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マリンダイビング海の環境特別企画
海洋調査船タラ号の挑戦①
タラ・プロジェクトの始まり

海洋調査船タラ号の挑戦

ダイビングのたび、私たちに感動をくれる海。ダイバーなら海を守りたい気持ちは皆同じ、温暖化や海洋汚染が気になりますよね。マリンダイビングウェブでも、ダイバーだからできる環境保全活動1Dive 1Clean upや環境保全活動の情報を発信していますが、実際に海はどんな状態なのでしょう? フランス発祥の海洋科学調査船「タラ号」の活動をご紹介する特別企画。まずはその成り立ちと活動内容を、タラ オセアン ジャパンにお聞きしました。

※2025年12月の情報です。

タラ・プロジェクトの始まり

全長36mのスクーナー船「タラ号」 Photo by Sacha Bollet

全長36mのスクーナー船「タラ号」 Photo by Sacha Bollet

フランスのアパレルブランド、アニエスベーの創設者アニエス・トゥルブレと、その息子エチエンヌ・ブルゴワが2003年、科学探査船を購入し「タラ号」と命名。「タラ」は長編時代小説『風と共に去りぬ』の主人公の故郷である農園からとったもので「いつでも帰りたくなる場所」という思いが込められています。プロジェクトはこのタラ号が、人間活動が海に与える影響を解明するための探査に乗り出したことに始まります。活動のために設立されたタラ オセアン財団は、フランスで初めて海洋に特化した公益財団法人に認定されました。タラ・プロジェクトは海をより深く理解するための探査と、その知見を社会の変革につなげるために広く共有することを使命としてきました。

探査の結果は学術誌で公開し、研究者も活用

タラ号はこれまで世界中の海を58万km航海し、13の大規模探査プロジェクトを実施してきました。そして、地球温暖化や海洋酸性化、マイクロプラスチックなど、環境変化が海にもたらす影響を多角的に明らかにしています。タラ号の調査で収集されたデータに基づいて発表された論文は5000本以上! 米国の『CELL』や英国の『Nature』など、国際的な学術誌にも掲載されています。収集したデータはすべて公開され、タラ号には乗船していない研究者の研究にも活用されています。

教育やアートを通じて海の重要性を社会に発信

タラ号が日本に寄港した際には、子どもたちに向けてタラ号乗船体験イベントも行われた Photo by Noelie Pansiot

タラ号が日本に寄港した際には、子どもたちに向けてタラ号乗船体験イベントも行われた
Photo by Noelie Pansiot

探査で得た最新の知見を社会に広く届けることにも力を注いでいる財団は、寄港地で子ども向けの教育プログラムや市民向けイベントを開催。これまで75カ国で15万人以上の子どもたちがタラ号を訪れています。

ダイバーでもあるアーティスト、ニコラ・フロックは「タラ号太平洋プロジェクト」でタラ号に乗船。東京から台湾の基隆(キールン)市まで「黒潮」 海流 に沿って航行した。こちらは喜界島の魚礁を捉えた写真作品。「黒潮 Black Current 」by Nicolas Flo’ch

ダイバーでもあるアーティスト、ニコラ・フロックは「タラ号太平洋プロジェクト」でタラ号に乗船。東京から台湾の基隆(キールン)市まで「黒潮」 海流 に沿って航行した。こちらは喜界島の魚礁を捉えた写真作品。「黒潮 Black Current 」by Nicolas Flo’ch

そんな活動の中でも特異なのが、アーティストが科学者と共に乗船し、環境を学びながら創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」制度。これまでに公募により選ばれた75人ものアーティストたちが航海で得た知識と経験をアート作品を通して社会に訴え、海の重要性を発信してきました。2017年には日本から初めて大小島真木さんが選ばれ、「タラ号太平洋プロジェクト」に参加しました。

大小島真木さんと、タラ号滞在中に描き上げた作品。この絵は「森の木々と同じように海のプランクトンなどの生きものが私たちが吸う酸素を生み出すこと」をまなび、私たちの肺は森と海からできていることを描いたという Photo by Noëlie Pansiot

大小島真木さんと、タラ号滞在中に描き上げた作品。この絵は「森の木々と同じように海のプランクトンなどの生きものが私たちが吸う酸素を生み出すこと」をまなび、私たちの肺は森と海からできていることを描いたという Photo by Noëlie Pansiot

