奄美群島ダイビングガイド
今年、注目度ナンバーワンの日本の海「奄美群島」。クジラやウミガメがやってくる豊かな海と、手つかずの大自然、伝統や文化など世界に誇れる魅力がたっぷり詰まった島々のダイビング基本情報をお届けいたします。
■協力/一般社団法人奄美群島観光物産協会
※2020年8月現在の情報です。
奄美群島とは?
奄美群島とは鹿児島の南方380~580㎞に点在する島々です。奄美大島(あまみおおしま)・加計呂麻島(かけろまじま)・請島(うけじま)・与路島(よろじま)・喜界島(きかいじま)・徳之島(とくのしま)・沖永良部島(おきのえらぶじま)・与論島(よろんとう)の有人8島から成り、2017年には国立公園にも認定されました。
アクセス
奄美群島へのアクアセスはさまざまでスケジュールによって飛行機、船が選択できます。ただ飛行機の場合、目的地によっては乗り換えが必要となるので注意してください。また、フェリーも同様、目的地とする島によって航路が異なります。また、沖縄の那覇空港経由も可能です。(下記)
飛行機で(沖縄以外から奄美群島へ)
飛行機でのアクセスの場合、「東京(成田)」「東京(羽田)」「大阪(関空)」「大阪(伊丹)」「福岡(福岡)」からであれば、直行便で奄美大島、または鹿児島空港を目指します。奄美大島以外の奄美群島を目指すのであれば鹿児島空港へ向かってください。鹿児島空港からは各島への飛行機が飛んでいます。
飛行機で(沖縄から奄美群島へ)
奄美群島は沖縄からアクセスすることも可能です。那覇空港から与論島/沖永良部島・徳之島/奄美大島への飛行機が飛んでいます。徳之島へ向かう場合は沖永良部島での乗り換えがあるのでご注意ください。
船で奄美群島へ
船を利用する場合は「鹿児島港」から乗船します。鹿児島港から出ている船は「鹿児島-沖縄航路」と「鹿児島-喜界-知名航路」の2種があり、停泊する島や島内でも港が異なるので、現地での送迎やレンタカーの予約にはご注意ください。
春、夏、秋、冬。いつでもたくさんの魅力にあふれている奄美大島。こんな動画を見たら、今すぐ海に行きたくなっちゃいますね♪(動画提供/一般社団法人奄美群島観光物産協会)
奄美大島北部
エリアの特徴
奄美大島の北部は山が少なくなだらかな地形が特徴です。海岸線には土盛(ともり)海岸を筆頭に真っ白なビーチが点在しています。空港に近い笠利エリア、隣の龍郷エリアを北部と呼びます。
奄美大島北部の観光名所「ハートロック」は潮が引いた時にだけ見ることができます
海の特徴
コモンシコロサンゴの大群落「大仏サンゴ」やヒレナガネジリンボウ、アケボノハゼなど人気の高いマクロ生物まで勢ぞろい! 春にはアマミホシゾラフグのミステリーサークルを見るために多くのダイバーが訪れます。
大仏サンゴ
国内最大級のコモンシコロサンゴの大群生が見られるスポットです。ハナゴイやキンギョハナダイも群れ、とても南国らしいダイビングが楽しめます。水深20mの砂地にはヤシャハゼやヒレナガネジリンボウなどの共生ハゼもいます。
どこまでも続くサンゴはまさに海の生命力そのもの。白化から何度も再生するサンゴに感動!
