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水中写真がうまくなる!!
第31回
春濁りの海で、ワイド写真を撮る

みなさん、こんにちは。月刊『マリンダイビング』のカメラマンのはらだまです。
この連載では、水中写真の撮影機材や操作の方法、撮影のコツなどを、水中写真を始めたい、うまくなりたいという方に紹介していきます。ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。

いつもこんな透明度だといいんですが…。
撮影地:静岡県・伊東市・富戸
春濁りの季節
例年、春先から日本近海の海では、透明度が落ちることがあります。「春濁り」と呼ばれる現象で、秋から冬にかけてスコーンと抜けていた透明度が、徐々に悪くなり数メートルの視界ということもあります。こんな透明度では、マクロ撮影オンリーになってしまいそうですが、逆転の発想で、季節感のあるワイド写真を撮ってみるのはいかがでしょうか。
もちろん、本来青く写るはずだった海は緑がかった色になってしまいます。さらにそのまま撮ると、緑を通り越して黒くつぶれた背景になってしまうことも。そんな悪条件下でもきちんと撮れるように、撮影のヒントを解説していきます。

透明度の悪い海でも、ワイド写真にチャレンジ!!
なぜ背景が暗くなってしまうのか
透明度の悪い環境では、太陽の光も届きにくく、海中のようすも暗くなります。そんな状況で、ストロボを発光させても、ストロボ光が届かない遠くの背景は、暗いままになってしまいます。陸上で例えると、夜景をバックに人物をストロボで撮ると、見た目以上に背景が写らないというシチュエーションと似ています。そこで、背景の明るさを考慮したカメラの設定をしてみましょう。

透明度の悪い海況では、いつもと同じように撮ると、背景が暗くなってしまう
マニュアル露出で撮ってみよう
普段あまりカメラを操作せずに撮っていると、こうした海況のときは、背景を明るく撮るのは難しいと思います。少し難しくなりますが、デジカメを自分で操作して撮影技術をワンステップ向上させてみましょう。
まずは、写真の明るさを決める露出を調整するために、露出モードを変えてみます。いつもP(プログラムオート)や、水中モードで撮っている人は、露出モードダイヤルをM(マニュアル)に切り替えてみましょう。これは、写真の明るさを決める「絞り」と「シャッタースピード」を撮影者が決めるモードで、できあがる写真の明るさ=露出を撮影者が決めることができます。この「絞り」と「シャッタースピード」の組み合わせを知ることは、写真の基礎ではあるのですが、ここでは、「シャッタースピードを遅くする」とだけ覚えておいてください。シャッタースピードとは、液晶画面やファインダーに1/125とか1/30と表示されるもので、125分の1秒とか30分の1秒と読みます。分母が大きいほど速いシャッタースピードとなり、動くものでもピタッと止めて写すことができます。

露出モードをマニュアルに変えて撮ってみよう
透明度の悪い海況では、普段より遅いシャッタースピードで撮影すると、背景を明るく撮ることができます。絞りは普段設定している値と同じで大丈夫です。普段の露出値がわからない人は、これまでに撮った画像を見て、露出値を確認してみましょう。
具体的にどのくらいのシャッタースピードがいいのかは、その状況によって変化しますので、何段階かシャッタースピードを変えながら撮ってみるといいでしょう。

露出モードをマニュアルに変えて撮ってみよう

シャッタースピードを1/50秒で撮影。背景の海の色が暗くなってしまった

同じところで、1/13秒で撮影。背景が明るくなった。どちらも絞りはf16という値で撮影
遅いシャッタースピードでの注意点1
手ブレに注意
シャッタースピードが遅くなると、手ブレをしやすくなります。ただでさえ不安定な姿勢で撮る水中ですから、しっかりとカメラをホールドして撮りましょう。コンパクトデジカメであっても、両手できちんとデジカメを持って、ブレを防ぎましょう。

筆者の撮影姿勢。両手でデジカメをホールドしながら、マスクをファインダーにつけて、泳ぎながらでも上半身が動かないようにしている
遅いシャッタースピードでの注意点2
浮遊物の写り込みに注意
透明度が悪いということは、海中に浮遊物が多く漂っているということなので、ストロボ光に反射して、浮遊物が写り込みやすくなります。ですので、ストロボをレンズから離して、浮遊物の反射に注意して撮ってみてください。

