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【連載第3回】ファミリーで楽しむダイビング♪
最年少ダイバーいっか君の大冒険

最年少ダイバーいっか君の大冒険

「マリンダイビングWeb」では、多くの方々にダイビングを楽しんでいただきたいということで、新企画としてファミリーダイビングを提案! この連載では10歳からダイバーになったある少年の記録を追っていきます。
そこには、親子の絆や大自然相手にびっくりするほどの感動を覚えた少年の気持ちを素直に紹介。
こうご期待ください!
※最年少とは、10歳から取得できるジュニアオープンウオーターダイバーコースを修了した10歳ダイバーのことです。

YouTubeでも紹介しています!
「ダイビングスポット完全攻略企画始動!!【世界の果てまでイッカQ】」予告編

【連載】第3回
波左間のコブダイに会いに一人旅

いっか君こと中村逸華君

中村逸華

本名は中村逸華。2011年6月生まれの11歳です。5人兄弟の4番目で計7人という大家族。3人のお兄さんもお姉さんもダイバーだったこともあり、小さな頃から家族旅行の旅先は海。いっか君ももっぱらビーチで遊んだりスノーケリングをしていましたが、2021年6月、10歳の誕生日にダイビング講習を受け、見事ダイバーデビュー! 世界最年少ダイバー誕生となりました。

お父さんの創一郎さん

中村創一郎

ダイエットが目的でダイビングを始めたという中村創一郎さん。経営する会社にも「海部」を作り、社員を大勢ダイビングに引き込んでいます。5人のお子さまのうち末っ子の三男・ぜん君を除いてお子さま全員がダイバーに。「海は危険なところでもありますが、一方では事前や地球の素晴らしさを大いに感じられるところ。自然を通して子どもたちには地球を大切にする心をもってほしい」

マンボウと泳ぎたい!

2022年6月。いっか君は春に小学5年生になり、ダイビングのCカードを取得してから1年が経とうとしていた頃のこと。千葉県の館山市のダイビングエリア・波左間に憧れのマンボウがいるというニュースが届きました。ダイバーになったら会いたいと思っていた大型魚でお父さんに「波左間に潜りに行こうよ」とおねだりをしたのですが、お父さんは仕事が忙しくて行けそうもありません。でも息子の希望は聞いてやりたいと、東京でお世話になっているダイビングショップ《ココナッツ》のインストラクター、小林健治さんに聞いてみたところ、波左間ツアーを開催してくれることに。
お父さんとしては、「僕もマンボウは見たいし、一緒に行きたかったのですが、いっかがダイビングを始めて、去年の夏の西表島の後も何度か一緒にダイビングに行ってスキルもまあまあ身について成長してきたこともわかっていました。そして6月にはいっかの誕生日もある。そうだ! 誕生日に潜るというのもいいかもと、一人で送り出してみる決断をしたのです」と、胸の内を打ち明けてくれました。

ところが……出発日の1週間前に波左間ではマンボウを急遽海に放すことを決定。お目当てのマンボウはいなくなってしまったという悲しい知らせが……。

僕、コブダイにも会いたい!

波左間海中公園の「高根」には海底神社があって大きなコブダイも登場

波左間海中公園の「高根」には海底神社があって大きなコブダイも登場

いっか君はマンボウがいないという事実を知って少しショックだったようですが、潜りに行きたい気持ちのほうが勝っていたこともあって、自分で波左間の海のことを少し調べたようです。お父さんにどうするか聞かれた時に
「波左間には大きなコブを持ったコブダイもいるんだって! 僕、コブダイにも会いたい!!」と答えます。
「僕と一緒ではなくて一人で行くということも楽しみだったのかもしれないですね。自分でこれから行く海のことを調べるのって、ものすごい進歩で、びっくりしました」とお父さん。それならばと、喜んで送り出すことにしたのでした。

波左間海中公園に到着!

