2016年8月号
3代目「おがさわら丸」就航!
小笠原 再発見!
ケータ列島 嫁島「マグロ穴」
2016年7月2日、これまで長きにわたって東京-小笠原諸島父島約1,000kmの距離を夢と感動を載せて走っていた2代目「おがさわら丸」に代わり、最新造船3代目「おがさわら丸」が就航した。
これまでの1.6倍の11,000tと大型化したにもかかわらず航海時間は1.5時間短縮し、片道24時間とスピードアップ。
早速『マリンダイビング』が新「おがさわら丸」に乗って小笠原を取材してきた。
リゾートホテルのようにキレイで快適、快速!
3代目「おがさわら丸」
3代目「おがさわら丸」
出発が11時になって地方からの乗り継ぎも楽になった!
3代目「おがさわら丸」(小笠原海運)がデビューするにあたり、運航スケジュールが変わったのも、ありがたいことの一つ。
特に出発が1時間遅い午前11時になったので、札幌や福岡といった遠い地方の方もその日のうちに乗り継ぎができるようになったのは、大きな魅力だろう。
「おがさわら丸」が出港するのは東京・竹芝桟橋。羽田空港からならモノレール1本だし、東京駅からも近い。
しかも帰りも15時30分着なので、東京に泊まらなくてもそのまま地方に帰ることができる時間。
そう、世界遺産の小笠原が近くなったのだ!
「おがさわら丸」の予約等はこちらのURLからどうぞ!
http://www.ogasawarakaiun.co.jp/
きれい! 明るい!!
「おがさわら丸」は新しく造られた船だけに、何もかも新しくてキレイ!
・・・なのは、当たり前のことなのだが、船内はとてもポップで明るいインテリア。
よくある船特有のにおいもないし、清潔で快適で文句なしなのだ。
パブリックスペースでいえば、小笠原の自然をイメージしたカラーリングの通路や休憩所、クジラのオブジェやLEDをうまく使った階段周り、船内の今、自分がどこにいるかがわかるマップや現在、どこを航海しているかを示すマップ、レストランやショップの営業時間を知らせる案内版など利用者が知りたいことを考え、快適な気分で過ごせるようなスペースづくりをしている。
船内案内所。乗船する4デッキにある。
水槽のように見えるカウンター下のディスプレイは、小笠原父島のお土産店「わしっこ屋」の作品。和紙で作られた、本物みたいなお魚が泳いでいる
パブリックスペースが随所に設けられている
小笠原の自然をイメージした色とりどりの通路
船内マップは各階にある。ちなみにゲストが利用できる階(デッキ)は2デッキから7まで
レストラン、ショップの営業時間を示す案内図。行きも帰りも使えるようになっている
おがさわら丸での飲食事情
片道24時間の旅となる3代目「おがさわら丸」。行きは朝11時に出発し、翌11時に小笠原父島に到着するので、普通に食べるなら昼食、夕食、そして翌日の朝食の3食が必要となる。
帰りは15:30に父島を出発し、東京・竹芝桟橋には翌15:30着なので、夕食、朝食、昼食のやはり3食が必要。
というわけで、気になるのが船内の飲食事情。
メインレストランは4デッキにある《レストランChichi-jima》。また7デッキの《展望ラウンジHaha-jima》でも、軽食が食べられる。
船旅の場合、一般的には高くてマズイのが相場なのだが(失礼)、「おがさわら丸」のレストランメニューを見て、ある意味びっくり。
良心的な値段で(セットメニューが980~1,480円)、しかも、夜はご飯よりビールとおつまみが欲しいという筆者にもうれしい、リーズナブルなサイドメニュー(400~980円)! 麺類や丼ぶりご飯、お子様セットなどもある。
まあアルコールをはじめ飲み物は自販機の倍ぐらいするのは仕方ないとするか。
レストランChichi-jima
ナポリタンスパゲッティは単品で850円とリーズナブル!
展望ラウンジHaha-jimaはオフホワイトのソファやスケルトンのチェア、LEDライトがオシャレ。夜になると天井に星がきらめく(本物ではないが)のもクール!
展望ラウンジHaha-jimaでは「船で焼いたアップルパイ」(380円)をはじめスイーツや、カレーライス、おにぎりなどの軽食、おつまみ、島ラムベースのカクテルなどがいただける
2等和室がある階や自販機コーナーには、給湯施設があるので、カップラーメンなどを購入して利用することもできる。
学生さんなど、少しでもリーズナブルにあげたい人にもやさしい船なのだ。
(あ、取材班もか! 笑)
2等和室のフロアをはじめところどころにある給湯施設
2等客室にプライベート感も!
