「マリンダイビングWEB」編集長が教える
ダイビングショップ選びのポイント10

ダイビングを始める際に重視したいのが、Cカード(ライセンス)を取得するための講習を受けるダイビングショップ(ダイビングスクール)選び。数あるダイビングショップの中からどうすれば自分にぴったりのショップを選ぶことができるのか。失敗しないためのポイント10を、「マリンダイビングWEB」編集長の鴫谷(しぎや)が教えます!
「マリンダイビングWEB」編集長
鴫谷 隆(しぎや たかし)
高校卒業時にスキューバダイビングをはじめ、大学在学時にインストラクター資格を取得。大学卒業後、(株)水中造形センターに入社し、『マリンダイビング』『海と島の旅』『ダイビングスクール』各誌の副編集長を務める。2010年からはダイビング教育機関のマーケティング担当として、ウェブサイトやSNSの運営のほか、広報・PRやイベント、ダイビングショップ向けのマーケティングのコンサルティング業務などを行なう。2019年10月より再び(株)水中造形センターにて、WEB編集部部長/マリンダイビングWEB編集長を務める。
ダイビングショップ選びが
重要な理由
ダイビングショップ(ダイビングスクールとも呼ばれます)は、Cカード取得のための講習を開催するだけでなく、器材の販売・メンテナンス、ステップアップコースやファンダイビングツアーの開催など、実にさまざまなサービスを提供しており、ダイビングを楽しむうえで大きな助けとなってくれます。
それぞれのショップごとに個性があり、提供しているサービスの内容やショップの雰囲気もさまざま。そのため、ダイビングをいかに快適にスタートし、楽しく続けていけるかは、自分に合ったショップを選ぶことが重要なポイントとなります。自分に合わないショップだと、行くのがおっくうになってしまったり、嫌な思いをして、ダイビングが楽しくなくなってしまう可能性も。
これまでの経験から、ダイビングショップを選ぶときに重視したい10のポイントを以下に挙げますので、ぜひ参考にしてみてください。
ダイビングショップ選びのポイント10
Cカード(ライセンス)取得講習に
力を入れているダイビングショップ
ポイント1
どの教育機関(指導団体)の講習を
開催しているか
最初に確認したいのが、そのダイビングショップで講習を受けると、どのダイビング教育機関(指導団体)のCカード(ライセンス)が発行されるのかということ。
ダイバーとして必要な知識とスキルを身につけた証となるCカードは、ダイビング教育機関によって認定されたダイビングショップ/インストラクターの講習を受けることで発行されます。ダイビング教育機関は、いわば茶道や華道における“家元”のようなもの。各教育機関によって講習プログラムの内容や使用する教材、ダイバーになってからのステップアッププログラムの充実度などに違いがあるので、それぞれの特徴をウェブサイトなどで確認しておくことがおすすめです。
また、たとえ講習の内容に大きな違いがなくても、発行されるCカードのダイビング教育機関の認知度が低いと、エリアやお店によってはダイバーとして認めてもらえない可能性もあります。ダイバーとなって世界中のさまざまな海に潜りに行こうと思うなら、ダイビング教育機関の認知度(信頼度)もチェックしておきましょう。
なお、Cカード取得講習は、その教育機関に認定されているインストラクターであれば開催することができますが、おすすめは教育機関に正規加盟店として登録されているショップでの講習。認定実績や安全対策など、その教育機関が定めた一定の基準をクリアしているショップなので、より安心して受講することができます。正規加盟店かどうかは各教育機関のウェブサイト等で確認することができますので、事前にチェックしておくといいでしょう。
ポイント2
通いやすい場所にあるか
Cカード取得は目的(ゴール)ではなく、これからダイビングを楽しむための手段(スタート)。ダイビングを趣味として長く続けていこうと思うなら、講習を受けるショップへの通いやすさも重視しましょう。
会社や学校、家などから行きやすい場所にあるダイビングショップなら、講習を受けるのはもちろん、Cカード取得後もダイビングツアーやステップアップコースなどに参加しやすいのが魅力。多くのショップは夜9時前後まで開いているため、仕事帰りや学校帰り、休日にも足を運びやすく、お店の雰囲気にもすぐに馴染んで、ダイビング仲間もたくさんできるはず。また自宅の近くなら、朝早くにショップに集合して海に行くのにも便利です。
