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ちょっとの工夫でこのうまさ 水中写真の撮り方
第31回 ハゼ撮影のコツ

ちょっとの工夫でこのうまさ 水中写真の撮り方

第31回 ハゼ撮影のコツ

みなさん、こんにちは。カメラマンのはらだまです。
この連載では、人気の被写体ごとに撮り方のコツを解説しています。
ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。
今回はアプローチが少し難しいですが、撮れればとてもきれいな被写体、ハゼの仲間の撮り方です。

ハゼの仲間をきれいにかわいく撮ってみよう 撮影地:安良里

ハゼの仲間をきれいにかわいく撮ってみよう
撮影地:安良里

アプローチと、機材の準備について

ハゼは種類も多く、人気の被写体です。ガラスハゼや、ミジンベニハゼなどは比較的近寄って撮影するのが簡単ですが、共生ハゼはこちらの動きに敏感に反応します。撮影技術もそうですが、被写体へのアプローチのスキルが大切になります。作例のネジリンボウは、遠い位置から徐々に近寄って行き、警戒心を減らしながらその都度シャッターを切っています。少し遠い位置から撮影を始めるのと、海底の浮遊物の写り込みを防ぐため、内蔵ストロボ以外に外部ストロボを用意しましょう。外部ストロボは光量もあり、レンズからストロボを離せるので、浮遊物の写り込みも軽減できるメリットがあります。また、被写体があまり動かないといっても、自分が距離を縮めながら撮影しているので、被写体との距離は一定ではありません。そんなときは、オートフォーカスのモードを「コンティニュアスオートフォーカス」や「自動追尾オートフォーカス」というものに切り替えてみましょう。これは、被写体との距離が変化しても、半押しをしている間、ピントを合わせようとデジカメが自動的に働く機能です。通常の撮影ではピントが合うとシャッターが切れる「シングルオートフォーカス」というモードで撮影しますが、動く被写体や、体が安定しない姿勢のときは、この二つのオートフォーカスが大変有効です。一度取り扱い説明書で確認してみてください。また、設定を変えたり、ストロボの角度を調整したりするのも、被写体から離れた位置であらかじめ行なっておき、被写体にストレスを与えないようにしましょう。

共生ハゼなど比較的臆病な生き物は、遠い位置から撮影を始めて、徐々に寄って行こう
撮影地:石垣島(3点とも)

通常の撮影で使っているのは、「シングルオートフォーカス」というモード。動く被写体は「コンティニュアスオートフォーカス」のほうがピントの合っている確率が上がる

コンデジに外部ストロボをセットした例。外部ストロボがあると、浮遊物の写り込みを減らせる

ズーム機能を利用するときの注意点

ズーム機能は便利だが、多用して離れて撮ると青カブリの原因に

コンデジのほとんどの機種にズーム機能があります。同じ撮影位置から写る範囲(画角といいます)を変化できるので、便利な機能ですね。水中写真でもどうしても被写体に近寄れないときなどに有効な機能ですが、遠くからズーム機能だけに頼って撮影をすると、青カブリをしやすくなります。ですので、ズーム機能よりも撮影者自身が被写体に近づいて撮影するということを基本に考えましょう。

タイミングを合わせよう

魚は撮影のタイミングで、印象が異なります。ニチリンダテハゼや通称カニハゼと呼ばれている被写体は、背ビレの模様からそう呼ばれているので、その特徴がわかるタイミングで撮影しましょう。ハナダイやベラがヒレを広げている時間よりは比較的長く、回数も多いので、よく観察してタイミング合わせて撮影してみてください。

ニチリンダテハゼの失敗例。背びれが開ききっていない

カニハゼ(通称)は背ビレが特徴なので、タイミングを合わせて撮影しよう
撮影地:パラオ

ガラスハゼは行動を観察してみよう

ガラスハゼの仲間を撮影。被写体を斜めに配置し、周囲のポリプも写し込んだ
撮影地:串本

イソバナなどにいるガラスハゼの仲間やウミタケハゼの仲間は、一度いなくなってもまた同じ場所近くに戻ってくることがあります。ですので、生き物の行動をよく観察して撮影しましょう。作例では、イソバナにいた被写体を画面いっぱいに撮影するのではなく、周囲の環境も入れて撮影しました。何度か撮影できるので、構図を考えながら撮るのもいいですね。

まとめ

ハゼの仲間は種類によって撮影方法が異なりますが、基本的にはよく観察して撮影すれば、難しい被写体ではないと思います。撮るぞという強い思いを前面に押し出さず、自然な気持ちでアプローチした方が近寄れる気がするのは僕だけでしょうか……。
皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!

次回は、イルカの撮影のコツを解説します。ぜひ今年こそ撮りたいと思っている方も多いのではないでしょうか。タンクを背負った水中写真とは違ったコツがあります。ぜひ今度の撮影前に参考にしてみてください。

皆さんの疑問、質問にお答えします!!

皆さんの疑問、質問にお答えします!!「どうしてこんな風に写ってしまうの?」、「このボタンは操作すると、写真がどう変化するの?」など質問があれば、どんどんお答えします!!

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原田 雅章
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』、『マリンフォト』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は20年、約4000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。

次回更新予定日 2016年5月6日

イルカ撮影のコツ

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