
「マリンダイビング」最新号
根府川って聞いたことある? 神奈川の西部に位置する根府川の海底には、駅のプラットホームが沈んでいる。もちろん本物だ。なぜこんな光景が見られるのだろう……? 謎を解き明かしに潜りに行こう。
※2019年8月現在の情報です。
神奈川の最西部沿岸、西湘エリアに属する根府川。都心から車で約90分、電車だと約1時間で着く“近くて通いやすい海”だ!
最寄り駅のJR「根府川駅」は関東の駅百選に認定されていて、背にはミカン畑、目の前には相模湾を見下ろす絶景が広がる。特に日の出のタイミングは美しい!
これは現在の根府川駅。2~4番プラットホーム(ホーム)はあるのだが1番がない。この理由を《根府川ダイビングサービス》の高橋監二さんに聞いてみた。
1923年に起きた関東大震災。震源地であった根府川地区では、大きな崖崩れが起きた。それにより当時崖の中腹にあったプラットホームの1番部分が、列車とともに海へ崩れ落ち姿を消した。2~4番は今も現存して使われているため、この写真のような光景が見られる。
列車などはその後の鉄品回収作業によって引き上げられたが、1番プラットホームやレールなどは今もなお、海中でひっそりと息をひそめている……。なお、この震災により、列車の乗員乗客と根府川駅にいた乗客や職員112名が亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。
根府川駅の改札口横には慰霊碑が建てられている。長い年月が経った今も、決して忘れてはならない現実だ
海に沈むプラットホームが見られるのはダイバーだけの特権だ。根府川の海のプロフェッショナル《根府川ダイビングサービス》高橋さんのガイドで、ぜひ潜ってみたい。
昔のプラットホームは石垣を組んだ上に土のうを積み、表面を石やレンガで覆って角を固めたものが一般的だった。これは石垣の部分。畳状に組まれている様子がうかがえる。
これは土のうを覆っていた部分。今では海藻が生い茂り、生き物たちが元気に暮らす。
これはプラットホームの角。コンクリートなどの強度のある素材でできた固い部分なので、現在もはっきりと形を残す。
沈んだプラットホームは長い年月をかけ、今ではイシダイやキンギョハナダイ、ウミウシなど、たくさんの生き物たちのすみかとなっている(動画提供/根府川ダイビングサービス)
一年を通してネンブツダイやメジナが群れっ群れ! たくさんのお魚たちに会いに行こう
根府川は相模湾の外洋に面しているため、潮回りがとてもいい。魚たちは群れに群れ、海中はお祭り騒ぎ。また、豊かな恵みをもたらす黒潮の分岐流が当たるため、流れに乗ってやってきた生き物たちも多くすみ着く。
魚礁にもたくさんの魚たちが群れる。水温が上がり、透明度もいい夏の時期はダイビングのベストシーズン!
《根府川ダイビングサービス》の目の前からビーチエントリーすると広がる砂地には、5つの魚礁があり、周り方は自由自在。だから、何度行っても楽しめる。毎週末でも通える距離な上、バディ単位のセルフダイビングもできるので、たくさん潜ってスキルアップするのにもぴったり!
ビーチからはロープが伸びていて、エントリーもラクチン♪ しっかり捕まって移動しよう
エリア内の最大水深は14m。また、エントリーして水深5mのエリアはテトラポットで波が防がれる。だから体験ダイビングや講習にも最適。どこでダイビングデビューしたらいいかわからない方は、根府川に行ってみよう!
森のように生い茂る海藻の間をのぞいてみよう。小さな生き物たちがたくさん隠れている! ほんの一部をご紹介♪
アオウミウシ
水深が浅いので、撮影がじっくりできる! 毎週末でも練習に通いたい
コケギンポの仲間
表情豊かな被写体として人気。臆病者ですぐ穴に隠れてしまうので、そーっと近づこう
ウミガメの仲間
たまたま出てきてくれた海のアイドル、ウミガメ♡ ポテンシャルが高い海だ
カエルアンコウの仲間
両手(ヒレ)で体を支えている様子がなんともかわいい! いろいろな体色の個体がいるので探してみよう
ダンゴウオ
寒い時期になるとダンゴウオの姿も見られる。ぷくっとした体に、つぶらな瞳がたまらないっ!
スナビクニン
こちらも寒い時期限定。オタマジャクシのような姿をしていて、縞々模様や網目模様などさまざまなバリエーションがある