年間125万人が訪れるダイビング情報サイト

【連載 vol.2】
マレスのスポーツリブリーザー

mares HORIZON

マレスのスポーツリブリーザー mares HORIZON

昨年Maresから「スポーツリブリーザー」として発売され、2022年から本格的にデリバリーが始まるmaresHORIZONですが、既に体験した人たちから「驚くほど快適」「リブリーザーの概念が変わるぐらいシンプルで使い勝手がいい」といった声がマリンダイビングウェブ編集部にも届いています。今回は夢あふれるダイビング世界を生み出した開発者にmaresHORIZON誕生の背景を伺いつつ、その魅力について紹介します。

HORIZONはこうして生まれた~イタリアMares本社の開発者にインタビュー

HORIZON開発の背景をStephan Michlさんが語る

前回、maresHORIZONの魅力を紹介して、体験してみたくなった方も多いのではないでしょうか?
どんな背景でHORIZONは生まれたのか? 何を目指しているのか? なぜSCRなのか?
ダイビング界の常識を変える画期的な商品の開発にはどんなドラマがあったのでしょう? イタリアのMares本社で活躍されているHORIZON開発者の一人、ステファン・ミシェルさんにお話を伺いました。

イタリアのMares本社のステファン・ミシェルさん

イタリアのMares本社のステファン・ミシェルさん

Q
Maresについて簡単にご説明していただけますか?

ステファン・ミシェルさん(以下SM)-MaresはHEADグループの一員で以前はHTMグループという名称で過去には、ニューヨークとウイーンで上場していました(現在は個人オーナー所有)。
HTMグループはHead、Tyrolia、Maresの頭文字をとったものでグループは30年以上枠組みは、変わっていません。
皆さんご承知の通り、HEADはスキー、スノーボード、テニス、Tyroliaはスキーのビンディングの会社です。
Maresの強みはグループの強みでもありレジャースポーツを複合的に扱うことによる大きなメリットがあります。
一つ例を紹介します。先ほどのスキービンディングのTyroliaは特殊な会社でスキービンディングのパテントを多く保有しスキーのHEADと競合するスキーメーカーにOEMでも提供しています。
スキービンディングの下となるメーカーは、4社に限られパテントに守られていますが、Tyroliaは金属加工が当然得意な会社でもあり、Maresのフィンなどの金属金型は、この工場で生産されています。
他のいくつものパーツの金型はウイーンにあるTyrolia社で生産され、たとえばフィンのポケットも足形がいくつも用意できる強みがあります。
そのグループの強みも生かしながら私たちはダイビングを専門とする、開発と生産、マーケティングのスペシャリスト集団です。

Q
世界的なコロナ禍の中でHORIZONを発表しましたが、勝算はあるのでしょうか。

SM-2020年から全世界でコロナは終息が見られない中で当社Maresは2021年には復調を果たし、2022年はコロナ前の売り上げに迫るでしょう。
私が知っている日本の皆さんは、慎重な方が多いのも理解していますが、日本のダイバーも今年は動きが出てくると予想しています。
マーケットに火がつく前に私たちは、少しでも早く商品を紹介し市場の活性化に貢献する必要があります。
勝算は十分あります。そのための準備はしてきたつもりですし、今後も日本と打ち合わせしながら進めていきます。

Q
そろそろ本題に入りたいのですが、HORIZONのターゲットは?

SM-もちろんマーケットで一番大きいレジャーダイバーの方向けですね。
日本と海外では少し事情が異なりますが、ゆっくりと快適に海の中で過ごしたい人たちはたくさんいらっしゃいます。HORIZONは扱いやすく軽量で、生き物の観察には欠かせないものになると思います。
海外のダイバーに人気の目的の中ではダイビングはヨガのようなティラピスの要素もあり、HORIZONの呼吸音がしない特徴は、良いヒーリングタイムが得られるでしょう。

Q
HORIZON開発で苦労されたことをお聞かせください。

SM-数年前にrEVO社をグループ化しました。SCRの専門会社ではありますが、私たちが望むレジャーとはかけ離れたものでした。
顔合わせから続く会議の中でレジャーダイバーにもこの素晴らしい世界を見せるため、お互い努力しようという方向性が決まるまでは、とても早くスムーズであったと記憶しています。
問題は商品で、私たちが目指すSCRはまったく異なるシステム開発となります。時間を掛けて一つ一つ進めました。日本をはじめとする子会社からは「早く!」「いつから売れるのか」と責められっぱなしで、子会社への説明も苦労しましたね。
コンパクト、軽量化することで扱いやすさを求め、背中に合うように幾つものサンプルも作りました。
コロナで結果的に時間的に余裕ができて満足のいく商品となったと思います。

Q
HORIZONの進むべき道、進もうとしている方向などをお聞かせください。

SM-日本では「十数年平均年収が上がっていない」とよく聞きます。わたしたちEUではここ20年で年収も上がり日本の年収を超える国が多く見られます。
EUの中で日本同様に年収が上がっていないのが、私たちMaresの本拠地であるイタリアで諸事情は似ていますね。
イタリアと日本は食事、衣料、観光など同じ価値観をもっている国民性ですが、余暇の過ごし方はまったく異なります。
「長期の休みが取れ、趣味を楽しみ家族と過ごす」これは欧米のライフスタイルです。
コロナ禍で日本の働き方も変わったと聞いています。
嗜好品、必要と感じるもののために仕事をしている私たちとは違いますが、世界的にライフスタイルの変化は聞こえだしてきています。
日本がこれからもっとたくさんの皆さんが海を楽しんでいただけるようにHORIZONは国ごとに同一価格の提案をしています。
また、適正在庫とSSIの指導を含め支払った以上の利益を皆さんに提供したいと考えています。