スモールミナミ
水深24mの砂地に点在する根にはヨスジフエダイ、アカヒメジ、キンメモドキなどが群れています。また、ピンクや白のハダハカオコゼが常にすみついています。浅瀬には見事なサンゴの群生もあり安全停止中もダイバーを飽きさせません。
頭上を横切るのはアカヒメジとヨスジフエダイの群れ。ぜひハダカハオコゼも探してみてくださいね
奄美大島南部
エリアの特徴
奄美大島南部は、巨大なマングローブ原生林があり、カヌーなどのアクティビティも盛んです。古仁屋や沖に浮かぶ加計呂麻島を拠点にし、大島海峡の周辺を潜るスタイルになります。
奄美大島南部の観光名所「高知山展望台」は大島海峡と加計呂麻島を一望できる展望台。美しいリアス式海岸が続く大島海峡一帯は、奄美群島国定公園に指定されています
海の特徴
ダイナミックな地形スポットからのんびり浅瀬のサンゴスポットまで揃っています。また、大きな生物に寄生しているコバンザメの大群を見ることができる貴重な海です。加計呂麻島への遠征も人気で、最近では「青の洞窟」が注目を浴びています。
嘉鉄オアシス
大島海峡にある代表的なスポットで、真っ白な砂地にある根にスカシテンジクダイやキンメモドキの群れが付いています。もう1つの根にはケラマハナダイのオスメスの群れが一年中見ることができクリーニングステーションにもなっています。
大自然を残す奄美の海には想像を超える生き物の数が! これだけ見せつけられたら一瞬でトリコになっちゃいますね
大和浜
浅瀬にはエダサンゴが群生しスズメダイやハゼの仲間がたくさんいます。内湾にあるので流れもなくのんびりダイビングが楽しめ、初心者でも潜れます。秋から春にかけては非常に珍しいコバンザメの大群を見ることができます。
サンゴは海のゆりかご。小さな生き物は天敵から身を守るためにサンゴを利用します。ダイビングの際はしっかりと中性浮力をとってサンゴを傷つけないようにしてくださいね!
喜界島
島の特徴
今でも1年間に約2mmずつ隆起し続けている喜界島。そのスピードはなんと世界第二位! 島の北側と南側でまったく水中景観が異なりバラエティに富んだダイビングが楽しめます。また、白ごまと黒糖の生産が有名です。筆者のおすすめは黒糖焼酎「朝日」に黒糖のかけらを溶かしながら飲む。ぜひお試しください~!
「喜界島サンゴ礁科学研究所」では、稀少な隆起サンゴ礁で形成された喜界島を拠点として、海洋、地質およびそれに関わる生物に関する調査研究事業を行なっています。併設のサンゴカフェでは軽食も食べられます。
海の特徴
春にはコブシメの交尾や産卵、夏にはイソマグロをはじめとする回遊魚にサンゴの産卵など、豊富な見どころにあふれています。また、推定400年以上生きている巨大なハマサンゴもぜひ一度生で見たいところです。
池治ハマサンゴ
約400年を超す巨大ハマサンゴが鎮座しており、その圧巻の大きさは見応え十分です。その後は砂地を泳いでいくと小さな根があり、スカシテンジクダイ、キンメモドキが群れ、フォト派にはうれしい撮影スポットです。初心者からOK!
はるか昔から喜界島の海を見守ってきた生命体と一緒の海で、一緒の時間を過ごすのはちょっと不思議な感覚に陥りますね……♪
手久津久トリプルロック
リピーターにも大人気のスポットで、水深28mの真っ白な砂地に3つの根があります。そこにはヨスジフエダイやハナゴイが! 春~夏はキンメモドキ、スカシテンジクダイが群れ、時にはロウニンアジも見られます。
大きくそびえ立つ根と真っ白な砂地は地形が大好きなダイバーもきっと満足できるはずです。そこへやってくるさまざまな魚に囲まれてもうハッピーが止まりません♪
徳之島
島の特徴
500年以上続く闘牛大会や長寿の島として知られる徳之島。隆起サンゴによって形成された複雑な地形がダイビングにもいい影響を与えています。また、水中には貴重な水中文化財が沈んでおり現在も調査が進められています。
繁殖力の強さから「幸運の木」とも呼ばれるガジュマルは、徳之島のあちこちで見られますが、阿権(あごん)のガジュマルは樹齢300年ともいわれています。また、長寿の島、徳之島の象徴でもあります
海の特徴
北部エリアには魚が集まりやすくフィッシュウオッチングが盛んです。東海岸には初心者でも潜れる水深浅めなスポットから複雑な地形の洞窟まで揃っています。また1~3月は国内では数少ないホエールスイムを楽しめる島です。
エントリーしたら目の前に広がる青い世界に、出迎えてくれるたくさんの生き物。本当にダイバーで良かったと思える瞬間ですね!(動画提供/マリンサービス海夢居)
汐飛屋
徳之島のアイドルウミガメ「やまちゃん」が暮らす場所です。ダイバーをまったく気にすることなく食事を続けるので、撮影し放題の願ったり叶ったりスポットです。穏やかな湾内スポットなので初心者でも潜りやすく、ジョーフィッシュやウコンハネガイなども観察できます。
ウミガメと遊んだ後はゆっくりじっくりフィッシュウオッチングなんて、とっても贅沢なダイビングになりそうな予感♪
鹿浦沖根
徳之島南部にある沖の隠れ根スポットで、沿岸からは完全に切り離されているため潮通しが良く、春先には大型イソマグロの群れがやってきます。オールシーズン、カスミチョウチョウウオやウメイロモドキの大群、ロウニンアジなどの大物も期待できます。
中・上級者向けのスポットで、時々流れも強いがスキルアップして潜るだけの価値があります!
