首都圏からのアクセスも◎
千葉・房総半島ダイビングエリア9
ー変わりゆくもの、変わらないものー

首都圏からのアクセス抜群の千葉県・房総半島は、ダイビングエリアが9つもあるダイビングパラダイス。今回は千葉ダイビングサービス協力会の現地ガイドさんから「変わりゆくもの、変わらないもの」をテーマに、個性的な各エリアの推しスポットと画像・動画をご紹介いただきました。2025年は房総半島に通ってツウになりませんか?
※2025年6月現在の情報です
~千葉・房総半島ダイビングエリアMAP~

伊戸
「サメの壁に囲まれる!」という超エキサイティングなシャークダイブが楽しめる伊戸。ドチザメの超ド級な群れに加え、個性豊かなユニークな生き物たちにも出会える魅力あふれる海です。
《伊戸ダイビングサービスBOMMIE》塩田 寛さんより
■「沖前根」のアントクメという海藻
「沖前根」2024年と2025年の比較(撮影/スタッフ 松井 健・塩田 寛)
ここ数年「沖前根」では岩肌が露出していましたが、この春、アントクメという海藻がびっしりと生え、根を覆いつくす勢いです。海藻は小魚たちや幼少期のドチザメにとって、外敵から身を守るための格好の隠れ家。海藻の再生は大きな意味のある変化です。絶滅の危機にある館山のアワビやイセエビ、サザエなどの復活にも期待が寄せられています。
■「沖前根」のタカベ、マアジ、イサキ、キンギョハナダイの幼魚たち
海藻に群れる小魚たち(撮影/スタッフ 松井 健)
海藻がほとんどなかった頃は、小魚の群れも見られませんでした。しかし今では動画のように海藻がびっしりと茂り、魚たちであふれかえっています。そしてそれを狙う、大型回遊魚たちにも期待できます♪
伊戸で潜るなら
伊戸ダイビングサービスBOMMIE(ボミー)
ドチザメのシャークスクランブルに、アカエイ、クエ、コブダイなど人懐こくてユニークな仲間たちが勢ぞろい。冬季に見られていた“水中バードウオッチング”も、いまなおサプライズで登場中。5月末現在メスのドチザメのお腹には赤ちゃんが! 少しずつ膨らんできていて、予想では8月頃に出産です。それまでは妊婦ザメのお腹をそっと見守ってあげてくださいね。
西川名
ダイナミックで独特な地形が広がる海には、国内でも珍しいヒゲダイの群れや、圧倒的存在感のクエなどが登場し、大型魚のパラダイスとなっています。近年はアオウミガメも仲間入りしました!
《西川名ダイビングサービス》寺本 拓海さんより
■「Aポイント」サメ穴のイサキの群れ

イサキの大群(撮影/寺本 拓海)
毎年、春頃から数を増やし始めるイサキたち。やがて数十万匹の大群となり、まるで壁のように目の前に立ちはだかります。これからがまさにピークの時期! 今後さらに数が増えていくことが期待されます。
■「Cポイント」V字谷のクエ

巨大なクエ(撮影/寺本 拓海)
西川名の名所「Cポイント」V字谷では、独特な地形から良質で栄養豊富な海水が流れ込むため、多彩な大型魚類が生息しています。その代表格が1.3mもある迫力満点のクエで、西川名の長のような存在です。変わることなく、一年中このクエと出会うことができます。
西川名で潜るなら
西川名ダイビングサービス
黒潮の影響をダイレクトに受けて回遊魚が回ってくるダイナミックなボートスポットと、ビギナーでも楽しめる穏やかな水中景観のビーチスポット。いいとこ取りができる西川名の海を経験豊富なガイドがご案内します。県内でも数少ないダイバー専用に設計されたダイビングボートはとっても快適! ダイバー想いのオシャレな施設で、リゾート気分も味わえます。
坂田
風光明媚で静かな入り江に面した坂田。内湾らしい穏やかさと、外洋の潮通しの良さを併せ持つ海は、かのジャック・マイヨール氏も魅了されたほど。奥深く、多彩な表情を見せてくれます。
《シークロップダイビングスクール》成田 謙介さんより
■「新漁礁 ウミエラ畑」のヤナギウミエラ

