2016年1月号
世界遺産 小笠原の海
憧れの小笠原諸島。秋は一年で一番透明度が良くなる季節。“ボニンブルー”と呼ばれる青を心ゆくまで堪能できる。海の中はより一層にぎやかになり、ダイバーにとっては最高のシーズンだ。アクセスやダイビングスポットはここでチェック!
世界遺産に認定された小笠原諸島
2011年、日本で4番目の世界自然遺産として認定された小笠原諸島。「これまで大陸と繋がったことのない海洋島のため、島にたどり着いた生物が独自に進化を遂げ特異な生態系を有していること 」が世界遺産として評価された理由。海はもちろん、美しい景色が見られる展望台やトレッキングツアーなど、さまざまな大自然と遊べる。
入り口となる父島までは“おが丸”で25時間30分の旅
小笠原には飛行場がない。よって、唯一のアクセス方法は《小笠原海運》の「おがさわら丸」、愛称「おが丸」のみ。小笠原に行く場合はとにかくおが丸の予約が最優先だ(予約方法は下へ)。
おが丸の出港場所は東京・竹芝桟橋。竹芝桟橋までのアクセスは、ゆりかもめ「竹芝駅」が隣接しているほか、JR山手線・京浜東北線の浜松町駅、もしくは都営浅草線・大江戸線の「大門」から徒歩約10分で到着する。時間に余裕を持って行こう。
竹芝桟橋を朝10時に出港し、そこから約25時間30分の船旅が始まる。父島・二見港に到着するのは朝11時30分だ。「そんなにかかるの!?」と初めて知る人はびっくりするかもしれないが、船内はかなり快適。24時間無料のシャワー、食事の種類が豊富なレストラン、オリジナルカクテルが飲めるデッキスナック、ビデオライブラリー、そしてお子さまがいる家族にうれしいキッズルームまで完備。一日ホテルで宿泊すると思えばまったく苦ではない。
なお、海況が悪いと結構揺れるので、船酔いが心配な方は酔い止めを持って行こう。
行程は6日間が基本
おが丸は毎日出港しているわけではない。船が竹芝桟橋を出発して戻ってくるまで(1航海)基本6日間かかる。そのスケジュールに合わせて予定を組もう。
1航海の場合、潜れるのは最大で4日間。もちろん2航海(基本12日間)滞在すればその分多く潜ることができるし、陸上観光もたっぷりできる。できれば長く滞在して、じっくり小笠原の自然を味わってほしい。
小笠原ダイビング旅行の日程
1航海 | 2航海 | |
1日目 | 1日目 | 10:00 竹芝桟橋出港(船中泊) |
2日目 | 2日目 | 11:30 父島着 午後2ボートダイビング |
3~4日目 | 3~10日目 |
終日2~3ボートダイビング |
5日目 | 11日目 | 午前1~2ボートダイビング 14:00 父島発(船中泊) |
6日目 | 12日目 | 15:30 竹芝桟橋着 |
台風が来た場合はどうする?
滞在中に台風が近づいた場合、小笠原での滞在日数・時間が短くなってしまうが、小笠原丸は台風が襲来する前に父島を繰り上げ出航する。また稀ではあるが、台風が東京・父島間の航路上をゆっくり北上する場合は、ひと往復欠航することもある。
温かい島の人の見送り
帰港日には、島人みんなが集まってお見送りをしてくれる。こんな感動的な見送りは小笠原ならでは!
世界遺産の海でダイビング!
9月に入ると透明度はグンと上がる。透明度30㍍は当たり前、良いときには50㍍見えることもあるというからすごい。
小笠原諸島で潜れるエリアは大きく分けて3つあり、一つは父島周辺。そして父島から約2時間遠征かけて向かう「ケータ列島」周辺。最後に父島から「ははじま丸」で2時間かけて行く母島周辺。ここでは、父島周辺とケータ列島の場合を見て行こう。
小笠原はボートダイビングが基本。朝出たら夕方まで戻ってこないデイトリップだ。朝は忘れ物がないように余裕を持って準備したい。スポットはドリフトダイビングになるところが多いので、ロープなし潜降や中性浮力など最低限のスキルを取得してから行くようにしたい。
見たい海をリクエストしよう!