海外や沖縄などのリゾート型ダイビングショップ(「ダイビングサービス」と呼ばれることも)で講習を受ける場合は、Cカードを取得しただけで終わってしまわないよう家や会社の近くのおすすめのショップを紹介してもらったり、近くのダイバー仲間を探すなどして、継続してダイビングを楽しめる環境づくりをすることがおすすめです。
ポイント3
柔軟性のある講習プランか
そのダイビングショップで用意している講習が、どれくらい参加者のために柔軟に対応できるものかも重視したいポイント。参加者の仕事の忙しさや体力、泳力などを考慮して、講習の日程や内容をフレキシブルに調整してくれるショップを選ぶようにしましょう。
というのも、ダイビングの講習は所定の時間をこなせばよいというものではなく、ダイビングを安全に楽しむために必要な知識とスキルが“確実に”身につくまでの「達成ベース」のため。体力や泳力、運動神経などの個人差によって、スキルを習得するために必要な時間は変わってきますし、講習の参加人数によってもかかる時間は変わります。ですから、「2日で終わります」などと時間を約束しているようなショップは要注意。限定水域(プール)講習で自分が「できた!」と納得できるレベルまでスキルを練習しておくことが、その後の海洋実習、ひいてはダイバーになってからの快適度や安全性に大きく影響してきますので、しっかりと時間を取って付き合ってくれるショップの講習を選びましょう。

限定水域(プール)でじっくりとスキルが練習でき、自信を持って「できた!」と思える状態にまで導いてくれるダイビングショップを選びましょう
ポイント4
使用する教材は充実しているか
意外と軽視されがちですが、講習で使用する教材がどれくらい充実しているかも、しっかりとチェックしておきましょう。
ダイビングを安全に楽しむためには、圧力の変化による影響や海の危険生物、ダイビング器材の使い方など、覚えるべきことがたくさんあります。講習のときだけ覚えていればいいというものではなく、ダイバーとして常に頭に入れておかないといけない知識なので、詰め込みで覚えるのはおすすめできません。また、中には教材のマニュアル(テキスト)をレンタルで講習しているショップもあるようですが、マニュアルはダイビングに必須の情報が詰まった“バイブル”のようなもの。ダイバーである限りずっと手元に置いておき、必要な情報をいつでも確認できるようにしておくべきです。
最近ではEラーニングも浸透してきており、冊子を持ち歩かなくても、パソコンやタブレット、スマホを使って自分の都合のいい時間に学習することも可能になっています。参加者に適したスタイルで、しっかりと知識が身につけられる教材を使った講習が用意されているショップを選ぶことがおすすめです。
ポイント5
ダイバーになるまでに“総額”で
いくらかかるか
講習を受けるダイビングショップを選ぶ際、つい安い講習料金が表示されているショップに目が行きがちですが、広告やウェブサイトに表示されている講習料金には、かかる費用のすべてが含まれていない場合もあるので、注意が必要です。
Cカードを取得するためには以下の費用がかかりますが、表示されている料金には何が含まれていて、何が含まれていないのかを確認しておきましょう。
- ●指導料
Cカード取得に必要な知識とスキルを身につけるための学科講習・プール講習・海洋実習の指導料。 - ●補習料金
予定された期間内にコースが修了できなかった場合の補習料金。プールや海洋実習の場合、指導料の他にも施設料などの実費が必要になる場合があります。 - ●教材費
マニュアルやログブックなど講習に必要な教材の料金。 - ●施設使用料
プールや海で利用する施設の使用料。 - ●器材レンタル料
講習中に使用する器材のレンタル料。自分の器材を購入する場合は、器材代がかかる。 - ●タンク・ウエイト レンタル料
プール講習と海洋実習で使用するタンク・ウエイトのレンタル料。自分で購入することはほとんどない。 - ●交通費
プール施設や海までの交通費。 - ●宿泊費
宿泊して講習を受ける場合の宿泊費。ホテル・ペンション・クラブハウス等で金額が大きく変わる。 - ●食費
講習中の食事にかかる費用。 - ●Cカード申請料
認定後、Cカード発行の申請にかかる費用。 - ●キャンセル費用
何らかの都合でコースに参加できなくなったり継続できなくなった場合、キャンセル費用が発生するかどうか。どのタイミングで、どれくらいの費用になるのか。
表示されている料金が安くても、含まれていないものが多くて追加料金がかかるようでは、結果として割高になってしまいます。トラブルの原因にもなるので、Cカードを取得する(ダイバーになる)までに総額でいくらかかるのか、しっかりと確認しておきましょう。
ポイント6