3代目「おがさわら丸」になって、大きく変わったことの一つにプライベート感が大きく増したことがある。
2等和室のほうは、頭の部分に両隣との仕切りができたし、新設の2等寝台にはベッド1台につきそれぞれカーテンも。
荷物置き場も大きいし、シャワーやトイレもきれいでしっかりしたものがある。
そりゃ1等や特1等のお部屋も憧れではあるけれど(そして超快適ではあるけれど)
わずか24時間の船旅。2等も十分快適なのだ。
2等和室。大きな靴箱も入り口にあるのだ
2等寝台。4人家族なら向かい合ってベッドを押さえれば、ちょっとした部屋としても使える広い空間
各部屋には小笠原の生き物イラストが描かれたプレートがかかっている
船が大きくなってもスピードがアップしても、エンジンは前と変わらないという省エネ構造の新「おがさわら丸」。
ほかにも新しく増えて話題となっているのが、「冷蔵コインロッカー」だ。これは観光客というよりは島の人が内地で冷蔵が必要な食物を購入して帰るときにとっても有効なんだとか。
もちろん、船内でまたは島内で飲んだり食べたりしたい、特別な食物を持参したい方にもぴったり。1回500円なので、出し入れは1回ですむようにしたいけれど。
(ちなみに、貴重品用のロッカーも別にある)。
また、愛するペットと一緒に小笠原に行きたい!という方にも朗報。
船中、預けられるペット用の部屋もある。
犬なら大型犬、中型&小型犬の部屋、猫用の部屋がそれぞれある。
ペットを置いていけないので、旅ができないと嘆いている方にもぜひ利用していただきたい。
小笠原のダイビング
小笠原のボニンブルーは本物だった
小笠原の基本的なダイビング情報は、マリンダイビングWebでも何度か紹介しているので、そちらをご覧いただきたいが、今回、訪れてみて、やっぱり小笠原の海の色は格別だと再発見。
小笠原の透視度、透明度のいい青い海の色は「ボニンブルー」と称される。ボニンというのは、その昔、日本の漂流記にあった「無人島」(むにんじま、ぶにんじま、ぶにんしま)という表記から長崎に来ていたオランダ人の医師が「Bonin Island」として伝え、やがて欧米諸国に知れ渡ったという説がある。小笠原の南にあるマリアナ諸島のマリアナブルーとも、同じ太平洋で同じく大陸とつながったことのない海洋島のハワイ諸島の透明度の高さで知られるハワイアンブルーとも違った、藍色の濃度がやや濃い、青色とでもいうのだろうか。
船が走るときにできる波の色も、潜って見下ろしたときの海底までの色も、ボニンブルー。
もちろん、一色ではなく、光の強弱や水中の深さや、海中環境によっても異なるのだが、いつ潜っても、透き通った、気持ちのいいボニンブルーの海に包まれるのだ。
この色がダイバーを惹きつけてやまないのもよくわかるような気がする。
父島のすぐ北に浮かぶ兄島のスポット「バラ沈」。水深23mぐらいに沈んでいるバラバラになった沈船なのだが、水面からも見えるほど
この水を感じないほどの透明度! 透視度!! ずっとボニンブルーに抱かれていたい安全停止をしているのは、今回ガイドをしてくれた《FISH EYE》のスタッフ、久保田真仁さん
今回、SONYのアクションカムで撮ってきた「バラ沈」から「沖バラ」周辺の海
近場の海でもボニンブルーが味わえる例
回遊魚ワサワサ! ケータ列島「嫁島」
普段なら「昨日まで良かったのに」と残念なことを現地で言われ、落胆する取材班だが、今回は「昨日までの天気とは打って変わって最高だよ!」という絶好の天気と海況。
海況がよくないとなかなか行けないケータ列島こと聟島列島へ行くことができた。
「ケータ」といえば、6~9月はイソマグロが集まる時期。
言っておくが筆者は、イソマグロの大群ならあちこちで見ている。
これまでの小笠原の「マグロ穴」の写真を見てもそうそう驚きはしなかった。
でも、実際に嫁島「マグロ穴」に潜ったところ……
目の前をイソマグロが次から次へと隊列を組んでいく。
もっと見応えがよさそうな所はないかと動きたかったが、イソマグロの群れがなかなか途切れない。たぶん20分間以上、同じ所にいたんじゃないだろうか。
ということで、SONYのアクションカメラで流し撮りをしていたのがこちら!