以上、ありがとうございました。

リブリーザーなので、吐いた泡がほとんど出ないため、数人で潜っても静寂な青の世界を堪能できる

リブリーザーなので、吐いた泡がほとんど出ないため、数人で潜っても静寂な青の世界を堪能できる

どこの国でも同一の価格ということもダイビング界では画期的ですね。
日本円にすると、メーカー希望小売価格は759,000円(本体価格690,000円)。
これまでのリブリーザーユニットに比べるとリーズナブルな料金設定になっています。

マレス

新しいダイビングスタイルを提案するmaresHORIZON

水中世界を野生の生き物たちと共有できるmaresHORIZON

水中世界を野生の生き物たちと共有できるmaresHORIZON

HORIZONで潜るメリットをおさらい

これまでのダイビングの常識を覆す画期的なユニットmaresHORIZONですが、その魅力をおさらいしておきましょう。
圧縮ガスを充填したシリンダーからレギュレータを通してガスを吸って排気する“オープンエアサーキット”の一般的なユニットとは異なり、HORIZONはエンリッチドエアナイトロックスを充填したシリンダーからSCR(Semi Closed Rebreather 半閉鎖式リブリーザー)で呼吸をします。吐いたガスを外に吐き出すのではなく、循環させて使用するので、エアの消費量を気にすることなく利用できるというわけです。
mares HORIZONは、水中世界との共生を目指し、“誰でも安全、快適に”使えることを目標に開発されていますが、主なメリットは以下のように魅力的なものばかりです。

○静か
○排気の泡がほとんど出ない
○ダイブタイムの延長
○軽量
○喉が渇かない、渇きづらい

などなどがあります。いかがでしょう? 体験したいと思いませんか?

マレス

HORIZONのユニットはこうなっている!

mares HORIZONのユニット全体

mares HORIZONのユニット全体

コンパクトで軽量。シンプルな操作やメンテナンスは理想的!

リブリーザーというと、テクニカルダイビングに使われるユニットで、何やら器材がいろいろあって組み立てもメンテナンスも面倒くさそう……と思われている方も少なくないかもしれません。
でも、maresHORIZONの実物を見せてもらうとビックリ! ものすごくシンプルで組み立てやすく、メンテナンスもラクチンそう。何よりもコンパクトで、軽量です。
実際のダイビングはサイドマウントスタイルで潜るので両側に5.7ℓのシリンダーを2本つけるか、片側に10ℓシリンダーをつけるぐらい。それで一日3ダイブぐらいエアは持つというのですから、エコですよね。
重要な部分を紹介しておきます。

mares HORIZONのコンパクトなユニットと、バックマウントタイプのBCDがセットになっている

mares HORIZONのコンパクトなユニットと、バックマウントタイプのBCDがセットになっている

HORIZONのユニットを正面から。シリンダーからのガスはダブルホースの左右両方から常に流れる状態なので、オープンエアサーキットのレギュレータ呼吸よりもより自然な呼吸ができる

HORIZONのユニットを正面から。シリンダーからのガスはダブルホースの左右両方から常に流れる状態なので、オープンエアサーキットのレギュレータ呼吸よりもより自然な呼吸ができる

背中のユニットを開けたところ。スクラバーが2つあり、二酸化炭素を二段階で吸収できるようになっている

背中のユニットを開けたところ。スクラバーが2つあり、二酸化炭素を二段階で吸収できるようになっている

付属のコントローラー。一般的なダイブコンピュータの性能にプラスして、ユニット内の酸素量、フィルターの残り時間等も表示する“高機能ダイブコンピュータ”のようなもの

付属のコントローラー。一般的なダイブコンピュータの性能にプラスして、ユニット内の酸素量、フィルターの残り時間等も表示する“高機能ダイブコンピュータ”のようなもの

使用するガスはエンリッチドエアナイトロックス(EAN)。ダイブタイムも延びる

シリンダーは、サイドマウントで装着。1本、または2本でも装着可能

シリンダーは、サイドマウントで装着。1本、または2本でも装着可能

HORIZONはサイドマウントでのダイビングスタイルとなります。 吐いたガスはユニット内のスクラバーで二酸化炭素を吸収して再利用されます。
さらに、ナイトロックスを使用しますので、通常の空気を使うより長くダイビングが楽しめるのもメリットです。※通常のダイビングの3~8倍のダイブタイム
じっくり水中撮影をしたいというフォト派や生物や魚を観察したいフィッシュウオッチング派、そしていつもガス消費の多さが気になっている方にもとてもオススメというわけです。

マレス

mares HORIZON講習を開催しているダイビングスクール

従来のオープンエアサーキットシステムとは異なるため、簡単なセッティング、容易な装着が可能なHORIZONとはいえ、器材の知識や使用方法、HORIZONを使った海洋実習といった講習「SSI HORIZON SCR DIVERコース」を受講する必要があります。前回の特集でも紹介しましたが、ほかにエンリッチドエアナイトロックス40%スペシャルティ、ディープダイビングスペシャルティを修了していること、24ダイブ以上のダイビングログ記録が必要です。SSI以外の指導団体のカードホルダーの方もこれらを満たしていれば、SSI HORIZON SCR DIVERコースを実施しているHORIZONディーラー(下記)で受講できます。
欲しい! 買いたい!! 体験したい……の前にまずHORIZONディーラであるダイビングスクールを訪ねてみてくださいね。3月中旬現在のスクールは以下の6軒。すぐに連絡してHORIZONを体験してください!

マレス

次回はHORIZON講習のことを取り上げる予定です。お楽しみに♪