強制的な器材購入などの条件がないか
たとえ講習料金の総額が安くても、安心してはいけません。ダイビングショップによっては、講習料金が安い代わりに、高額なダイビング器材購入が義務づけられていたり、次のコースへの申し込みが条件になっているところもあります。
当たり前のことですが、ダイビングショップがきちんとした講習を提供するには、それなりに経費がかかります。企業努力により、少しでも安く講習料金を提供しようとしているダイビングショップももちろんあるのですが、残念ながら講習内容や安全対策に手抜きをするなどして経費を下げたり、強制的に器材を販売することにより、格安料金で講習を実施するショップがあるのも事実。結果としてそのショップに不満を感じたり、トラブルになったり、それが原因でダイビングを楽しめなくなってしまうのはなんとも残念なことです。
やはり、ダイビングショップは講習料金の安さで選ぶのではなく、内容がしっかりとした、自分に合った講習を実施してくれるところを選ぶこと。それが安心して長くダイビングを楽しんでいけるコツといえるでしょう。
ポイント7
どんなスタッフがいるか
水中という特別な世界を楽しむレジャーであるスキューバダイビング。その最初の一歩となる講習を担当するインストラクターは、あなたの命を預ける存在といっても過言ではありません。いくら講習の料金が安くても、信頼できるインストラクターでなければ、ダイビングを心の底から楽しむことはできないでしょう。
そのダイビングショップにいるスタッフが、きちんとダイビング教育機関からインストラクターに認定されており、万が一の際に備えて保険には加入しているか、インストラクターとしての経験はどれくらいあるかなど、信頼できる存在であるかを確認しておくことが大切です。また、女性であれば女性インストラクターが、シニアであれば経験あるベテランインストラクターがいると、より安心して講習を受けることができるかもしれません。スタッフと話した際の接客態度(話し方や身だしなみなど)も参考に、自分が信頼できそうなスタッフがいるショップを選びましょう。

いかに安心してダイビングを楽しめるかは、インストラクターへの信頼度が大きくかかわってきます。自分と相性の合うインストラクターがいるショップなら、ダイバーになった後も継続して通い続けやすいのでおすすめです。
ポイント8
Cカード(ライセンス)取得後の
サポート体制が整っているか
ポイント2にも書きましたが、Cカード取得は目的(ゴール)ではなく、これからダイビングを楽しむための手段(スタート)。ダイビングショップは、Cカード取得のための講習だけでなく、より幅広いスタイルでダイビングを楽しむためのステップアップコースや、さまざまな海へのツアー、イベントなども開催しています。
そういったサポートが充実しているショップなら、Cカード取得後のダイビングライフもスムーズに楽しめるのでおすすめ。また、自分が講習を受けたときの様子をインストラクターが把握しているので、好みや弱点を踏まえてサポートしてもらえるといったメリットもあります。
自分が参加したいと思うコースやツアー、イベントがどれくらい予定されているか。また、単に予定されているだけでなく、どれくらい実際に開催されているのか、ショップのウェブサイトやSNS、ブログなどで確認するといいでしょう。
ポイント9
SNSやブログが定期的に
更新されているか
ダイビングショップがどんな講習やツアーをやっていて、どんな海に行って、どんな参加者がいるのか、どんなスタッフがいるのかなど、そのショップのSNSやブログの投稿を見てチェックしてみましょう。お客さまが多く、ツアーやステップアップコースも数多く開催されているショップは、SNSやブログの更新頻度も多くなりがち。ウェブサイトよりもSNSやブログのほうが、そのショップの雰囲気なども伝わってきやすいので、コメント欄も含めてみるといいのでは。
ポイント10
ショップの評判はどうか
広告やウェブサイトに掲載されている情報は、あくまでダイビングショップが発信しているもの。当然、良いことしか書いていないので、すべてを鵜呑みにはできません。できれば、実際にそのダイビングショップに行っている人に意見を聞きたいところですが、最近はオンライン上でクチコミを確認することもできるので、いろいろと調べてみるといいでしょう。
ただ、オンライン上の匿名の情報は真偽が不明なものも多いので、信用できる情報を見極める目も必要となります。気になる場合は、直接ショップのスタッフに「ネット上に●●と書かれていますが、実際のところはどうなんですか?」などと聞いて、明確な答えを求めるのも手です。