本州最南端の海が人気の最大理由を探る!
南紀 串本
和歌山県の紀伊半島最南端にある町、串本は日本を代表するスキューバダイビングエリアのひとつです。主に近畿や名古屋方面のダイバーが集まりますが、日本中のダイバーも少なくありません。なぜそんなに人気があるのでしょう? この特集で紐解いていきます!
※この特集は2024年9月現在の特集です
串本の海が人気の最大の理由5
串本は紀伊半島最南端にあり、近年は有料高速道路が延びて行きやすくなり、特急電車でも行けるので、車派にも電車派にも便利です。ダイバーにとってありがたいのは、ひとえに海のおもしろさ! そのおもしろさを上手に引き出してくれる名ガイドたちの存在やダイビング施設とボート出港地が近くて手軽にダイビングができることなど多数あります。ここでは串本の海がおもしろい最大の理由を5つ挙げてみます。
1)魚や生物の数が多い! 魚影が濃い!!
玉のように固まり圧巻なイサキの群れ
写真/南紀シーマンズクラブ
チョウチョウウオの仲間、シラコダイがぎっしり群れ集まることもしばしば
写真/南紀シーマンズクラブ
ほかでは見かけない光景、ホウライヒメジの群れも串本の顔
写真/南紀シーマンズクラブ
ベテランダイバーだけでなくビギナーダイバーから海の虜になれる串本の海。その最大の理由は魚影の濃さといえるのではないでしょうか。ダイビングスポットは「内海(うちうみ)」と「外海(そとうみ)」に大きく分けて開拓されていて、港から5分程度と近い「内海」のスポットでも魚影が見られること。最もよく利用される住崎エリアでは、阪神ファンが大喜びの黒と黄色のタイガースカラーの魚、カゴカキダイとテングダイがよく群れていて、この2種の群れをひとつの視界に収めることも可能です。
2)青い! 透明度がいい!!
安全停止中にガイドさんが上げるバブルリングは、とてもフォトジェニック♪
写真/南紀シーマンズクラブ
串本の海の青さはとにかく格別! 青くて透明度が良く、かなり先まで水中でも見渡せるのです。もちろん、自然のものなので常にいいわけではなく、時々濁りも入ったりしますが、たいてい気持ち良くて爽快なブルーが味わえます。2016年頃までは南から流れてくる世界最大級の大暖流、黒潮がかなり接近していたのでその青さはさらに驚くほどだったといいますが、黒潮の大蛇行が始まっても半島の先端だからでしょうか、青さや透明感は引き続き串本の恵みとなっています。
串本のダイビングスポットは内海と外海に分かれると紹介しましたが、内海でも透明度がいい場合が多いですし、外海はなおさら! ダイビングの最大の醍醐味ともいえる浮遊感、無重力感を味わうなら、串本にキマリ!というわけです。
3)海の生きものの種類が多い!
串本で採取され2023年5月に和名が付いたクジャクケヤリとムラサキウミコチョウ
写真/南紀シーマンズクラブ
こちらも串本名物で2022年に和名が付いたホシカゲアゴアマダイ。口内保育が見られることも!
写真/南紀シーマンズクラブ
こ~んな「ターコイズミノウミウシ」までいます!
写真/串本ダイビングセンター
魚の群れの数も多い串本の海ですが、生息する魚類、甲殻類、海藻類など海の生きものがとても多いのも特長です。しかも、串本の海では普通に見られるけれど、日本のほかではほとんど見られない生きものも少なくなく、「ジョーフィッシュ」とただ単に呼ばれていたアゴアマダイの仲間が2022年に「ホシカゲアゴアマダイ」と和名が付いたり、怪しげに光りフォト派の間で注目されているケヤリの仲間が2023年に「クジャクケヤリ」と和名が付くなど、驚きの海なのです。
さらに、ウミウシを特に見せてくれることで知られる《串本ダイビングセンター》では、普通は冬~春に多いといわれるウミウシを年中見せてくれます。写真のターコイズミノウミウシなど、超レアなものを探して見せてくれたり……。ウミウシが好む海草、海藻、カイメン類などが串本にはとても多いことも証明ともいえますね。
4)ダイビングがラク~にできる
動画/南紀シーマンズクラブ
上の動画は《南紀シーマンズクラブ》や《串本ダイビングセンター》などがある、JR串本駅から車で約10分のエリアから海に出て行く様子が写されているのですが、岸壁から建物が近いこと、つまりダイビングサービスの建物からボートに乗り込むまでがとても近いことを表しています。
ちなみに串本にはビーチスポットもありますが、たいていのスポットへはボートでアクセスするボートダイビングが主流です。ボートに乗り込む時には既にタンクがボート上に設置されていますので、ダイバーは乗船したらダイビング器材(たいていボート上に運んでくれます)をセットするだけ。しかもスポットへは内海へは10分以内、外海へは15~20分ほどで到着しますので、スーツを着込んで乗船(夏などは半身で乗船)すればいいのです。行ってみてわかりますが、とにかくダイビングがラク~にできるのが串本人気の理由のひとつなのです。
5)アツ~いダイビングガイドがていねいに案内してくれる!
