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『マリンダイビング』創刊記念YEAR特集第5弾
『マリンダイビング』の50年と
ダイバーズウオッチの50年

『マリンダイビング』創刊記念YEAR特集第5弾 『マリンダイビング』50年とダイバーズウオッチの50年

1969年に日本で初めて発行されたスクーバダイビング専門誌『マリンダイビング』。
2018年は創刊50年記念YEARとして、『マリンダイビング』とともに歩んだ
ダイビングにまつわるモノ、エリア、生き物などとの50年間をフィーチャーしていきたい。
第5弾となる今回は、安全なダイビングを見守ってきたダイバーズウオッチのお話。

■構成・文/後藤ゆかり(マリンダイビング副編集長)

ダイバーズウオッチとは?

水中でも正確に時を刻むダイバーズウオッチ

現在はダイブコンピュータに時計機能も付いているため、ダイバーズウオッチを携行せずにダイビングをする人が増えているけれど、ダイブコンピュータの突然のバッテリー切れや故障に備えて1台は持っていたいダイバーズウオッチ。

そもそもダイバーズウオッチというのは何だろう?

言葉のとおりダイビングをするダイバーのための腕時計。
ダイビングをするということは水中で使用するわけで、生活防水レベルではなく、どんな深度においても時計機能が損なわれないように「水密性」「気密性」を備えていなければならない。
国際的にISO6425を、日本ではJISB7023において、防水性能に加えて耐磁性、耐衝撃性等についての規定が定められており、それをクリアしているものこそが本格的なダイバーズウオッチといえる。

本誌創刊号の新製品紹介コーナー。 左ページの2段目に、「女性用水中時計 セイコー レディスポーツ」が掲載されている

ダイバーズウオッチはなくてはならない存在

創刊時の日本のダイビングシーンにおいて、残圧計は存在しておらず(存在していても日本ではほとんど普及しておらず)、水深計は別につけるのが普通で逆に持たない人も多く、ダイバーはダイバーズウオッチで知らせてくれる時間のみが安全に潜るための命綱であった。
ダイビングを開始したら何分間いられるか。それを超えると減圧症のリスクが増えるのとともに、残圧もなくなる可能性が出てくるため、時間を確認することがとても大事だった。
つまりダイバーズウオッチは当時のダイバーにとっては、今以上に絶対になくてはならない存在だったのだ。

水中撮影のためにエントリーしようとする舘石昭の腕には、しっかりとダイバーズウオッチがはめられている(1970年頃撮影)

回転ベゼルで潜水時間を計測

ダイバーズウオッチに今やなくてはならない機能になっているのが、「回転ベゼル」。
エントリーした時間にベゼルを回転させて合わせ、そこから何分経過したかがわかるようになっているのだ。
正真正銘のアナログではあるけれど、ダイバーにとってはこれがないと困る機能だった。
反時計回りにしか回せないようになっているのだが、時計回りにも反時計回りにもできる“まがいもの”があったりもした。

本誌創刊号に掲載されていたロレックスのダイバーズウオッチ(まさかの横置きで掲載。現代は考えられないレイアウトである)。
その当時は「ロレックス杯」というフィンスイミングの大会があり、優勝するとロレックスのダイバーズウオッチがもらえた。『マリンダイビング』でも活躍している水中カメラマン、北川暢男も1980年代、学生時代に優勝して、獲得している

300m防水のダイバーズウオッチ

ダイバーズウオッチの性能を知るときに一番のアイコンとなるのが防水、水圧機能。
ダイバーズウオッチの歴史でいえば1953年、91.45m防水に成功したブランパンの「フィフティファゾムス」、100m防水に成功したロレックス「サブマリーナー」、1957年には200m防水になったオメガ「シーマスター300」やブライトリング「スーパーオーシャン」といった具合に、開発が進むにつれ、水深何mまで安全に使えるかを競うようにつくってきた。
国産初のダイバーズウオッチを生み出したのはセイコー。1965年にメカニカル自動巻の150m防水ダイバーズが誕生し、『マリンダイビング』が創刊する前年の1968年には世界最高水準、メカニカルハイビート300m防水ダイバーズを発売している。

本誌創刊号のセイコーの広告にはその300m防水のセイコーダイバーズウオッチ(「25石」とある)が紹介されている。
それを見ると……
・夜光付きの文字盤
・時間の経過がわかる回転リング(回転ベゼルのこと)
・特殊強化ガラス:ハードレックス
など、潜水のために完全装備されたダイバーズウオッチとのこと。

ちなみに、ダイバーズウオッチの堅牢性は山登りにも通用、1970年には植村直己、松浦輝夫両氏のエベレスト登頂にもダイバーズウオッチが使用されたのだった。

本誌創刊号に掲載されていたセイコーの300m防水ダイバーズウオッチ 本誌5号(1970年)からは2002年末までほぼ毎号、表4(裏表紙)にセイコーのダイバーズウオッチが紹介されていた

