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感動の一瞬はこうして生まれた…… フォト派ダイバー必見!
水中写真家 作品探訪

いつも何かの被写体を通して
その奥にある自然、人間の意識、宇宙のからくり、
といったものに興味を抱いてきました

高砂淳二 Junji Takasago

高砂淳二

近年、地球温暖化で、世界のサンゴがどんどん死滅してしまっている中、世界遺産に決まった西表島で見た、ピッカピカのサンゴを見て、本当に嬉しかったので撮りました。元気なサンゴが一面に広がっていたので、画面いっぱいにサンゴを入れて、画面の外もどこまでもサンゴだらけだったよ、という状況を表現しました。

心にスッと沁み込む偉大な自然写真。
高砂淳二さんの視点を探る!

生き物に対しては愛情をもって接したいし
その時そこで感じたことをそのまま写真にしたいと思っている

マリンダイビングWeb編集部(以下、編)-高砂さんの作品には自然の偉大さ、素晴らしさとともに、愛とやさしさがあふれているように思います。被写体とまず向き合った時に、どのようなことを考えて、撮影に臨まれているのですか?

高砂淳二さん(以下、高砂)-僕の場合、水中でも陸上でもそうですが、その海や場所に対して、「入らせてもらいます。」という気持ちをちゃんと持つようにしています。もちろん生き物に対しても、愛情をもって接しようと意識しています。そして、その時そこで感じたことをそのまま写真にしたいとも思っています。例えば、潜ってみたらミノカサゴがいて、ヒラヒラがとても美しいと感じたら、その美しさがよく表れるように写真を撮る。海のブルーや差し込む光が気持ちよかったら、その気持ちよさが伝わるように撮る、といった具合です。そこにはその気持ちを表現するためにテクニックや知識も必要になってきます。
以前はフィルムでしたから、当然撮ったものはその場では見られない。まだプロになって何年目かのころ、水中に潜って自然光のままの海中が綺麗だと思ったので、ある程度深いところのものも、そのまま自然光で撮影しました。しかしご存じのように、人の目は青い世界にずっといると目が慣れてくるもので、青被りを抑えた状態で見えるようになってきます。そのことを忘れて、なんでもかんでもノーストロボで撮影していたら、水中で感じていた色よりもはるかに青被りした写真だけになってしまいました。大失敗です。
一方、うまくいった例だと、イルカの群れに混じって、1頭だけ真っ白なイルカがいた。うわあ可愛いな、と思い、とにかく「可愛いよ~」と愛情いっぱいで見とれていた。すると群れの中でその白いイルカだけが僕のところに来て、こっちを見つめている。その時ちょうど小さいヤシの実が目の前に浮いていたので、それを取ってイルカの前に放ってみたら、イルカはよろこんでそれを鼻で押して持ってきてくれたのです。そしてそれをまた放る。それを持ってきてくれる、というキャッチボールが始まりました。これなどは、「撮ってやろう」ではなく、こっちも歓びいっぱいだったから、遊びの関係性が出来上がったんだと思います。

雑誌のカメラマンだった頃と
現在の撮影地決定スタイルの違いは?

-高砂さんはダイビング雑誌『Diving World』の水中カメラマンとしてプロとしての最初のステップを踏み出されましたが、雑誌のカメラマンは「撮らなくてはいけない」ことも多かったかと(笑)。でも、フリーランスになられて、どう変わりましたか?

高砂-まず、雑誌のカメラマンだった時にも、もちろん必要なカットは最低限撮りますが、それでも結構、楽しんで撮影に夢中になることが多かったです。何か惹かれる被写体がいて、それに夢中になってそれをフィルム何本も撮ってしまったとしても、そんなときのほうがいい写真が撮れて、結果的に最初の見開きにドーンと使ってもらえたりして、いい特集になったりしました。やはり、やらされている、という状態よりも、夢中に楽しんでいる時の方がいいのかもしれないですね。
フリーになってからは、雑誌を見ていてたまたま目にして行きたくなった場所に行くとか、誰かがある場所や生き物のことをたまたま話してくれたりして、行こう、と決めたりしています。テレビや、今はネットも大きいですね。やっぱり、気持ちが惹かれるものを撮りたいので、基本的に、気持ちが惹かれる場所や生き物、風景などにアンテナが立っているのだと思います。

撮りたい被写体から撮影機材が決まる

-高砂さんから「こういう写真が撮りたいからこのレンズ・このカメラを使う」といった話をたびたび伺うのですが、高砂さんにとって、撮影機材とはどんな存在ですか?

