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感動の一瞬はこうして生まれた…… フォト派ダイバー必見! |
すぐに行ける身近な海~磯や干潟の豊かさと環境の変化にこだわりたい
中村武弘 Takehiro Nakamura
磯の写真
磯は生物も環境も地味な世界で水中は濁っていることが多くフォトジェニックな写真を撮るのは簡単ではありません。磯らしさがありダイナミックな写真が撮りたいと思っていた時に、透明度が保たれた場所で波が押し寄せる場所を見つけて半水面撮影をしました。
撮影機材 カメラ:Nikon D7100 レンズ:Nikon AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED ハウジング:SEA&SEA
撮影データ 1/250秒、F11、ISO200
幼い頃から海外や沖縄などの海を見てきたからこそ今がある
海洋写真家の父の影響で子どもの頃から国内外の海や自然と親しむ
マリンダイビングWeb編集部(以下、編)-中村武弘さんのお父様は中村庸夫さんという有名な海洋写真家ですが、海に興味を持ったのはお父様の影響もあるのでしょうか?
中村武弘さん(以下、中村)-家族旅行で行くのがいつも海であり、父の撮影に家族で同行していた形だったと思います。物心がつく前からそうして海に接しており、幼少期からいろんな海に連れて行ってもらうことで海や自然を身近に感じて育ちました。兄がいますが、そこまで海に興味を示さなかったようで、私が小学校の中学年にもなると父の撮影に同行するのは私だけになっていました。また、父が趣味でやっていた昆虫採集にもついて行く昆虫少年でもあり、夏休みの自由研究でアゲハチョウの成長記録や標本箱を提出したこともあります。
編-海と自然が大好きなお子さんだったんですね。そんな中村さんがカメラマンになろう、水中写真家になろう、と思ったきっかけがあれば教えてください。
中村-実は小学生の頃は海よりも昆虫に夢中で、卒業文集に昆虫写真家になりたいと書いていました。図鑑を見て著名な昆虫写真家の方を当時から知っていて、父以外にも写真家を職業にしている人が私の中に存在していたことで、自分の興味の対象を仕事にするという意識が根付いていたのだと思います。小学生の思い出は海よりも昆虫採集をしていたことのほうが強く残っていますが、中学生になると徐々に昆虫熱は冷めていき、海の意識が強まっていきました。
編-もしかしたら昆虫写真家になっていたかもしれないんですね。ところで、お父様の撮影に同行されていたとのことですが、どんな海に行きましたか?
中村-小学校の低学年くらいまでは座間味島やモルディブなど、子どもが遊べるビーチのある海が多かったと思います。江戸川放水路の河口などで父が友人たちと行っていた刺し網漁にもついて行くこともありました。10歳の時にマレーシアで見た世界最大のウミガメであるオサガメの産卵と、13歳の時にオーストラリアで見た世界最小のペンギンであるフェアリーペンギンが上陸する姿は強い印象に残っており、どちらも夜で眠い目を擦りながらでしたが、その時の光景は脳裏に焼き付いています。また誰もが憧れるシロナガスクジラも19歳の時にメキシコで見ました。自分でも随分贅沢な子ども時代だったと思いますが、こうした様々な体験により、私にとって海が身近なものとなり、海というものが当たり前の存在になっていったのだと思います。
磯や干潟、マングローブ林の干潟へのこだわり
干潟の写真
環境に特性のある場所では生息環境も同時に写せば臨場感のある写真になります。アシハラガニは干潟では比較的大きなカニで、フィッシュアイレンズでワイドマクロ撮影をすると背景とバランス良く撮影することができます。
撮影機材 カメラ:OLMPUS OM-D E-M1 レンズ:OLMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
撮影データ 1/6400秒、F2.8、ISO200
編-中村さんは、磯、干潟をテーマとする子供向け写真絵本・生物図鑑などを多く出されていますね。
