マリンダイビング海の環境特別企画
海洋調査船タラ号の挑戦②
ブルーカーボンプロジェクト

フランス発祥の海洋科学調査船「タラ号」の活動を紹介するマリンダイビングの海の環境特別企画、第2回はブルーカーボンプロジェクトです。温暖化や海洋汚染、ウニの繁殖などで進む磯焼け、気になりますよね。現在も日本沿岸で藻場の調査と解析を進めるタラ オセアン ジャパンに具体的な活動内容をお聞きしました。
※2026年1月の情報です。
ブルーカーボン生態系とは?

宮城県女川での潜水作業の模様 Photo by Tara Ocean Japan
ブルーカーボンとは海洋生物の働きによって海に吸収・貯留される炭素のことで、その生態系を「ブルーカーボン生態系」といいます。代表的なものとして、海藻・海草、塩性湿地、干潟、マングローブなどが挙げられます。これらは、森林と同じように CO₂ を吸収する「海の青い森」であり、同時に小さな魚など多様な生き物の住処となる「生物のゆりかご」でもあります。一方で、ブルーカーボンが生み出される仕組みには、植物・動物・微生物などさまざまな生物が関与しており、その複雑なメカニズムの多くは、いまだ十分に解明されていません。
Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクト
そこで2024年にスタートしたのがTara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクト。タラ オセアン ジャパンと日本の臨海実験施設のネットワークであるJAMBIO(マリンバイオ共同推進機構)が共同で行っているプロジェクトです。日本沿岸域に広がるブルーカーボン生態系を調査・研究し、その重要性を社会に伝えることを目的としています。
日本全国11カ所で藻場を調査

2024〜2025年の日本におけるブルーカーボン生態系調査拠点
Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトでは、2年間で大学関係者や漁業者など、地域のパートナーと協力しながら、全国11カ所で海藻調査を実施。 また、一般向けの啓発イベントを9カ所で開催しました。
【調査実施地】
2024年/熊本県・天草、北海道・厚岸(あっけし)、広島県・竹原、島根県・隠岐
2025年/静岡県・下田、長崎県・上五島、高知県・宇佐、香川県・小豆島、新潟県・佐渡、北海道・忍路(おしょろ)、宮城県・女川
研究者とダイバーによる各地一週間の調査

海藻の光合成を測定する調査風景。袋で覆った海藻がどのくらい光合成をするかを測定。同じ場所に留まり、10分間センサーで袋の中の海水を混ぜながら放置する Photo by Tara Ocean Japan

どんな魚がどれくらい海藻を食べに来るのかを測定。金属網に海藻を付け、近くにはタイムラプスカメラを設置する Photo by Tara Ocean Japan

船上での採水作業。採水した海水で環境DNAや溶存態有機炭素、色の付いた溶存態有機物、蛍光を出す溶存態有機物を調べる。藻場で取り込まれたCO₂が形を変えてどのような行方をたどり、ブルーカーボンとなっていくのかを調べることができる。環境DNAは生物体がいた痕跡を、環境の中に残ったDNAから調べる方法 Photo by Tara Ocean Japan
各調査拠点には、全国から研究者、学生、技術スタッフ、アーティスト、ダイバー、タラ オセアンのスタッフなど、約10名が参加し、1週間の調査を行っています。月曜から金曜日は調査を実施し、土曜日には地元の方など一般の方を対象とした啓発イベントを開催しています。調査地は全国各地に点在しているため、プロジェクトはメンバーの一部が入れ替わりながら進められています。

静岡県下田で採取した海藻を種別にソーティングするアーティストたち。海藻を観察できることから、この作業は同行するアーティストが手伝う。海藻はその後、重量測定や炭素同位体分析、分解実験のため研究所に送られる Photo by Tara Ocean Japan
調査は主に、潜水調査、船舶調査、徒手調査によって行われ、研究テーマも多岐にわたります。
【調査内容】
-炭素隔離過程:光合成、有機物輸送、分解性、埋没、CO₂収支
-生物多様性の評価:生物相解析、環境DNA、磯焼けの実態

採水した海水を環境DNA用にろ過する様子 Photo by Tara Ocean Japan

採水した海水をろ禍した後のサンプル Photo by Tara Ocean Japan
土曜日は一般参加の啓蒙イベント

宮城県女川で調査に参加したメンバー Photo by Tara Ocean Japan
土曜日に実施する啓発イベントは、タラ オセアンのミッションである「探査と共有」に基づく取り組みです。このプロジェクトでは2年間で200名以上が参加し、セミナーや科学体験型の実験・観察を通して、海の重要性やブルーカーボン生態系について理解を深めていただきました。
アートを通じて海の現状や重要性を発信
タラ・プロジェクトでは科学とアートの融合も重要な柱のひとつであり、アートを通じて海の現状や重要性を伝えることで、より多くの人の心に訴えかけることができると考えています。タラ号では、アーティストが科学者とともに乗船し、その体験を作品に表現してきました。Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトでも香川大学や東京藝術大学と連携し、アーティストが調査に同行しています。

香川県三豊市粟島の粟島芸術家村で展示中の作品。アーティスト柴田 早穂さんによる「海の記録:海藻押し葉 」 Photo by Tara Ocean Japan
2025年は9名のアーティストがTara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトに参加しました。彼らは調査体験を作品へと昇華し、その作品は2025年11月、「芸術未来研究場展 2025」(東京藝術大学大学美術館)にも展示されました。調査期間中は、アーティストに限らず、科学者やダイバーなど調査参加者が、採取した泥や砂を用いてアート作品を制作するワークショップも実施。作品の一部は、粟島(あわしま)芸術家村内の Tara JAMBIO 展 に展示されています。小豆島、佐渡、忍路や女川地域の海底泥を用いた作品からは、それぞれの粒子の大きさや色の違いをはっきり見て取れます。

調査に参加した研究者が、採取した泥や砂を用いてアート作品を制作するワークショップの様子。北海道の忍路にて Photo by Tara Ocean Japan

粟島芸術家村に展示されている「海底の泥で描くアート」 Photo by Tara Ocean Japan
こうした活動に賛同を得るべく、タラ オセアン ジャパンは2026年、マリンダイビングフェアにも出展するので、お楽しみに! 次回はタラ オセアン ジャパンの今後の活動についてお伝えします。
文/タラ オセアン ジャパン広報
構成/西川重子









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