「マリンダイビング」2019年2月号
現地ガイドおすすめ
ミステリー&ドラマティックシーンを狙え!
奄美大島・龍郷の春
ダイバーの間で、ぐんぐん人気が上昇している注目の島・奄美大島。サンゴのすばらしさに抜群の透明度、魚影の濃さ、多種多様な生物…どれをとっても超一級! 世界に誇れるのだが…これから春にかけては、この時期限定のドラマティックなシーンの数々が水中で繰り広げられて、さらに注目度アップなのだ!
アマミホシゾラフグが海底で作り上げる芸術的なミステリーサークル(産卵床)が見られる!
ザトウクジラがすぐ目の前で潮を吹き、テールを海面に打ち付ける姿を見られる!
コブシメが産卵のために雌をめぐってバトル、愛を育み、産卵する。
そう、奄美大島・龍郷(たつごう)の海は、これから春にかけてこそアツい!
おすすめシーン1
世界でここだけ!?
神秘の愛のカタチ、ミステリーサークル
奄美大島の海のスター選手、アマミホシゾラフグ。アマミホシゾラフグが砂地に作り出す、美しいサークル形の産卵床は、ミステリーサークルとしてさまざまなメディアでも紹介され、また2015年には世界の新種トップ10にも選ばれ、一躍世界中から注目される存在に!
1995年砂地に現れたサークルを水中写真家・大方洋二さんが発見するも、誰が何のために作ったものか謎だったのだが、2011年ごろ小さなフグが作りだした産卵床だということが判明。しかもそのフグが新種であることが発覚……というストーリーが。
アマミホシゾラフグは、5~6日ほどかけて きれいな円形の産卵床を作る
体長10㎝前後の小さなアマミホシゾラフグが産卵床を作るのは、4月上旬~7月中旬にかけて。雄が一生懸命砂地にお腹をこすりつけ、行きつ戻りつ、産卵床を作りあげると、雌はその出来具合を品定めして、すてきなサークルだとそこでめでたく産卵。
タイミングが合えば、産卵床を作っている様子や、産み付けられた卵を雄が世話する姿なども見られる! ちなみに雌が巣の中央に卵を産んだ後は、雄が卵の世話をする。卵に新鮮な海水がいくようにしたり、敵を追っ払ったり。そして赤ちゃんが巣立てば巣は自然となくなってしまう。
今のところ世界でも奄美大島だけでしか見られない貴重なもの。これは絶対行かねば!
アマミホシゾラフグは、お腹の下の尻びれを使って砂地を往復し、模様を作り上げていく
ミステリーサークルはこんな風にして作られていく(撮影/ダイビングショップ ルプラ)
ミステリーサークル・
ウオッチングの基本情報
★奄美大島北部では、龍郷町の湾内にあるスポット「バベル」でよく見られる
★4月上旬~7月中旬頃によく見られる
★水深は約27~28mなので、アドバンス以上のCカードが必要
★もちろんダイブコンピュータは必携
★海底は砂地なので、中性浮力のスキルも必須
★アマミホシゾラフグを驚かさないよう、サークルを壊さないよう、そっと観察
★潮の具合など、海況などによっては必ず見られるというわけではない
現地ガイドの口コミ情報
《リラックスダイビング サービス》
前田聡さん
サークルは1尾の雄が2週間周期で、シーズン中何度もサークルを作ります。貝殻など口にくわえて、飾りつけをする様子など、かわいいですよ!
《ダイビングショップ ルプラ》
丸野みのりさん
一生懸命産卵床を作る姿は健気! でもサークルの形が悪いと、メスが来てくれず産卵されないまま消えてしまうことも…(悲)。
おすすめシーン2
熱き恋の戦いを応援!?
