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連載
ダイビング博士 山崎先生のダイビングを科学する!
第16回「中性浮力水深」をグラフ化
ウエイトの重さやBCDの体積でどう変化する?

ダイビング博士 山崎先生のダイビングを科学する!

ダイビング初心者の中には、なかなか上手にならない、と悩む方も多いですよね。一方で熟練インストラクターでも、自分ではできるけど人に理由をうまく説明できない、といった話も…
この連載「ダイビング博士 山崎先生のダイビングを科学する!」ではダイビングの悩みや疑問を科学的にわかりやすく解説します。第16回のテーマはずばり「“中性浮力水深” をグラフ化」。科学的にダイビングを理解することで、スキルアップを目指しましょう!

※2025年12月の情報です

こんにちは! 目指すは「ダイビング博士」の山崎詩郎です。東京科学大学(旧東京工業大学)理学院物理学系にて物理学の研究と教育を行い、TVでの科学解説や映画の科学監修を多数担当しています。

撮影:山崎詩郎

撮影:山崎詩郎

私のダイビングスタイルは、自分のホームを持たず、どこのショップの常連にもならず、日本全国の出張講演のついでに日本中のいろいろな海でダイビングすることです。11月は出張が多く、北から南までいろいろなところでダイビングしてきました。11月上旬には鹿児島の「ダイビングショップSB」にお世話になりました。そこで、水中写真家の上出俊作さんのマクロフォトセミナーを受けてマクロに目覚め、贅沢にもお客さんとして参加していた水中写真家の阿部秀樹さんからも助言を頂くことができました。主に水路でサカサクラゲのマクロ写真を狙いました。11月中旬には札幌でDAN JAPANの講演をこなした後に、積丹半島の「CROSS WAY」にお世話になりました。学んだばかりのマクロの知識を活かして、直径3mmほどのアイナメの卵を狙いました。いつかは「水中写真の科学」について講演したり、記事を書いたりしてみたいと感じる秋でした。
この連載の第14回となる前々回は、中性浮力になる唯一の水深「中性浮力水深」という新しい考え方を紹介しました。第15回となる前回は、より実用的な「中性浮力水深」の式を導き、実際のダイビングの状況で「中性浮力水深」を具体的に計算しました。第16回となる今回は、「中性浮力水深」がウエイトの重さとBCD等の体積でどのように変化するのかグラフで見てみましょう。

中性浮力になる唯一の水深「中性浮力水深」

この連載の第14回となる前々回は、中性浮力になる唯一の水深「中性浮力水深」という新しい考え方を紹介しました。大切な式なので復習しておきましょう。

中性浮力になる唯一の水深「中性浮力水深」

とても難しい式ですよね。でも、毎度のことながらご安心ください。数式は一種のアート作品だと思って、なんとなく凄そう…とか、美しい…などと感じていただければ十分です。大切なことは数式よりも、ダイビングでの意味を感じとることです。
では、この数式にはどのような意味があるのでしょうか? この数式が意味することは、赤い字で書かれたBCDとスーツの気体の体積Vg0と、ウエイトの重さmwがわかれば、青い字で書かれた中性浮力になる唯一の水深である「中性浮力水深」dnが計算できるということです!! ここまでは第14回となる前々回の復習でした。

「中性浮力水深」の式をより実用的に

では、「中性浮力水深」を求める数式を、もう少し実用的な式に変形してみましょう。黒い字で書かれている水面での気圧P0、重力の強さg、海水の密度ρを実際の数字で置き換えて、単位を調節します。これにより完成した実用的な「中性浮力水深」の式が以下となります。大切な式なので四角で囲っておきました。

「中性浮力水深」の式をより実用的に

赤い字で書かれたBCDとスーツの気体の体積Vg0が何リットルかわかり、ウエイトの重さmwが何kgかわかれば、青い字で書かれた中性浮力になる唯一の水深である「中性浮力水深」dnが何メートルか計算できるということです!! ここまでは第15回となる前回の復習でした。

「中性浮力水深」とBCDの体積のグラフ

それでは、実用的な「中性浮力水深」の数式を使って、BCDとスーツの気体の体積Vg0やウエイトの重さmwが変化したときに、「中性浮力水深」dnがどのように変わるかグラフを描いてみましょう。まず、ウエイトの重さmwは5kgに固定しましょう。そのとき、実用的な「中性浮力水深」とBCDとスーツの気体の体積Vg0の関係は以下のようになります。

