ジャケ買いワインソムリエ・スージー&メイの
海を感じるワインSelection
Vol.1
コバルトブルーのボトルに込められた、
人魚が織りなすワイン
「ラ・シレーナ」
皆さん、初めまして! 今回よりワインについてのコラムを執筆させていただきます“ジャケ買いワインソムリエ”のスージーです。
日本橋茅場町にて“ジャケ買いワインのセレクトショップ Wine and Weekend”を経営しております。2016年にオープンし、早5年目の小さなワインショップです。
ワインの「ジャケ買い」とは聞きなれない方も多いと思いますが、本やCDのようにジャケット(ラベル)のデザインが気に入って買ってみることを言います。当店ではデザインがユニークなものを揃え、「ハードルが高い」「難しそう」と思われがちなワインを初心者の方でも目で見て楽しくお選びいただくことができます。もちろん、見た目が良いからといって味も美味しくなくてはNG! さらにオーガニック栽培等により身体と自然環境に優しい、という三拍子そろったものをセレクト。ワインの新しい楽しみ方を提案しています。
これから当店スタッフであり、外資系航空会社CA時代の元同僚・メイとリレー形式でお届け。毎月「海」「南の島」「旅」…など、マリンダイビング誌にふさわしい切り口で、ストーリーあるジャケ買いワインをご紹介していきます。
第1回目は・・・ワイン好きの方なら彼女の名前を一度は耳にしたことがあるはず。ダイビングが趣味の女性ワインメーカーであり、著名なワイン評論家のロバート・パーカーJr.をして「ワイン界のファーストレディー」とまで言わしめた名醸造家ハイジ・バレットのプライベート・レーベルのワインをご紹介いたします。
ハイジ・バレット本人
(写真引用:La Sirena Winery HPより)
カリフォルニア・ナパヴァレー産ワイン
「LA SIRENA」(ラ・シレーナ)
「ラ・シレーナ」、その名もイタリア語とスペイン語で「人魚」。槍を持ち楽しそうに泳いでいる人魚が描かれています。
ロゼワインも含め数種類ラインナップ。
(上記3点写真引用:La Sirena Winery Facebookページより)
今から6年前、日本への輸入会社の方がご自身もダイビングをされることから「何本潜っているの?」とハイジに聞いたところ、「800本」と答えたそう。かなりのダイビング好きですね!
「世界中の海を潜るのが夢」という彼女が初めてダイビングに出会ったのは、ワインコンサルタントとして独立後最初のクライアント「ダラ・ヴァレ」ワイナリーのオーナー、グスタフ・ダラ・ヴァレに勧められたことから。彼は老舗ダイビング器材のメーカー「SCUBAPRO」の創設者でもあります。SCUBAPROを立ち上げ、会社は友人に譲ると、その後カリフォルニア州の銘醸地ナパ・ヴァレーにあるオーパス・ワン(あの高級ワイン!)の畑の近接に家を建てました。多くのビジネス成功者がそうであるように、彼も余生はのんびりとワインを造って・・・との思いで移住したと言われています。
一方、すでにワインメーカーとしての手腕の高さが知れ渡っていたハイジはグスタフに子供が生まれた頃にスカウトされ、彼の元でワイン造りに携わります。そこで彼女が生み出したワインは新ブランド「Maya」としてリリース。このブランド名は、グスタフと日本人妻・直子さんの子供マヤちゃんから名付けられました。
現在グスタフは亡くなりましたが、その魂はハイジと娘のマヤちゃんへ。マヤちゃんも素敵な大人の女性となり、父の遺したワイナリー「ダラ・ヴァレ」を現在引き継いでいます。
醸造家としての実力を表す伝説、
驚きのオークション価格!
ハイジが「ダラ・ヴァレ」ワイナリーに参画した80年代後半、「スクリーミング・イーグル」というワインのプロジェクトを手がけることになります。
(写真引用:Screaming Eagle HPより)
なんとこのワイン、瞬く間に大人気となりスーパーハイクラスワインの仲間入りをすることに! 2000年のナパヴァレーワインのオークションにおいて、当時1本のワインについた最高価格を樹立しました。1992年産のスクリーミング・イーグルは、6リットル瓶で50万ドル(1ドル108円計算で5400万円)に・・・・!!!