そして串本のダイビングに欠かせないのがダイビングガイドの皆さん。ダイビングサービスによってガイドさんの人数は異なりますが、個人で参加する場合は好みに応じて、ダイビング経験別にグループ分けをしてくれ、たいてい少人数制になっているので、じっくり楽しませてもらえるのが普通です。
今回お勧めするお店《南紀シーマンズクラブ》と《串本ダイビングセンター》は、前者が串本有数の大型店、後者がオーナーガイドと、タイプが正反対なのですが、ガイドスタイルはとても親身で、生きものや見どころにもとても詳しく、初心者から超ベテランまでアツ~く案内してくれますよ♪
串本のこれから(9~11月頃)の見どころは?
南紀シーマンズクラブの島野利之さんに聞きました!
カンパチがガンガンやってくることも! 外海の「浅地」にて
写真/南紀シーマンズクラブ
9月~11月は水温21~26℃と、台風が来なければ、魚影も濃く一番いい季節です。
季節来遊魚も一番たくさん見られる時期で、一年の中で、海中が一番にぎやかでカラフルになる季節で、南から運ばれてきた可愛らしい幼魚かたくさん見られます。
また、キビナゴ等を追いかかて、カンパチ、ツムブリなどの回遊魚、運が良ければ、ハンマーヘッドやメジロザメも現れます。
串本ダイビングセンターの又野賢一さんは見ごろのウミウシを紹介!
トウモンウミコチョウ
写真/串本ダイビングセンター
イチゴミルクウミウシ
写真/串本ダイビングセンター
まず水温と海況です。
9月 25〜26℃ 台風によりますが海況は比較的穏やか
10月 22〜26℃ 9月と同じ
11月 18〜20℃ お昼から西風が強くなりやすく、波が出やすい
この時期の人気のウミウシは、トウモンウミコチョウ、ヒオドシユビウミウシ、ボブサンウミウシほかイロウミウシ系の幼体です。運が良ければ見られるレアなこれからのレアなウミウシは、イチゴミルクウミウシ(人気もあり各地域の方が見に来られます)、ターコイズミノウミウシ(宝石の名前が付いてて、とてもキレイなウミウシ。前出)、ウテンミノウミウシなど。
季節来遊魚はもう来ている!
「ミナミハコフグ、タテジマキンチャクダイ、チョウチョウウオ系幼魚各種が既に来ています」と島野さん。又野さんも「魚はニシキフウライウオ、ウミウシはアオモンツガルウミウシが今年は多く感じます」と言います。さらにもっと増えている可能性は大! 実際に潜ってその目で確かめてみてくださいね。
一年中おもしろい串本ダイビング
動画/小池広貴(南紀シーマンズクラブ)
筆者が6月に訪れた時は、たまたまイルカが内海に迷い込んでいて、ダイビングの行き帰りにボートが立てる波と遊びにやってきてくれたりして、楽しませてくれたのですが、「串本には2~3年に一度ぐらいの割合でイルカがやってきている気がします。去年も来ましたけどね」と又野さん。すぐにまたいなくなってしまったのですが、こんなサプライズもある串本、最高ですよね。
12月以降の海の様子
春先からはヒレナガネジリンボウやヤシャハゼ、ホタテツノハゼなども増えてきます
写真/南紀シーマンズクラブ
5月中旬頃からアオリイカの産卵シーンがよく見られるようになります
写真/南紀シーマンズクラブ
夏場はサンゴの産卵が。スギノキミドリイシもピンク色の卵を放って神秘的です
写真/南紀シーマンズクラブ
では、ほかのシーズンの串本の海はどうなんでしょう? 島野さんは水温付きで答えてくれました。
「12月~2月の冬季は水温16~21℃で北風が吹きやすくなり、水温が下がり始めます。海の中はウミウシの仲間が増え始めます。
春の3月~5月は水温16~22℃で、水温の上昇と共にウミウシの最盛期となります。5月中旬頃からアオリイカの産卵も見られます。
夏の6月~8月は水温22~27℃。求愛産卵行動の最盛期となります。クマノミ、ベラ系、スズメダイ系等、あちこち観察することができます」
ウミウシダイビングにも注目!
この夏も観察ができているセリスイロウミウシ
写真/串本ダイビングセンター
体はまだちっちゃいけれど、“飛ぶウミウシ”ヒオドシユビウミウシ
写真/串本ダイビングセンター
透き通った体に雪が降ったような白い斑点を持つアイリスミノウミウシの姿も“
写真/串本ダイビングセンター
串本の海にはダイバーに人気のウミウシがたくさん生息しています。串本唯一のウミウシ専門ガイドサービス《串本ダイビングセンター》の又野さんは、ウミウシが多いといわれる冬から春先にかけてはもちろん、一年中ウミウシを見せてくれます。中には聞いたことがないような珍しいウミウシや、ほかの海域では見られないようなウミウシがいっぱい。ミリ単位の小さな種類も見せてくれますので、OM SYSTEM(前オリンパス)のTGシリーズで顕微鏡モード付きの水中カメラや水中虫眼鏡があると便利ですよ♪
文/後藤ゆかり(MDWebデスク)