目指すは写真展!
”作品”にするための水中講座とは?
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”作品”づくりのためのダイビング
上手=ゴールではない
きれいな写真やフォトコンで上位に入る写真を撮影できる人は「写真が上手な人」であろう。それを目指すのは決して間違いではないし、むしろ向上心を掻き立てる良い目標だ。しかし評価されることだけが写真の本質ではない。テーマを決めて自分らしい写真を撮ること、それに向けて努力し続けることが最も大切なことなのではないだろうか。
ファンダイビング中の撮影にはさまざまな制約がかかる。人が多い場所では撮影のために陣取ることも、チームで潜っている場合には時間をかけることも難しい。写真撮影に注力したダイビングを行なうことも、上達への大事な要素である。
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狙いたい被写体がいるかどうか、どんな作品が狙えるかどうか、エリア選びも重要
水中撮影に必要なこととは
カメラの知識や特性は頑張れば独学でも理解することができる。ただ、膨大な時間を要するであろう。水中撮影は陸とは違う特殊環境の中で行なうので、水中撮影の特徴をよく理解することが大事である。例えば被写体の生態(どこまで近づいても逃げないか、光を当てても大丈夫か、など)は、日頃から水中撮影を行なっているプロならよくわかっていることだ。水中撮影は特に経験がモノを言う部分があるので回数を重ねることはもちろんだが、プロから学ぶことが一番の近道である。
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うやむやに撮るだけでは一向に上達はしない
イメージを形にするテクニック
写真撮影は自分への挑戦でもある。川奈やIOPをフィールドにする《ダイビングサービスとらんち》の川村圭吾さんは、長年の経験からゲストが撮りたいと思うそのイメージを実現させるためのテクニックを教えてくれる。
それは単にカメラの機能や技術を教えるということではない。水中で起こりうるあらゆる可能性を考え、それに対処する対策や撮影方法を提案し、ゲストがトライする。それによって新たなアイディアが浮かぶことも。川村さんが持つ知識や経験をヒントに、写真の可能性を広げ、「作品」としての写真を創作する楽しさを実感していく。
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何をどう撮りたいのかイメージを固めて臨もう
水中写真講座ダイビングの一日に密着!
①陸で撮影イメージを確立させる
どんな写真を撮りに行くか。陸でイメージを固めるのが実は一番大事なこと。狙う被写体をどう撮るか、その撮影のためには何が必要かを考える。ライティングの光量は?角度は?色は? 岩バックよりも砂地が入るようにした方がいいかもしれない。そういった、水中で起こりうるあらゆる可能性を考え、その対策をしっかりと陸でしっかりと学んでいく。たまたまいた被写体をなんとなく撮影してもいい作品はできない。潜る前の予備知識や事前に準備することがとても大切なのである。
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フィギュアを被写体に見立て、考えられる可能性をつぶしていく
②撮影ポイントまでは水中スクーターで!
《ダイビングサービスとらんち》では、撮影ポイントまで水中スクーターで移動! 水中スクーターなら素早く、それもほかのダイバーがいない少し遠方まで行くことができる(もちろん潜水可能範囲内で)。ほかの人がいないのでじっくりと撮影に集中することが可能。それに移動時間の短縮で撮影に掛けられる時間も増えるし、体力も消耗しない、さらにエアも節約と、水中撮影にとってイイコト尽くし!
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操縦に自信がない人は引っ張って行ってもらうこともできる。また、撮影機材が多い人は足にスクーターを挟んでハンズフリーでもOK
③水中でいざ実践!
陸でイメージしたことを水中でトライ。ストロボの配置も陸で考えてきたとおりに。光量や角度を調整しつつ、少しずつイメージに近づけていく。そばに川村さんが付いてくれているので、アドバイスを受けながら何度も挑戦!!