ハシナガイルカの群れに近づく《FISH EYE》のスタッフ、久保田真仁さん
編集されているのだが、これ以上イソマグロが目の前にいたわけで、中には釣り糸を口から垂らしている大型のイソマグロもいて、心配したのだが(取れなかったし)、群れの行動パターンの観察もできて、とても興味深かった。
とにかく海況は抜群なので、ケータ列島の北之島まで目指そうと話をしていたところに今度はイルカの大群が! 最初は10頭ぐらいだったのだが、どんどん増え、100頭以上はいただろうか。ずっと船の周りで遊んでいる。
ハシナガイルカなので、水中で遊ぶのは難しいのだが、船上からまずは楽しんで、そして水中にトライ!
根の周りをヒレナガカンパチがガンガン回っている
な~んてことをしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまう。
ならば、嫁島周辺で潜ろう!と次に行ったのが「ブンブン浅根」。
ここもケータらしい、回遊魚ガンガンのスポットなんだという。
トップが水深17mぐらいと深めなので(スポット名は「浅根」だが深いのだ)、短く行こう!と潜ったものの、入った瞬間からヒレナガカンパチの群れやクマササハナムロの群れがびっしりいて、上がるに上がれない。最後にはウミガメまでサービスしてくれちゃって、正直、減圧停止が出てしまうギリギリまで潜ってしまったのだった。
これからの時期はシロワニを狙いたい
怖いサメらしい容貌の持ち主だが、実際はおとなしく、人間を襲うことはないシロワニ
今回の取材で唯一、誤算だったのは、あの小笠原名物のシロワニのシーズンではなかったこと。 夜、父島のダイビングボートが発着する港「とびうお桟橋」の周辺で シロワニが見られることもあるというが、今回の装備では写真は撮れないので諦めた。
ケータ列島でも「北之島・サメ穴」や「嫁島・マグロ穴」でシロワニに会えるが、時期はGW~6月限定。10~11月はアジ系の群れがメインとなる。 また、父島列島周辺でもシロワニに会えるスポットはいくつかあって、「マルベ・サメ穴」や弟島「鹿浜」などでも秋から冬、春にかけて狙えるのだとか。 小笠原といえばシロワニ!と思い込んでいた方も多いかもしれないが、皆さまもぜひお気をつけください。
サンゴの美しさにも感動
実はもうひとつ、驚かされたことがあった。
小笠原というと、ボニンブルーやシロワニ、イルカやクジラが有名で、サンゴ礁はあっても少し、いや、ほとんどないものだと思っていた。
すみません、大きな勘違いでした!!
父島周辺でも、ケータ列島でも、今回《FISH EYE》さんが連れていってくれた母島でも、サンゴの種類の豊富さ、サンゴ礁の広がりにびっくり。
予想していなかっただけに、本当に驚きだった。
これじゃ、中国船も深海サンゴを採取しに来たくなるわ……というのは悪い冗談だが、小笠原=サンゴ礁という新たな認識は、うれしい誤算。
嫁島「東の湾」の水深8~10mぐらいの海底を埋め尽くしていた膨大なボリュームのサンゴの仲間たち
こちらは父島の南側、「北一ツ岩」のサンゴ礁。ウケクチイットウダイの群れも見もの
サプライズがいっぱい!
ほかにもサプライズがたくさんあった小笠原取材。
そのいくつかは次の動画でご覧いただくことにして……。
ただ、取材班が撮影したサプライズは小笠原に普通にあるたくさんの自然現象のほんのわずかなもの。実際は撮影できなかったこともまだまだある。
皆さんも同じような、または全然異なるサプライズを味わいに、小笠原に行ってほしい。
小笠原のダイビングサービス
小笠原というロケーション自体の魅力はもちろんあるのだが、この偉大な自然を安全に楽しく潜らせてくれるのは、現地にあるダイビングサービスのおかげだ。
ダイビングスポットの開拓にしても、ダイビングのしやすい環境にしても、彼らなしに私たちは潜って楽しむことはできない。
現在、小笠原のダイビングサービスは父島に10軒、母島に1軒。
今回の特集は父島ということで、父島のダイビングサービスを紹介しよう。
父島のダイビングサービスのほとんどが、小笠原から東京に帰るときにやってくれるパフォーマンス「お見送り」。
おがさわら丸を追いかけて各サービスのボートが全力疾走で追いかけてくる様にじーんと胸が熱くなる
お見送りの最後は、船からジャンプ! ハッキリ言って命がけのジャンプです
動画でも“お見送り”をご覧ください!
『マリンダイビング』10月号でも
最新の小笠原特集を掲載! 併せてご覧ください。
- マリンダイビング 10月号
- ●3代目「おがさわら丸」就航!小笠原
- ●マンタの秋 石垣島
- ●手つかずの奇跡 奄美群島