『マリンダイビング』のダイバーズウオッチ特集

テストレポートが最初の特集

『マリンダイビング』ではたびたびダイバーズウオッチ特集を組んできたが、最初に企画が掲載されたのは、1971年、創刊9号でのこと。
商品を紹介するのではなく、
・暗い中での夜光の見え方 ・真上2mのところに5ワットの電球を点灯した場合の指針と文字の見え方
・距離3m、20ワットの間接灯を置いた場合の見え方
・リュウズの形状と方式から見た性能
・回転ベゼルの形状と使いやすさ
・ガラス
・内蔵された特殊装置
などについて、14機種をテスト、比較したもののレポートとなっていて、おもしろい。

その当時のメーカーは
セイコー、シチズン、オメガ、ドクサ、ロレックス、オリエント、テクノス、チソット(掲載順、順不同) であった。

ちなみに内蔵機能の中には、深度計付きのものもあった。

『マリンダイビング』で初めてダイバーズウオッチ特集を掲載したときの記事。「なんでも相談室」連載で行われた(1971年第9号)

第9号の裏表紙に掲載されていたセイコーの300m防水のダイバーズウオッチ

1975年、セイコーが世界初飽和潜水仕様
600m防水ダイバーズウオッチを発売

伝説のダイバーズプロフェッショナル600

1975年は、ダイバーズウオッチのエポックメイキング的な年となった。
というのも、セイコーから世界で初めての飽和潜水仕様600m防水の「セイコーダイバーズウオッチ プロフェッショナル600」が発売されたのだ。

本誌でも同年8月号(通巻33号)でレポート。
堅牢そのものの「プロフェッショナル600」の優れた点を紹介している。
当時のウオッチ部デザインチームの田中太郎さんと、諏訪精工舎外装部設計課に当時いた徳永幾男さんが商品企画に当たって「何が何でも世界最高の性能を持つダイバーウオッチを造りたいと考えていた。そのため現時点で技術的に可能なことはすべて盛り込んだ」と話しているように、世界をあっと驚かせる商品であった。
そして今なお語り継がれる逸品となっていったのだった。

新製品トピックスとして掲載された「プロフェッショナル600」。
見た目からわかる堅牢さと、チタン製ケースならではの軽量さ、航空機にも使用される材料を使っていて見た目よりも軽いことなどが触れられている

1975年8月号の裏表紙に掲載された新製品「セイコーダイバーズウオッチ プロフェッショナル600」の広告。“深海の黒い顔”のキャッチフレーズも十分にインパクトがあるが、二重構造の外胴プロテクター、蛇腹式ポリウレタンバンドなど、外装のみで20件の特許を取得。89,000円は当時の価格としてはかなり高価だったはずだが、それでも良心的なお値段。

1978年、世界初のクオーツ式600m飽和潜水仕様が登場

その3年後、セイコーから「深海のクオーツ」というキャッチフレーズとともに今度はクオーツ式ムーブメントを搭載した600m飽和潜水仕様のダイバーズウオッチが登場する。
輝きと華を添えるために金色に近い色調をあしらったこの本格的ダイバーズウオッチは多くのダイバーの間で人気となった。
この機種は同年、植村直己さんが北極探検に使用したり、1983年に海洋科学技術センター(現在のJAMSTEC)が潜水調査船「しんかい2000」で水深1,062mまで潜航した際に使われるなど、耐圧性能の高さは抜群だった。
1986年にはさらに1000m防水、セラミック外胴プロテクターを使用した飽和潜水仕様のダイバーズプロフェッショナルが誕生し、世界をあっと言わせた。このモデルは水中写真家・舘石昭の愛用品にもなり、亡くなるまで手元にあったものだ。

1978年6月号に登場した「深海のクオーツ」ことセイコーダイバーズプロフェッショナル600」の広告

『マリンダイビング』1984年1月号でも「SEIKO クオーツダイバープロフェッショナル600」を取り上げている

ダイバーズウオッチブーム到来

1980年代、市民権を得たダイバーズウオッチ

景気が上向いてきてレジャーにも力を入れだす人が増えてきた1980年代。
ダイビングはもちろん、サーフィンやウインドサーフィンなどのマリンアクティビティも盛んになってきたこともあって、防水、防塵、堅牢なダイバーズウオッチが一躍脚光を浴びることとなった。
本格的なものというよりはタウンユースもできるオシャレなものが人気を博し、30m防水、50m防水と言いながら水圧がかかることを予想していないようなものも実際巷にあふれかえった。
だが、ダイバーならやっぱり本格的なものを!ということで、本誌でもダイバーズウオッチ特集を組んだ。

裏表紙に登場しているセイコーのダイバーズウオッチを見ていると、やっぱりその時代を反映して、カラフルで小型の、オシャレなものが増えてきていた。

「ガードの堅さはヘビー級。」というコピーとともに、 タウンユースにも十分使えるダイバーズウオッチの数々が登場した1981年8月号(通巻102号)のセイコーの広告

世界初のアラームクロノグラフを搭載したダイバーズウオッチが1983年、登場

世界的に有名な工業デザイナーで、アルファロメオやサーブなどヨーロッパの有名カーなどを多数デザインしてきたジウジアーロが、ダイバーズウオッチをデザイン。1986年11月号で“新しい波”ということで登場。このシリーズは途中お休みしている時期もあったが、今も新商品が誕生している

