「マリンダイビング」2019年4月号
巨大マンタが超接近! メキシコの絶景
ソコロ
Isla SOCORRO, Archipelago de Revillagigedo, Mexico
レンズのいたずらにも見えるかもしれないが、フィンまで入れると2m近いダイバーが近づいてもこれだけ大きいマンタ! 体盤幅2mぐらいの小さな小マンタもいるけれど、えてして巨大なマンタが多いソコロ海域
メキシカンガラパゴスとも呼ばれる太平洋の真っただ中に浮かぶソコロ。正式名称をレビジャヒヘド諸島といい、2016年にはその貴重な生態系からユネスコの世界自然遺産にも登録されている、ネイチャーアイランドだ。
最も近いカボ・サン・ルーカスから約450km(540kmという説もあり)も離れた離島中の離島で、実際に潜るのはサン・ベネディクト島、ロカ・パルティーダ島、そして運が良ければソコロ島の3島(その3島もそれぞれが100km以上離れている)。
島自体が潮流が当たる魚礁となっていて、それを目指して大型回遊魚やサメ、マンタが集まってくるという具合。しかも個体はどれも大きく、マンタに至っては世界最大級! そんな憧れのソコロへ日本発のダイブクルーズツアーに参加してきた!!
※2019年4月現在の情報です。
差し渡し5mはある巨大マンタや
ブラックマンタに会える!
世界一マンタが近い海
ダイバーに近づいてくれるマンタ © Masaaki Harada
レビジャヒヘド諸島という名前は覚えにくいだろう……と、おそらく最初に売り出したダイブクルーズ船の運営者が考えたのが、その中心島「ソコロ」だったのだろうと推測されるのだが、おかげさまでソコロは有名になり、一方で正式名称はますます覚えられることなく、ようやく2016年に世界自然遺産に登録されてからレビジャヒヘド諸島の名前もぽつぽつと出回るようにはなってきた。
が! やっぱりソコロはソコロ!ということで、ダイビング界ではソコロの名前が圧倒的に知れ渡っている。とはいえ、初めてその名を聞く人も多いだろう。
一番の特徴は、巨大マンタが舞う、すごい海。知る人ぞ知るダイビングパラダイスなのである。
今回撮影してきたカメラマンのはらだまこと原田雅章が
「世界で一番マンタが近い!」
と絶賛するほど、ソコロではマンタがダイバーを恐れることなく近づいてくる。
筆者(ゴット姉さん)も、ソコロのマンタはダイバーの泡をクリーナーの一つとして考えているんじゃないかと思うぐらい、頭上でホバリングされたことが何度となくある。
こちらは待っているだけでマンタから近づいてきてくれる。当たるんじゃないかとヒヤヒヤしている直前で体をかわす。それにしても、コバンザメ(スギの仲間で一般的なコバンザメとは違う)もデカイ
マンタがデカイ!
大きなマンタがぶつかってくる~! 今回出会ったマンタは、これでも小ぶりな個体なのだ © Masaaki Harada
ソコロのマンタは世界で2種類いるといわれるマンタのうち、オニイトマキエイ(Giant Manta ray)がほとんだといわれている。オニイトマキエイは外洋性で、背中の白い模様の前縁が口裂に沿って平行にあるのがナンヨウマンタとの違いだという。
確かに背中の模様の前縁はどの個体も口裂に平行だ。しかも体長が大きいものでは6mになるといわれるようだが、差し渡し5mぐらいということは尾も入れれば体長6mにはなる。口もそりゃ大きい。
全部が全部こんなに巨大なわけではなく、体長3~4mの、わりと見慣れている大きさの個体も少なくないのだが、近づいてきてくれる個体が多いためか、一層大きく見える、ということもあるのかもしれない。いずれにしてもダイバーにはウレシイことである。
サン・ベネディクト島の「エル・ボイラー」というスポットで近づいてきたマンタ。上のマンタはそんな巨大ではないのだが、下のマンタが周辺のダイバーと比べてみても巨大だということがわかる
どこの島でもマンタに会える
マンタに会えないダイビングスポットは逆に少ない © Masaaki Harada
ソコロのダイブクルーズで訪れる島は、たいていサン・ベネディクト島、ロカ・パルティーダ島、ソコロ島の3島となるが、どの島でもマンタとの遭遇率が高い。それぞれの島が100km以上離れているのに、数日前サン・ベネディクト島で会ったマンタがロカ・パルティーダ島にいたりすることも!? 人恋しくて船を追いかけてやってきているんじゃないかと思うほどだ。
なので、ソコロにいる間はマンタウオッチングが普通にできる。ソコロ島は諸島中最大の島で、マンタスポットではないところもあるのだが、そんな時は逆にマンタに会えなくて寂しくなるかも!