「中性浮力水深」とBCDの体積のグラフ

このグラフを描いたものが以下となります。

「中性浮力水深」とBCDの体積のグラフ

横軸はBCDとスーツの気体の体積Vg0で、0Lから25Lまで書かれています。縦軸は「中性浮力水深」dnで、水面上10mから水深40mまで書かれています。赤い直線はその両者の関係をグラフで示したものです。すると、BCDとスーツの気体の体積Vg0が大きくなれば大きくなるほど、「中性浮力水深」dnは逆比例するように直線的に下がっていくことがわかります。これは、実は全てのダイバーの方が直感的に知っている当たり前のことで、より深場に潜降するときはBCDに吸気し、浅瀬に浮上するときはBCDから排気しているはずです。
このグラフによれば、どのような水深でもBCDに適切に吸気すればそこで中性浮力になることができます。逆に、どのようなBCDの吸気量でも中性浮力になれる水深が存在します。それこそが「中性浮力水深」のことです。中性浮力でないときに、すぐにBCDの吸排気や肺の呼吸に頼らずに、逆にBCDはそのままで中性浮力になる水深まで上下に移動するという技を覚えておくとよいです。

「中性浮力水深」とBCDの体積のグラフ

グラフ中の赤丸は前回計算した値で、ウエイトの重さmwが5kgであれば、BCDとスーツの気体の体積Vg0が10Lのときに水深10mで中性浮力になるということです。前回計算した点がちゃんとグラフの線の上に乗っているので、お互いに正しかったと安心できます。なお、グラフ中のバツ印は、BCDとスーツの気体の体積Vg0が5L以下では、水面にいても沈んでしまう、つまり水中で中性浮力がとれることはないという印です。

「中性浮力水深」とウエイトの重さのグラフ

再び、実用的な「中性浮力水深」の数式を使って、BCDとスーツの気体の体積Vg0やウエイトの重さmwが変化したときに、「中性浮力水深」dnがどのように変わるかグラフを描いてみましょう。今度は、BCDとスーツの気体の体積Vg0は10Lに固定しましょう。そのとき、実用的な「中性浮力水深」とウエイトの重さmwの関係は以下のようになります。

「中性浮力水深」とウエイトの重さのグラフ

このグラフを描いたものが以下となります。

「中性浮力水深」とウエイトの重さのグラフ

横軸はウエイトの重さmwで、0kgから12.5kgまで書かれています。縦軸は「中性浮力水深」dnで、水面上10mから水深40mまで書かれています。赤い直線はその両者の関係をグラフで示したものです。すると、ウエイトの重さmwが大きくなれば大きくなるほど、「中性浮力水深」dnは最初急に徐々に緩やかに大きくなっていくことがわかります。これは、実は全てのダイバーの方が直感的に知っている当たり前のことで、より深場でダイビングするときはウエイトを軽めにして、より浅場でダイビングするときはウエイトを重めにしているはずです。
グラフ中の赤丸は前回計算した値で、BCDとスーツの気体の体積Vg0が10Lであれば、ウエイトの重さmwが5kgのときに水深10mで中性浮力になるということです。前回計算した点がちゃんとグラフの線の上に乗っているので、お互いに正しかったと安心できます。なお、グラフ中のバツ印は、ウエイトの重さが10kg以上では、水面にいても沈んでしまう、つまり水中で中性浮力がとれることはないという印です。

「中性浮力水深」とウエイトの重さのグラフ

ウエイトの重さmwとBCDとスーツの水面での気体の体積Vg0の決定的な違いは、前者はダイビング中に変えられないが、後者は変えられるというところです。ウエイトの重さmwが5kgでエントリーし、水深10mで中性浮力をとりたいと思ったら、BCDとスーツの水面での気体の体積Vg0を10Lにするしかありません。「中性浮力水深」は器材とその状況で、唯一ひとつに決まります。

まとめ

まとめ

第16回となる今回は、中性浮力になる唯一の水深である「中性浮力水深」の数式から、より実用的な「中性浮力水深」の数式を導き、実際のダイビングの状況で「中性浮力水深」のグラフを描きました。1年半続いたこの連載も、次回はいよいよ中性浮力編の最終回です…! 中性浮力が簡単になる衝撃的な結論が導かれます。

この連載では、ダイビングの科学に関する素朴な疑問を大募集しています。初心者の方からインストラクターの方まで、ぜひ質問を編集部までお寄せください。皆様の質問が記事に採用されるかもしれません。
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これまでの「ダイビングを科学する」はこちらをご覧ください

物理学者
山崎 詩郎 (YAMAZAKI, Shiro)


東京大学大学院理学系研究科物理学専攻にて博士(理学)を取得後、日本物理学会若手奨励賞を受賞、東京科学大学理学院物理学系助教に至る。科学コミュニケーターとしてTVや映画の監修や出演多数、特に講談社ブルーバックス『独楽の科学』を著した「コマ博士」として知られている。SF映画『インターステラー』の解説会を100回実施し、SF映画『TENET テネット』の字幕科学監修、『クリストファー・ノーランの映画術』(玄光社)の監修、『オッペンハイマー』(早川書房)の監訳、『片思い世界』の科学監修を務める「SF博士」でもある。2022年秋に始めたダイビングに完全にハマり、インストラクターを目指して現在ダイブマスター講習中。次の目標は「ダイビング博士」。

山崎 詩郎 (YAMAZAKI, Shiro)