南紀シーマンズクラブで潜る!
サンゴ天国 串本
串本は本州最南端の町として知られる、紀伊半島南部の伝統的なダイビングエリア。温帯というよりは亜熱帯の生きものたちに恵まれています。海の中でもサンゴの群落や南の島でよく見かける壺型の大きなカイメンや魚たちがひしめき、トロピカル。その素晴らしさは日本が誇るダイビングエリアのトップクラスともいえます。今回は創業35周年を迎えた《南紀シーマンズクラブ》の代表・島野利之さんに串本の魅力を伺いましょう!
創業以来35年間変わらない串本の魅力
サンゴの群落からイルカ・クジラ、
小さな生きものまで豊かな生物相
クシハダミドリイシがテーブル状に広がるエリア。南国の海を潜っている気分になれます
Photo by Nanki Seamans Club
串本の海に魅せられ、1989年にダイバー向けの本格的な施設を整えて登場したのが《南紀シーマンズクラブ》です。目の前の港(桟橋)からダイビング専用のボートで出かけられ、ダイビングサービス内にはシャワー、トイレ、ログ付けのためのラウンジや、アイテムごとに洗える水槽、干し場などが完備され、しかも泊まりがけで訪れるダイバー向けのクラブハウスも設置するなど、日本のダイビング界でも大きな話題になったものです。今年4月で創業35周年を迎えましたが、串本の海の魅力を島野さん(前出)に35年を振り返って語っていただきました。
「本州最南端という最高のロケーションの串本の海は、テーブルサンゴやエダサンゴの群落、色とりどりの亜熱帯の魚たち、そしてイルカやクジラなどダイバー憧れの生物まで、多種多様な生物が見られる素晴らしい海です。2016年からの黒潮大蛇行によって、少しずつ海も変わってきているように思いますが、大都市圏内から陸路3~4時間でこれだけのサンゴ群落が見られる場所は、串本しかありません。そしてそれは35年経った今も変わらず、素晴らしいサンゴ群落、そしてたくさんの生物を見ることができます」
春から夏にかけての串本の見どころ
回遊魚がエキサイティング!
キビナゴの群れを追って大きなカンパチの編隊が出現! ダイバーの泡を小魚と間違えて寄ってくることもあります
Photo by Nanki Seamans Club
では、実際にこれから串本を潜る場合の見どころを島野さんに教えていただきましょう。
串本のダイビングスポットは大きく分けて外海と内海があります。まずは外海の見どころについて。
「水温の上昇と共に魚影がどんどん濃くなってきます。キビナゴの群れにアタックするブリ・カンパチ・ツムブリ等の回遊魚は迫力大!」と島野さん。
そうなんです。まず浅瀬に集まるキビナゴの群れ! 晴れている日はキラキラ光ってそれだけでもキレイなのですが、群れそのものの動きも見もの。さらにその群れを追って大型の回遊魚が集まってくるのだからエキサイティングでたまりません。⇒最後にある動画をぜひご覧ください♪
キンギョハナダイが群れ群れ
群れるのは回遊魚だけではありません。
「根の上はキンギョハナダイに覆われ、その上をタカサゴ・メジナ・ニザダイ、イサキの大群が乱舞します」と島野さんは続けます。華やかなキンギョハナダイの群れもフォトジェニックですが、それを捕食するために現れる中型魚の群れも圧巻です。
ウミウシの仲間がいっぱい!
ピカチュウウミウシことウデフリツノザヤウミウシの姿も
Photo by Nanki Seamans Club
テントウムシみたいなテントウウミウシ。1mm未満の子どもも見られるかも!
Photo by Nanki Seamans Club
串本の内海は魚影が濃く、生物相が厚いことで知られています。冬~春に多いといわれるウミウシですが、島野さんは、「初夏まではウミウシの仲間がたくさん見られます」と言います。
写真のほかにカンナツノザヤウミウシやミドリアマモウミウシなど人気者も多数見つかりますよ。
根魚にも注目!
温帯の魚、テングダイも大きな子たちが群れています
Photo by Nanki Seamans Club
ホウライヒメジと魚名がめでたい魚の群れも圧巻
Photo by Nanki Seamans Club
関西ダイバーが多く、阪神タイガースの黒☓黄カラーの魚が串本では人気です。特にテングダイ、カゴカキダイはその代表選手。そんな根魚の仲間がとても多いのですが、これからの時期はさらに遭遇率がアップ。島野さんも「根魚類の魚影も濃く、ホウライヒメジ、カゴカキダイ、ミギマキ、クロホシフエダイ等の大群が見られます」と力強く話してくれます。
フォト派に大人気のハゼ類も!
アクビをしているヒレナガネジリンボウの貴重なシーンにも会えるかも
Photo by Nanki Seamans Club
大きな帆を背中に持っているような、ホタテツノハゼは運が良ければ会える!?
Photo by Nanki Seamans Club
ヤシャハゼとコトブキテッポウエビの共生も
Photo by Nanki Seamans Club
「住崎(すみさき)」をはじめ、串本の内海には、フィッシュウオッチングや水中撮影にぴったりなスポットがいろいろあります。これからの季節の狙い目は?「水温の上昇に伴い、砂地ではヒレナガネジリンボウ、ホタテツノハゼ、ヤシャハゼ等の可愛いハゼ類も見られるようになります」と島野さん。じっくり狙ってみてください♪
初夏のアオリイカ産卵は見逃せない!
5月初旬ごろからはアオリイカ祭り♪
Movie by Nanki Seamans Club
毎年4月、串本にある23のダイビングサービス、ダイビングショップが参加する串本ダイビング事業組合が「備前」「グラスワールド」「イスズミ礁」の計3カ所に”産卵床(さんらんしょう)”を設置。集まってくるアオリイカが安心して産卵、ハッチアウトするための場所を提供するのです。アオリイカウオッチングでぜひ見てほしい点を島野さんにお伺いしました。
「まずはアオリイカのサイズ! 初めて見る方は、その大きさにビックリすると思います。じっくり観察すると、オスがメスを産卵場所までエスコートする健気な姿、ライバルのオスと喧嘩するたくましい姿など、驚きと感動のシーンが見られます。産卵床には産みたての卵など、見どころ一杯です。しばらくすると、至るところでアオリイカの赤ちゃんも見ることができます」
アオリイカの赤ちゃん! 産卵シーンにも感動ですが、何度も通って生まれてくる赤ちゃんまで見届けたいですね♪