
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
最近は、水中ライトの性能が向上し、ストロボを使わず、ライトだけで撮影するというフォト派も増えてきているようです。今回はそんなライトを使った撮影や、ストロボと一緒に使うような工夫したライティングを解説していきたいと思います。
ライトでの撮影は、これまでのストロボでの撮影を異なる部分があります。メリットとしては、シャッターを切る前から、被写体に光が当たっているかどうかの確認ができること。作例のように、岩陰にいるような被写体は、ストロボだと撮るまで結果がわからないものです。しかし、ライトでの撮影ならば、液晶画面やファインダーでライティングを確認しながら撮影できるので、ライティングの失敗は格段に減ります。逆にデメリットは、ずっと光を当てながら撮影するので、光に敏感な生き物は隠れてしまうこともあります。これはいきなり強い光量で当てるのではなく、徐々に光量を上げて、光に慣らすという撮り方をすれば撮影ができると思います。
オーバーハング上の岩の中にいたフリソデエビ。ストロボの位置が悪く、影になってしまった
発光部を低くして撮影。被写体にしっかりと光が当たった。ライトであれば撮影以前にライティングの確認ができるので、失敗が少ない 撮影地:串本 (2点とも)
海で、ストロボやライトを二つ(もしくはそれ以上)つけたデジカメを見たことがありませんか。これは2灯(それ以上なら多灯)ライティングと呼ばれるものです。なぜ一つの光源でなく、複数使うのか解説していきます。
光源を一つだけにすると、当然影が発生します。ライティングの向きによって、その影を隠すことも可能ですが、そうなるとライティングのしかたも限られてきます。そこで、複数の光源を使って、影を薄くしてあげるのがこのライティングです。ただしあくまで影を消すのではなく、薄い影にするだけですから、光源が多ければ、影もたくさん現れるわけです。その点に注意しながら多灯ライティングをやってみましょう。
筆者のライト使用時のマクロ撮影セット。レンズを挟み、左右から光を当てるようにし、影を相殺している
光源をデジカメの左上から当てた作例。画面右側に影ができている
反対に、デジカメの右側から発光。当然左から発光させた作例とは逆側に影ができる
左右両方から発光。影が弱くなり、全体に明るい印象に。あまり左右均等にし過ぎても、フラットな印象になってしまうので工夫が必要だ
撮影地:串本(3点とも)
通常、ストロボやライトは光が広く均等に当たるように設計されています。それをあえて狭い範囲にだけ当たるようにして撮影したのがスポット光です。スヌートと呼ばれる商品や、狭い範囲だけを照らすライトなどを利用すると、作例のように、画面の一部にだけ光が当たったような撮影ができます。光の当たる範囲をさらに小さくすれば、舞台のスポット光のように、被写体にだけ光を当てることもできるでしょう。
スポット光のライトで撮影。被写体とその周辺にだけ光が当たっている 撮影地:八幡野
ストロボだけでなく、一緒にライトをアクセント光として使っても雰囲気が変わる写真が撮れます。作例のミジンベニハゼはビンを住み家にしていました。一枚目はストロボだけで撮影したものです。被写体に光は当たっていますが、ビンの中は真っ暗です。そこで、ビンの底からライトを一灯当ててみました。すると、ビンの中が明るくなり、内部も見え、ミジンベニハゼも良く見えるようになりました。
またホヤに卵を産み付けるガラスハゼの作例でも背景からライトを当て、ホヤのメタリック感が強調できるようにライティングをしています。これらのように、ストロボとライトをうまく組み合わせることで、ストロボ光だけでは、フラットになりがちなライティングに変化をつけることができます。
ストロボのみで撮影。ビンの内部は暗く、見えない
ビンの底にライトを当てて、内部を明るく照らした
撮影地:安良里
画面奥、ホヤの向こう側からライトを照らしつつ、ストロボ光を発光。ホヤやそこに産み付けた卵の透明感がライティングを工夫することで表現できた
撮影地:インドネシア・バリ島
ストロボとライトは、うまく組み合わせることで、これまでとは一味違ったライティングを楽しむことができます。同じ被写体でも光の当て方で印象が変わってくるので、いろいろ試してみてください。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
次回からは、人気の被写体の撮影法について解説します。毎回被写体別のコツや持っているといいおすすめ機材などを解説します。
ぜひ撮影時の参考にしてみてください。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。