ベストな秋と冬も楽しい
宝の海 柏島
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四国の南西端にある柏島とその周辺の大月町の海は、何を隠そう日本のダイビングシーンでとても重要な宝の海。何種ものサンゴが群生し、チョウチョウウオなどトロピカルフィッシュが豊富な一方で、温帯域の魚や生きものも生息。さらにはここの海でしか見られない超レアな魚も見つかっています。そんな柏島の秋はベストシーズン。冬も潜れる最終兵器ともいえる宝の海を、現地ガイドの方々に映像中心にご紹介いただきます!
※2024年10月現在の情報です
秋~冬の柏島の海のコンディション
10~11月の秋はベストシーズン!
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透明度も良く、流れもほとんどなく快適なダイビングが楽しめます。アオウミガメも登場
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
四国の南西端に橋でつながる高知県の柏島は、知る人ぞ知るダイビングタウン。小さな島とその周辺にダイビングサービスが10軒以上集まり、年間を通してダイバーが四国や中国、関西圏のみならず全国からやってきます。
特に9~11月の時期は台風さえ来なければ天候も海況も安定して魚影も濃いベストシーズンといわれています。今回は10~11月のことを現地ガイドの方々にお伺いしました。
柏島ダイビングサービスAQUAS(アクアス)の松野和志さん
まだまだ水温も24~25℃あり、まだまだ暖かく、穏やかな日が続き、海況はいい感じです。
柏島ダイビングサービスSEAZOO(シーズー)の目黒次生さん
海況は穏やかで透明度は10~20mほどになり、水温は26℃前後から徐々に下がっていきます。
Diver’s Café & Bar 7me(ダイバーズカフェ・アンド・バー・ナナミ)の大西新祐さん
夏の海(高水温)から秋の海(水温が徐々に下がり出すタイミング)に切り替わりそれに伴い透明度もさらに上がり柏島のワイドを安定的に楽しめるオススメな時期!! 5mmまたは5mm+フードベストのウエットスーツでまだ大丈夫! ディープエリアに行く場合は、6.5mm、または寒さが苦手な方はセミドライ、ドライスーツがおすすめです。南東の風から北西風が吹き始める時期で日によりますが、ダイビングポイントによっては水面が少し白波になっている時もありますが、水中は穏やかです。
12~3月は透明度爆上がりの日も
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期間限定のビーチでダイビングをすることもできます
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
大西さん
冬の海(平均水温23℃前後から徐々に16℃前後まで落ち込む時期)です。装備は、6.5mm〜8mmのスキン、または、6.5mmのセミドライ、ドライスーツがおすすめ!! 柏島の透明度も爆上がりで一言で言うともうめっちゃくちゃ綺麗で最高な時期です。
マクロもいいけどワイド派はぜひ一度柏島の海も体験してみてください!
ただ、やはり柏島のダイビングスポットは夏に強く、北西風に弱いです。日によっては北西風がビュンビュン吹いて水面が荒れボートが出せない日もあります。また、その日のゲスト様のダイビングスキル、水面のコンディションによってはクローズ、エントリーできるスポットも限られることもありますのでご了承ください。
松野さん
12月から3月は西高東低の冬型になると北西の風になり、柏島のスポットは大時化になりクローズになりますが、この時期だけ風の陰になる、スペシャルな「赤灯台ビーチ」が11月から2月末まで期間限定でopenします! ビーチダイビングですが、砂浜から歩いてすぐなんでエントリーも楽ちんで楽しいビーチです。水温は最低でも18℃なんで、それほど寒くなく、この時期透明度もめちゃくちゃいいので、気持ちいいです。
目黒さん
風が吹いて荒れる日もありますが透明度はよく、水温は20℃前後になると思います。海が荒れたときのために船酔い対策は必須です(後に記述あり)。柏島はダイビングスポットがボートで5~10分ぐらいのところが多く、ボート上にもダイビング後に使っていただくお湯は用意しますが、1ダイブごとにダイビングサービスに戻ってあったかいお湯に入ったりシャワーを浴びられますから、快適ですよ。
年間シーズナリティやダイビングスポット情報は「柏島ダイビング基本情報決定版!」をご覧ください。
柏島ならではのワイドな水中景観
これからの時期ならではの見てほしいシーン
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柏島の対岸「民家下」のソフトコーラルの美しさは見もの!
写真/目黒次生(柏島ダイビングサービスSEAZOO)
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「後の浜No.3」は水深の浅いところでもキレイです
写真/大西新祐(Diver’s Café & Bar 7me)
透明度がアップして気持ちのいい水中景観を味わえるのもこの時期です。ぜひ柏島の海でダイバーが体験できる浮遊感を味わってください!
一方、松野さんからこんな提案も。「今年は柏島で過去最大のサンゴが白化してます、幻想的で、自然の圧倒的な色彩に いろんな意味でこの時期しか撮影することができない貴重なワイドが狙えます」
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この夏、白化してしまったサンゴを記録に残すのも貴重なことかもしれません
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
こんな世界もある!? 柏島の奇跡
柏島ではとてもレアなマダラトビエイですが、「後の浜」にクリーニングスポットがあるらしくて時折やってきます
撮影/大西新祐(Diver‘s Café & Bar 7me)
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ボロカサゴがいる光景も珍しいのですが、ペアでいた時は大興奮!