高砂-僕はカメラオタクではないので、こんな写真が撮りたいからこの機材を使う、という順番になります。カメラやレンズ等は、それを可能にしてくれる、絵描きでいえば絵筆のようなものだと思います。もう36年も写真の仕事をしていますが、カメラを向ける相手が少しずつ変わっていきます。僕の内面が変化していくに従って、興味の先も変化しているのです。写真を撮るときには当然、被写体やその背景、その生き物のことなどをよく観察します。そうすることで少しずつそれに対する僕の自然観も変わってきて、その後少しずつ、その被写体の奥に見えてくるものに興味が移っていくのです。僕の場合、特定の生き物、というよりは、いつも何かの被写体を通してその奥にある自然、人間の意識、宇宙のからくり、といったものに常に興味を抱いてきました。その自分の見方が少しずつ進化しているのかもしれません。カメラ機材はただの機械なのですが、いつもカメラを通して自然を見続けているうちに、カメラが僕をもっと奥の方まで連れて行ってくれる、もっと興味深い世界を見せてくれる、そんな不思議な相棒だと思っています。ハウジングやライト、ストロボなどもカメラ同様、そんな僕の見た世界を写真で表現するための絵筆であり、相棒です。

現代人は自然への愛情を取り戻し、
感謝や尊厳を持ってつき合っていく気持ちを持つ。
ダイバーならできるはず。

-高砂さんは自然保護にも多大な関心を寄せ、OWS副代表理事をされていますが、最近気になることはありますか? 今後どうしていきたいと思っていらっしゃいますか?
※OWS=東京都認証 特定非営利活動法人で、OWSはThe Oceanic Wildlife Societyの略

高砂-長いこと海や自然を見てきたので、その変化も目の当たりにしてきました。はじめのうちは「凄い! 楽しい! 気持ちいい!」で無邪気に撮っていましたが、やはりその変化を見てからは、伝えることも必要だと思うようになりました。最近は、ご存じのようにかなりプラスチックゴミ問題、地球温暖化問題などが、酷い状態になっていますので、ただ伝えるだけでなく、自分はこんな工夫をしているとか、具体的なアイディアも紹介するようにもしています。
それから、例えばプラスチックというある意味すごく便利なものを作り出したのも人間だし、あらゆる便利な機械を作り出したのも人間。これらの発明物に問題があることを知ってしまったこれからは、次の世界をイメージしてまた新しい世界を作り出すつもりで頑張れば、クリエーターである人間は、これまでのように必ず作り出せると思います。それを信じて、積極的に生活の仕方を変えたりしていきたいです。
それと、地球や生き物はただの資源ではありません。資源と捉えてただ残量を計算するだけでなく、その大元となる、世界の先住民がやってきたように、自然への愛情を取り戻し、まるで親や友人と接するように、感謝や尊重をもって大事に大事につき合っていく気持ちをもつことも、同時に必要だと思います。海と身近に接しているダイバーなら可能だと思います。

-素敵なお話をありがとうございました。

高砂淳二
Junji Takasago

PROFILE
自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
熱帯から極地まで世界中の国々を訪れ、海中、生き物、虹、風景、星空など、地球全体をフィールドに、自然の繋がり、水や生命の循環、人と自然の関わり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。
著書は、「PLANET of WATER」(National Geographic),「night rainbow」「LIGHT on LIFE」「free」「夜の虹の向こうへ」(小学館)、「Dear Earth」(Pie International),「光と虹と神話」(山と渓谷社)ほか多数。ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店ほかで写真展開催。
テレビやラジオ、雑誌など、各メディアや講演会などで、自然のこと、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを幅広く伝え続けている。みやぎ絆大使。

高砂淳二

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