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水中写真がうまくなる!!
第20回 ソフトコーラルやイソバナを撮る

水中写真がうまくなる!! ~プロが教える撮影テクニック~

みなさん、こんにちは。月刊『マリンダイビング』のカメラマンのはらだまです。
この連載では、水中写真の撮影機材や操作の方法、撮影のコツなどを、水中写真を始めたい、うまくなりたいという方に紹介していきます。ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。

水中写真をカラフルにする被写体として、ソフトコーラルやイソバナはぴったり
撮影地: 沖縄・ケラマ諸島

機材を準備しよう

ソフトコーラルやイソバナを撮影するときは、画角(写せる範囲)が広いレンズと、照射角(光が届く範囲)が広いストロボがあると、きれいに撮れます。まずはレンズの準備です。コンデジ本体のみや、ミラーレス一眼を買うと同梱されるレンズでは画角が狭く、大きなソフトコーラルの全体を撮るために距離を取らなくてはなりません。そうすると、被写体までの間の水の層が増え、浮遊物が写り込みやすくなったり、ストロボの光が届きにくくなり、ストロボを使っても青カブリした写真になってしまいます。そこで、近距離で広範囲を撮影できるレンズが必要になります。コンデジやレンズ交換ができないミラーレス一眼であれば、ハウジングの外から取り付けるワイドコンバージョンレンズ(略してワイコン)がいいでしょう。レンズ交換ができるタイプのデジカメであれば、あらかじめワイドレンズをセットして海に持って行きましょう。また、ストロボは、ワイコンの大きさで、内蔵ストロボは隠れてしまい、光が被写体に当たりませんし、光量も足りないので、外部ストロボを使用しての撮影がおすすめです。

ワイドな風景を撮るには機材の準備が大切
撮影地:伊豆半島・八幡野

コンデジに、ワイコンと外部ストロボをセットした一例

撮影のコツは寄ること!!

ワイドの撮影に慣れないうちは、あれもこれも写そうとしてしまい、主題が散漫になってしまうこともあります。ですので、そうならないように、広く撮れるワイド撮影こそ、被写体に接近して撮りましょう。主題に寄ることで、画面内に大きく写り、何が撮りたいかが、見る人にも伝わります。ストロボの光も届きやすくなるので、色の再現性も向上します。

「枝ぶりのいい」ソフトコーラルは寄って、はっきりと写そう
撮影地:伊豆半島・淡島

遠近感を効果的に利用する

実際よりも遠近感を強調することもできるのが、ワイドレンズの特徴です。作例のように、イソバナに寄り、画面奥にダイバーを配置することで、手前のイソバナが、実物以上に大きく感じられます。ソフトコーラルやイソバナだけを撮るのもいいですが、こうした画面奥に何かを配置して、遠近感を表現することも意識して撮ってみましょう。

イソバナに接近し、画面奥にダイバーに浮いてもらい、イソバナの大きさを強調
撮影地:ニューカレドニア・イルデパン

タテ位置でも撮ってみよう

ワイドレンズは、少しの角度の違いでも写る範囲が変わり、印象も変わります。横位置と縦位置では、イメージが大きく変わります。作例のように、縦位置で撮影したことで、太陽のハイライトが写り、青一色の背景からイメージが変わりました。横位置撮影だけでなく、縦位置撮影も心がけたいですね。

横位置で撮影、赤いイソバナと海の青のコントラストがきれい

縦位置で撮影したことで、太陽が写り込み、日射しの強い印象の写真に
撮影地:沖縄・ケラマ諸島(2点とも)

2灯撮影も有効

ワイド撮影では、2灯のストロボを使っての撮影も有効です。1灯では画角が広すぎて画面全体に光が当たらないこともあるため、照射角を補うために2灯を使用することもあります。筆者もワイド撮影では2灯を使用して、画角をカバーしています。特にソフトコーラルなど、フォルムが複雑な被写体は、ストロボ光が当たりにくい部分も出てくるので、2灯で影になるところを補うことで、全体に光が当たります。

ストロボを2灯発光させて、影になる部分を補った
撮影地:伊豆半島・田子

筆者のワイド撮影機材。ストロボを離して2灯左右から発光させている

マクロも面白いソフトコーラル

基本的にはワイド撮影がメインの被写体ですが、マクロの視点で見ると、また違った雰囲気の写真が撮れます。作例の1枚目は、イソバナにいたガラスハゼです。背景をポリプの開いたイソバナにすることで、花が咲いたような背景で撮ることができました。また、2枚目の作例は、ポリプそのものを被写体としたもの。画面全体を同じ色でまとめました。こういった撮影は、ピント合わせが大切になるので、撮りたいものにしっかりとピントを合わせましょう。

イソバナの上にいたガラスハゼを撮影。ポリプを閉じないように撮影することで、白い花が咲いたように
撮影地:フィリピン・セブ島

ポリプをアップで撮影。ピント合わせがシビアになるので、何枚も撮っておこう
撮影地:伊豆半島・八幡野

まとめ

今回はソフトコーラルやイソバナをテーマにしました。動かない被写体ですので、撮影者が積極的に撮影位置を変えて、いろいろな構図で撮ってみましょう。また、ライティングや構図でイメージが変わるので、何枚も試してみてください。次回もお楽しみに。

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原田 雅章
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は25年、約4800本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。

次回更新予定日 2018年9月5日

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