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地球の海フォトコンテスト2021
自由部門 上位入賞作品
グランプリ/舘石昭賞
青に溶ける
丸岡 亜紀/沖縄県
キヤノンEOS5DMarkⅡ シグマ15mmf2.8EX DG DIAGONAL FISHEYE ジリオン f10 1/400秒 ISO400 沖縄県・波照間島 –3~5㍍ 2020年9月10日
日本最南端の有人島・波照間島のニシ浜です。友人とシュノーケル中、ほんの数十分ほど、鏡のようなベタ凪に。水中から見た水面に、潜ってる人が映ってる! 夢中でシャッターを切りました(その数時間後にはスコールが……)。気持ち良さそうに「青に溶け」てくれた友人にも感謝です!
審査員作品評
福永友保
水中とはいえ、空気感がいい。天井の水面から砂地へと本当にきれいにつながったグラデーションになっていて、そのつながりの空間に、具体的には女性が泳いではいるんだけど、この撮影者は空間を撮ったんだと私は思います。輪をかけた静寂さを感じます。空間を演出するのに、女の人が一人潜っていくという存在も、水面のゆったりとしたアーチも効果的。すべてのものを、静寂感、音なしの世界をとらえていて、映像としては非常に優れた作品。マンタを撮るわけでもなく、アザラシを撮るわけでもなく、空間をとらえたというのがね、素晴らしい。
高砂淳二
無条件に気持ちいい。プラス、宇宙が映っている感じ。特別なものが映っているわけじゃないんだけど、何もいないところに水の中の浮遊感と水面の感じだけで勝負しています。地球とか宇宙といった、そういうものを感じますね。あと水面のところに波紋的に、潜った人の蹴ったあとのユラユラとしたところにその人自身とフィンが少し欠けて写っているんですけど、これもまあ理屈抜きで、見ていて救われる感じ。そうだよね、海ってそういう感じなんだよね、というのを直感的に伝えているように思います。
準グランプリ
天体観測
岡本 憲/静岡県
ニコンD850 AF-Sマイクロニッコール60mmf/2.8G ノーティカムD850 Z-330 f11 1/250秒 ISO100 静岡県・大瀬崎 -15㍍ 2020年2月16日
キアンコウの眼と周りの肌質を活かして惑星風に仕上げた作品です。撮影日はブラックウオーターダイビングの練習が目的でしたが、初見のキアンコウがいる情報があり、予定を少し変更して撮影に向かいました。事前にガイドさんから眼が綺麗であること、光の当て方で色が変わることを教えて頂いていたおかげで、今回の作品が生まれました。
審査員作品評
福永友保
前回、グランプリを獲った方が「イカの目の中に宇宙を見た」と言ったけれど、今回は撮影者がまっすぐ被写体に向かっていって、目の中に景色が見えるところまでアップで撮っています。前回の作品は何が映っているんだろう?と不思議に思う人と、写っているのは星座や宇宙という二つだと思うのですが、今回はたぶん4種類ぐらいの見方ができるのではないでしょうか。妖しい、あるいは宇宙人が見えるようだと思う人もいるかもしれない。造形的な非常にシンメトリーな作品はあまり好まれないかもしれないですが、写真が醸し出す“謎”が素晴らしい。人間はものを見て、きれい、美しいなどいろいろな感情を持つものですが、謎をかけられると、解いてやろうと思うもの。なんだ、この中に何があるんだ? 魚の目だというのはわかるのだけれど何を映し出している?と問いかけられているような、不思議な魅力がある。アマゾンの川の中からのぞいたような気になっちゃったんだけどね、私は。違うと思うけど(笑)。外側が地味な柄だけど、その中にはビビッドな血が通っているっていう、その良さがある。
高砂淳二
これもまた大胆な撮り方。目の中に七色が入り込んでいて、小さい場所の中に宇宙を感じて。それをメインにどーんと映っていて。ご自分の見つけた宇宙をどーんと人に見てほしい人に見せたいというのがそのまま伝わってくる。撮り方も目と周りのところを丸く光を当てて、見せていて、もしかしたら、現像処理で周りを落としているかもしれないんだけど、うまく宇宙っぽさをまあるい形で見せている、感じさせてくれている。星のようでもあり、小さなところに繰り広げられている宇宙のようでもあり、大きな世界と小さい世界が一緒に写っている。 それがいいですよね。
第3位
ヒカリヘ
河田 啓奨/沖縄県
ニコンD750 AF-Sフィッシュアイニッコール8-15mmf/3.5-4.5E ネクサスD750 D-200 f8 1/80秒 ISO800 沖縄県・ケラマ諸島 -5㍍ 2020年10月2日
