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環境保護2025.10.23

日本はマイクロプラスチックのホットスポット!?
タラ オセアン ジャパンが日本沿岸海域の
マイクロプラスチック調査を発表

海洋科学調査船「タラ号」(フランス公益社団法人タラ オセアン財団)をご存じでしょうか? 地中海をはじめ、世界各地で22年にわたり海洋調査を続ける全長36mのスクーナー船です。2017年には太平洋のサンゴ礁を研究するプロジェクトで日本にも寄港し、話題になりました。そのタラ号プロジェクトを率いるタラ オセアン財団の日本支部、タラ オセアン ジャパンが2020年から日本沿岸海域のマイクロプラスチック調査を行ない、その分析結果を10月8日、オンライン説明会で発表しました。

マイクロプラスチックは主に5mm以下のプラスチックの欠片。化石燃料で作られるプラスチックは変貌自在で便利ですが環境や人体に有害で、自然界に放出されると分解に途方もない時間がかかります。さらに海に漂う有害物質を吸収する性質もあることがわかっています。
海を愛するダイバーとしては海洋汚染が心配ですが、マイクロプラスティックを食べた魚を大型魚が捕食し、その魚を私たちが口にしていると考えると、健康面も不安ですよね? プラスチックの大量消費国である日本の近海は、残念ながら世界の知見者からマイクロプラスチックのホットスポットと考えられています。

日本沿岸海域で行われた調査と解析の結果は米国化学会の学術誌 Environmental Science & Technology に2025年8月11日に掲載された(Photo by Tara Ocean Japan)

日本沿岸海域で行われた調査と解析の結果は米国化学会の学術誌 Environmental Science & Technology に2025年8月11日に掲載された(Photo by Tara Ocean Japan)

 
タラ オセアン ジャパンは主にJAMBIO(Japanese Association for Marine Biology)の臨海実験所を利用し、1カ所あたりに約1週間をかけて約3年間で北海道から沖縄の15カ所の表層水、堆積物を採取。同時に、約4年かけて解析し、今回の結果を導きました。プロジェクトチームの理学博士シルバン・アゴスティーニ氏によると「日本沿岸の海域の表層水では1㎢あたり約300gのマイクロプラスチックが検出されました。これは地中海沿岸と同程度の濃度です。さらに、世界でもデータが少ない堆積物の結果は、1㎢あたり平均で約1.2tの濃度でした。最も多かったのはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンといったポリ素材。加えて堆積物ではPET、塩ビ、ポリアクリルなど、すぐに水に沈む素材も確認されました。沿岸から離れるほどに小さくなり、紫外線や波浪で劣化したプラスチックは素材解析できないものも少なくありません。今回の結果では沿岸に近いほど濃度が高く、日本沿岸海域のマイクロプラスチックは陸に起因するといえます。また、人口が少ない沿岸海域でも高い濃度が検出され、こちらは養殖業が発生源と考えられます」

約3年にわたり行われた調査拠点(提供:Tara Ocean Japan)

約3年にわたり行われた調査拠点(提供:Tara Ocean Japan)

 
今回の結果で、私たちの生活が日本沿岸海域のマイクロプラスチックの発生源であることが改めて証明されることとなりました。タラ オセアン財団のエグゼクティブディレクター、ロマン・トゥルブレ氏はこう締め括りました。
「日本は一人あたりのプラスチック消費率がアメリカに次いで高く、それでいて世界の国々と比較してペットボトルの回収率(9割超)やリサイクル率も8割と高い特殊な国です。しかしこの結果が出たことをよく考えてみてください。皆さん自身の健康に関わることでもあります。適切な処理も100%とは言えず、汚れたペットボトルや発泡スチロールなどリサイクルが難しい製品も少なくあ
りません。つまり、プラスチックの生産、消費を減らすのが最も有効な方法ではないでしょうか?」

タラ オセアン ジャパンはJAMBIOと共に日本沿岸の藻場調査などブルーカーボンプロジェクトも進めているほか、タラ号も新たなサンゴ礁調査のため、8年ぶりに日本に寄港する計画もあります。今後もマリンダイビングウェブで随時、お伝えしていく予定です。

ライター:西川重子
編集:田中あきこ

  

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