沖永良部島
島の特徴
200~300の大鍾乳洞群が現存しており、亜熱帯を代表する花々が咲き誇ることから「花と鍾乳洞の島」と呼ばれています。大型回遊魚から地形ダイビング、そしてファンの多いピグミーシーホースの仲間もたくさん見ることができます。
美しい鍾乳石や透明度の高い水が織りなす光景は自然のたまものです。必ず参加したいツアーです
海の特徴
ナイトダイビングで地形を生かした浮遊期幼魚ダイビングを楽しんだり、タツの仲間を探したりと水中はとてもにぎやかです。和名が決まったばかりの「シューヤジリチンヨウジウオ」にも会うことができます。
シコンハタタテハゼ(ヘルフリッチ)とハタタテハゼの喧嘩、新種のウバウオ、ユリタツノコなどどれも見たいものばかり♪(動画提供/GTダイバーズ)
ヤグニヤ
夏の沖永良部島を代表するスポットの1つで、35mまで一気に落ちるドロップオフにはレアものが多く、ここは上級者向き。浅場も見どころ豊富でウミガメも多いエリアです。沖永良部島由来のピグミーシーホースの仲間「ユリタツノコ」は水深5mでも観察できるのでビギナーにもおすすめで、なんと過去には世界初確認のヘルフリッチとハタタテハゼのハイブリッドが出現したこともあります。
水の流れに体をあずけてゆらゆらと揺れることから「ユリタツノコ」と命名されたそうです。それにしてもかわいいですね~♡
住吉・沖泊
ナイトダイビングのスポットで、港のスロープからエントリーするので波もなく初心者でも楽しめます。岸からほどなく行くと、すぐ水深が深くなるので不思議生物が集まりやすく、見たこともない浮遊期幼魚たちに出会うことができます。
通年通っているガイドでさえ潮回りが良いと「なんだ、これ!?」という出会いがあるそう。ドキドキワクワクが止まりませんね♪
与論島
島の特徴
鹿児島県最南端の島で、沖縄まで20数㎞に位置することから琉球文化との融合が見られます。島には大きな川がないため、海への土砂の流出が少なく、一年を通して透明度がいいのも特徴です。
春から夏にかけて、中潮から大潮の干潮時だけに姿を現す真っ白な砂浜「百合ヶ浜」。この百合ヶ浜で「年齢の数だけ星砂を拾えば幸せになれる」という伝説があります。
海の特徴
5月から10月にかけては、南・東から風が吹くことが多いため島の北側でのダイビングがメインとなります。下記の「海中宮殿」や「沈船あまみ」も北側のスポットです。10月を過ぎると南側のスポットへと移行していき、地形スポットに多く潜る季節となります。
ダイバーの人数に対してこの大きさ! 日本ではないような雰囲気が漂っています♪ ハートの穴から出てくるダイバーの泡も良いですね~。(動画提供/ブクブクダイバーズ)
海中宮殿
旧ヨーロッパを彷彿とさせる大きな3本の柱の奥に宮殿があります。天井部にはハート形の穴が空いており、カップルのパワースポット、また海中結婚式場として人気のダイビングスポットです。建物はサンゴに覆われており、小魚たちもたくさんいます。
2003年に作られた建物には現在サンゴがびっしりとついています。白い砂と真っ青な海の中でロマンチックな雰囲気を味わってみてください
沈船あまみ
中上級者向けのダイビングスポットで、全長52mの海上保安庁の役目を終えた巡視船が沈んでいるレックスポットです。水深が深めなのであまり長くは潜れませんがクエのすみかになっていたり、イソマグロが回遊してきたりあっという間にエグジット時間になってしまいます。
水深が深いので自己管理能力が必須ですが、ぜひ潜っていただきたい、日本でも数少ないレックダイビングスポットです。目標にしてみてくださいね