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ダイバーなら知っておきたいサンゴのこと
第4回:サンゴ礁のある海

ダイバーなら知っておきたいサンゴのこと

沖縄の島々では5~6月、九州・四国や紀伊半島では7~8月、サンゴの産卵の神秘的な様子が話題となりますが、サンゴって何でしょう?
サンゴやサンゴ礁(※)が地球の環境を守る大事な存在だということは今や小中学校でも学ぶのでご存じの方も多いでしょう。ダイバーなら知っておきたいサンゴのことを6回連載でお届けします。

※サンゴとサンゴ礁の違いについては連載第3回をご覧ください。

※2024年1月現在の情報です

ぬくぬく温かい海域にサンゴ礁はある

赤道に近い海域に広がるサンゴ礁

赤道に近い海域に広がるサンゴ礁

サンゴ礁は南の島のトロピカルな海に広がっているイメージがとても強いのではないでしょうか。確かにサンゴ礁の世界的な分布を見るとそのとおりで、年間を通して最も気温の高い赤道付近を中心に北回帰線(北緯23度26分)と南回帰線(南緯23度26分)の辺りがサンゴ礁が生息する北限、南限と考えられてきました。沖縄の島々はそれよりさらに北にありますので、全体的に南北にもう少し分布は広がっていて、国立研究開発法人国立環境研究所によれば、平均水温が最も冷たい月でも18℃以上ある暖かい海域にサンゴ礁は分布しているといいます。
近年は温暖化現象により海水温も上昇し、日本では長らく鹿児島県の種子島がサンゴ礁の北限といわれていましたが、2010年代に長崎県の壱岐島のサンゴ礁が北限にとって代わっています。
でも、サンゴ礁というのはぬくぬくあったかい海が好きなんですね。

沖縄の島々は世界でも5本指に入るサンゴ礁天国

ユビエダハマサンゴの大群落も!

ユビエダハマサンゴの大群落も!
Photo by Marine Photo Library

サンゴ礁を語るときに声を大にして言いたいのは、世界中の海の中でもサンゴ礁の美しさは日本はトップクラス!ということ。エダサンゴやテーブルサンゴ(ともにミドリイシの仲間)のものすごい広がりや、英語でいうところのCabbage Coral(リュウキュウキッカサンゴなど)の群生など、種類も数も豊富で、世界で5本の指に入るといってもいいほど。
日本でサンゴ礁が見られるのは沖縄本島や伊是名・伊平屋島から八重山諸島までの沖縄県、奄美群島から北の鹿児島県の島々。近年まではこの鹿児島県の種子島が日本で見られるサンゴ礁の北限とされていましたが、2021年、長崎県の壱岐島にキクメイシの仲間の“サンゴ礁”が発見され、最北のサンゴ礁ラインがぐっと上がることに。これは世界的に見ても最北源のサンゴ礁といわれています。

またサンゴ礁とはいえませんが、サンゴの群落は九州、四国、日本海の隠岐島や紀伊半島、伊豆半島、房総半島でも多く見られるようになっています。地球温暖化の影響も大きいでしょうが、第3回の中でも書きましたが、地球環境の保全に重要な役割を担っているサンゴ礁。大切に見守っていきたいものですね。

世界最大のサンゴ礁はグレートバリアリーフ

グレートバリアリーフへの玄関ケアンズの北東にある「エイジンコートリーフ」。固有種のクマノミ、スパインチークアネモネフィッシュが、サンゴ礁の隙間に生息するイソギンチャクに

グレートバリアリーフへの玄関ケアンズの北東にある「エイジンコートリーフ」。固有種のクマノミ、スパインチークアネモネフィッシュが、サンゴ礁の隙間に生息するイソギンチャクに
Photo by Marine Photo Library

一般常識ですが、世界最大のサンゴ礁といわれるのはオーストラリア北東部沿岸に南北2,300km以上にわたって連なる「グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)」(以下、GBR)です。バリアリーフ、つまり「裾礁(きょしょう)」ですね。
世界最大といっても、ひとつのサンゴ礁が最大なわけではなく、2,900以上ものサンゴ礁が2,300km、34万4,400平方kmもの海域に散らばっています。日本の北海道から九州まですっぽりと入るぐらいといえば、その大きさが理解できるでしょうか。
GBRに生息しているサンゴの種類はソフトコーラルも含めると400~500種といわれます。その周辺には1,600種を超える魚種がすみ、イルカやクジラ、ジュゴンなどの哺乳類やウミガメからウミウシまでたくさんの海の生きものが生息しています。こんなに生きものが多いのは豊かなサンゴ、サンゴ礁のおかげといえます。

世界で最もサンゴが豊富なコーラルトライアングル

コーラルトライアングルは600万平方kmもの海域から成っています

コーラルトライアングルは600万平方kmもの海域から成っています
WWFより引用

コーラルトライアングルの東端、パプアニューギニアのキンベ湾。この海域は水温が30℃以上になってもサンゴが元気なのも特徴です

コーラルトライアングルの東端、パプアニューギニアのキンベ湾。この海域は水温が30℃以上になってもサンゴが元気なのも特徴です
Photo by Marine Photo Library

