都会から至近でハンマーもマクロも地形も!
冒険ダイブアイランド 伊豆大島
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伊豆大島は高速ジェットに乗れば、竹芝桟橋からわずか1時間45分で行けるスキューバダイビングの楽園。船から降り立った島は、もう“南”の雰囲気に満ちています。夏~秋にかけてはハンマーヘッドが群れ、魚影の濃さもUP。何度でも通いたい、“近場”の魅力を現地ガイドに聞いてみました。
※2023年7月現在の情報です
現地ガイド発 伊豆大島の“ココが自慢!”
首都圏から「近いのに透明度が高く、意外な生物が普通に登場するのが最大の魅力では」と語るのは、《イエローダイブ》の古山徹さん。とくに見てほしいのは「王の浜のエンタクミドリイシサンゴとそこに群れる魚たち」で、夏にはアオウミガメとの遭遇も増えるといいます。
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ウミガメと大接近! Photo by Tsutomu Asami
《伊豆大島ダイビングセンター》の有馬啓人さんがあげる魅力は、「黒潮の恩恵」です。「最近は黒潮の大蛇行もあり、現れる南方種の予想ができないくらい。沖縄や小笠原の魚に会える可能性も。種数豊富なマクロ生物の観察&撮影がおすすめ」だそうですが、さらに「夏にはハンマーヘッドがほぼ100%、秋にはニタリの遭遇率も上がりワイドも狙える」とか。
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ベニゴンべも登場。華やかな、南の海からの使者。Photo by Kaho Kurosaki
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ニタリは秋に期待大 Photo by Hirohito Arima
「火山島ならではの溶岩流による地形」を推すのは、《海人(かいんど)》の浅見勉さん。「水底が溶岩や黒い砂なので、水の色は紺碧。ダイナミックな独特の地形と大島ブルーをバックに、各種生物と遭遇できて気分は竜宮城です! ポイントが東西南北に点在するため、それぞれの地形や生物変化を楽しめるのも魅力」と言います。
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トウシキの柱状節理 Photo by Tsutomu Asami
伊豆大島ってどんな島?
東京都内にあり、家を発って最速でアイランドダイビングを満喫できるのが伊豆大島でしょう。伊豆諸島中最も北にあり、大きさは最大。中心には今も脈打つ活火山、三原山がそびえています。
海陸ともに溶岩流により生まれたダイナミック地形がひとつの特徴で、水中では柱状節理やアーチが大迫力。さらにハンマーヘッドに代表される大物や回遊魚、魚群も行き交い、東京であることを忘れてしまいます。
陸は島全体が日本ジオパークに指定されるだけあって、うねる地層や三原山では巨大カルデラ、砂漠などを見学でき、地球の息吹きがリアルに迫ってきます。
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「バームクーヘン」とも呼ばれる地層切断面。周回道路で見られる Photo by Toru Furuyama
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ダイビングポイントの「王の浜」にも柱状節理が Photo by Tsutomu Asami
ダイビング基本情報
主流はビーチダイビング。ポイントは北岸の「秋の浜」、「野田浜」、「ケイカイ」、西岸の「王の浜」、南岸の「トウシキ」と、島を巡るように点在しています。そのため、強風でも島のいずれかで潜れるのも大きな利点。ショップによってはボートダイビングや水中スクーターを使って潜ったりもします。
旅程は最短1泊2日からOK! 高速ジェットで午前中に到着したら、ショップのお迎えで申し込み手続きをし、そのまま海へと移動。ランチをはさんで2ダイブし、あとは宿でのんびり。翌日は夏なら早朝にハンマー狙いで潜り、さらに2ダイブして午後の高速ジェットで帰路に就くといった具合に5ダイブも可能です。
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「野田浜」にあるBuddy’s Bell(バディズベル)Photo by Toru Furuyama
ガイドに聞く、夏の推しポイント
王の浜
「アオウミガメとの遭遇が増え、息継ぎに水面に向かう姿と、息継ぎを終え水面から下りてくるシーンが頻繁に見られます。黒潮の枝流が当たり、透明度も水温も高くトロピカルな海も楽しめます」~イエローダイブ 古山徹さん
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海藻ケヤリの群生も「王の浜」ならでは Photo by Toru Furuyama
ケイカイ 野田浜