父島とケータ列島のダイビングスポットをご紹介
小笠原の海はバリエーションが豊富。魚影は常に濃く、秋になるとギンガメアジなどの外洋性のアジやウシバナトビエイなどのエイがよく群れる。それに小笠原の周辺は沈船が非常に多く、沈船スポットも多数。サンゴや地形も豊富だ。
さらに9月はまだまだケータ列島に遠征できるチャンス。ケータ列島は父島の北側にある無人島の島々で、南風の吹く夏場が潜りやすい。9月はまだ夏の風が吹くので、海況が良ければその日の朝に「今日はケータに行こう」とチームの皆で相談して決める。だが、父島からボートで1時間30分~2時間ほど移動するため、一日に潜れる本数はだいたい2本と父島周辺に比べると少なくなる。しかし無人島だけあって迫力もひとしお。特に有名な「マグロ穴」はぜひ潜りたい。
父島とケータ列島でおすすめのスポットを上げるので、ぜひリクエストしよう!
父島周辺
ウシバナトビエイが乱舞する砂地
閂(かんぬき)ロック
別名HAZAMA。南島と父島の間にある水路を潜るスポット。水深30㍍の真っ白な砂地にマダラトビエイが舞うほか、秋には多いときで100尾以上のウシバナトビエイが乱舞。その迫力といったら現地サービスもイチオシだ。その周りをギンガメアジやイソマグロがとりまくこともありる。(撮影/小坂)
色とりどりの魚がいっぱい!
スターライトパレード
南北に伸びた2つの根の東側、小岩が点在するスポットで潜る。ヨスジフエダイやアヒメジ、ノコギリダイ、アジアコショウダイの群れなど、次から次へと魚が通り過ぎる。数が多いせいかあまり逃げないのでフォト派にもおすすめ。ウミウシやメガネゴンベなどの定番マクロも豊富。(撮影/小坂)
食事中のカメさんと会えるかも?
トライアングルブロックス
水深10㍍以浅に一面広がるサンゴ畑が美しい。周りにはチョウチョウウオやハナゴイ、ウメイロモドキが群れトロピカル。サンゴに癒されたあと、イソギンチャク畑へ。ここではスズメダイが乱舞しており、ウミガメが食事をしにくることも多い。(撮影/小坂)
楽しい回遊魚スポット
ドブ磯
亀裂がたくさん入った根の間にウメイロモドキやカスミアジ、ツムブリ、クマササハナムロなどが群れる。ときにイソマグロの編隊や写真のツバメウオの群れなど、大型回遊魚も狙える。過去にはジンベエザメやマンタ、ハンマーヘッドなど、超大物出現も!
