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感動の一瞬はこうして生まれた…… フォト派ダイバー必見!
水中写真家 作品探訪

海の生きものや生態のリアルを発信

堀口和重 Kazushige Horiguchi

世界の名のあるフォトコンでグランプリに値する賞を獲得!

屋久島で水中写真を始め、大瀬崎でガイドをしながら勉強

マリンダイビングWeb編集部(以下、編)-堀口さんは水中カメラマン(水中写真家)になる前はダイビングガイドをされていました。もともと水中写真家を目指していて最初にガイドになられたのですか? またはダイビングガイドをしていて目覚めて水中写真家になられたのですか? 

堀口和重さん(以下、堀口)-最初は海の生きものが好きでダイビングのガイドを始めました。写真はコンデジで生きものの特徴を調べる程度で始めたのです。カメラマンになると考えてなかったので、その頃の自分では今の自分の姿が想像できなかったと思っております。

-ダイビングガイドをしている間にフォトコンテストで入賞されるなど水中撮影に力を入れていたようですが、ガイド時代に撮影はどんなタイミングでされていたのですか? また撮影するための被写体探しはどのようにされていたのですか?

堀口-最初の2年間は屋久島でガイドしながら休みの日は潜って撮影していました。途中から撮影が面白くなり、その後は大瀬崎でガイドをしながら撮影の勉強をすることにしたのです。プロ以外でも2013年に『マリンダイビング』主催の「地球の海フォトコンテスト」でグランプリを撮った原澤宏さんや今井寛治さんなど、お客さんも上手い人ばかりだったので、刺激を受けていろいろとコンテストに出しました。結果的には入選・入賞含め10賞ぐらい取りましたが、お客さんには追いつけもしなかったです(笑)。

2018年にプロの水中カメラマンとして独立

堀口和重

夜の海でキアンコウが口を開けている写真です。プロになろうと決めた時に2年以内に写真で結果を出さなければ自分はその道を諦める覚悟で撮影をしていました。そんな中で応募したコンテストのNature's Best Photography Asia2015に入選することができたのです。この道に進むきっかけになった1枚だったのかと今は思います。
撮影機材:FinePix S5 Pro、Tokina AT-X 107 DX Fisheye
撮影データ:f11、1/125秒、ISO400

-プロとして独立されたのはいつですか?

堀口-2018年の4月からプロになり活動を始めました。先輩である峯水亮さん・阿部秀樹さんや吉野雄輔さん、中村宏治さんたちと一緒に撮影できた影響が強かったです。どちらかというと写真家の綺麗な面ではなく厳しい面、例えばお金の面や撮影の厳しさを目の前でたくさん見られとことが後に繋がりました。
独立当初は伊豆の修善寺にある写真館で陸上の撮影の勉強をしながら、企画を朝日新聞に出す仕事をしていました。それからは新聞の仕事をベースにダイビングの媒体でも仕事をさせていただきました。

各地で“ホーリーナイト”イベントを開催

堀口和重

こちらはオキナガレエビが脱皮した瞬間の写真です。オキナガレエビはプランクトンとして成体も生活している変わったエビの仲間です。
今年の3月に鹿児島で撮影したのが、そのエビが脱皮する瞬間でした。撮影した日は何十匹ぐらいオキナガレエビを見かけたのですが、何匹も脱皮の瞬間を見ることができました。今まで鹿児島ではホーリーナイトを何度もしていましたが、その瞬間を数多く狙えたのはこの日だけでした。
撮影機材:Nikon D810、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G E
撮影データ:f16、1/250秒、ISO200

-よく拝見していました。そう言えば堀口さんは「ホーリーナイト」というイベントを各地で開催されていますが、どんなイベントなんですか?

堀口-各地でやっている、ライトトラップのイベントです。ライトに集まるプランクトンを観察したり撮影したりします。今は定期的に鹿児島・八丈島・石垣島で開催しています。ほかにも伊豆大島・屋久島・佐賀・大田なども毎回ではないですが開催していています。
初めてプランクトンを撮影する人にも楽しんでもらいたいということもあり、時間がある時に参加者の方にプランクトンの撮影方法や簡単なプランクトンの説明をしています。

