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世界も注目する冒険の海
神子元島でハンマーリバーを見よう!

神子元島でハンマーリバーを見よう!

伊豆半島・下田沖に浮かぶ神子元島は、ハンマーヘッドシャークとの遭遇率が高いことで人気の冒険の海。海外ダイバーも大勢集まり連日にぎわっています。初心者も憧れる海ですが、潮も速く難しい海なのでルールやマナー、ガイドの指示をよく守ることが肝心です。この夏こそ、ハンマーヘッドシャークが流れるように群泳する“ハンマーリバー”を見に、潜りに行きましょう!

※この特集は2024年6月現在の情報です。

神子元島とは?

写真/神子元ダイバーズ

写真/神子元ダイバーズ

神子元島への行き方

神子元島(みこもとじま)は伊豆半島の南端、下田沖約11kmに浮かぶ孤島です。ダイビングをするには南伊豆町の弓ヶ浜や手石などにある港からダイビングボートで出港します。南伊豆町のダイビングサービスへは車か、電車で下田駅まで行き送迎サービスを利用すれば、日帰りでも可能です。

神子元島のダイビングスポット

神子元島は古くから地元ダイビングサービスのガイド陣によって「カメ根」、「ジャブ根」「カド根」「白根」「三ツ根」といったダイビングスポットが開拓されていて周辺でフィッシュウオッチングをすることもあるのですが、近年は「カメ根」「ジャブ根」周辺でハンマーヘッドシャークの目撃例が激増していて、ハンマーウオッチングをメインとしたダイナミックなドリフトダイビングが主流となっています。

神子元島のダイビングスタイル

通常は「カメ根」の周辺からエントリー、中層をドリフトスタイルで泳ぐのですが、初夏は「カメ根」のそばの水深13m付近にある「Aポイント」の根でハンマー待ちをするスタイルでウオッチングを楽しみます。流れがよく変化するため、潜水時間は35分(潜降して安全停止、浮上するまで)とエリア全体で決まっています。
ダイビングサービスによりますが1日2~3ダイブ、ダイビングボートは1日最大4回出港しています。1ダイブごとに港に戻り、ダイビングサービスで休憩します。ちなみに、弓ヶ浜から神子元島へは約8km、片道15分ほどで行けます。

神子元島ダイビング基本情報≫

神子元島の人気の理由を教えてください!

神子元島のハンマーヘッドシャークの魅力

神子元島は日本人ダイバーのみならず海外ダイバーにも注目されています。おすすめのダイビングサービスのガイドさんにその理由を聞いてみました。

写真/株式会社海遊社

写真/株式会社海遊社

海外の方は、日本でハンマーが見られる場所は与那国だと思ってる方が多いようです。ただ最近、SNSや口コミなどで神子元ハンマーの映像や写真を見た方々が、東京の近くでもハンマーが見られるということを知り、海外の方も来てくれるようになったと思います。
海遊社/前澤位江さん)

動画/神子元ダイバーズ 

ハンマーヘッドシャークの群れのみならず、様々な魚たちの群れ、とにかく魚影がすごく、1個体の魚の大きさが超大物サイズというところと、東京から3時間で来られてしまう、日帰りで大物に会えるといった点が人気の理由だと思います。
神子元ダイバーズ/満園英雄さん&イ・ワヤン・デア・プラタセナさん)

写真/神子元ハンマーズ

写真/神子元ハンマーズ

世界的にみてもハンマーヘッドシャークの群れを見られるところは多くありません。しかも、近年では高確率でハンマーヘッドシャークの群れに出会えますし、数も3桁を超える群れを見られます。空港から車や電車で3〜4時間くらいで潜れるという行きやすさも魅力の1つかもしれません。
神子元ハンマーズ/関口 匠さん)

年々上がる遭遇率。何が違う?