コブシメたちの愛のバトル&産卵
12月頃からあちこちでコブシメの雄同士の恋のバトルが繰り広げられ、その後求愛、交接、産卵と、春にかけて生命誕生のドラマが繰り広げられる。
体長20cmくらいから大きいものだと50cmを優に超えるコブシメは、それだけで存在感十分。そっと近づけばかなり近くまで寄れるので、ウオッチングするにも写真を撮るにもおすすめなのだ。
雄同士のバトル。結構激しい戦いぶりで、見ているほうもどちらが勝つのかドキドキ!
コブシメは体色を自由自在に操って変幻自在! 雌に言い寄るときはやさしげな婚姻色、ライバルが現れると黒っぽい威嚇色になり、ときには体の半分雌の側は婚姻色で、ライバル側は威嚇色なんて器用なことも朝メシ前。雄同士のバトルの際には体色も変化させながら威嚇し合い、その様子は迫力満点!
その後の雌へのアタックの際も次々と色を変化させて猛アピール。無事雌に気に入られると交接へ。周りなんか構っちゃいられない!? とばかりに熱い抱擁(!?)、いや交接が。
それが終わると雌は産卵のためにサンゴの間へウデを伸ばし一つずつ卵を産みつけていく。
どのシーンをとっても、見ごたえたっぷりで感動的!
戦いに勝った雄は無事に雌をゲット! 濃厚な交接シーンは、やっぱり見ていてドキドキ?
雄が雌を守るように近くにいる間に、雌はサンゴの隙間に一つずつ卵をそっと産みつけていく
コブシメのカップルが寄り添いながら産卵していく様子が微笑ましい!(撮影/ネイティブシー奄美)
現地ガイドの口コミ情報
《ダイブサービスBlue Gate》
岩田浩志さん
例年3月からゴールデンウィークの頃に見られるコブシメの産卵にまつわるシーン。昨年はあまり見られなかったのですが、今年は期待大です!
《ダイビングサービス ティーダ》
木本勝也さん
春にかけてどこも透明度抜群で、ワイドな景観を楽しめます。「ハナゴイ」というスポットでコブシメの産卵が見られますよ。
おすすめシーン3
一緒に泳げるかも!?
ホエールウオッチング&スイム
奄美大島の近海には、ザトウクジラたちが子育てのために回遊してくるので、4月ごろまでホエールウオッチングが楽しめる。ほかの地域に比べてまだ地名度がさほど高くないせいか、ウオッチングのボートが入り乱れるようなこともない。船の上からウオッチングできるだけでなく、一緒に泳ぐホエールスイムツアーを行なっているところもあるので、これは見逃せない!
水中で出会った親子クジラ。その大きさに圧倒され、言葉を失う。この感動をぜひ味わってほしい
ザトウクジラの親子が寄り添いながら泳ぐ姿や、潮を吹くブロウ、ときには巨体をジャンプさせ、水面から半分ほども宙に浮くブリーチングなど、どれも間近で見ると大迫力!
ホエールスイムに関しては、スキンダイビングのスキルなど条件もあるが、一緒に泳げる機会なんて、そうあるものではない。
また、ダイビングに行く途中に出会うこともあれば、水中でクジラの鳴き声が聞こえてくることもあり、それだけでも感動モノ。
かなりの高確率で、間近で見られるので、この時期ぜひホエールウオッチングを楽しんでもらいたい。
ザトウクジラが悠々と泳ぎ、潮を吹き…ジャンプ!(撮影/ダイブサービスBLUE GATE)
ホエールウオッチングの合間に、こんなイルカたちの大群に出会うことも(撮影/佐藤麻岐)
現地ガイドの口コミ情報
《ダイブスピーシーズ奄美》
諏訪誉さん
ボートの上から見るだけでなく、ホエールスイムで水面から見るクジラは、これまでにない興奮を味わえること間違いなしです!
《ダイビングサービスY.P DIVERS》
柳瀬淳一さん
春は湾内も透明度があがって、ウオッチングには最適な季節です。ダイビング中にクジラの声を聞くこともありますよ。
おすすめシーン4
マクロの目で探す楽しみ♡
春の海はウミウシの宝石箱!?
