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水中写真がうまくなる!!
第17回 背景を意識して、写真のイメージを変えよう!!

水中写真がうまくなる!! ~プロが教える撮影テクニック~

みなさん、こんにちは。月刊『マリンダイビング』のカメラマンのはらだまです。
この連載では、水中写真の撮影機材や操作の方法、撮影のコツなどを、水中写真を始めたい、うまくなりたいという方に紹介していきます。ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。

背景は、写真の雰囲気を変える大事な要素
撮影地:伊豆半島・淡島

背景を意識して撮影できる?

陸上では、落ち着いて撮影できるからか、どの方向を背景にするかを考えながら撮れるはずです。しかし、いざ水中での撮影となると、被写体にばかり気を取られて背景にまで意識が向かないという方も多いのではないでしょうか。もちろん、いくらきれいな背景でも被写体がこちらの思い通りの位置にいてくれることばかりではありませんので、難しいこともあるでしょう。今回は背景処理のヒントについて解説していきます。

撮影する高さを変えてみる

水中では浮力のおかげで、陸上よりも撮影する高さを変えるのが簡単です。ワイドレンズでの撮影では、少しの高さの変化が背景の違いを生むので、一つの被写体でも高さを変えて撮ってみるといいでしょう。
マクロで生き物を撮るときにも高さの違いが大切になります。一枚目は見下ろしたような角度で撮影したために、被写体が乗っている岩が背景となり、被写体と同じような色合いになってしまいました。そこで少し姿勢を低くして被写体と同じくらいの高さで撮ることで、背景が海になり背景と区別することができます。ウミウシやカエルアンコウなどの動きの遅い被写体や、ギンポの仲間など、その場からあまり動かないような生き物は、撮影する前にどの位置から撮ると背景がすっきりするか観察してから撮るのもいいでしょう。

見下ろす角度で撮影したため、背景に溶け込んでしまった

被写体と同じ高さで撮影することで、背景と区別ができる
撮影地:福井県・南越前(2点とも)

ボケ具合でイメージを変えてみよう

背景をどれだけボカすかでも、写真の印象は変わります。デジカメは、写真の明るさを示す「露出」を決めるための、「絞り」と「シャッタースピード」という二つの要素の組み合わせで決まります。写真のピントの合っている範囲(被写界深度といいます)を変化させるには、この「絞り」をコントロールさせます。デジカメにある露出モードを変えるダイアルを「A」に設定して撮影してみましょう。「A」は絞り優先オートというモードで、撮影者が絞り値を設定すると、それに適したシャッタースピードをデジカメが選んでくれるモードです。絞りはf値と呼ばれ、数値が小さいほどピントの合う範囲が狭く、逆に数値が大きくなると、ピントの合う範囲は広くなります。
作例の一枚目は絞り値をf7.1で設定しています。被写界深度が浅く、目の周囲だけピントが合っています。もう一点はf32で撮影したので、背ビレのあたりまでわかります。このように、ピントの合う範囲を変えることで、背景の印象を変えることもできます。いつもデジカメにおまかせの撮影ばかりだった人は、自分で設定する撮影方法を試してみるのもいいでしょう。

露出モードダイアルから「A」、絞り優先オートを選んで、絞り値を設定してみよう

絞り値をf7.1で撮影。背景がかなりボケている

絞り値をf32に設定。ヒレの感じや、どんな背景かがわかる
撮影地:伊豆半島・八幡野(2点とも)

背景の明るさで印象を変える

背景の明るさ、色味で写真の印象も変わってきます。今度は露出を決めるための絞りと、もう一つの要素であるシャッタースピードを操作してみましょう。露出モードダイアルの「S」がそれにあたります。シャッタースピードは、スポーツ写真のように、動きの速い被写体をピタッと止めたり、滝の流れを白糸のように撮ったりするのに調節します。また、背景の明るさを変化させることも可能です。一枚目の作例では、1/60秒というシャッタースピードで撮影しています。被写体の色はストロボで再現できていますが、背景は暗くなっています。二枚目は1/8秒という遅いシャッタースピードで撮影したため、背景が明るくなり、海の青が再現できています。あまりシャッタースピードを遅くすると、手ブレや被写体ブレを起こす可能性もありますが、ある程度の撮影技術がある方はチャレンジしてみるのもいいでしょう。

シャッタースピード優先オートは、露出モードダイアルの「S」

シャッタースピードを1/60秒で撮影。背景が暗くなってしまった

1/8秒までシャッタースピードを遅くして撮影。背景の色の違いがわかる。ブレには注意しよう

ライトを使って背景を明るくする

背景を明るくする方法として、シャッタースピードを遅くすると解説しましたが、ライトを使う方法もおすすめです。これは、ガイドさんやバディなどの協力で、背景になる部分にライトを当ててもらいましょう。作例の二枚を見ていただければ、被写体の明るさを変えずに、背景だけ明るくなっているのがわかるでしょう。あらかじめ潜る前に打ち合わせしておくのをお忘れなく。

ストロボ1灯だけで撮影。背景は若干くらい感じ

背景にだけライトを当てて撮影。明るくカラフルな印象に 撮影地:伊豆半島・大瀬崎(2点とも)

まとめ

今回は背景の処理について解説しました。被写体をよりよく見せるために、背景の選択はとても大切です。ちょっとした背景への配慮が、違うイメージの写真に変化させます。今回は、デジカメの露出モードを操作する解説も入れてみました。いつもデジカメにおまかせのフルオートで撮っている人は、違う撮り方にチャレンジしてみるのもいいでしょう。次回もお楽しみに。

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原田 雅章
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は25年、約4800本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。

次回更新予定日 2018年6月6日

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