青い海に群れるツバメウオは常連
赤岩
浅いサンゴ礁のスポット。ブイをとった真下でツバメウオの群れに遭遇する。そのほか岩礁に隠れてネムリブカがいたり、ハタンポやアカマツカサが群れていたり、固有種であるアカイセエビが登場したりとおもしろい。そのほかハマサンゴのアーチがあったりと、のんびり楽しめる。
初心者から楽しめる沈船スポット
バラ沈
バラバラになった沈船、その名も「バラ沈」。チェックダイブに使われることも多く、穏やか。沈船の周りにはツバメウオが群れていることも。水深20㍍付近の根にはキンメモドキやスカシテンジクダイ、ケラマハナダイ、キンギョハナダイなどが群れて非常に美しい。
穏やかで初心者OK
西島北
ゴロタの斜面がベースとなるポイント。地形の合間には固有種のアカイセエビが見られたり、スカシテンジクダイやキンメモドキが群生している。中層にはウメイロモドキや回遊魚も通る。沖のほうに進むとサンゴが広がり美しい。穏やかなので初心者でも潜りやすい。
鮮やかなハナダイが美しい
沖バラバラ
点在するサンゴの根の回りに、スカシテンジクダイ、キンメモドキのほか、キンギョハナダイ、ケラマハナダイが舞い、かなり美しい。ここでずっといたいくらいフォトジェニックだ。
人気のシコンハタタテハゼも
ひょうたん島
兄島の西側にあるスポット。体験ダイビングなどにも利用される穏やかなスポットで、1本目によく潜られる。いたるところにハタタテハゼがおり、だんだん水深を下げていくと20㍍付近と浅めに美しいシコンハタタテハゼ(ヘルフリッチ)がいる。浅場にはアジアコショウダイやツバメウオが群れる。
ケータ列島
絶対行きたい代表スポット
嫁島・マグロ穴
小笠原を代表する超人気スポット。水深10~16㍍のアーチに入ると50~100尾ものイソマグロがぐるぐると回遊する姿が見られる。群れの中にはカッポレやギンガメアジ、ウメイロモドキやクマササハナムロなどの回遊魚が混ざることも。周囲にはウミガメやイルカが現れることも多い。
ちなみに、「マグロ穴」と呼ばれるスポットはいろいろなところにある。
シロワニに高確率で会える
北の島・サメ穴
水深7㍍のほどの浅い砂地を囲むように岩礁が張り出している。地形と大物が楽しめるスポットで、ケーブ内にはスポット名の由来である大型のサメ、シロワニがうろついており、じっくり観察できる。体長1~2㍍と大きく歯がむき出しになっているので怖い印象だが、おとなしい性格なのでご安心を。
ウメイロモドキの群れがすごい!
タコ岩
「東のドブ磯、西のタコ岩」と称される父島周辺の2大回遊魚スポット。「コ」の字型をした根で流れてくるイソマグロやロウニンアジ、カマスサワラが、ウメイロモドキやクマササハナムロを目がけてミサイルのように突っ込むシーンは迫力満点。スコーンと抜けたボニンブルーが楽しめる。
ソフトコーラルもきれい
ボータ浅根
ボータとは、小笠原でウメイロモドキのことを意味する。その名のとおりエントリーするとすぐウメイロモドキの大群が。根を回るとコクハンアラやアジアコショウダイの群れ、岩の割れ目にはアカイセエビ、壁には生き生きとした大ぶりのソフトコーラルが見られ、フォトジェニック。
固有種のアカイセエビがたくさん
エビ団地
ケータ遠征しないといけない「四之岩」の近くにある。ここで見られるアカイセエビは体長50~60㌢と大きく、小笠原の固有種。狭い岩と岩の間を抜けるのだが、両脇に数百匹のエビがすむためエビのヒゲで頬をなでられながら進む。
マグロと地形が楽しめる
媒島(なこうどじま)・マグロ穴
媒島にあるマグロ穴。穴の中には運がよければ数十尾のマグロがぐるぐると旋回しており、迫力満点。出口となる大穴からは、青いボニンブルーの光が射して美しい。
ダイビングの夜はナイトツアーに参加を
ダイビングを終えた後、民宿や居酒屋で夕食を食べ、その後に楽しみたいのがナイトツアー。各ダイビングサービスやオプショナルツアー会社が催行しており、昼間とは違う小笠原の夜を探検する。固有種の植物を見にいったり、ここにしかいない大きなオガサワラオオコウモリを見たり、満点の星を見たり、貴重な体験ができる。ぜひ参加しよう。
ちなみに、ウミガメについて詳しく知りたいのであれば「小笠原海洋センター」がおすすめ。ウミガメを飼育し、生態の研究に努めている。夕方まで開いているので、ダイビングの直後に立ち寄ってもいいかも