- ホーム
- 水中写真
- 水中写真家 作品探訪
- 峯水 亮
感動の一瞬はこうして生まれた…… フォト派ダイバー必見! |
浮遊系生物の神秘的な美しさと不思議な生態を表現
峯水 亮 Ryo Minemizu
世の中に無いものを創作したい
Drifters 4K – in Black Water Dive
2020年6月末に、久米島で開催したBlack Water Dive®に現れた様々な生き物の一部を4Kカメラで撮影し、3分間にまとめた映像です
Movie by Ryo Minemizu
始まりは甲殻類図鑑制作・出版
マリンダイビングWeb編集部(以下、編)-峯水さんは最初大瀬崎でダイビングガイドをされていました。何年間いらしたのですか? そこでプロの水中写真家になろうと思ったわけと、当時目指したかったことを教えてください。
峯水 亮さん(以下、峯水)-7年間、大瀬崎(静岡県 伊豆半島)にいました。海や生き物のすばらしさをより多くの人に伝えたいと思い、プロの写真家を目指しました。フリーランスの写真家として独立したのは1997年のことです。
編-最初の頃は海外ロケが中心だったそうですが、2000年に『ネイチャーガイド 海の甲殻類』を発売されるなど、生きものの撮影にも力を入れていらっしゃいます。甲殻類を最初に出したのは、どうしてですか?
峯水-当時、そのようにまとまった甲殻類の生態写真図鑑が無かったのですが、フィッシュウオッチングブームがあり、情報として誰もが必要としていました。世の中に無いものは自分が作ろうという考えで、鋭意制作しました。IOPニュース(当時の伊豆海洋公園が発行していた機関誌)でクラブアンドシュリンプという甲殻類のコーナーの連載をしていたこともきっかけとして大きかったですね。
クラゲやプランクトンの宝石のような美しさに魅了されて
編-私も購入しましたが、おかげさまでとても役立ちました。その後、2015年に『日本クラゲ大図鑑』を平凡社より出していらっしゃいます。この図鑑は峯水さんの18年間の浮遊生物撮影の集大成とのこと。そもそも浮遊生物の撮影をし出したのは何がきっかけだったのですか?
峯水-浮遊生物の撮影はけっこう初期の頃から撮影していました。きっかけはChristopher Newbert(編注;アメリカの水中写真家。クリス・ニューバートとして知られる)の写真集 『Within a Rainbowed Sea』に出会ったことです。掲載写真の一部に、ハワイ沖で撮影された浮遊生物の写真が数枚あって、それを見た時に衝撃を受けて、日本でもこのような生物が見られないかと、独自に試行錯誤しながら撮影を繰り返していました。当時の撮影はまだフィルムの時代でしたので、透明な浮遊生物を撮影するのはとても苦労しましたが、撮れたクラゲやプランクトンの写真がとてもきれいで宝石みたいに美しかったことに魅了されて、この誰も注目しないプランクトンたちを是非もっと紹介して知ってもらいたいと思うようになったのが始まりです。
プランクトンが集まりやすい場所の発見
冬は西伊豆の大瀬崎で潜ることが多い。大瀬崎ならではの西風が吹き、荒れた水面のすぐ下を泳ぐ深海魚の1種フリソデウオの幼魚。神秘的な姿を、水面から差し込む太陽の光を背景に、神々しく表した。
CANON EOS 5DS, EF-16-35mm F2.8L II USM, 1/125秒, f13,ISO320
大瀬崎 -2m 2018年2月4日
編-海の中で見る彼らは本当に美しいですよね。でも誰も見向きもしなかった時代でした。そんな浮遊生物を撮影するためにフィールドや撮影方法をいろいろ考えられたかと思います。そのなかで浮遊生物を撮影するのに適したフィールドというのはどんな海ですか?