図鑑も出したいし、まだ撮っていない生態写真も撮っていきたい

堀口和重
堀口和重

山口県の青海島で撮影した2枚の写真です。1枚目はクサウオが網に生みつけた卵を雄が守る写真です。これは新聞で紹介したもので、人間の捨てたものをうまく利用して生き物が順応しているシーンを捉えたものです。
そしてもう1枚はEO Photography Competition 2023のHuman Impacts on the Environment部門で準グランプリになった写真です。その網に今度は絡まってしまったマダコの写真です。
片方は命を育み、もう片方は命を奪うものと、場所は同じでも全く違う写真となります。そういう海に潜らないとわからないことをカメラマン・ジャーナリストとして伝えていきたいと思っています。
◎クサウオ
撮影機材:Nikon D500、Tokina AT-X 107 DX Fisheye
撮影データ:f11、1/125秒、ISO200
◎マダコ
撮影機材:Nikon D500、Tokina AT-X 107 DX Fisheye
撮影データ:f16、1/125秒、ISO200

-ライトトラップのイベントや生きものの生態などの記事、それに世界的なフォトコンテストに上位入賞と、本当に活躍されていますよね。堀口さんご自身が今、最も撮りたいと思っているのはどんなテーマなのですか?

堀口-撮りたいものはたくさんありすぎて絞るのは難しいですね……。図鑑を出したいということもあり、まだ撮影していない生き物ものの図鑑写真や生態写真を撮っていきたいです。新聞社の仕事もしていたのでジャーナリズム的な写真もまだまだ撮っていきたいと思っています。また、ここのところは海外へ向けた作品作りにも力を入れています。最近は海外で活躍するカメラマンたちと現場で会うことが多く、今までの常識を覆すような撮影方法や機材に驚かされています。なので今は生き物のこと、機材のこと、撮影技術など時間がある時は考えています。

写真絵本の発売続々! 国内外で羽ばたく堀口さん

-今年6月21日に『深海魚に会える海』(フレーベル館)が発売されるそうですが、その内容を簡単に教えてください。

堀口-私が10年間撮影してきた、深海生物や人と深海魚の繋がりをテーマにした写真絵本です。
静岡県の駿河湾では数多くの深海魚に出会える可能性が高いです。私が撮影に専念した大瀬崎の写真も数多く入っています。
子ども用の本ですが、大人の方たちにも楽しめる本となっています。

-ほかにも新刊が出ると伺っています。

堀口-まず6月18日に山と渓谷社より、『こんなの見たことない! 海のエイリアン図鑑』が発売されました。
初夏には私の本ではないのですが、小学館よりプランクトンのポケット図鑑が発売され、写真協力をしています。

-楽しみですね。写真展やフォトコンテストなどのご予定はあるのですか?

堀口-まだ国名とコンテスト名は出せないのですがある国のフォトコンテストで入賞しました。ほかのコンテストで賞を取った方たちの作品が多く集まるようで、かなりハイレベルなコンテストです。有名な場所で作品展示がされるようです。こちらは表彰式が終わったらお伝えしたいと思います。

-それはおめでとうございます! それはまだまだ水中写真を撮っていっていただかなくてはですね。今後行ってみたいところや夢などもぜひ教えてください。

堀口-行きたいところというよりも撮影したいものがあったら行くというスタンスなので、行きたいところはなんとも言えないです……。また、今撮影しているシークレットのものが多すぎて……(笑)。撮影が成功したら紹介していきたいと思います。
夢というか目標は2つあり、ひとつは図鑑を作ることです。特にウニの図鑑を作りたいのが目標のひとつです。そしてもうひとつは見ている人の人生を変えるくらい衝撃的な作品を作っていきたいと思います。そのために世界トップレベルのカメラマンになれるように努力していきたいと思っています。

-堀口さん、応援します! またいろいろなことが進んだらお話を聞かせてください。本日はありがとうございました。

堀口和重
Kazushige Horiguchi

PROFILE
ほりぐち かずしげ
1986年5月22日東京都中央区日本橋生まれ
フォトグラファー
日本の海や生き物の素晴らしさを伝えるため活動中。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリスト関連の雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載。水中生物の図鑑や教書にも写真提供。日本テレビやNHKの動画撮影も担当。また日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019・2020”の審査委員、“第28回・29回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員を務めた。2022年はNature Photographer Of The Year 2022(オランダ)で日本人初の水中部門グランプリを受賞。2023年はEO Photography Competition 2023(香港)のHuman Impacts on the Environment部門で準グランプリを受賞。

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