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ここはまさに「水中スタジオ」。陸で練習したとおりにストロボを配置して微調整を繰り返していく
-今回はギンポをターゲットに多灯ライティングで攻める-
まずは普通に撮影してみる
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よくある感じ。もちろんこれでもかわいいのだけれど、もう少し雰囲気を出したい。そうだ、緑バックにして森にいるみたいにしよう
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背景とライトの角度を変える
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ライトに緑色のフィルターを付け、ライトの角度を変えて撮影。しかし被写体に光が当たりすぎて強すぎてしまった
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光を調整する
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少しずつ光量を変えて撮影。森の中で物思いにふけるような、ノスタルジックな作品になった
シャッターを一回切るだけで納得いく写真が撮れることはまずない。少しずつ微調整を繰り返し、何度も撮影を繰り返すというあきらめない心と根気強さが必要だ。通常のファンダイビングでは、このように何分も一カ所で撮影をし続けることは難しいので、撮影に注力したダイビングを行なうことが作品作りの重要な要素の一つであることがわかった。
④復習&アドバイス
撮影してきたものをPCの画面でチェック。「思った通りに撮影できたか」「どうすれば良かったのか」など、ここで川村さんからのアドバイスを受けて、さらなる上達を目指す。課題や新たな目標をここで確認して、次回の挑戦へ!
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同じ被写体を撮り続けるのも上達への道の一つ
目を引く作品を撮るポイントとは?
水中写真のプロに習い、挑戦していくこと
水中写真を極めるには一筋縄にはいかないことがほとんど。カメラの機能を隅々まで知り尽くし、撮影技術を身に着けたとしても、水中環境や潜るエリアの特徴、被写体の生態などをきちんと理解するのはなかなか難しい。それらのものを理解した上で初めて「良い写真」が撮れるようになる。だから、水中撮影をよくわかったプロガイドに付いて学んでいくことが一番の近道である。たくさんのヒントをもらい、何度も挑戦することが大切だ。
《ダイビングサービスとらんち》の川村さんはゲストの「こんな写真が撮りたい!」という気持ちを尊重する。「水中写真専門」を掲げるレッスンプロとして、ゲストの頭の中にあるイメージを実現させるために必要な技術や知識、撮影法を提案してくれる。しかし、撮影に挑戦するのはあくまでもゲスト本人だ。
素敵な作品への一歩は勉強から!
写真の可能性は無限大
「ちゃんと勉強したほうがおもしろいです。自分で撮影できることがどんどん増えてくる」と《ダイビングサービスとらんち》の川村さん。例えば光の当て方一つ取っても、ビンの中にいるミジンベニハゼを撮影する際、底からライトを当てるか当てないかで印象が変わる。簡単なことだが知っていると知らないとでは雲泥の差が出るのだ。やっていくうちに新たな写真の可能性が生まれることもある。ここでいくつかの作例を紹介しよう。
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底からライトを当てるだけで印象がガラリと変わる
多灯ライティング
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ストロボを複数台使用し、ダンゴウオの質感を表現。さらに緑色のフィルターを使用してバックの印象も変えた
スローシャッター
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シャッタースピードを遅くすることで被写体がブレる特性を利用した作品。このミノカサゴ撮影の時には、シャッターを切った後カメラを動かし、より躍動感を付けた
多重露光
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一枚の画像に複数の写真を重ねるという技法を用いて、ヒロウミウシがポリプを眺めているようなイメージで撮影
機材を整えることも大事!
できることが増えていく
《ダイビングサービスとらんち》の川村さんは、コンデジ、ミラーレス、一眼レフを経験しているので、カメラに合った撮影法の指導を受けることができる。初心者でも段階を踏んで上達できるプログラムも。しかしやはり一眼レフとコンデジを比べた場合、前者の方ができることが増え、撮影の可能性が広がることは否定できない。そういう意味で、きちんとした撮影機材をそろえることも「良い写真」を撮る上で重要なのだ。
《ダイビングサービスとらんち》川村さん愛用機材
手前がメイン機材。カメラは《Canon》の「EOS5D sR」。ハウジングは、マクロ用は《ジリオン》製、ワイド用は《水中技研》のオーダーメイド。ストロボは《SEA&SEA》のYS-D1を使っている。主要メーカーは指導が可能!
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