Movie by Yukari Goto

6月某日、いっか君は《ココナッツ》東京店の波左間ツアーに参加して朝8時半頃に波左間海中公園にやってきました。
「普段は起きるのが大変だけど、今日はちゃんと起きられた」と恥ずかしそうに胸を張るいっか君。インストラクターの小林さんが器材を車から下ろすのを手伝って(ちょこっと)、用意されたシリンダー(タンクともいいます)に器材をセットしていきます。去年の西表島の時もそうでしたが、BCを最初にシリンダーにセットするのを間違える癖は健在でしたが(^^)、間違いを教えてあげたら後はスムーズにセットができました♪
そしてウエットスーツを着た後に小林さんがブリーフィング。いっか君はジュニア・オープンウォーター・ダイバーなのでまだ水深12mまでしか潜れないため、コブダイに会える「高根」では、水深8mぐらいにある神社でお参りをして、鳥居のてっぺんを回って帰ってくるコース取りとなります。その間にコブダイに会えるといいのですが……。

ウエットスーツの最後の調整をするインストラクターの小林さん

ウエットスーツの最後の調整をするインストラクターの小林さん

海底神社でお参りも

《波左間海中公園》の荒川寛幸社長に案内されてお参りするいっか君

《波左間海中公園》の荒川寛幸社長に案内されてお参りするいっか君

ブリーフィング後、器材を装着してボートに乗り込みます。いっか君は行動が早くて、あっと言う間にボートに乗っています。
港を出港して約5分、「高根」に到着しました。ブイにロープをかけて……いよいよエントリー。この時もいっか君は何のためらいもなく、さっさとバックロールエントリーをしていきます。度胸がある子どもなんですね(←と思ったら、ちょっと船酔いをしていて、早く海に入りたかったのだそうです)。
ロープを伝いながら潜降していきますが、耳ぬきもしっかり行っていて、小林さんは見守るのみ。
今回ガイドしてくれたのは、《波左間海中公園》代表の荒川寛幸社長。コブダイの頼子がまだ小さな女の子だった頃から可愛がってきた方で、今や立派な男子になった頼子が唯一信頼を寄せるレジェンドダイバーです。その荒川さんが後から潜降してくるや、周囲にわらわらいた魚が一斉に荒川さんに集まっていきます。いくら地元の海とはいえ、こんな光景を見たことはありません。いっか君も驚いて見ています。
こっちこっちと呼ばれていくと、そこには小さいながらも由緒ある海底神社(※)が。いっか君も手を合わせてお参りをします。何をお願いしたのでしょう?
※波左間の海底神社は近くの洲崎神社を分社したもの。洲崎神社は古来、漁師にとっての漁業神、船乗りにとっての航海神として大事にされてきました。天比理乃咩命(あめのひりのめのみこと)が祀られています。

コブダイが目の前に!

お参りをしていると、なんと、コブダイの頼子が割り込んできた!

お参りをしていると、なんと、コブダイの頼子が割り込んできた!

荒川さんに促されて、いっか君も頼子のコブをなでなで

荒川さんに促されて、いっか君も頼子のコブをなでなで

実はふたりがお参りをしている時に、音もなくスーッと大きなコブを持ったコブダイの頼子が近づいてきていました。気づけばふたりの間に割り込んで荒川さんに近づいてきたのです。たぶん体やコブに付いたプランクトンを掃除してもらうために近づいてくるのかもしれません。荒川さんが頼子を抱くようにして体をなでたり、コブをなでたりすると、気持ちいいのか全然逃げていきません。
すると、荒川さんがいっか君の腕をつかんで、頼子のコブを触ってあげてとアイコンタクト。
「なんか、硬いのかと思ったら、ふわふわ、ぽよぽよしていました」
といっか君。あのコブは硬くないんですね。ゼリー状のものが中に入っているのかな。

海中神社を離れても逃げて行かない頼子。いっか君は念願のコブダイとのツーショットも撮れてとてもうれしそうでした。

巨大コブダイとツーショット

巨大コブダイとツーショット

レジェンドダイバー荒川さんにもいたく感銘!