「マリンダイビングWeb」では長年神子元島の取材をしていますが、近年の遭遇率の高さには目をみはるものがあります。何が違うのでしょう?
◆海水温の上昇によりハンマーヘッドシャークが好む温度になっていると思います。潮流が速すぎる場合は、安全を考慮して遭遇率が下がる場合もあります。
(神子元ダイバーズ/プラタセナさん)
◆単体〜群れ、数はその時により異なりますが遭遇率は高くなっています。しかし、透明度が悪くなったり、うねりや風などでポイントの制限があると安全上、行動範囲が狭まり遭遇率が下がってしまうこともあります。神子元島は、黒潮という大きな海流の影響を受けます。そして、黒潮が近づいてくると温かな綺麗な潮が流れてくる傾向にあり、より良い状態でハンマーヘッドシャークを見ることができます。
(神子元ハンマーズ/関口さん)
◆遭遇率が上がっていると言うより、黒潮大蛇行が始まってから海況が変わり、一年中ハンマーを見られるようになりました。潮の流れる強さ向き、水温などによって、ハンマーを見られる場所は変わります。
(海遊社/前澤さん)

ガイドも虜になるハンマーの魅力

神子元島を毎日のように潜っているガイドさんですが、ご回答いただいたガイドさんにとって最も感動的な出会いは?

写真/神子元ハンマーズ

写真/神子元ハンマーズ

やはり、神子元に来て潜った1本目ですね。ハンマーヘッドシャークの群れを見たことがなかった僕にとって現実味がありませんでした。しかし、エントリーして割と早い時間でサメが現れ頭の形がハンマーだと認識した時は興奮しましたね。どんどん数が増えてきて目の前を通り過ぎていきました!
(神子元ハンマーズ/関口さん)

動画/株式会社海遊社 

私は元々、海遊社のゲストとして潜っていました。よくSNSに載っているようなハンマーリバーを見るためには、ある程度泳いで潮を渡る必要があります。その当時、私はまだ神子元で潜り始めて浅かったので、あまり潮の流れていない中層でハンマーを見る機会が多かったのですが、ある日、潮をくぐり抜け流されながら泳ぎながら、着底してハンマーを見るポイントに連れて行ってもらった時に見た景色は今でも忘れることができないぐらい感動的でした。
(海遊社/前澤さん)

写真/神子元ダイバーズ

写真/神子元ダイバーズ

初めての神子元で予期していないところから、長蛇の途切れないハンマーヘッドシャークの群れ“ハンマーリバー”と出会った時です。
(神子元ダイバーズ/満園さん)

こんな群れに会ったらラッキー!なハンマー

神子元島でどういう状況だと気分がアガルのでしょう?

動画/株式会社海遊社 

神子元では中層でハンマーと並走したり、着底してハンマーを見上げたり、ダイバーの下をハンマーが滑走したり……いろんな角度からハンマーを眺めることができます。その中でも感動するのは、着底しているダイバーの頭上ギリギリをハンマーが優雅に泳いでいく姿を見ている時です。特に天気のいい日、太陽のキラキラした光の中にハンマーのシルエットが見えた時は見惚れてしまいます。
(海遊社/前澤さん)

動画/神子元ダイバーズ

1000匹を超えるほどの大量のハンマーヘッドシャークの群れ!ですかね。
(神子元ダイバーズ/満園さん)

写真/神子元ハンマーズ

写真/神子元ハンマーズ

水底に着底しながらホバリングしている大きな個体がいるハンマーヘッドシャークの群れを見上げている時が好きです。
(神子元ハンマーズ/関口さん)

神子元島はハンマー以外もスゴイんです

過去に現れた超ド級の大物との出会い

写真/株式会社海遊社

写真/株式会社海遊社

神子元島では運が良いと、ハンマーヘッドシャーク、ハンマーリバーを超える海洋生物と出会えることがあります。ガイドさんが体験したサプライズを教えてもらいましょう。
◆ジンベエザメ、カジキ、マンボウ、 ジンベエザメは安全停止中に目の前をゆっくり泳いで並走することができました。
神子元ダイバーズ/満園さん、プラタセナさん)
◆神子元は1シーズンに数回サプライズが起こります。その時は、ハンマーヘッドシャークも大当たりで数も多く、そして寄れる群れがいました。それを見ている時、ふと上を見上げるとジンベエザメが浅いところをゆっくり泳いでいたのです。その時は、迷わずジンベエにいきました(笑)。
神子元ハンマーズ/関口さん)
◆年に1〜2度ぐらいジンベエやニタリに遭遇することはあります。ジンベエは温かくなってきたシーズン、ニタリは少し水温の低いシーズンに見ることが多い気がします。あとダイビング中は難しいですが、冬はボートの上からザトウクジラを見ることもあります。
海遊社/前澤さん)

ハンマーを外しても、神子元島はこんなにスゴイ!と思う生きものとは?