このたびは、このような名誉ある賞をいただき、とても光栄に思っています。 洞窟の奥の陰った場所を「隠」、差し込む日差しの明るい場所が「陽」。まだ小さいキンメモドキの群れが、暗闇でひっそりと成長していき、大きくなって明るい世界へ飛び出していくことを想像しながら撮影しました。小さな個体ですが、群れるとこんなにも迫力が出る、その群れの大きさと個体の小ささがわかるように、ライティングには気をつけました。 まだまだカメラの知識は多いと言えませんが、今後も壮大な海の1シーンを切り取れるよう精進していきたいと思います。
審査員作品評
福永友保
キンメモドキの群れの写真はよく出てきますが、この写真はキンメモドキの群れが団子型になって、それが沖のほうまで向こうの水面に近づく伸び方をしています。写真を見ていただくとわかりやすいのですが、背景の波があって、暗いところから明るいところがあり、背景が暗いところではストロボをたいて黒をバックにして、魚群を白く浮き上らせています。遠いほうはシルエット。ある意味、魚の形がクジラかサメのように見えます。向こうがしっぽでこっちが頭でね、向かってくるような感じになっています。光が射し込んでいる背景も取り込んだ撮り方が素晴らしい。落ち着いて撮っていますね。
高砂淳二
これもまたキンメモドキの一番おもしろい形のところを撮っていますよね。奥行き感が出ているし。魚はなぜ群れるのかという理由の一つで、学者さんによれば大きな生き物に見せるためという説がありますが、まさにうなずける感じですよね。あと洞窟の中で外の光線をきれいに取り込んでいてその場所に魚がいて、向こう側に群れが半分延びていて、遠近感が出ていておもしろいです。魚たちはそんなことは考えていないんだろうけど、全体としてそんな形をどういうからくりで作るんだろう?と考えさせられるのもおもしろいです。
優秀賞
最終選考まで残った作品に授与されます
波おばけに立ち向かう
黒部 ゆみ/沖縄県
キヤノンEOS5DMarkⅣ EF8-15mmF4Lフィッシュアイ USM ノーティカム D-2000+Z-240 f11 1/160秒 ISO100 沖縄県 -1㍍ 2020年7月12日
審査員作品評
福永友保
童話の世界のよう。ウミガメの赤ちゃんが自分では見たことのない世界に出てくるわけですよね。そうすると自分の行き先には大波が待ち受けているという、そういうことを見せてくれているんだよね。これはたぶんカメのことをよく知っている方だなと。というのは自分がいるところの陸地のほうからライティングしているんですよね。それで波を写し込むことを最初から意識している。物語を作ろうというコンセプトがはっきりしているなと感じました。初めてウミガメの赤ちゃんに偶然会ったらこんなふうには撮らない。カメの赤ちゃんをよく観察していて、なおかつ夜、海に出て行くのを知っているからこそ撮れるもの。あと絞りもいいですよね。波がアウトフォーカスになっていて。ニクイ(笑)。
輝き
中川 日出明/東京都
オリンパスTG-4 静岡県・川奈
審査員作品評
福永友保
これは私が推薦しました。いろいろなグレーと淡い色でモノトーンになっていてモノクロの写真みたいなのだけれども。最初にこの写真を見たときは、走りの流氷が来た時にこういう写真になるので、流氷かなと思ったのですが、そうじゃなくて伊豆で撮った写真だそうで。光が波間からもれてくるこの水面を被写体にしているのもいい。私が撮るのは魚だけじゃないんだっていう、広く周りを見て、観察しているという姿勢がいいと思います。なかなかこれに気づくダイバーは少ないのではないでしょうか。自分の周りに起きることはすべて被写体なんだっていうことですね。
光の旋風
藤田 貴美子/兵庫県
ニコンD850 AF-S VRマイクロニッコール105mmf/2.8G+SMC-2 ノーティカムD850 Z-330 f13 1/250秒 ISO400 和歌山県・みなべ -11㍍ 2020年10月21日
審査員作品評
高砂淳二
手前がボケて奥にピントが合うという撮り方はあまりしないのですけれど、それによって渦がボケて銀河みたいな感じになっています。すごい狙い方ですね。奥に光が当たって明るくなっているのも、白いところに青い羽根が見えているっていうのも不思議な世界。やわらかく全体が作られていて、なんか異次元世界みたいな感じに仕上がっていますね。銀河とも感じるし、不思議な心の中の世界のような感じもするし、おもしろいですよね。引き込まれて行く作品です。
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