群生するヤナギウミエラが満開に咲いている様子(撮影/成田 謙介)
ヤナギウミエラが群生する一帯を「ウミエラ畑」と呼んでいます。砂に潜る習性のあるウミエラは、砂から出ていたり一斉に潜っていたりと日によってさまざま。この日は運が良く、見渡す限りのウミエラが砂から出ていて、しかもポリプは全開! 文句なしの満開です。毎日潜っていてもなかなか見られない光景に、大変感動した瞬間でした。
■「ビーチ」のオハグロベラ

オハグロベラのオスが睨み合いの闘争中!(撮影/成田 謙介)
6月から9月上旬は、夕方のビーチダイビングで、オハグロベラの繁殖活動を観察できます。見どころはオス同士の縄張り争い。睨み合いや噛み合いなどのアツい戦いが静かに繰り広げられています。モテるオスが集まる場所は毎年変わらずに受け継がれていて、オスもメスも特に密集するため、画像のような闘争シーンが高頻度で見られています。
坂田で潜るなら
シークロップダイビングスクール
一昨年からコロニーが見られるジョーフィッシュが、ホソミアゴアマダイという種類であることが判明。これまで標本のみで確認されていて、水中での正式な観察記録は坂田が初めてです。そんな当店この春40周年を迎えました。たくさんのゲストに支えて頂き続けてくることができました。これからもアットホームで温かいサービスをスタッフ一同で築いてまいります。
波左間
東京湾と太平洋が交わる個性豊かな海。世界で唯一の海底神社があり、名物のコブダイをはじめ、ときにはジンベエザメやマンタに出会えることも。キャラ濃いめな生き物たちが魅力のエリアです。
《波左間海中公園》鈴木 哲さんより
■「高根」のヒレナガネジリンボウとヤシャハゼ

ヤシャハゼとヒレナガネジリンボウ。これまでは見られなかった光景(撮影/鈴木 哲)
2023年頃から、夏から秋にかけてヤシャハゼが頻繁に見られるようになりました。2024年にはヒレナガネジリンボウと一緒にいる姿を見かけることも。海の中の“変わりゆくもの”を感じます。水温変化の影響ですかね。今年はさらにヤシャハゼが増えるのか注目しています。
■「高根」のコブダイと波左間のレジェンドダイバー荒川さん

神事を行なう社長の荒川さん(撮影/鈴木 哲)
世界で唯一の海底神社。港からボートで5分足らずの場所、水中には高さ約4mの大鳥居がそびえ、近くの洲崎神社の分社が祀られています。毎月1日と15日には、これまで29年間、変わらず神事が行なわれています。海の中にある変わらないものの象徴です。
波左間で潜るなら
波左間海中公園
お会いしてからお帰りになるまで、常に笑顔と感動をお届けできるよう心がけています。「高根」のコブダイや魚群はもちろん、人気のマクロ生物も豊富でフォトジェニックな撮影にもぴったり。セミクジラの出現やメガマウスの座礁救出劇など、話題に事欠かない海です。なお、「マンボウランド」のジンベエやマンボウの状況は、公式HPにてご確認ください。
見物
見物のダイビングは、お店の目の前からボートの出港もビーチエントリーもスタートできるので、とにかく体への負担が少なく楽々! ブランクダイバーのリフレッシュにもおすすめです。
《館山ダイビングサービスSARA》山田 忠夫さんより
■「沖漁礁」のソフトコーラル

ソフトコーラルの変化に期待が高まります(撮影/館山ダイビングサービスSARA)
見物の沖に漁のために沈められた漁礁には、色とりどりのソフトコーラルやカイメンなどが付着しています。昨年1年間はダイバーを入れていなかったスポットなので、ソフトコーラルがどれだけ増加しているか楽しみです。今シーズンのオープンは、6月20日を予定しています。
■「沖漁礁」のヒラメ