Gショックシリーズなど多様なダイバーズが登場した1990年代

その後もタウンユースのダイバーズウオッチは市民権を得、コストも安く、遊び心のあるものや(スウォッチが流行った)、カシオのGショックのようにアウトドア仕様の堅牢なタイプながらも軽くて使いやすいものなどがダイバーの間でも流行ってきたのが1990年代。
たぶんダイバーズウオッチを何台も持っている人が多かったのではないだろうか。

デジタルの波がダイバーズウオッチにも

ダイブコンピュータに対抗!?

1990年代といえば、ダイブコンピュータが進化して小型化したり、ウオッチタイプが出始めたりした時期。
ダイバーズウオッチもダイブコンピュータに負けじとデジタル化が進んだ。
カシオの「ログメモリー」やセイコーの「スキューバマスター」など、ダイブテーブル、ログデータ機能などが搭載されたダイバーズウオッチが登場。
結局のところダイブコンピュータにとって代わることとなったが、まだダイブコンピュータが信じられないベテランダイバーや、その必要性を感じていなかったダイバーの方々にデジタルのダイバーズウオッチが受け入れられ、ちょっとしたブームになっていたのだった。

1990年に登場した世界初のダイブコンピュータウオッチ、セイコー「スキューバマスター」の裏表紙の広告。水深、潜水時間とUSネイビーに準じた無減圧潜水情報を計算、表示。こちらも多くのダイバーに愛された

世界初ナイトロックスOKのダイブコンピュータがセイコーから発売

ダイブコンピュータの勢いはとどまることを知らず・・・という時代に突入した2000年、 セイコーからナイトロックスマルチレベル潜水仕様のダイブコンピュータ「セイコー プロスペックス マリンマスター ダイビングコンピュータ」が誕生した。
今では搭載されているのが当たり前だが、世界で初めてのナイトロックスマルチレベル潜水仕様で、体内窒素や酸素限界をバーグラフで表示したり、ログ機能を搭載していたり、ELバックライト付きだったりと本格的なダイブコンピュータとして、利用しているダイバーも多かった。

コンパクトなのに多彩な機能を持つダイブコンピュータまで登場させてしまったセイコー 2000年代の『マリンダイビング』裏表紙の広告より

電池交換不要のダイバーズウオッチも登場

時代のニーズに応じて登場したエコなウオッチ

少し時代は戻って、1992年にセイコーが満を持して発表したのが、世界初、電池交換不要のAGS(Automatic Generating System)内蔵の「ダイバースキューバ SBBW003」だ。
マンタを連想させるかわいらしいデザイン、蓄光システム、機能性、装着性が非常によく、 何よりも世界的なエコロジー運動が広がる時代にマッチ。理想的なダイバーズウオッチとして受け入れられたのだった。

こちらも1992年の発売後から『マリンダイビング』の裏表紙に出ていた「ダイバースキューバ SBBW003」。すみません、記事も書いた記憶はありありなのですが、ついつい取り出しやすい広告を取り上げさせていただきました!

そして現代へ

ダイバーズウオッチの発展がウオッチの発展につながる

腕時計は過去から現在に至るまで常に新しいものが生み出され、コレクションするマニアも多い。
でも、腕時計の最高峰はどこのメーカーの人に尋ねてもダイバーズウオッチという返事が返ってくるほど、ダイバーズウオッチの発展こそが腕時計の発展につながるといわれる。
それはどんな気温にも耐えうる堅牢性、砂漠の細かい砂粒すらもシャットアウトする防塵性、気密性、どんな嵐や水圧にも耐え得る防水性、水密性など、ありとあらゆる技術を詰め込まなければダイバーズウオッチはできないからだ。

バッテリーをいかに持たせるかとか、リストバンドの肌触りや形状、耐久性、タウンユースにも使えるようにオシャレにするための、小型化や軽量化、それにデザイン性……。
ほとんどの機種がそのすべてをクリアしていながら、毎年何かしら新しいものが生まれるところが頼もしい。

携帯電話で時刻が見られるからと腕時計をしない人も増えているというが、さまざまな場所で役立つし、ダイビングの場合は前述したように、ダイブコンピュータのバックアップという点でも常に携行しておきたいもの。安全性で選ぶのもありなのだ。

注目製品をこれからも紹介していきます!

ということで50年にわたってダイバーズウオッチは常に『マリンダイビング』とともにあったような感じだが、これからも必要なダイビング器材として、紹介していくはず。ぜひお楽しみに~♪

本誌2016年12月号(通巻617号)で掲載した、セイコーがダイビング指導団体PADIとコラボした商品。あっという間に品切れになったとか・・・

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