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三陸ボランティアダイバーズに聞く!
水中トランシーバー「ロゴシーズ
海洋保全活動での活用

ロゴシーズⅡ

ロゴシーズは水中で会話ができる水中トランシーバーです。カシオグループの山形カシオ株式会社が独自開発し、2012年に発売。それまでは、「水中で会話する」となると、顔全体を覆う、フルフェイスのマスクが必要でした。ロゴシーズは通常のダイビング用マスクのストラップに装着し、レギュレーターをくわえたまま話すだけでOK!デジタル超音波技術と骨伝導イヤホン、ノイズキャンセル技術が盛り込まれ、誰でも簡単に水中で会話することができるようになりました。
前回はレジャーダイビングでの活用について取り上げましたが、今回は環境保全活動などの作業ダイビングでの使用感をレポートします。

※2024年7月現在の情報です

進化したロゴシーズ

潜水作業で活躍するロゴシーズⅡ

潜水作業で活躍するロゴシーズ

2023年、ロゴシーズは「ロゴシーズ」として、約10年ぶりにリニューアル! 主な進化は次の3点です。

①ダイビングコンピューター機能
音声で潜水時間や無減圧潜水時間、安全停止の開始と終了、浮上速度警告などを教えてくれます。ダイブコンピューターと併用して使用することで、透明度が悪いなど、ダイブコンピューターの画面が確認しづらい環境下でも、音声情報でダイバーをサポートします。

②送受信可能範囲(角度、距離)の拡大
初代ロゴシーズはアンテナの向きが前方で、音波の送受信が主に前方向となっていました。そのため、カメラの操作や作業等でダイバーが下を向いてしまうと、音声の送受信ができないことがありました。ロゴシーズではアンテナを横向きにしたことで、送受信できる範囲が広がりました。

③バッテリーの持ち時間が向上!
初代ロゴシーズは約3時間だったのに対し、は約5時間に。レジャーダイビングで3本潜る場合はもちろん、長時間の作業潜水でも、従来より余裕をもって使うことができます。

ロゴシーズⅡを装着

ロゴシーズを装着

作業ダイビングでの使用

以前、ロゴシーズがリニューアルした際、マリンダイビングWEBでも「ロゴシーズレビュー」ということで、レジャーダイビングでの使用を特集しました。今回は、作業潜水での使用感をレポート。《三陸ボランティアダイバーズ》が継続的に行っている海洋保全活動で、ロゴシーズが大活躍しています!との報告を受け、代表の佐藤寛志さんにインタビューさせていただきました。

三陸ボランティアダイバーズの取り組み

アマモ場での使用。両手が空くため、作業や調査がしやすい。

アマモ場での使用。両手が空くため、作業や調査がしやすい。

三陸の海ではウニが増え過ぎたことによる磯焼けや海水温上昇による水中環境の変化が問題となっています。海藻や海草は光合成により水中の二酸化炭素を取り込み、炭素に分解して海底や水中に貯留します。また、藻場は水質の浄化や生物の産卵・保育場として豊かな海を支えています。藻場が無くなってしまうと、海の生態系が崩れ、漁業にも多大なダメージを与えます。

磯焼けの様子。かつては海藻が生い茂っていた。写真提供/佐藤寛志

磯焼けの様子。かつては海藻が生い茂っていた。写真提供/佐藤寛志

三陸ボランティアダイバーズでは、漁業者と協力し、コンブやアカモク、ホンダワラといった海藻やアマモなどの海草の植え付け、ウニの移植や駆除、海底清掃などに取り組んでいます。

保全作業でのロゴシーズの活躍

ロゴシーズを装着し、藻場再生に取り組むダイバーたち

ロゴシーズを装着し、藻場再生に取り組むダイバーたち

冬場の透明度は良いものの、夏場はぐっと透明度の下がる三陸の海。植え付けや海底清掃では、水底の砂が舞い、視界がほぼなくなってしまうことも少なくないそうです。そのような過酷な環境での作業を支えているのが、ロゴシーズです。
ダイバー同士のコミュニケーションや連絡はもちろん、船上のメンバーとのやりとりも可能。作業の指示や状況の報告、確認をスムーズに行うことができ、従来よりも安心して、安全に作業を進めることができるようになりました。特に、水中での作業は袋の開閉やロープ作業、種付け作業など、両手を使ったものが多くあり、コードレス、ハンズフリーのロゴシーズはうってつけ。
ロゴシーズ導入前はスレートやハンドシグナル、ライトやダイビングベルで合図を送り、コミュニケーションを取っていましたが「視界が悪くて見えない」「フードを被っていて聞こえない」そして「手がふさがる」という問題がありました。これらの問題全てが、ロゴシーズによって解決することができました!

海洋保全教育の場で

スタッフから説明を受ける生徒たち

スタッフから説明を受ける生徒たち

地元の岩手県立盛岡第三高校の総合的な探究の時間の一環として、藻場再生の作業見学が行われました。ロゴシーズを使って、防波堤の上にいる高校生たちが、水中のダイバーと会話しました。作業の簡単な指示出しや「何が見えますか?」などダイバーとコミュニケーションを取った体験は、とても印象深かったようです。
若い人達が海や海洋環境に興味を持つきっかけになると良いですね。

作業も体験しました。

作業も体験しました。

生徒と水中のダイバーが会話。印象深い経験となった。

生徒と水中のダイバーが会話。印象深い経験となった。

ロゴシーズには録音機能も付いており、データをUSB経由でPCに取り込むことができます。三陸ボランティアダイバーズでは、将来的に水中での会話と映像を重ね合わせてドキュメンタリーを作り、子ども達に見てもらうことも考えているそうです。

まとめ

新しくなった「ロゴシーズⅡ」

新しくなった「ロゴシーズ

レジャーダイビングだけでなく、潜水作業でも大活躍のロゴシーズ。一つ一つの工程を効率よく進められるようになったことで、ますます活動の輪が広がりそうですね。海洋環境が守られ、豊かな海が続くことは海の生き物たちにとっても、海の幸を糧にしている人間にとっても幸せなことです。

三陸の海に広がる、美しい藻場。このような景色がいつまでも続いてほしい。写真提供/佐藤寛志

三陸の海に広がる、美しい藻場。このような景色がいつまでも続いてほしい。写真提供/佐藤寛志

三陸ボランティアダイバーズ代表の佐藤寛志さんは「植えたコンブの成長を見守っていると、そこにダンゴウオが居ついているのを見つけました。海藻そのものの成長はもちろん、そこを住処にしている生き物たちの姿をみることができるのは、大きな喜びです。」と話します。三陸ボランティアダイバーズでは、土日祝を中心に、ほぼ毎週保全活動を行っています。興味のある人はぜひ問い合わせてみてくださいね。

佐藤 寛志

佐藤 寛志

NPO三陸ボランティアダイバーズ 代表理事
みちのくダイビングリアス オーナー
NPO江ノ島フィッシャーマンズプロジェクト 理事
一般社団法人海と日本プロジェクトin岩手 理事
2014年 環境省グッドライフアワード
     環境大臣賞 最優秀賞受賞
2018年 日本復興の光大賞受賞
2023年 Sea Hero 日本人で初の選出
2024年 PADI  アンバサダイバー

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協力・写真提供/山形カシオ株式会社、三陸ボランティアダイバーズ
ライター/斉藤利奈