峯水-沖合ではプランクトンが集まりやすい潮目などの場所です。沿岸ではそのような潮目がかかるような場所が適しています。
編-撮影方法としてブラックウォーターダイブ、ライトトラップなどが生まれました。これも峯水さんの功績だと思うのですが、知らない人のために、どんなダイビングスタイル、撮影スタイルなのか教えてください。
峯水-ナイトダイビングの一種です。昔は、自分がビーチダイビングを主としていたので、ブラックウォーターダイブは、最初は沿岸で始めました。海底にライトを数台仕掛けて、そこに来るプランクトンを待ち受けるスタイルです。のちに外洋に出ていくようになって、今はライトをつけたブイを浮かべ、それと共に流されながらドリフトダイブするのが主流です。ライトはブイの位置を把握するために使っています。ライトの光を強くして生き物を集めているのだと勘違いされている方がいますが、ライトの光を強くすると生態系に悪影響を与えるため、やるべきではありません。ライトの光を強くしたとしても、沿岸に寄ってきている潮が悪ければ、浮遊生物に遭遇できる確率は悪いままなのです。
夜のブラックウォーターダイブだけでなく
日中も浮遊生物は撮影できます
編-峯水さんの写真展で日中に撮影されたものもあると伺いました。昼と夜とで撮影方法は変わりますか?
峯水-ブラックウォーターダイブは夜のダイビングですが、昼も同じくブルーウォーターダイブで同様の浮遊生物を見ることができます。ただし、昼間の外洋は青一色の世界ですから、透明な生き物を見つけるのはとても難しくなります。撮影方法は基本的にほとんど夜と変わりありませんが、昼間のほうが撮影する際のターゲットライトや、生き物を探すライトはより強力なものが必要です。それは、弱いライトは太陽の光に負けてしまうからです。
撮影中はかなり冷静
ブラックウォーターダイブ中に遭遇したサルパに隠れるアオイガイ属の子供たち。画像には16匹ほどが潜んでいる。他にも甲殻類などたくさんの生き物たちが一同に居て、そのごちゃっとにぎわう感じを表した。
CANON EOS 5DMarkIV, EF50mm F2.5 コンパクトマクロ, 1/200秒, f16,ISO200
フィリピン・アニラオ -15m 2019年2月26日
編-そうなんですね。では、浮遊生物の撮影をしていて一番感動したことはどんなことですか?
峯水-感動と言うか、初めて出会えた喜びなどが、それをしっかり撮り終えた後にじわじわ沸き上がってくる感じです。実は、撮影中はかなり冷静で、被写体以外にもダイビングの管理にも頭を巡らせているからです。今年一番はハワイ沖で、マンボウの仲間であるクサビフグの仔魚の写真と動画の撮影に成功したこと、そして、糸満沖でヤリマンボウの幼魚の撮影に成功したこと、久米島沖で出会ったイソマグロの稚魚など列挙するとキリがありませんが……。
編-これまで発見されていないものに会えるだけでも感動ですが、峯水さんの場合は撮影に成功されることが感動の絶対条件ということですね。先日CANONギャラリー銀座で開催された写真展では、生態からカテゴリーを分けて展示されていたように思うのですが、想像もつかないような生態といえばどんなことでしょうか?
峯水-例えば、稚魚の中にはカクレウオの一部の稚魚のように、成長に伴って体の大きさが小さくなるものがいます。またそのほかの例としては、体から大きくはみ出す腸を持っていたりするものや、稚魚と成魚では似ても似つかない姿のものがいます。つまり、人間の常識では想像もつかないような技を持っていたり、浮遊することに特化した姿をしています。小さな生き物たちがそれを当たり前のように行っている。そういう人知を超えた生態にいつも驚かされます。
編-峯水さんにとっての浮遊生物とは何ですか?
峯水-撮影のライフワークの一つです。クジラやイルカと同じくらい注目してほしい生き物たちです。
編-そうなってきているように思います。今後の写真展等のご予定を教えてください。
峯水-2月末に大阪のキヤノンギャラリーで「峯水 亮 写真展:phenomenon ~プランクトンの荘厳な世界~」が開催されます。期間は2023年2月21日(火)~3月4日(土)日曜・月曜・祝日は休館です。
https://canon.jp/personal/experience/gallery/archive/minemizu-phenomenon
編-今後やってみたいこと、夢なども教えていただけますか。
峯水-金銭面や海況にも大きく左右されてしまいますが、外洋でのブラックウォーターダイブをさらに行いたいです。また、今後は映像分野についても、さらに力を注いでいきたいと考えています。
編-それは楽しみですね。2月に開催される大阪での写真展は2022年11月に東京・銀座で開催されたものの大阪展となるようですが、まだご覧になっていない方も、既にご覧いただいた方にもぜひ見ていただきたい! まずは2月の写真展を楽しみにしています。
ありがとうございました。
PROFILE |