残念ながら、海は自然のものなのでハンマーヘッドシャークに会えないこともあります。それでも神子元島の海はスゴイのです。

写真/神子元ハンマーズ

写真/神子元ハンマーズ

神子元は、実はとても魚影が濃いポイントです。タカベやイサキは、いたるところに魚のカーテンのようにいますし、神子元以外では聞いたことのないオオニベ。そして、カンパチやワラサの100匹を超えるであろう群れもいます。ハンマー以外でもポテンシャルが高い海です。
(神子元ハンマーズ/関口さん)

写真/神子元ダイバーズ

写真/神子元ダイバーズ

オオニベの群れ(写真)や、イサキにタカベ、ワラサの群れなどすべての魚たちが多くてとにかくすごいです。また、何に遭遇するかわからない。運が良ければ大物に出会えるチャンスがあります!!
(神子元ダイバーズ/プラタセナさん)

動画/株式会社海遊社

冬の時期はカンパチやワラサなど回遊魚がたくさん出てきます。運が良いと彼らがダイバーの周りをグルグルと泳いで巻いてくれ、360度魚たちに囲まれる様子は圧巻です。
ここ数年はオオニベという九州を中心とした地域で見られている魚も黒潮に乗ってなのかやってきて、時には3桁以上の群れになって泳いでいる姿を見ることもできます。
また、潮目ではタカベやイサキが大きな塊になって滝登りをするように泳いでいるところ (海遊社/前澤さん)

神子元島の海中環境の特徴は?

弓ヶ浜の沖わずか8km余りに浮かぶ神子元島。明らかに内湾の海とは異なる外洋らしい海中景観が広がっています。ハンマー遭遇率が高いのも魚影が途轍もなく濃いのも、環境の影響が大きいのでは?
◆神子元島周りは、大小さまざまな根や台地、岩などがありダイナミックな地形があります。そこにソフトコーラルが多くつき色味鮮やかでキレイです。
(神子元ハンマーズ/関口さん)
◆透明度は潮や雨水の影響で大きく左右されます。最近は水温の上昇により、本来、伊豆では見られるはずのなかった魚たちが増えてきています。ある意味では普段見ることのできない魚を見ることができるので海の中が華やかになっていいように思えますが、生態系のバランスが崩れて来ているのでは?と、潜っていると感じます。
(海遊社/前澤さん)
◆黒潮次第で海の状況が変わります。そこもまた面白いところです!
(神子元ダイバーズ/満園さん)

ハンマーヘッドウオッチングのルールやマナー

参加できるダイバーの経験本数、ブランクの設定

神子元島でドリフトダイビングをするために、神子元ダイバーズ協議会(南伊豆町の主なダイビングサービスが加盟)が定めている参加条件は、「ダイビング経験本数30本以上をログで証明できる方。さらに1年以上のブランクがない方」。
本数に関しては海遊社と神子元ダイバーズでは50本以上、ブランクに関しては神子元ダイバーズが3カ月以上、海遊社が半年以上と自社でのルールを追加しています。
「またダイビング参加時はSMBの携帯も義務付けられています」と海遊社の前澤さんが言うように、SMB(サーフェイスマーカーブイ)、つまりセーフティフロートは各自1個必携です。

