
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
今回は、マクロ撮影時の画面構成についてお話したいと思います。
ちょっとしたことで、イメージが大きく変化しますので、ぜひ試してみてください。
構図というのは、コンパクトデジカメでも一眼レフでも写真を撮るということの永遠のテーマです。どんなに被写体がよくても、構図の良し悪しで写真の印象はガラッと変わってしまいます。それと同時に主題となる被写体を画面のどの位置に、どのくらいの大きさで配置するかということも、いい写真と呼ばれる作品作りへの大事な要素です。最初の写真は、クダゴンベを見つけてまず撮影した一枚です。意識したことはなるべく全身を入れようと考えたこと。ただ、これでは水平方向にいるだけで、あまり動きがないと思い、構えたカメラの右側を上げ、画面内に斜めに被写体が来るようにして撮影しました。大人しい被写体だったので、さらに寄り、顔のアップを狙いました。こうすることで、被写体の模様や表情といったものが、よりはっきりと写せます。逆に、一番最初のソフトコーラルに住むスケロクウミタケハゼのように、被写体をアップで撮らず、引いて撮ることで、周辺環境と一緒に写すことも可能です。何でも被写体のドアップでというよりは、被写体のいる周辺環境も見て、どのように四角い画面に収めていくかを考えてみましょう。
まずはクダゴンべの全身がわかるように離れた位置から撮影
被写体に対してカメラを斜めに構え、画面内で対角線構図になるように撮影
さらにそのまま近寄りアップで撮影。被写体によって、適した撮影距離があるので、色々試してみるといい
撮影地:フィリピン(3点とも)
陸上では、建築物や、人工物が背景になったり、水平線という傾かない基準があるので、画面が斜めに写るとなんとなく違和感があるものです。しかし水中写真では、自然を被写体にしているので、どんな角度で構えても違和感なく撮影できます。一枚目の作例は被写体をそのまま撮影したもの。前述のクダゴンベの作例と同じように、特に問題はないのですが、左右に分断される構図があまり面白くないと思い、右手が下になるように斜めに構えて撮影したのが、二枚目の作例です。逆に右手が上でも問題はないですが、この作例の場合は、被写体が逆さまになってしまう構図になるので、右手を下げ、被写体が乗っているように心がけました。
このように、画面を傾かせて撮るだけでも、できあがる写真の印象はかなり違うと思います。液晶画面やファインダーを覗きながらカメラを左右に傾けてみると、被写体の印象や背景に写り込むものが違ってきて、いい写真になるかもしれませんよ。
カメラを縦位置に構えて撮影。縦に分割するような構図になった。特に問題はないが、個人的にあまり好きではない構図なので、変更した
もう一枚カメラを斜めに構え、被写体が対角線に収まるように撮影。筆者としてはこちらが好みだが、どちらが正解というわけでもないのでいろいろ試してみてほしい
撮影地:パプアニューギニア(2点とも)
一眼レフやミラーレス一眼、一部のコンデジでは、ピント合わせを行なう枠(フォーカスエリア)を中央だけでなく、上下左右へ移動させてピントを合わせる機能がついています。これは常に被写体が中央に配置されてしまう、日の丸構図とよばれるものから簡単に脱却できるすぐれた機能です。この機能を使えば、被写体を配置したい位置に、フォーカスエリアを移動させて撮影できます。作例のクマノミに写真のように、中央にフォーカスエリアを設定したままだと、日の丸構図と呼ばれる画面中央に被写体がいる写真になってしまいます。そこであらかじめ、フォーカスエリアを左に移動させて、その位置でピントを合わせたのが次の作例です。印象が変わったと思いませんか?
こうした、ちょっとした構図の違いがより良い作品にしていく大切な要素だと思います。
画面構成という意味で、背景のボケ具合をどれくらいにするかで写真の印象が変わることもあります。ピントの合っている範囲(写真用語で被写界深度と言います)を変化させるのは、カメラについている絞りと呼ばれる部分をコントロールすることで変化します。お手持ちのカメラのモードを変えるダイヤルに「A」と書かれたモードはありますか?これは「オート(auto)」のAではなく「絞り」を意味する「aperture」のAなのです。このモードは絞り優先オートと呼ばれ、撮影者が撮りたい絞り値を決めると、あとは最適な明るさになるようにそれ以外をカメラが設定してくれる機能です。この数値を変化させることで、写真の雰囲気を変えることができます。数値が大きいほどピントの合う範囲は広く(被写界深度が深い)、数値を小さくすればピントの合う範囲の狭いフワッとした写真になります。一概にどの絞り値がいいというのは、被写体の大きさや、距離、撮影者の好みもありますので、同じ被写体でも絞りを変化させながら撮影して、自分の好みを見つけてみましょう。
画面構成を考える上で被写体までの距離、カメラの構え方、ピントを合わせる位置、絞り値というあたりの大切さを解説しました。ぜひ次回海に行くときに試してみてくだい。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
次回は画面構成を考える~ワイド編~です。
ワイド撮影は、奥行きやどこまで写すかがマクロ撮影よりもさらに難しくなると思います。ぜひ参考になさってください。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。