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地球の海フォトコンテスト2020
ネイチャー・環境部門 上位入賞作品

グランプリ

瞬撃、ストライプドマーリン

瞬撃、ストライプドマーリン

大坪 純/神奈川県

キヤノンEOS80D シグマ10-20㍉F4-5.6EX DC MDX-80D 自然光 f5.6 1/400秒 ISO640 
メキシコ 水深1㍍ 2019年11月

大坪 純/神奈川県グランプリ受賞は、写真を始めたときからの目標だったのでとても嬉しいです。この写真はストライプドマーリン(マカジキ)の捕食シーンです。ストライプドマーリンと聞くと常に縞模様が出ていると思われるかもしれませんが、これほど鮮やかな縞模様が出るのは捕食時の特徴で、平常時は薄くなります。捕食の瞬間は非常に高速で、イワシも必死に逃げている様子がわかり、イワシとカジキの命をかけた戦いに圧倒されます。この素晴らしい光景が見られる環境がいつまでも続いてほしいと思います。

審査員作品評

福永友保

縞模様のマーリンの迫力、襲われて飛び散るように逃げる小魚、そんな生態上のおもしろさがギュッと凝縮されています。よくぞこういうシーンを捉えてくれました。自由部門ではなく、ネイチャー・環境部門に応募したのは正しい判断でしょう。

窪寺恒己

なんという躍動感! カジキという被写体にも驚きましたが、魚群を襲撃する際のスピード感が素晴らしい。このアングルで撮影できたからこそでしょう。おそらく興奮しているからか、魚体に斑(まだら)模様が浮き出ていますね。これもなかなか撮れるものではないでしょう。グランプリとして十分価値がある写真だと思います。

瀬能 宏

これは文句なしです。構図に迫力があり、総合的にレベルの高い作品であることは誰でも認めるところでしょう。そもそもカジキの仲間は普通、漁港や市場で鮮魚の姿でしか見る機会はありません。このように生きた姿を鮮明に撮るということは非常に難しいし、撮影が困難だったからこそ、生態的なこともわからなかった。例えば、この縞模様はカジキが興奮していることを示しているのでしょうが、同時に逃げる小魚に対しては分断色として目くらまし効果があるのかもしれません。捕食時にこういう特別な色彩をバッと発色するのだということが、写真として記録されたのは素晴らしいことだと思います。

木村麻里子

かっこいいです! 向こうから猛スピードで突っ込んで来るカジキ、逃げる小魚。画面いっぱい躍動感にあふれているのに、まるでピタッと時が止まったかのよう。それでいて動きを感じられるのが不思議です。一瞬を切り取る、まさに写真が持つ力でしょう。

準グランプリ

宇宙ステーション(共生)

宇宙ステーション(共生)

市村賢二/神奈川県

ニコンD810 AF-Sマイクロニッコール60㍉f/2.8G ED MDX-D810 YS-D1×2灯 f18 1/250秒 ISO800 静岡県・大瀬崎 水深1㍍ 2019年12月

市村賢二/神奈川県撮影当日は、大瀬崎の湾内にいい潮が流れ込んでおり浮遊系生物であふれかえっていました。それらの被写体を無心で撮影する中、表層に触手の長い大きめのクラゲとそれに共生する美しいハナビラウオを発見しました。ハナビラウオがそのクラゲの中を自由にキビキビ泳ぎ回っている姿を〝漆黒の宇宙空間に漂う宇宙ステーションとその乗組員〟のようにイメージしながら撮影することができました。今後もこのような素敵な出会いを求めて潜りたいです。

審査員作品評

瀬能 宏

色味や構図は申し分なく、生態写真としておもしろい作品です。クラゲウオやハナビラウオの仲間(写真)がクラゲに付いて身を守ることはよく知られた事実で、この写真はそれが非常にわかりやすく記録されています。1尾がきちんと傘の下に入っている様子、魚の特徴となる体形もわかるし、背ビレが2つあることや尻ビレの鰭条まで鮮明に写っています。しかも、クラゲの複雑な触手もきっちり写し取られています。

木村麻里子

幽玄、という言葉が浮かびました。白と黒のコントラストが印象的で、クラゲの優美な姿が幻想的。これは現実の生物なのかと一瞬迷ってしまう作品です。クラゲだけではなく、一緒にいる魚も透明なのですね。素直に美しいと思います。

第3位

ちっちゃな命

ちっちゃな命

島田 暢/東京都

キヤノンEOS5DMarkⅣ EF100㍉F2.8L マクロ IS USM シーアンドシー Z-240×2灯 f7.1 1/60秒 ISO200 インドネシア・レンベ 水深10㍍ 2018年9月

島田 暢/東京都生き物好きにとって、特にタマゴの観察はとても素敵な時間。その魅力は癒しや儚さ、可愛いらしさ、そして生命の神秘・・・・。今回の写真は、マックダイビングで有名なインドネシア・レンべで撮影しました。その日は透明度が悪く、決して良い状態ではなかったのですが、バックの色で神秘さを表現できたと思います。今回の受賞をとてもうれしく思います。審査員の先生方ならびに、現地ガイドの〝ハニー〟にお礼を言います。ありがとうね。