水温が下がってくると増えてくるのがウミウシ! その色や形のバリエーションの多さと美しさでダイバーを魅了してやまないが、奄美の海には、これでもか! というほど多くのウミウシたちがいる。これはウミウシ好き、マクロ好きにはたまらない。
また、春を感じ始める3月ごろから、お魚たちの恋の季節が⁉ アマミホシゾラフグやコブシメたちだけでなく、クマノミやハナダイ、ハゼ類など、多くの生物たちの繁殖行動や産卵などのシーンが見られるようになってくる。海の中は、愛で溢れている! ぜひいろいろなシーンを探してみて。
鮮やかなカラーで人気のアカテンイロウミウシ
太平洋側の「手広ビーチ」など、ウミウシの多いスポットはあちこちにある
現地ガイドの口コミ情報
《ネイティブシー奄美》
鈴木貴大さん
1ダイブで20種くらいのウミウシが観察できます! ウミウシのすみかや餌のある場所(ホスト)がわかると、お目当てのウミウシは見つけやすいですよ。
おすすめシーンあれこれ
一年中いつでも旬の海
サンゴに地形にウミガメ…まだまだある!
今回は奄美大島の春の見どころシーンをフィーチャーしたが、春に限らず一年を通じて見どころはいっぱい!
また、北部は湾内をはじめ太平洋側、東シナ海側、外海、内湾とさまざまな海があるので、多少の風や悪天候でも、どこかしらで潜れるというのもうれしい。
ウミガメがいっぱい♡
あちこちのスポットでよく出会うウミガメたちはフレンドリーで、ダイバーを恐れず近くまで寄れることが多い。一年中会えるし、スノーケリングでも会える。
透明度抜群! 癒しの「アマミブルー」
この海の青さ! 「アマミブルー」と呼ばれる透明度抜群の海、それだけでも奄美にくる価値あり。とくに1,2月ごろの透明度のよさは、飛び抜けている!
マクロ生物たちは、いつでもわんさか!
海の中は、もちろん回遊魚などの大物もたくさんいるが、海況や季節にあまり左右されずに見られるのは、やはり小さな生物たち。ダイバーたちを楽しませてくれる。
イキイキ元気なサンゴの森
サンゴの元気なこと! サンゴ礁が森のように広がっているスポットあり、巨大な群落あり……サンゴが元気いっぱいということは、そこに棲む生き物たちもまた元気いっぱい!
現地ガイドの口コミ情報
《奄美ダイビングサービス とめ》
中田留弘さん
春にかけて太平洋側がいいシーズンになります。アマミスズメダイやクマザサハナムロなど、3月以降はヨスジフエダイやアカヒメジなどの群れが見ごたえがでてきます。
奄美大島・龍郷がダイバーにおすすめな理由
奄美大島は、沖縄、佐渡についで日本で3番目に大きな島だ(北方領土を除く)。比較的大きい島なので、ダイビングは大きく北部エリアと南部エリアに分けられ、どちらかに滞在して潜ることになる。
今回紹介した龍郷は北部エリアにあり、島の中心となる名瀬と空港との中間あたり、笠利湾に面している。
このあたりは笠利湾内はもちろんのこと、東シナ海、太平洋側など数多くのバラエティに富んだ海を楽しめる好立地。おまけに空港からも近い(車で20~30分ほど)ときているし、下記にあげたような、頼れるダイビングサービスが多く点在している、ダイバーにとっては願ってもないエリアなのだ。
奄美大島への行き方は
鹿児島経由か直行便で
奄美大島へは、さまざまな航空会社の便が飛んでいて、東京、大阪、福岡、鹿児島、沖縄からの直行便がある。
東京―奄美大島間は約2時間30分、鹿児島―奄美大島は約1時間。鹿児島までは日本各地からの便があるので、鹿児島経由で行く方法も一般的だ。