鳥居の上でも荒川さんと記念撮影

鳥居の上でも荒川さんと記念撮影

その間も頼子は離れずに周りにいるのです

その間も頼子は離れずに周りにいるのです

荒川さんもいっか君のことがとてもかわいかったようでご機嫌

荒川さんもいっか君のことがとてもかわいかったようでご機嫌

会いたかったコブダイに会えて、しかもコブまで触らせてもらって、いっか君は大喜び。そして、コブダイが最初はメスで生まれて、成長してボスになる頃にオスに性転換する不思議な魚であることにも衝撃を受けていました。ますます魚の世界に惹かれていったようですよ。
さらに、ガイドをしてくれた荒川さんのこともかなり気になったよう。休憩中にショップ内に置いてあった波左間のDVDを観て、ものすごく感銘を受けたようです。
「(実際のダイビングでも)コブダイの頼子が荒川さんが潜ってきた途端にどこからともなくスーッと現れたし、ほかの魚も先に潜っていた僕の周りにいたのに、荒川さんが来た途端、そっちへざーっと行ってしまいました。波左間でマンボウやジンベエザメが見られるのも荒川さんのおかげなんでしょう? メガマウスとも去年?泳いでましたよね。すごい人と一緒に潜れて良かった」
といっか君。荒川さんもいっか君がとてもいい子で、ダイビングも上手だったこともあるのか終始ご機嫌です。
荒川さんといえば、世界でも知られる84歳の現役ガイド、レジェンドダイバー。11歳になったいっか君との年齢差は73歳! でも通じ合うところがあるんですね。

バースデーダイブで11歳をお祝い

垂れ幕を用意してくれた小林さん。思い出に残るバースデーダイブになったかな?

垂れ幕を用意してくれた小林さん。思い出に残るバースデーダイブになったかな?

忘れてはいけない! 当日は、いっか君のお誕生日です。1ダイブ目はとにかくコブダイに会ってもらおうとお祝いができなかったので、いっか君には内緒で2本目に水中お祝いを実施することに。スポットは同じく「高根」。浅く水深がとれるのでちょうどいいのです。
荒川さんに集まってくる頼子やほかの魚たちが邪魔をしてなかなか写真を撮るタイミングが難しかったのですが、小林さんが用意してくれたバースデーハットをかぶってもらい、垂れ幕を持って、はい、ピース! ようやく撮れました!!
この後も相変わらず近づいてくる魚や頼子。いっか君も持っていたGoProで撮影をしていました♪

頼子を撮るいっか君

頼子を撮るいっか君

おひとり様ダイビングも楽しめる余裕が

2ダイブを終え、のんびりお風呂に浸かりつつ、ランチを食べたと思ったら、お友達を招いての「バースデーパーティー」をやるために速攻帰って行ったいっか君。
同行した小林さんは
「行きも帰りもYouTubeにアップするためにいろいろ撮ったりしていて、だいぶ大人になってきていてびっくりしました。子どもなりにもいろいろ考えているんでしょうね。会うたびにしっかりしてきている印象があります。ダイビングも耳ぬきや潜降は問題ないし、中性浮力もとれてきていて、ものすごく成長しましたよね」と、いっか君の成長っぷりに驚いています。
11歳の誕生日に家族から離れてひとりでダイビングができるというのも、いっか君が大人への階段を上っていることの顕れですね。いや、スゴイ!
お父さんの中村さんも
「うちはほかの子どもたちにも自由で独立した環境に慣れるように育てているつもりなのですが、いっかもいつの間にかできるようになってきていることにびっくりしました。ひとりでダイビングに行かせて良かったなと思っています。でもまだ家族で楽しみたいですけどね(笑)」
と、目を細めながら語っています。家族とも楽しみながら、行きたい海を探して、現地で誰かと一緒になっても、楽しんで潜れるようになってほしいですね♪ でもまずはマンボウに会いにリベンジしてほしいですね!

