
DIVINGスタート&スキルアップBOOK 2015
みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
この連載では、人気の被写体ごとに撮り方のコツを解説しています。
ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。
今回はダイナミックで迫力満点の被写体、回遊魚の撮り方です。
ギンガメアジやバラクーダなどの群れは、何度見ても迫力がありますね。その群れの迫力をしっかりとデジカメに収めたいものです。それにはまず、被写体に合ったデジカメの準備からです。コンデジ本体や、ミラーレス一眼を買ったときの標準セットのズームレンズでは、迫力のある群れを撮ろうにも、写る範囲(画角といいます)が狭く、群れ全体を写せません。もちろん、群れとの距離を取れば全体を撮ることもできますが、水中では、被写体との距離が離れれば、水の層が増えて写真のクオリティが落ちてしまいます。ですので、接近しながら広い範囲が撮れるワイドレンズで撮りましょう。レンズ交換のできないコンデジや、使用できるレンズが限られるミラーレス一眼では、ハウジングの外に追加のレンズを取り付けることでワイド撮影ができるようになります。ワイドコンバージョンレンズ(略してワイコン)と呼ばれるもので、水中でも着脱が可能なレンズです。各社のハウジングに取り付けられるように、アダプターも発売されているので、自分の機材に合ったものを準備しましょう。
また、ワイコンをつけると、その大きさで内蔵ストロボが隠れてしまい、被写体にストロボの光が当たりません。ですので、内蔵ストロボよりも光量のある独立したストロボ(内蔵ストロボと区別するために外部ストロボや外付けストロボと呼びます)を用意することをおすすめします。
コンデジにワイドコンバージョンレンズと外部ストロボをセットした例。見た目はコンデジ単体よりも大きくなるが、きれいな写真が撮れるようになる
中層を泳ぎながらの撮影になりますので、オートフォーカスのモードも変更しましょう。モード設定画面を開くと、通常はシングルオートフォーカス(S-AF)やスポットとなっていると思います。しかしこれだと動く被写体にピントをしっかり合わせるのは難しいので、コンティニュアスオートフォーカス(C-AF)や自動追尾といった動きのある被写体に適したオートフォーカスのモードに設定変更しておきましょう。
動く被写体にはコンティニュアスオートフォーカスが有効
ギンガメアジやバラクーダといった回遊魚以外にも、ストロボを使うと白い雪のような点々が写り込んでしまったという経験はありませんか?これはハレーションと呼ばれる現象で、水中の浮遊物がストロボの光に反射して、レンズ内に入ってきたために起こる現象です。これを防ぐ方法としては、一つはストロボを発光させないこと。ストロボが光らなければ反射することはないですから、ハレーションは起きません。しかし、これでは青カブリしてしまい、被写体本来の色を再現することはできませんし、回遊魚であれば、金属感のある体表を表現できませんので、現実味の薄い解決法ですね。もう一つは、ストロボを発光させつつもハレーションを軽減させる方法です。それは、レンズとストロボを離し角度をつけて発光すること。そうすることで浮遊物の写り込みはかなり軽減されます。ワイドの撮影機材のアームが長いのは、このためなのです。
ストロボとレンズが近いとハレーションが起きてしまう
筆者が実際にワイドを撮影するときのセット。長さ40センチのアームを使用
ワイドレンズでの撮影でよく見かけるのが、あれもこれも写そうという気持ちからか、今一つ被写体に寄り切れていないという光景。ワイドレンズは寄っても周囲を写すことができるレンズですので、近過ぎと思うくらいがちょうどいいです。寄ることでストロボの光も被写体にしっかりと届き、描写力も向上します。「ワイドは寄る」これを覚えておきましょう。
ブラックフィンバラクーダの群れを撮影。寄りが足りないため、ワイドレンズの特徴を生かしきれず、やや迫力に欠ける
もう一歩寄って撮った例。大きさに差が出ることで遠近感をより強調できた
撮影地:パラオ(2点とも)
青い海を背景に回遊魚を撮ると、被写体の銀色と海の青だけの色彩になります。それにもう一工夫して、アクセントをつけましょう。それは「太陽を写し込む」ことです。背景に太陽があると、白いハイライトのアクセントになり、背景にグラデーションができます。太陽があることで、日射しの強さをイメージできる写真になりますよ。
太陽が写っていない作例。失敗ではないが、アクセントがない
太陽が写る側へ移動し撮影。背景が明るく、日射しの強さを印象づける
撮影地: フィリピン(2点とも)
ダイバーを画面に写し込むことで、より迫力を表現することができます。群れの後方から奥へ回り込んでもらい、群れと一緒に撮影します。ダイバーが小さく写るので、手前の被写体がとても大きく感じられる錯覚を利用するのです。ダイバーを写せばアクセントにもなりますし、遠近感のある回遊魚写真になります。
ダイバーに奥に回り込んでもらい撮影。奥行きを感じられる写真になった
撮影地:フィリピン
もしワイコンがないときに、回遊魚に遭遇したら、距離を離して全体を写そうとせずに、群れの一部を写してみましょう。画面からはみ出して写っている被写体がいると、その前後にもたくさんの魚が群れていると想像できます。また、パターン化した群れは、模様のようにも見えて、アーティスティックな作品にもなりますよ。
ギンガメアジの群れの一部だけを撮影。群れの大きさはわからなくても、この前後にもむれているのをイメージさせる
撮影地:フィリピン
ギンガメアジやバラクーダなどの回遊魚は「ヒカリモノ」と称されるように、その金属感のある体表の表現がポイントです。ストロボの光をうまく調整してみてください。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
次回は、かわいい被写体、クマノミの撮影のコツを解説します。動きが速い被写体ですが、あきらめずに色のきれいさを表現してあげましょう。
ぜひ参考にしてみてください。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。