ヒラメたちが会議をしているかのよう(撮影/館山ダイビングサービスSARA)
漁礁は魚たちにとって格好の住処。あちこちで様々な生き物たちに出会えます。画像のヒラメたちは4枚が重なるように密集していて、まるで会議をしているような光景でした。海の環境は日々変わりゆくものですが、魚たちの自然な営みは、いつまでも変わらずに見守っていきたい風景です。
見物で潜るなら
館山ダイビングサービスSARA
南房総国定公園内の知る人ぞ知る老舗エリアにあるお店です。見物のダイビングスポットは、季節風の影響で冬季はクローズするため、約半年間しか潜ることができない限定スポット。その分、海の環境も守られていて、魚たちは興味津々でダイバーに近寄ってきます。2025年は6月20日から始動開始です。浴槽を導入しました。肌寒いときに大活躍間違いなしです。
沖ノ島
房総半島と砂州でつながる沖ノ島の周囲は、岩礁に囲まれ生き物が非常に豊富な海。沈船をはじめ見どころも多く、南西から流れ込む黒潮の分枝流の影響で水温が比較的高めなのも嬉しいポイントです。
《沖ノ島ダイビングサービスマリンスノー》岡本 正和さんより
■「沖ノ島ビーチ」
念願のスキンダイビングを楽しむゲスト(撮影/mami)
ゲスト「沖ノ島で念願のスキンダイビング! 広々とした海で泳ぐことができた楽しさ、動画から伝わりますか? 海の生き物の世界に実際に触れた驚きや喜びは、何度も見ても思い出せる変わらないもの。海の表情は日々変わっても、その感動は今もずっと残っています」
■「沖ノ島沈船(水雷艇)」のイサキ
歴史と自然とダイビングを同時に楽しめるスポット(撮影/沖ノ島ダイビングサービスマリンスノー)
沈船「漣(さざなみ)」は、第一次世界大戦時の旧日本海軍水雷艇。水深22〜25mに全長68.4mの船体が横たわり、イサキやマダイ、クロダイ、イワシが群れ、秋にはイサキの大群が高確率で見られるなど魚影の濃さが魅力です。真鍮製の窓枠が残る船体は、歴史と海洋生態が融合する“潜る水中遺産”としてアドバンスダイバーに人気です。
沖ノ島で潜るなら
沖ノ島ダイビングサービスマリンスノー
「黒根ポイント」にアオリイカの産卵床を6ヶ所設置しました。産卵行動は毎年5〜9月頃。浅場でじっくり観察できるのが魅力です。現在、「ムービーコンテスト2025」開催中。当店で撮影したダイビング・スキンダイビング・スノーケリングの映像を大募集。スマホ撮影・初心者も歓迎です。大賞には1万円相当のダイビンググッズをプレゼント。詳細は公式HPへ。
勝山
(かっちゃま)
風の影響を受けにくいスポットが多く、年間を通して安定して潜ることができる勝山。東京湾からの豊富な栄養分と黒潮の影響を受けて生き物の多様性に富み、珍しい生き物が現れることも!
《かっちゃまダイビングサービス》廣田 史登(ヒロ)さんより
■浮島「ノースエンド」のアカメバル

アカメバルの幼魚(撮影/ヒロ)
ここ数年、浮島周辺のスポットでは真冬でも水温が15℃を下らず、アカメバルの数が減少していましたが、今年になり数年ぶりに水温12℃を記録。その影響かアカメバルの幼魚が多数確認されるようになりました。このまま黒潮の大蛇行が終息すれば、かつて見られていたダンゴウオなどの生き物たちも戻ってくるのでは?と期待をしています。
■浮島「ノースエンド」のキアンコウ

上手に擬態するキアンコウ(撮影/ヒロ)
今年、伊豆・神奈川エリアではキアンコウの目撃情報が多数寄せられていますが、ついに私たちのエリアにも姿を現しました。《かっちゃまダイビングサービス》がオープンしてから10年以上が経ちますが、これまで卵の発見例はあったものの、キアンコウ自体の発見は今回が初めてです。海に大きな変化が起きている年だと感じています。
かっちゃまで潜るなら
かっちゃまダイビングサービス
港の目の前にあって使い勝手の良さ抜群。ラウンジや屋外テラスも清潔&広々としていて、休憩時間も快適に過ごせます。フォト派ダイバー大興奮のマクロの聖地として、季節ごとに異なるウミウシやエビ・カニ類など、多種多様な生き物たちが登場します。今年は「◯◯ゴンベフォトコン」を開催中。当店で潜ったダイバーならどなたでも応募OK。詳しくは公式HPへ!
行川
豪快な地形もマクロ生物のウオッチングも楽しめる行川。黒潮と親潮が交わる半島南部の太平洋側に位置し、潮の影響による水中景観や生物相の入れ替わりが楽しめる海です。
《なめがわダイビングサービス》大室 海斗さんより
■「マグロ根」のワラサ