写真/目黒次生(柏島ダイビングサービスSEAZOO)
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「後浜」。「テーブルサンゴとその周りに、この時期めちゃくちゃ増えるチョウチョウウオはぜひ見てほしい」と松野さん
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAquas)
海は同じ場所を潜っても常に変化していて違ったところを潜っているかのような感覚に陥ることもあります。柏島の海も季節ごとに、週ごとに、日々、変わっていて、「これはもしかしてとても珍しいシーンでは!?」と気づくこともしばしば。現地のガイドさんたちには1つに絞って答えていただくのは至難の業。松野さんは「勤崎」のソフトコーラルの群生も「世界自然遺産クラスです。って勝手に云うてますが……(笑)」と答えていらっしゃいました。
見てうれしい魚や生きものがいっぱい!
アオウミガメは大人気!
アオウミガメがいるところに別のカメがやってきましたが、すぐに追い払われました
撮影/大西新祐(Diver‘s Café & Bar 7me)
「《7me》で一番リクエストが多いのがウミガメ。柏島ではそのリクエストにほぼ100%お応えできます!」と大西さん。
春夏に生まれた幼魚たちがカワイイ!
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イッポンテグリの幼魚も見つけてうれしい♪ 会えてハッピー♪♪
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
柏島とその周辺の大月町の海には、これまで日本で最多といわれていた沖縄の海域に生息する魚の種数を凌ぐほどたくさんの種類の魚、そして海中生物が生息していることがわかってきています。海域の広さから考えると、ものすごいことだと思いませんか?
そんな柏島の海で会えるとうれしい魚や生きもの……。比べられませんね。
でも、中でもこの季節は春~夏に生まれた魚たちの幼魚に会えるとうれしいのでは?
ウミウシLOVERSにもたまらない海
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ウミウシも増えてくる時期。ウミウシカクレエビがカグヤヒメウミウシに乗ってました!
写真/目黒次生(柏島ダイビングサービスSEAZOO)
夏に比べるとやや水温が落ちてくるこの時期の見どころのひとつがウミウシではないでしょうか。柏島で見られるウミウシの種類は定かではありませんが、撮影されてきたものを見ていくと、ものすごい種類のウミウシが! しかもウミウシカクレエビなどとのコラボも見られるのはうれしいですね♪
出る出るレアな生きものたち
舌を噛みそうな名前のフィコカリスシムランス
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特に緑色の個体に会えると気分も上がるのだとか
写真/目黒次生(柏島ダイビングサービスSEAZOO)
エビ・カニの仲間もとても多い柏島の海。1mm単位のちっちゃなエビとして知られるフィコカリスシムランスも見つかっています。周囲に擬態するのでいろいろな色合いの個体に会えますが、特に緑色のシムランスは美しいんだとか。
ハゼ類の多さも柏島はスゴイ!
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「勤崎」のホムラハゼ
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
柏島にはフォト派ダイバーがとても多いのですが、中でも人気の被写体がハゼの仲間たち。ほかの海域では見られない珍しいハゼも多く、写真のホムラハゼや、生息する水深は深めなのですが、ホムラハゼにそっくりで2012年に柏島の見本から学名や和名が付いたナギナタハゼがいます。ネジリンボウ系も多く、キツネメネジリンボウという柏島で発見された種も。こんな海、ほかにあるでしょうか!?
柏島でイルカ!?
イルカのラブラブシーンにも遭遇
撮影/大西新祐(Diver‘s Café & Bar 7me)
柏島は魚影の濃さも見逃せません。「潮が流れる時間帯とベイトとなる小魚の群れが回遊しているタイミングが合えば、イルカが小魚を追い回し捕食しているシーンを見ることができます」と大西さん。水中でイルカに会えるのはレアとはいえ、よく目撃されているようです。
次々に和名のない生き物が出現!”カシワ”の名前が付いたハゼも
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柏島の名前が付いたカシワベニハゼ
写真/松野和志(柏島ダイビングサービスAQUAS)
柏島には、日本で初めて発見されて和名が付いた魚や生きものがたくさんいます。世界で初めてというものと、日本で初めてというものがありますが、例えば新種記載されたものには、イザヨイベンケイハゼ、キツネメネジリンボウなど、日本初記録種ではカシワハナダイ、イナズマヒカリイシモチ、ナミマツカサなどが。2021年3月にイトヒキカサゴという名前が付いた魚のほか、2012年3月、柏島の名前が付いたカシワベニハゼというハゼの仲間も。
発見したのは、魚類学者でもありダイビングガイドでもある坂上治郎さんですが、ガイドをしていた松野さんにその功績を譲ったそうで、学名は「Trimma Matsunoi」と、松野さんの名前が付いています。
現地ガイドさんに聞く冬の対策
ボートコート必携
冬場は北西風が強く吹き付けることがあり、天気が良くても風をもろに受けると体温が奪われていくことがあります。
「ドライスーツ以外の方は、エキジット後にボートコートがあると北風による体温低下を防げます」と大西さん。これ、大事です。
船酔い対策も忘れずに
強い北西風は船に弱い方には大敵です。「酔いやすい方は酔い止めを飲み、港で器材を装着してから出発すると、船の上で揺られる時間が短くなるので安全にエントリーできます」と目黒さんがアドバイスしてくれました。大西さんも「酔い止め薬を服用して対策を。バディ同志のプレダイブ・セーフティ・チェックも出航前にしておくと、スポットに到着しても気持ちに余裕ができて安心です」とアドバイス。
出発前に天気予報をチェック
「『赤灯台ビーチ』があるのでなんとか潜れます。よっぽどひどい時は、クローズになる日が多いので、出発前に天気予報をチェックしてください」と松野さん。事前チェックは大事ですね。
構成・文/後藤ゆかり(MDWebデスク)