中村-撮影で磯と干潟に行く機会があり、どちらの海でも生物数の多さに衝撃を受けました。東京から車で一時間ほどの海にこんな自然があるのかと、その魅力に一気に惹かれていきました。もしかすると、子ども時代の海外旅行や珍しい生き物を見てきた経験から、その反対に身近な生き物に魅力を感じる理由なのかもしれません。誰でも行ける海でありながら、磯、干潟どちらも海にとって大切な環境であることがテーマに決めた大きな理由です。南国にあるマングローブ林の干潟も地球環境にとって重要な役割を果たしていることと、関東の干潟にはない面白さに魅力を感じて、磯、干潟、マングローブ林の干潟を3大テーマとしています。
意外に存在していないマダコの生態写真
編-磯焼けなど今、環境的にも大問題になっていますので、ぜひ今後も続けていってくださいね。でも、干潟や磯以外にもテーマを持って取り組んでいらっしゃることがあるようですが……。
中村-5年前に「マダコの本を作ろう!」と思い立ち、以来撮影を続けています。その当時はタコの絵本は絵で描かれたものばかりで写真絵本がありませんでした(後に繁殖だけがテーマの写真絵本が出版されています)。検索してようやく見つけた写真絵本も20年以上前のものでした。タコは誰もが知る生き物でこんなに面白いのに、そんな状況がもったいないと思い「じゃあ、僕が作ろう!」となったわけです。その時点でマダコの様々な面白いシーンに出会い撮影をしていたので、その魅力を伝えたいと思ったのです。
2021年に幼稚園向け雑誌でマダコの写真絵本を作りましたが、そちらは市販されていないので、現在は市販本でもう少し内容の濃い写真絵本の出版を目指しています。
タコの写真
こちらはタコの本を作ると決めて撮影を始めた三日目に撮影しました。館山市坂田の普段は潜らないポイントでしたが、たまたま潜った時にガイドの方が交接しているシーンを見つけてくれて、幸先良いスタートを切れた思い出のポイントです。
撮影機材 カメラ:Nikon D7200 レンズ:Nikon AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G ED ストロボ:SEA&SEA YS-D2 ハウジング:SEA&SEA
撮影データ 1/250秒、F8、ISO400
今秋、今までの写真家人生の集大成を目指した写真展を開催予定
編-普段はどのようなスタイルでお仕事をされているのですか?
中村-《ボルボックス》というストックフォトの事務所で、雑誌、書籍、図鑑、幼児誌、カレンダー、その他印刷物へ写真を貸し出すのが主な仕事で、それらの要望に応えられるようにストックを増やすために撮影をしています。その他に幼児誌や雑誌の撮影、カレンダー撮影も行っています。
水中では擬態やクリーニング、魚の色変化など生態的なものを意識して撮影しており、それらが企画になったり、写真がある程度溜まってくると出版社に持ち込んで写真絵本を作ったりしています。
編-今後、こんなことをしていきたい!ということがあれば教えてください。
中村-秋に行われる写真展では写真家人生の集大成として作品をお見せする予定です。今後は例えば10年後くらいに大きな写真展を行うことが現在の最大の目標なので、そこを意識して撮影していきます。また、磯や干潟、マングローブ林の干潟の作品もいずれ本や写真展でお見せできればと思っています。
まだ実現可能かわからないので詳しいことは伏せますが、何年か掛けて本を作りたいテーマがあり、そちらはこれから撮影をしていく予定です。
編-秋の写真展の詳細を教えてください。
中村-富士フイルムフォトサロン東京、大阪で中村武弘写真展「海」が下記の日程で開催されます。タイトルを「海」とし、海中から海上の生き物や風景、半水面、磯・干潟・マングローブ林の干潟などの環境、海の哺乳類、空撮など様々な角度から見た海の姿を紹介します。皆様のご来場をお待ちしております。
東京展
2022年10月21日(金)~11月3日(木・祝)
大阪展
2022年11月18日(金)~11月24日(木)
詳しい情報はこちらのHPをご覧ください。
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/221021_02.html
写真展と同時に私家版写真集の出版も予定しております。
編-ありがとうございます。写真展も写真集も楽しみですね♪ 東京、大阪で開かれるとのことですので、これをご覧の皆様もぜひ足を運んでみてください!
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