人懐っこいマンタに会うのが楽しみすぎる
マンタだけじゃなく
イルカ、ハンマー、タイガー、ジンベエも!
「エル・ボイラー」の早朝ダイビングでいきなりイルカがやってきた! © Masaaki Harada
《ワールドツアープランナーズ》のツアーに参加していた熊谷光剛さんのところに体長10m近いジンベエザメも登場。
同じくツアーの参加者、田部井香織さんも「バスみたいに大きくて超びっくりした!」と語っている(田部井さんのジンベエザメのすごいショットは『マリンダイビング』4月号のソコロ特集をご覧ください!
優雅な流線形の体をしならせるオーシャニックホワイトチップシャーク(たぶん)も登場
今回の取材では残念ながらハンマーリバーには出くわさなかったのだが(単体のハンマーヘッドシャークはいた)、ソコロといえばハンマーリバーやハンマーの群れに会える確率が高い。
サン・ベネディクト島の「キャニオン(スペイン語のスポット名はエル・カニョン)」というスポットにはハンマーがクリーニングされるステーションもあり、運が良ければハンマーヘッドシャークが気持ちよさそうに体を掃除してもらっているシーンに会えることも。クリーナーはチョウチョウウオの仲間なのもおもしろい。
また、ジンベエザメやハンマーのほかにもサメの種類は多く、人間を見るとすぐに逃げてしまうがタイガーシャークが現れたり、ガラパゴスシャーク、グレイリーフシャーク、シルキーシャークなどなど、さまざまなサメに会うことができる。サメ好きにはたまらない!
今回載ったNautilus LiveaboardsのBell Amie号ではサン・ベネディクト島で「シルキーナイト」というイベントを開催しており、夜集まってくるシルキーシャークをスノーケリングで見ることができる
魚群もスゴイんです!
ロカ・パルティーダ島で潜った時のこと。なんだか筋肉のうなりが聞こえた気がして水面近くを見上げると、カツオのようなマグロのような魚(たぶんブラックスキップというスマの仲間)の超大群が!
サメが多いということは、その餌となる魚がとても多いことを意味する。実際、どこのスポットでも根魚が非常に多く、それを狙う回遊魚もたくさん回ってくる。ついついマンタに目が行ってしまうが、周りをよく見ると、ほかではなかなか見られない、贅沢で貴重なシーンにお目にかかれること間違いない!
カッポレはほかの海でもよく見るが、これだけ群れることもなかなかないのでは
ダイブクルーズでしか行けない絶海の秘境
今回、取材で乗せてもらったNautilus LiveaboardsのBell Amie号。向こうに見えるのはロカ・パルティーダ島。
ゲストで同行した熊谷光剛さんがドローンで撮影
片道24時間以上の船旅
ソコロ島のあるレビジャヒヘド諸島は、バハ・カリフォルニア半島の南端、カボ・サン・ルーカスからダイブクルーズでアクセスすることになる。有人島はソコロ島とクラリオン島だが、いずれもメキシコ海軍関係者のみが住んでいて、ほかは無人島なため、空港もないどころか、定期連絡船もないからだ。
一番近いサン・ベネディクト島でカボ・サン・ルーカスから約450km(540kmとも386kmともいわれるが)もあるので、ダイブクルーズ船でも順調にいって24時間はかかる。波が高く風が非常に強い場合は36時間ぐらいかかることも。よって、定期的に開催されているダイブクルーズのほとんどが、現地で5~6日間は潜れるようにと8泊8日ぐらいの日程となっている。
日本から出るとなると、最低でも11日間は必要となるが、これだけすごい海に潜るのであれば、時間もお金もかけて出かけてもいいのかもしれない。庶民にはツライけれど、いつか行きたい!という夢を持ってダイビングに励めるのもいいことではないだろうか。
カボ・サン・ルーカス前泊がオススメ
今回、日本からBell Amie号でのダイブクルーズまですべてお世話になったのは、ソコロダイブクルーズツアーを企画している《ワールドツアープランナーズ》。
担当者の水垣歩さんは、ソコロに何度も視察に訪れている強者だ。そんな水垣さんからアドバイスを。
「11日間の最短日程でツアーを紹介していますが、万が一ディレイしたり荷物が届かなかったりした場合、船は待ってくれません。ですので、可能な限りカボ・サン・ルーカスに前泊して12日間で行動することをオススメしています。この場合、Nautilus Liveaboardsのクルーズ参加者の集合場所となっているホテル、Tesoro Los Cabosに宿泊することをお勧めします。