2026年には気候危機の最前線での観測も始まる

北極圏をテスト航行するタラ極地ステーション Photo by Maéva Bardy

北極圏をテスト航行するタラ極地ステーション Photo by Maéva Bardy

タラ オセアン財団は国際的な働きかけにも積極的で、2015年からは国連特別オブザーバーとして、気候変動、生物多様性、公海条約、プラスチック汚染対策などに関する国際議論に貢献しています。
さらに2025年には、海洋研究の新たな拠点となる「タラ極地ステーション」を建造。気候危機の最前線である北極圏を20年間継続して観測することを目指し、2026年から初のミッションが始まります。

日本沿岸を巡るTara JAMBIOの海洋調査

Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査の様子 Photo by Tara Ocean Japan

Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査の様子 Photo by Tara Ocean Japan

2016年には、一般社団法人タラ オセアン ジャパンが設立され、フランス本部のミッションを継承しつつ、日本独自のプロジェクトを展開。2020〜2023年に日本沿岸のマイクロプラスチック汚染の実態を明らかにする「Tara JAMBIOマイクロプラスチック共同調査」を実施し、2025年に最初の成果論文が米国の学術誌に発表されました。2024年からは海藻・海草などブルーカーボン生態系の調査と啓発を行う「Tara JAMBIOブルーカーボンプロジェクト」を進めています。

タラ オセアン ジャパンの活動

2025年、宮城県女川で開催したイベントでは、ビーチクリーン活動も開催 Photo by Tara Ocean Japan

2025年、宮城県女川で開催したイベントでは、ビーチクリーン活動も開催 Photo by Tara Ocean Japan

タラ オセアン ジャパンでも、タラ号が寄港した2017年と2018年に多くの子どもたちを船内に招いて海洋探査の最前線に触れる機会を提供。その後も学校での出前授業や科学イベントなど、教育活動を積極的に行っています。2019年には香川県三豊市と連携し、地域に根ざした教育活動も続けています。また、米国の環境教育団体が制作したドキュメンタリー映画『マイクロプラスチック・ストーリー ~ぼくらが作る2050年~』の日本語吹替版も、アニエスベーやパートナーと共同制作。吹替版は啓発イベントなどに活用されています。

2025年に北海道・忍路(おしょろ)で行われた啓発イベントでは子どもたちが海藻に住む生きものを興味深く観察 Photo by Tara Ocean Japan

2025年に北海道・忍路(おしょろ)で行われた啓発イベントでは子どもたちが海藻に住む生きものを興味深く観察 Photo by Tara Ocean Japan

『マイクロプラスチック・ストーリー ~ぼくらが作る2050年~』の日本語吹替版を鑑賞した沖縄の子どもたち Photo by Tara Ocean Japan

『マイクロプラスチック・ストーリー ~ぼくらが作る2050年~』の日本語吹替版を鑑賞した沖縄の子どもたち Photo by Tara Ocean Japan

さらに2020年からはアートと教育をつなぐ取り組みとして、アニエスベージャパンとの共催で「タラ号ポスターコンクール」を実施。6回の開催で900人以上の子どもたちが海への思いを作品に表現しました。
Tara JAMBIOによるマイクロプラスチック調査やブルーカーボンプロジェクトでもアーティストが調査に同行し、関連作品展を開催。香川大学、東京藝術大学とも連携し、2025年11月には『芸術未来研究場展 2025』(東京藝術大学 大学美術館開催)でアート作品が展示されました。

タラ号ポスターコンクール2025で、タラ オセアン ジャパンの理事でもある世界的アーティスト日比野克彦さんの賞を受賞した作品

タラ号ポスターコンクール2025で、タラ オセアン ジャパンの理事でもある世界的アーティスト日比野克彦さんの賞を受賞した作品

いかがでしょうか? タラ オセアン ジャパンは、科学・教育・アートを結びつけながら、人々が海を理解し、未来のために行動できる社会の実現を目指して活動を続けています。そんなタラ オセアン ジャパン、実は2026年マリンダイビングフェアに出展することになりました。マリンダイビングウェブでも特別企画として不定期で連載する予定です。次回は、現在も進行中の「Tara JAMBIOブルーカーボンプロジェクト」をご紹介します。お楽しみに!

文/タラ オセアン ジャパン広報
構成/西川重子