イサキやタカベが群れ、ワラサがその周りをぐるぐると回っています(撮影/アキコさん)
ワイドのダイナミックさは健在。「マグロ根」ではイサキやタカベの群れに、ワラサやカンパチ、ヒラマサがアタックするシーンが見られます。特に秋はその迫力ある光景に出会える確率が高まります。
■「マグロ根」のコミドリリュウグウウミウシ

鮮やかなコミドリリュウグウウミウシは被写体としても最適(撮影/こずちゃん)
行川で以前はあまり見られなかった、コミドリリュウグウウミウシやボブサンウミウシが、今年はよく見られています。カラフルなウミウシが増えて、マクロ好きのダイバーにも喜ばれています。
行川で潜るなら
なめがわダイビングサービス
今年から、沖の人気スポット「三郎ゼム」が通年で潜れるようになりました。漁礁周辺ではイサキなどの群れが見られ、クレバスなどダイナミックな地形も楽しめます。流れやうねりが比較的弱いため、沖で潜るのが初めての方も久しぶりの方も安心です。また、非常勤スタッフのヒロセさん(通称ジェントル)が新加入! ガイド中に多くのウミウシを見つけてくれます。
勝浦
黒潮と親潮が交わることで、世界的にも珍しい多様な生態系が育まれているエリア。ダイナミックな地形と豊富なスポットが魅力で、ビギナーからベテランまで大満足な海です。
《勝浦ダイビングリゾート》宮崎 崇さんより
■「ベンテン」のカジメ

根一面を覆うカジメの幼体(撮影/宮崎 崇 勝浦ダイビングリゾート)
海藻が激減し磯焼けが問題視されていますが、勝浦の沖では新たな息吹がしっかり根付いています。「ベンテン」の根は、昨年は茎だけが残る丸坊主の状態でしたが、4月過ぎから根一面にカジメの幼体で覆われ、順調に育てば2年後には再びカジメ林となるはずです。変わりゆく環境の中にも、新たに根付く変わらない生命のサイクルが感じられます。
■「イソムラ」のカンパチ
「イソムラ」に現れたカンパチの大群(撮影/宮崎 崇 勝浦ダイビングリゾート)
冬から春先にかけて、毎年カンパチの大群が見られる勝浦の沖エリア。今年は3月末以降、「イソムラ」でしっかり登場! 1ヶ月以上にわたり200匹ほどの大群が根に居着き、ほぼ毎日ダイバーの前に現れる様子は、まるでダイバーを受け入れてくれているかのようでした。見るたびに感激する光景でした。
勝浦で潜るなら
勝浦ダイビングリゾート
昨年4月の施設リニューアルオープンを機に、店内に漁協直売コーナーを設けました。勝浦のブランド水産物のマカジキの商品や、スタッフがこの春に収穫した生ワカメを販売していて、大変ご好評をいただいています。また、冬から春にかけて登場するアイドル!ダンゴウオは、「ベンテン」に成長した個体が数匹居着いています。年によっては7月頃まで観察できます。
千葉ダイビングサービス協力会

千葉ダイビングサービス協力会は、千葉県の現地サービス9社が協力し合い、全国のダイバーに千葉の海の魅力を発信するために設立されました。
房総半島南部は首都圏からのアクセスもよく、ビギナーからベテラン、マクロからワイドまで幅広く楽しめる海です。混雑した海や現地までの移動に辟易しているダイバーのみなさん、移動ラクラクでのんびり楽しめる千葉の海へどうぞ。個性的な9つの海が待っています!
協力/千葉ダイビングサービス協力会
ライター/新井 夏海