カボ・サン・ルーカスはメキシコでも随一の観光地。到着後はマリーナ周辺で買い物やグルメを楽しんだりすることもできますし、クルーズの集合が夜8時ですので、それまでデイトリップでバハ・カリフォルニア半島南端で遊べるオプショナルツアーもご紹介できます。
また11日間で行くという方には、カボ・サン・ルーカスに到着後、一休みをされたほうがいいでしょうから、Tesoro Los Cabosのプールサイドをデイユースするという手段もあります。プールサイドでのんびり過ごされてはいかがでしょうか」
Nautilus Liveaboardsの集合場所となるホテルTesoro Los Cabosのプールと客室棟
日本からカボ・サン・ルーカスへ
2019年2月から日本航空(JAL)とのコードシェアが始まったアエロメヒコ航空(AM)で成田からメキシコシティへ。デイリーで運航されているので便利だ。所要時間は約12時間35分。メキシコシティからはAMの国内線でサン・ホセ・デル・カボ(SJD)へ約2時間30分。こちらも一日に何本か運航されているので問題はないが、メキシコシティでのトランジット2時間は取るようにして、でもなるべく早い便でSJDに飛べるようにフライト予約をするといい。
SJDからカボ・サン・ルーカスへはタクシー等で約40分(この分はツアー料金に含まれていないので注意)。
カボ・サン・ルーカスは港を中心に飲食店やリゾートホテルが開拓されている。特にマリーナ周辺は朝から晩まで大にぎわい
ゲームフィッシングのメッカでもあるカボ・サン・ルーカス。カジキのオブジェもフォトジェニック♪
Nautilus Liveaboardsのこと
ソコロクルーズは4隻で運航
ソコロへのダイブクルーズ船は現在数社で11隻が運航しているといわれる。今回取材でお世話になったNautilus Liveaboardsはカナダにオフィスがある会社だが、4隻もの船を持っていて、ソコロ、グアダルーペ(ホホジロザメ)などメキシコのすごい海を季節ごとに運航している。
取材で乗船したBell Amie号は中でも最新の設備を搭載した超ラグジュアリーな船で、おそらく『マリンダイビング』で取材したダイブクルーズ船の中でもTOP3に入るゴージャスさ。
またNautilus Liveaboardsでは、独自に開発したGPSをゲスト全員が携行するようになっていて、万が一、ガイドから離れて迷子になってしまったとしても、追跡ができるようになっているのは心強い(とはいえ、万が一の場合の救援費用などは非常に遠い離島のため高くなるので、ダイビング保険には必ず入っておくこと)。
Nautilus LiveaboardsのBell Amie号
全長44.8m、全幅10mの大型船で客室は全17室(4タイプ)、乗客定員30~32名。客室設備、船内施設はダイビングをするのに何不自由ない充実っぷり。エンリッチドエアナイトロックスはもちろん搭載(有料)
ステートルーム(いわゆるスタンダードルーム)でも平置きベッドでリゾートホテル並み!
メキシコでは3食のうち昼食が一番ボリュームたっぷりという実に理にかなったシステムなのだが、クルーズ中の昼食もボリューミー! しかもどれも美味しい
クルーズ中は朝食が2回(ダイビング前とダイビング後)、昼食、ティータイム、夕食と計5回、サーブされる。こちらはダイビング前にいただく朝食、コンチネンタルブレックファストの一例。彩りにまでこだわっていて毎食が楽しみでしかたなかった
ノーティラス エクスプローラー
Nautilus Explorer
全長35.3m、全幅8.2m、乗客定員25名、客室13室。ダイブボートとしては世界初のSOLAS認定を受けている
ノーティラス アンダーシー
Nautilus Under Sea
全長32m、全幅7.3m、乗客定員19名、客室9室。コスタリカのココアイランドで26年間活躍したのち、2017年、再建造され、メキシコに
ノーティラス ギャラン・レディ
Nautilus Galant Lady
全長35.3m、全幅6.7m、乗客定員12名、客室6室の新しい船で、ソコロのほか、夏はバヒア・ロスアンヘレスというジンベエスポットへ、秋はカボ・プルモへのクルーズを行っている