まとめ
今回は、この季節特有の、春濁りでのワイドを撮るコツを解説しました。スローシャッターで撮ることで、背景を明るくすることができるので、ぜひ試してみてください。次回もお楽しみに。

- 原田 雅章
- 1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は25年、約5000本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。
次回更新予定日 2020年6月3日
バックナンバー
- 最終回 きれいな水中写真を撮るために
- 第32回 デジカメのメンテナンスをもう一度おさらいしておこう
- 第31回 春濁りの海で、ワイド写真を撮る
- 第30回 オートフォーカスを使いこなす
- 第29回 光の当て方を考える
- 第28回 ストロボで色鮮やかに再現する
- 第27回 背景を明るく撮る
- 第26回 スローシャッターを使いこなす その2
- 第25回 スローシャッターを使いこなす その1
- 第24回 冬こそワイドを練習しよう!
- 第23回 色を意識して撮ってみよう
- 第22回 ピンボケを減らす
- 第21回 ブレを防ぐ撮影法
- 第20回 ソフトコーラルやイソバナを撮る
- 第19回 ストロボを使いこなそう
- 第18回 ダイバーを写してみよう!!
- 第17回 背景を意識して、写真のイメージを変えよう!!
- 第16回 コンパクトデジカメの使い方をもう一度おさらいしておこう!
- 第15回 きれいなビーチを一工夫して撮る!!
- 第14回 ダンゴウオをかわいく撮ってみよう!!
- 第13回 マクロ撮影のコツを覚えよう!!
- 第12回 縦位置も忘れずに撮ろう!!
- 第11回 どこまで寄るか、どれだけ引くか
- 第10回 構図の一工夫でステップアップ!!
- 第9回 構図の基礎を覚えよう
- 第8回 ワイド撮影に挑戦!~撮影のコツ編~
- 第7回 ワイド撮影に挑戦!~機材準備編~
- 第6回 水中ライトで撮ってみる
- 第5回 ストロボを使ってみよう
- 第4回 ピント合わせをうまくなる
- 第3回 コンデジで水中写真をはじめよう!!
- 第2回 水中写真で知っておきたい7つのこと
- 第1回 水中写真を撮るには
ちょっとの工夫でこのうまさ
水中写真の撮り方
- 第39回 エビ・カニ撮影のコツ
- 第38回 浅瀬撮影のコツ
- 第37回 イカ・タコ撮影のコツ
- 第36回 地形撮影のコツ
- 第35回 ギンポ、カエルウオ撮影のコツ
- 第34回 魚群撮影のコツ
- 第33回 カエルアンコウ撮影のコツ
- 第32回 イルカ撮影のコツ
- 第31回 ハゼ撮影のコツ
- 第30回 ウミガメ撮影のコツ
- 第29回 クマノミ撮影のコツ
- 第28回 回遊魚撮影のコツ
- 第27回 ウミウシ撮影のコツ
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- 第25回 ライティングを工夫する
- 第24回 背景で写真が変わる!!
- 第23回 画面構成を考える~ワイド編~
- 第22回 画面構成を考える~マクロ編~
- 第21回 マクロ撮影でのピント合わせを上達させよう!
- 第20回 ピント合わせの基本
- 第19回 浅瀬でキラキラ写真
- 第18回 冬の海を撮ろう~マクロ編~
- 第17回 冬の海を撮ろう~ワイド編~
- 集中連載 地球の海フォトコンテスト2015 第3回
- 集中連載 地球の海フォトコンテスト2015 第2回
- 集中連載 地球の海フォトコンテスト2015 第1回
- 第13回 ダイバーの撮り方
- 第12回 旅先での陸写真の撮り方
- 第11回 ジオを撮る
- 第10回 イルカを撮る
- 第9回 水中写真の撮り方・アクセサリーパーツひとまとめ
- 第8回 ワイドレンズで海の迫力を表現する!
- 第7回 マクロ撮影、基礎の基礎
- 第6回 レンズの読み解き方
- 第5回 解決!ストロボ活用術
- 第4回 編集の基本
- 第3回 写真の構図の話
- 第2回 シチュエーション別撮影のポイント
- 第1回 水中写真を楽しむ