオが目立つように工夫してみてください。
撮影地:葉山
寒さ対策もしっかりしておきましょう。陸上での寒さ対策はもちろんですし、水中でも体を冷やさないように注意してください。ドライスーツやインナー、フード、グローブなど、装備も大切です。あまり寒すぎると、体が震え、手ブレの原因にもなりますし、なにより撮影に集中できなくなってしまいます。こうした器材はメーカー各社から発売していますので、調べてみるといいでしょう。
快適な装備で、冬の海を楽しく撮ろう!!
寒さで体が震えてくると、マクロ撮影では、その影響が顕著に表れます。小さな手ブレも起こらないように、防寒対策をしっかりとしましょう。
冬の海は、寒さ対策をしっかりとして、楽しく潜りたいものですね。そして潜ったあとは、体をしっかりと暖めて、風邪などひかないように注意しましょう。
次回は
第19回 浅場を撮る
皆さんの疑問、質問にお答えします!!
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。