テツ先生の新・海のいきもの
連載第8回 海の金魚 キンギョハナダイ

キンギョハナダイの幼魚 撮影地:三保真崎 水深7m 体長3cm
ダイビングのいちばんの楽しみ、生物観察。東海大学海洋生物学科准教授でインストラクターでもあるテツ先生が、独自の切り口で観察の楽しさや生物を解説してくれるシリーズ。今回は金魚のように色鮮やかで、ダイバーに人気のキンギョハナダイの登場です。
※2026年4月の情報です
英名はまさに海金魚

キンギョハナダイのメス 英名:Sea Goldie 撮影地:三保真崎 水深6m 体長10cm
Photo by Takashi Tetsu
今回は、第7回で紹介したソラスズメダイに匹敵するほどメジャーなキンギョハナダイを取り上げます。
英語の表記を調べようとして、何冊かの図鑑やフィールドガイドブックを見ると、これまでに類がないほど、たくさんの名称が示されています。
Orange basslet
Lyretail anthias
Jewel basslet
Jewel fairy basslet
Scalefin anthias
などなど、英語の地方名ではないかってほど、さまざまな記載があります。日本でも、地方名では「ウミキンギョ」と呼んでいる地域もあり、この魚がいかにいろいろな場所で親しまれているかが分かります。今回、英名と表記したSea Goldieは、まさに海金魚の直訳みたいな名称ですね。30年前はbassletがハナダイの表記によく使われていましたが、近年はanthiasが汎用的になり、キンギョハナダイについてはハナダイを示す英語すら適応されなくなっている点からみても、いかにキンギョハナダイがメジャーな存在か理解できると思います それでは生息環境や生態などの解説に入っていきたいと思います。
生まれた時はみんなメス

アカシマシラヒゲエビにクリーニングしてもらっているオスの個体 撮影地:三保真崎 水深22m 体長12cm
Photo by Takashi Tetsu
三保真崎で観察されるキンギョハナダイは、他のハナダイに比べて水深が浅く、5〜6mほどの岩礁で見ることができます。ただし、体のお掃除をしてくれるクリーナー(お掃除をしてくれるエビや魚)が深い場所にいる場合は、その場所まで降りてゆくこともあります。

口を開けるオス。エラを洗ったり、少しストレスを感じた時にこのような行動をします(あくびじゃないのヨォ) 撮影地:三保真崎 水深8m 体長12cm
Photo by Takashi Tetsu
他のハナダイの仲間と同じく雌性先熟(しせいせんじゅく)で、生まれた当初は全てメスです。繁殖期の前になるとオスの群れの中に比較的サイズの大きなメスが入っていき、性転換します。オスの特徴としては背ビレの第3棘(※1)が伸長し、全体的に色が濃くなります。
※1 前方から数えて3番目にある、硬く尖ったトゲ・棘条(きょくじょう)

胸ビレを広げるオス 撮影地:三保真崎 水深6m 体長15cm
Photo by Takashi Tetsu
胸ビレを広げると日本の国旗のような日の丸が左右にあらわれます。これは、東伊豆《ダイブファミリーイエロー》の川坂秀和さんが撮影したキンギョハナダイにインスパイアーされて撮影しました。以前、彼がオスを正面から撮って日の丸の中心のような斑紋を美しく表現した写真を掲載していたので、そのカットに魅了され、しばらく狙い続けてやっと撮れた画像がこれです(ヒデさん、ありがとうございます)。
群れの中心に一尾だけ、他とは違う子?

幼魚の群れのセンターにいるのはキンギョハナダイ 撮影地:三保真崎 水深21m 体長3cm
Photo by Takashi Tetsu
産卵のタイミングは、同じ環境にいるアカオビハナダイと同じなので、似たようなサイズの幼魚が混じり合います。

元気のないトゲトサカに群れる幼魚 撮影地:三保真崎 水深12m 体長2㎝
Photo by Takashi Tetsu
三保真崎におけるハナダイの水深分布としては、5~12mがキンギョハナダイ、10~16m付近がケラマハナダイ、12~20mエリアがアカオビハナダイ、12~24mの範囲にサクラダイが多く見られます。季節やオス・メス、成魚と幼魚などの違いによって、多少の誤差はありますが、幼魚期においては4種を同じ水深で同時に見ることが稀にあります。最近は、カシワハナダイの数も増えていて、他の種と同様に繁殖するようになれば、5種の幼魚を一カ所で観察するようなことになるかも知れません。これまで、おなじエリアでナガハナダイ、スジハナダイ、フタイロハナゴイも観察されていますが、カシワハナダイほどの定着が期待できる観察頻度ではないので、何年か後にこれらのハナダイの幼魚が一緒に観察できる日が来るのではないかと期待しております。
10年前は、ケラマハナダイのオスへの性転換や繁殖の北限は紀伊半島だと言われていましたが、今では駿河湾奥の三保半島でも観察できるようになりました。とはいえ、黒潮の蛇行が終息して、海の環境が徐々に過去に向かってタイムスリップを始めているので、ここ数年の生物の動向によって、環境の変化における生物の多様性が問われると思います。
Profile
鉄 多加志
Tetsu Takashi
1965年(昭和40年)生まれ 静岡市出身
東海大学海洋学部 海洋生物学科准教授
ダイビング歴41年、潜水時間約1万3800時間。
国内70数カ所、海外20数カ所を含む約100カ所で潜っている。「ひとつの知識と経験が、同じ場所の同じ風景、生物をもっと魅力的にする」というモットーの下、同じ場所に潜って観察を続けるダイバーで、潜水歴の約8割は三保真崎。大学でも、「好奇心を持ち続けることで、同じ風景や生きものが同じように見えることはない」という観点で履修学生を指導している。
専門は潜水法で「浅海域での長時間潜水時におけるEANガス使用の研究」、「水中遺跡(沈船)潜水調査における安全対策の検討」「水中遺跡(沈没船)調査における安全な潜水方法の研究」(いずれも東海大学海洋研究所研究報告)をはじめ研究論文は多数。
主な著書(共著)に、オーシャンエクササイズ、駿河湾学、海洋考古学入門(いずれも東海大学出版)、THE DEEP SEA(静岡新聞社)、図版 世界の水中遺跡(グラフィック社)などがある。










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