事前のブリーフィングで忘れちゃいけないポイント

ダイビング当日、事前にブリーフィングが行われます。全部聞いて頭に入れてほしいのですが、特に気をつけてほしいことを神子元ハンマーズの関口さんに聞きました。
「ガイドとの水中での距離感です。神子元では水深や場所により潮の流れる向き、速さが違うことがあるのでガイドとはぐれてしまう危険性があります。あとは、透明度の良し悪し関係なくガイドとの距離感でハンマーヘッドシャークを見ることができないことがあります。ハンマーを見るためにも!安全に潜るためにも!ガイドの近くで潜りましょう!」

ハンマーが出た! その時にすべきこと

視界にハンマーヘッドシャークが! その時にどうすればいいか神子元ダイバーズの満園さんに伺いました。
「なりふり構わずハンマーを追いかけてしまいチームから逸れて、ロストしてしまう人がいます。ブリーフィングをしっかりと理解していただくことが大切。あまりにも危険な行動をする方はダイビングを中止させていただいております」
皆さん、気をつけてくださいね。

海中で他のグループと交叉しそうになったら?

人気の神子元島。時にはほかのグループとごちゃごちゃになって、迷子になってしまうダイバーも。そうならないための対策を海遊社の前澤さんに伺いました。
「エントリーする前に担当ガイドの特徴(フィンやマスクの色など)をお伝えするので、それを参考について来てもらっています。また海遊社は全ガイドがオレンジ色のフラッグを必ず携帯しているので、それも目印になると思います」

ハンマーウオッチングに夢中になるべからず

でも目の前にハンマーヘッドシャークが、しかも群れ群れだったら、頭が真っ白になってしまいますよね。海遊社の前澤さんはこう話します。
「”自分のガイドがどこにいるのか”を理解しながら潜ってほしいです。神子元は場所によってはダウンカレントが発生します。ハンマーを追いかけるのに夢中になり、振り返ることもなくハンマーを追いかけ続け、ダウンカレントにハマってしまう方もいます。私はゲストに、ハンマーを追いかける場合は5秒に1回振り返り、ガイドがどこにいるのかを認識して、まだ追いかけていいのか、戻ってこなければいけないのか……などのサインを確認してほしいと伝えています」

神子元島で安全に楽しくハンマーヘッドシャークをウオッチングするためのマナーとルール」≫

今回ご回答いただいたガイドさんに
ハンマーガイドのこだわりもお聞きしました♪

海遊社 前澤位江(まえざわ たかえ)さん

前澤位江さん

海遊社は元より神子元島でのガイド歴2年(2024年6月で3年目に突入!)
「こだわりではないですが、他チームの動きを確認しながら泳いでいます。他のチームがどこでエントリーするのか、水中ではどこに向かって泳いでいるのか、それであればハンマーがどの導線を泳いでくるのか……を予測しながら探しています。また群れが出た時には突っ込まずに先回りをして待ったり、自分たちの吐く泡がハンマーにかからないように配慮しながらコース取りをしています」

神子元ダイバーズ/満園英雄さん(左)イ・ワヤン・デア・プラタセナさん(右)

満園英雄さん(左)イ・ワヤン・デア・プラタセナさん(右) 

神子元島でのガイド歴5年のお二人。
「自分のスキルに合った器材を使用して、使い方をマスターする。自分のスキルを過信しないこと、常に初心を忘れない! 追いかけない、ハンマーをびっくりさせない! 必ず安全第一です。 神子元島はハンマーだけでなく世界を代表するほどのダイビングポイントです。 そんな海を僕たちがご案内させていただきます」

神子元ハンマーズ/関口 匠(せきぐち たくみ)さん

関口 匠さん

神子元島でのガイド歴4年の関口さん。
「ハンマーヘッドシャークがいた時にダッシュして向かって行けば良いというわけではありません。時にはゆっくり泳ぎ。時には止まり。ハンマーに嫌がられないようにアプローチしていきます。そして、見つける前、見つけた後に常に考えているのは自分たちの出した空気がどこに流れていくかです。
ハンマーは僕らのはいた泡を嫌がりその先にいたであろう群れを知らないうちに逃してしまったり、見ている時は散らしてしまうなんてことも……。その時の水中コンディションによっていそうなところの予測を立ててそこに泡がいかないように考えています」

写真・文/後藤ゆかり(マリンダイビングWebデスク)