親子で潜るファミリーダイブのメリット
1 自然を大切にする心を育てられる

中村さんがお子さまにダイビングをさせたかったのは「偉大な海に触れることで、自然を大切にするという思いが生まれてほしい」から。子どもは大人よりも感受性が高いので、確実にお子さまの心に実際に目で見た貴重な自然の大切さが芽生えていることは間違いありません。

2 親子で共通の体験ができる

子どもと一緒にダイビングをするということだけで「共通の趣味を持つことができ」、厚い信頼関係が生まれることに。しかも普通はできない経験を緒にやるといい思い出に。子どもも「だからまたお父さんまたはお母さんと潜りに行きたい」と思ってくれるようになります。

3 子どもの成長を間近で見られる

ダイビングはスピードやタイム、体力を競うようなスポーツではありませんが、器材セッティングや装着、潜降から浮上まで様々なスキルを身につけて上達していくものです。お子さまと一緒に潜るとその上達、成長っぷりを間近に見ることができます。普段は学校などの中で育っていくお子さまがどんな風に問題を解決していくかなども見ることができますので、楽しみがまた増えること間違いありません。その分、安全面での心配もあるでしょうが、それを忘れさせてくれるぐらい、成長が感動となるのでは?

4 親子の信頼関係がアップ

お父さんのほうがダイビングを早く始めて上達している場合は、お子さまをガイドさんがしっかりと見てくれるスタイルになって、バディダイビングをしている感じにはまだなかなかなれませんが、いっか君のようにひとりで潜りに行くこともできるようになれば、成長して、お父さんとバディを組んで潜る計画を立てるところからダイビングを楽しむことができるように。こうなると、親に対する信頼感もアップ。お父さん(お母さん)と一緒にバディダイビングをすることで親と潜ることの安心感がお子さまの中で確実に大きくなっていくこと間違いありません。

5 お父さん・お母さんもダイビングの良さを見直せる

お子さまがダイビングを楽しんでいる様子を間近に見つつ、気づけばご自分もすっかり海の魅力にハマッていた……。中村さん親子の場合もまさにそのようです。こんなふうにお子さまと一緒にダイビングを楽しみつつ、その魅力を改めて感じられるのが親子ダイビングのメリットともいえます。特にお子さまが10歳になって久しぶりにダイビングを再開……というご両親であればなおさらその感慨は深いのでは?

6 旅行先は海に決定! 迷いがなくなります

家族全員がダイバーなら旅行に行くのは海! 中村さんご家族の場合は末っ子のぜん君がまだ10歳未満ですので全員とはいきませんが、お母さんもいっか君の上に3人いるお兄さんやお姉さんも皆ダイバー。お休みには必ずダイビングのできる海が選ばれることになるようです。行先選びに迷わないのも大きなメリットですよ。

お世話になりました!
波左間海中公園

波左間海中公園

千葉県房総半島のほぼ最南端、館山市の洲崎の手前に位置。東京から車でもバスでも電車でも約2時間と近い。太平洋から流れてくる黒潮の影響と、東京湾から流れてくる栄養分豊かな海水が交わり、思いがけない超ド級の大物からマクロ生物まで多様性に非常に富んでいるのが特長。マンボウやジンベエザメと泳げる「マンボウランド」も不定期でオープン。

〒294-0307 千葉県館山市波左間1012
TEL:0470-29-1648
FAX:0470-29-1647
E-mail: o_hasama@mvc.biglobe.ne.jp
ホームページ http://hsmop.web.fc2.com/index.html

波左間の海情報満載の「『おいしい空気』でダイビングしよう~波左間海中公園~」特集も併せてご覧ください。

では、次回もお楽しみに~♪

(文/後藤ゆかり)

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【世界の果てまでイッカQ】衝撃!決死のダイブで飛び込んだ海は神秘的過ぎた!