「コーラルトライアングル」という呼び名は10年以上前からダイビングエリアを紹介するときに使われています。インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、ティモール島などに、少なくとも500種以上の造礁サンゴが生息しており、これらの地域を結ぶとほぼ三角形になるということでWWFが名づけたもの。調査によって地球上に生息する798種のうち76%(605種類)のサンゴがこの海域に生息しており、特に西パプア(インドネシア)の「Bird’s Head Peninsula(鳥の頭のような形をした半島)」の周辺海域では574種ものサンゴの生息が発見されていて、さらにその中でラジャアンパット諸島では553種ものサンゴが生息しているといいます。
世界最大のGBRに生息するサンゴが400~500種ですから、これだけサンゴの種類が多いのは世界で一番といえます。また、サンゴの種類だけでなく、サンゴ礁も多く形成されていて、これまた世界最多といえる魚類や哺乳類、海岸生物たちの宝庫となっています。

環礁で有名なモルディブもサンゴ礁の宝庫

上から見るサンゴ礁も美しい

上から見るサンゴ礁も美しい
Photo by Yukari Goto

浅瀬から水深20m以深まで美しいサンゴが集まっています

浅瀬から水深20m以深まで美しいサンゴが集まっています
Photo by Yukari Goto

ネックレスのようにサンゴ礁が連なる状態を「環礁(Atoll)」といいますが、このAtoll(アトール)はモルディブの言葉ディベヒ語が語源。まさにインド洋のほぼ中央に位置するモルディブの90%以上が環礁島でできているからです。
調査によるとモルディブには約250種のサンゴが生息しており、2,000種を超える魚種が生息しているといわれています。南北約860km(東西最大118km)もの海域とはいえ、世界的に見たらさほど広くはない海域にこれだけ多くのサンゴや魚が潜んでいるモルディブは、やはりサンゴ天国なのかもしれませんね。

紅海やペルシア湾にもサンゴ礁

アフリカ大陸とペルシア半島に挟まれた紅海でも美しいサンゴ礁が広がっています

アフリカ大陸とペルシア半島に挟まれた紅海でも美しいサンゴ礁が広がっています
Photo by Marine Photo Library

広大なペルシア半島の周りもサンゴ礁が生息する海域として知られています。北限ギリギリではありますが、その美しさは格別。特にエジプトの海域ではクストーの大冒険によってダイビングの歴史はわりと早くスタートしていて、ダイビングスポットも早々と開拓されてきました。その多くでサンゴ礁も発見されたのです。
砂漠の大地の向こう側にある、青い海中にこんなに素晴らしいサンゴの楽園があるだなんて、誰もが驚いたことでしょう。

パラオやチュークなどミクロネシアの島々のサンゴもスゴイ!

日本から近いグアムの海にもキャベツコーラル(リュウキュウキッカサンゴ類)の大群落が

日本から近いグアムの海にもキャベツコーラル(リュウキュウキッカサンゴ類)の大群落が
Photo by Marine Photo Library

北太平洋から赤道付近にかけて広がるミクロネシアの島々。パラオやグアム、サイパンなどが含まれていて、最も東のマーシャル諸島まで、多くの島々の周辺にサンゴ礁が群生。島にもよるけれど、その種類も豊富で、パラオの名前が付いたパラオハマサンゴの群落は、ポンペイやコスラエで驚くほどの大群落を成しています。また、グアムやサイパンでは少ないテーブルサンゴやエダサンゴなどミドリイシの群落は、特にマーシャル諸島やキリバス諸島の浅瀬で、世界トップクラスの生息域を広げています。

南太平洋の島々のサンゴ礁は?

世界第二の大きさといわれるニューカレドニアのバリアリーフ

世界第二の大きさといわれるニューカレドニアのバリアリーフ
Photo by Marine Photo Library

ミクロネシアの島々の南側、いわゆる南太平洋と呼ばれる海域ではサンゴ礁はどうなんでしょう?
具体的にはタヒチ、ニューカレドニア、フィジー、バヌアツ、パプアニューギニア、ソロモン諸島などダイビングでも人気の島々が位置しています。
パプアニューギニアは「コーラルトライアングル」のところで紹介したように、サンゴのジャングルともいえるサンゴ礁密集エリアです。また、写真のニューカレドニアのように、主島が世界最大級のバリアリーフに囲まれているエリアも。フィジーも国際空港ナンディの西沖に広がる島々ではテーブルサンゴなどが大群生する海域が多数あります(が、主島の東側はどちらかというと、ソフトコーラルの大群生が有名です)。

赤道近くでもサンゴ礁が少ない海域も

タヒチ ツアモツ諸島ランギロアの「ティプタパス」では棚上にまばらにサンゴが生息しています。コーラルイーターでもあるウミガメ、タイマイも生息

タヒチ ツアモツ諸島ランギロアの「ティプタパス」では棚上にまばらにサンゴが生息しています。コーラルイーターでもあるウミガメ、タイマイも生息
Photo by Marine Photo Library

ほかにも赤道近辺にはカリブ海やハワイ、ガラパゴス諸島やココアイランドといったダイバーにも人気の海域がありますが、いわゆるサンゴ礁の美しさではあまり知られていません。サンゴは生息または群生していますが、テーブルサンゴやエダサンゴなどの群生がほとんどないのです。おそらく寒流などの影響で、サンゴ礁が生息できる海水温18~30℃を下回ることがあるためだと考えられます。流れが強すぎてサンゴが定着しない海域もあるかもしれません。南の島だからといって、美しいサンゴ礁が見られるわけではないということも知っておきましょう。

今回はサンゴ礁が生息している世界の海域を紹介しました。地球で人間が生きていくためにも大切なサンゴ礁だからこそ、ぜひ自分の目で見ていただきたいと思います! 次回もお楽しみに。

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ライター/後藤 ゆかり(MDWデスク)