「早朝のハンマーヘッドシャークダイビング! 6月後半~見られますが、ピークは7月後半~8月中旬。ビーチダイビングで、水深8~12mと浅めで見られるポイントは世界でも類を見ません。季節を選べば、ビギナーでも遭遇率100%です」~伊豆大島ダイビングセンター 有馬啓人さん
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至近で見られ迫力たっぷり Photo by Hirohito Arima
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潮流に逆らわず、なるべく泡をハンマーに当てないように潜ることが重要 Photo by Tsutomu Asami
トウシキ
「伊豆大島の最南端ポイント。溶岩流でできた山脈のようなダイナミック地形に黒潮が当たると海の色もさらに青く、温かくなります。南方系の大物や、群れとの遭遇も可能性大! 夕方、ハンマーヘッドの群れに遭遇したことも。柱状節理も見応えがあります」~海人 浅見勉さん
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「トウシキ」で出会ったタテジマキンチャクダイ Photo by Tsutomu Asami
四季ごとの海の魅力
春(4~6月)
水温15~21℃/ドライスーツ
春といえば「海藻とウミウシ。海藻の新芽が芽吹く季節で、その新芽にウミウシも絡みます」~古山さん
「水温が徐々に上がり、季節来種魚が増えてきます。繁忙期前なのでゲストが少ないことも多く、のんびりダイビングができます」~有馬さん
「秋の浜でのアオリイカの産卵など、生物が産卵し始めます」~浅見さん
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ウミウシは春の風物詩。海藻を背景に撮れる Photo by Toru Furuyama
夏(7~9月)
水温20~27℃/ウエットスーツ
やはり狙いはハンマーヘッド!
「日の出時刻から1時間限定ですが、ほぼ100%見られます」~古山さん
「夏といえば早朝のハンマーダイブ。7月末~8月中旬なら、ほぼ100%です」~有馬さん
「ハンマーは、ビーチエントリーで遭遇できるのが圧巻。また8月末からは季節来遊魚も増えるので、大島在来種も含め生物が豊富です」~浅見さん
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指示された場所で待つと、ハンマーが現れる Photo by Toru Furuyama
秋(10~12月)
水温18~27℃/ウエット&ドライスーツ
「ライトトラップに注目! 稚魚や深海魚などが数多く登場する、はずれなしの季節」~古山さん
「気温は下がってきますが、水中はこの時期がおすすめ。季節来遊魚も成長し種数も増えてくるので、じっくりマクロダイビングもできます。透明度が安定して高く、ワイドも狙えます」~有馬さん
「水温はまだ高く、10月は季節来遊魚も多くいい季節です」~浅見さん
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幻想的な雰囲気も魅力のライトトラップ Photo by Toru Furuyama
冬(1~3月)
水温15~18℃/ドライスーツ
「イワシの大群が圧巻です。数億匹のイワシが島全体を埋め尽くし、そのイワシを狙ってホシエイの群れやクロヘリメジロザメ、クロマグロまでもが登場します」~古山さん
「透明度も一段とよくなり、のんびり潜るには最高のシーズン。ここ近年は2月後半からマイワシの大群が現れています」~有馬さん
「2月のイワシの大群は、群れの数が多すぎて水底が暗くなるほど。「トウシキ」ではクロヘリメジロザメとの遭遇も」~浅見さん
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刻々と形を変える、イワシの大群 Photo by Hirohito Arima
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「トウシキ」に現れたクロヘリメジロザメ Photo by Tsutomu Asami
アフターダイブのおすすめ
「島の美味しいものを堪能できる居酒屋!」~古山さん
「火山島なので、温泉がおすすめ。疲れた体をリラックスさせましょう」~有馬さん
「温泉は御神火温泉やはまのゆがおすすめです。甘党の人はシャロン洋菓子店のケーキや金太郎本舗の名物かしゃんばをぜひ」~浅見さん
アクセス
便利なのは高速ジェット船で、竹下桟橋から最短1時間45分、熱海からなら最短45分。午前便に乗れば、午前中に1ダイブできます。特定日に久里浜や伊東を経由する便もあります。
竹芝桟橋を22~23時に出港する大型客船は、最短約6時間で早朝着。ただし大型客船の帰路便は昼過ぎ発とジェット船より早い時間帯なので、高速ジェットと大型客船を組み合わせるのもいいでしょう。いずれも東海汽船が運航しています。
空便は調布飛行場から新中央航空が運航。所要時間は約25分と最速ですが、ダイビング後は少なくとも18時間は搭乗できないので行きは飛行機、帰路は船を選ぶのも手です。