審査員作品評

窪寺恒己

これはイカの卵嚢(らんのう)です。内部の一個一個が卵で、すでに眼はできていますが、大きな卵黄を抱えているので孵化(ふか)はもう少し先でしょう。周囲には卵を保護するゼラチンがあり、さらに外側を膜でくるんでいます。こういった卵嚢を産むのはヤリイカ科の仲間なのですが、表面がこれほど直線的な卵嚢は日本産の種類では見たことがありません(ヤリイカやケンサキイカはチューブまたはソーセージ状となる)。撮影地がインドネシア・レンベということなので、アジアジンドウイカ(ヤリイカ科の小型種)あたりではないかと思いますが、もう少しひいて卵嚢全体を見たいところです。

優秀賞

入賞作品のうち、特に審査員の心に響いたもの、または最後まで上位入賞を競った作品です。

珊瑚と泡の共演

【環境大臣賞同時受賞】
珊瑚と泡の共演

牧野秀明/東京都

オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ ZUIKO DIGITAL ED8㍉F3.5 Fisheye PT-EP14 UFL-3 f10 1/250秒 ISO200 フィリピン 水深5㍍ 2019年10月

審査員作品評

木村麻里子

元気なサンゴとカラフルで美しい魚たち、サンゴの隙間を通り抜けてダイバーのエアが泡となってキラキラと水面に昇っていく。とても美しい情景、いろいろな生き物が暮らす豊かな生態系を映している、という理由でこの作品を推しました。また、こうしたサンゴ礁を将来に渡って残していきたいです。この作品を見た方たちが同じように感じて、海の生態や地球環境について考えてくれるといいな、と期待しています。

Eel Larva X-Ray

Eel Larva X-Ray

Vania Kam/香港

ニコンD750 AF-S マイクロニッコール 60㍉f/2.8G ED ノーティカム Z-240 f18 1/250秒 ISO400 フィリピン・アニラオ 水深2㍍ 2019年3月

審査員作品評

瀬能 宏

アナゴの仲間の稚魚ですね。まず言えることは、筋節や消化管の構造などが鮮明に見えるところがいい。透明な生き物を鮮明に写すには、背景の処理や光を当てる方向に工夫が必要です。もう一つ大きなポイントは、体をコイルのように巻いている点です。細長い魚はクネクネと泳ぐか、または体をまっすぐ伸ばしているというイメージがありますが、クリッと巻いた状態で定位することがあるという事実は、生態的に重要な発見です。身を守るための行動なのか、ほかに何か意味があるのかはわかりません。このグループの稚魚の写真がたくさん集まってくれば何か新しい解釈ができるかもしれません。

Mola Mola

Mola Mola

吳永森/台湾

ソニーα7RⅢ SEL1224G Seacam silersonyA7r markⅢ Seacam Seaflash150Digital f6 1/100秒 ISO640 インドネシア・バリ島 水深35㍍ 2019年9月

審査員作品評

福永友保

ハタタテダイがマンボウをクリーニングしているシーンということで、この部門にぴったりの作品ですね。そして被写体のマンボウは形といい表情といい、存在そのものがユーモラス。「いかにも熱帯魚」という風体のクリーナーが踊るように群がり、撮影者も楽しかったでしょうし、写真を見る私たちもつい微笑んでしまう作品です。バックを真っ黒に落とし、被写体だけクローズアップしたのも効果的。マンボウが斜めに配置されたおかげで躍動感もあります。

食べられちゃう!

食べられちゃう!

寺本英仁/島根県

パナソニックG9Pro M.ZUIKO DIGITAL ED7-14㍉F2.8PRO プルーフ 自然光 f8 1/320秒 ISO400 島根半島 水深3㍍ 2019年8月

審査員作品評

窪寺恒己

海面の光と画面下半分のブルーのグラデーションが美しく、最初に見たときから「素晴らしい」と感じた作品です。日本海の大型クラゲですから、エチゼンクラゲでしょうか。それがウマヅラハギの仲間に食べられているところで、同じ「クラゲと魚」という被写体でも準グランプリの作品とは違い、食う食われるという関係が記録されています。クラゲの触手の1本1本も繊細に写し撮られていて、大きく伸ばしたら迫力が出るでしょうね。個人的には、もう少し引いて撮ってほしかったかな。

生きる力

生きる力

村口智一/愛知県

ニコンD750 AF-S VR マイクロニッコール 105㍉f/2.8G ネクサスD750 S-2000  f11 1/250秒 ISO100 フィリピン・セブ島・マクタン 水深10㍍ 2019年10月

審査員作品評

窪寺恒己

生き物の不思議さが伝わってくる作品です。おそらく指先程度のものを撮っていると思いますが、構図もいいし、光もよく当たっていてわかりやすい。撮影者によると、オオアリモウミウシがバロニア(海藻)の中で育っているシーンとのこと。私は初めて見た生態ですが、とても興味深いですね。緑の粒々は葉緑素なのかな、ほかにも何だろうな、線虫のようなものが見えます。この小さな世界にも生き物の世界が広がっているのですね。

エリア賞

世界の素晴らしい海の中から、特にダイバーに人気の高いエリア名を冠した特別賞です。ネイチャー・環境部門からは、伊豆諸島賞とパプアニューギニア賞の2賞が選出。

考える人

パプアニューギニア賞
考える人

足立 厚/神奈川県

ニコンD750 AF-Sニッコール18-35㍉f/3.5-4.5G ネクサス S-2000 f9 1/250秒 ISO200 パプアニューギニア 水深15㍍ 2018年1月

Rendezvous

伊豆諸島賞
Rendezvous

鳥海貴之/埼玉県

ニコンD810 AF-Sマイクロニッコール60㍉f/2.8G ノーティカム Z-240 f9 1/800秒 ISO1600 東京都・八丈島 水深4㍍ 2018年8月

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