ラ・シレーナはこんなワイン
そんなスター醸造家のハイジは、1994年にオリジナルブランドの「ラ・シレーナ」を設立。“ジャケ買い”ワインソムリエとしてお伝えしたい、特徴的なラベルデザインにはこんなストーリーが。
ある時、夫のボー(映画「ボトル・ドリーム」の題材となった有名ワイナリー「シャトー・モンテレーナ」のオーナー醸造家)と共にメキシコの“ロテリア”と呼ばれるトランプを見ていると、その中の一枚に「ラ・シレーナ」がありました。
(写真引用:La Sirena Winery HPより)
ダイビングと海をこよなく愛する2人にはそのカードが胸に刺さります。ワインが持つ芸術性と同様、まるで魔法がかかったような美しい人魚・・・
ワインへの情熱を表現するのに理想的なシンボルがそこにあったのです。
リリース当初94年と95年産のワインにのみ使用されたデザイン。今やレア・コレクターズアイテム!?(写真引用:La Sirena Winery Facebookページより)
唯一の白ワイン「モスカート・アズール」をイチオシ!
「ラ・シレーナ」のブランドでは数種類のワインをリリースしていますが、その中で唯一の白ワインが「モスカート・アズール」です。
(写真引用:La Sirena Winery HPより)
何よりも目を引くのは、ボトルガラスが青いこと。ワイン名にある「アズール」は青を意味し、コバルトブルーのボトルは海をイメージしています。
ブドウはカリフォルニアにしては比較的珍しく、マスカット・カネリ種(ギリシャ原産)を使用。このブドウは通常、甘口タイプのワインによく使われます。しかしながらハイジのチャレンジ精神は止まるところを知らず、他には無い“辛口(ドライ)”タイプを造ろうと決意。
私自身、そのブドウ品種への甘いという先入観から、初めて試飲したときに面食らったことを今でも覚えています。「甘口のデザートワインね?」と思いながら口にしたワインが想像を遥かに超えてすっとした上品な辛口だったときの衝撃たるや・・・
誤解を恐れずに表現するなら、“いつもの慣れ親しんでいるコカ・コーラを想像して飲んだら、腕によりをかけて作られた上質な麦茶だった”というような印象!
良い意味で主張しすぎない存在感は、出汁を使うような和食にもそっと寄り添います。例えばお寿司や、海老しんじょ、天ぷらなどにもぜひ合わせていただきたいマリアージュです。またほんのりとトロピカルな香りもありますので、エスニック料理にも良いですね。
春から夏にかけて飲みたくなるワイン
ワイナリーも推奨しているのは、春・夏の暖かい季節に飲むこと。
コロナ禍で家飲みが増えてきています。マスカット・カネリ種の出身地、ギリシャで地中海の風に吹かれつつ飲むシーンをイメージしながらお楽しみいただきたい、名実共に素晴らしいジャケ買いワインです。
次回は当店スタッフのメイ・ソムリエにバトンタッチ! どんなワインを紹介してくれるのでしょうか、どうぞお楽しみに!
「ラ ・シレーナ モスカート・アズール」は、当店Wine and Weekendオンラインショップでもご購入いただけます。
『ジャケ買いワインのセレクトショップWine and Weekend』
東京都中央区日本橋蛎殻町1-6-9-103
TEL:03-6661-1845
E-mail:info@wandw.tv
⇒オンラインショップはこちら
【スージー・岩本:プロフィール】
岩本すずか
JSA認定ソムリエ。
大手外資系航空会社CA退職後、日本橋人形町にワインショップWine and Weekendをオープン(現在はお隣茅場町に移転)。「暮らしに溶け込むようにワインを楽しむ」というコンセプトの元、ライフスタイル系ワイン講座やイベント等を開催。企業向け研修やワークショップも行なう。
好きなワインはフランス・アルザス地方のもの。