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地球の海フォトコンテスト2020
自由部門 上位入賞作品
グランプリ
小さなgalaxy
齋藤利奈/大阪府
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED60㍉F2.8マクロ PT-EP14 S-2000 f3.5 1/200秒 ISO200 インドネシア・ラジャアンパット 水深10㍍ 2019年5月
遠路遥々インドネシアの秘境へ行き、真っ暗な海の中に入った私を魅了したのは「どこにでもいる普通のイカ」。キラキラ反射する7色の光、宝石のように艶やかな角膜……。まるで深く広がる宇宙のようでした。とはいえ、肉眼で見る限りは「ただのイカ」。一緒に潜っていた仲間に紹介するも、全く伝わらず……。「この素敵な世界を見てー!!」という一心で、試行錯誤しながら撮りました。カメラを持つことで見えなくなってしまうものもありますが、ファインダーを覗くからこそ気付く、魅力的な世界を見つけていければと思います。
審査員作品評
福永友保
イカの姿や色を美しく撮るという作品は今までもありました。ところが、この作品は眼に何かを表現させています。私が感じたものは夜空の星座です。イカの眼に宇宙を表現するという発想に参りました。泳ぐイカの眼をクローズアップしたうえシャープに撮るなど、テクニック的にも素晴らしい。また、周囲のドット模様がアウトフォーカスとなっていることも写真表現として効果的でした。
高砂淳二
一瞬「なんだコレ?」と思いました。よく見るとイカの眼のアップとわかりますけれど。カラフルな色素胞が散らばっていて、その真ん中に黒い目玉がある。撮影者はその内部に宇宙空間を見たのでしょう。すごいところに目を付けましたね。しかも、正面ではなく斜めから眼を撮っているから、画面全体がまるで極彩色で明るい銀河系のように見えます。縦位置にしたことも効果的でした。今回、技巧的な作品も多かったのですが、これは撮影者の視点が勝ち取った正当派アート作品だと思います。
準グランプリ
光国の使者
西尾彰文/岐阜県
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED12-40㍉F2.8PRO ノーティカムEM1Ⅱ S-2000 f5.6 1/250秒 ISO200 三重県・梶賀 水深7㍍ 2019年8月
大変名誉ある評価をして頂き、ありがとうございます。この時は《梶賀ダイビングサービス》伊藤さんとアオリイカ産卵床へ。約20個体がいろいろなシーンを奏でる中、「この美しい透明感を強調できないか」と思案。太陽光をバックライトに見立てて水面を見上げたところ、光に包まれた物体が光の中から……。「これだ!」とシャッターを切った1枚です。自然の中でこのような表現ができることが驚きでしたが、この機に海の魅力がさらに広まればと思います。
審査員作品評
福永友保
これも一目見たときから惚れちゃった作品です。被写体を詳細に見せるということが目的なのではなく、被写体を材料として自らの中に取り込み、自分が表現したい世界を生み出しています。グランプリ作品もそうなのですが、これこそ自由部門の作品にとっては最も重要であり、命ともいえることなのです。
高砂淳二
これもアーティスティックな作品。アオリイカがもつ透明感はとてもきれいで、僕もそれをなんとか表現したいとよく思います。この方もそうだったのでしょうね。青はなるべく青のままに、光や水の色をなかば吸い込んで海に溶け込んでいるという不思議な世界が表現されています。実際に見た風景とは違うのかもしれませんが、仕上がりをイメージしつつ、いろいろ計算して撮影されたのだと思います。こうしてみると、アオリイカの特徴である大きなヒレは、とてもいい効果となっていますね。
第3位
Driven
伊熊教宏/神奈川県
ニコンD850 シグマ15㍉F2.8EX DG DIAGONAL FISHEYE ノーティカムD850 Z-330 f8 1/200秒 ISO200 メキシコ・ラパス 水深15㍍ 2019年8月
私がダイビングを始めて10カ月が経った頃に行ったメキシコ・ラパスで撮影しました。写真を通して、アシカの静と動、躍動感を感じてもらうと同時に、ラパスという素晴らしい場所へ行ってみたいと思ってもらえると嬉しいです。ダイビングと出会えて自分の世界が広がるのを感じます。次こそグランプリを、また近い将来、海外の写真賞をもらえるように、これからも新しい世界、至高の瞬間を狙っていきたいと思います。
審査員作品評
高砂淳二
ものすごい迫力です。頭部が大きいことから、これはハーレムのボスでしょう。撮影者を威嚇にきたのでしょうけれど、その恐怖に負けず真正面から向き合って撮った作品です。ワイドですから撮影距離はかなり近いし、アシカのほうもカッと目を見開いて、「この野郎!」という表情。よくぞ踏みとどまりました。また、モノクロにしたのも成功です。余計な色に目を奪われず、バックの泡がアシカを効果的に浮かび上がらせ、写真全体がもつ迫力を最大限に引き出したと思います。
優秀賞
入賞作品のうち、特に審査員の心に響いたもの、または最後まで上位入賞を競った作品です。
光と青
荒川敏治/東京都
キヤノンEOS5DsR EF11-24㍉F4L USM ネクサス5DⅢ f5.6 1/250秒 ISO160 トンガ 水深5㍍ 2018年9月
審査員作品評
福永友保
水面から射し込む太陽光線、その光へ向かって登っていくモデル、画面全体が左上から右下へ強い線で結ばれています。この撮影者は、最初からそういう効果が出るように画面を構成しているのでしょう。いわば舞台の演出家も兼ねている。素晴らしいことです。
笑
熊谷道代/東京都
ソニーα6400 SEL16F28+VCL-ECF2 ノーティカム-A6400 S-2000 f11 1/125秒 ISO200 メキシコ・ラパス 水深7㍍ 2019年10月
審査員作品評
高砂淳二
これもアシカの作品ですが、こちらは幼い子供です。ダイバーに近寄ってきて、「甘噛みした~い」とばかりに笑っているんですね。表情も無邪気ですし、目もふざけています。一番かわいいところを逃さず、タイミングよく撮りました。
目力で勝負
黒部裕美/沖縄県
キヤノンEOS5DMarkⅣ EF100㍉F2.8Lマクロ IS USM ノーティカム5DMKⅣ D-2000+Z-240 f2.8 1/200秒 ISO100 沖縄県・沖縄本島 水深5㍍ 2019年12月
審査員作品評
高砂淳二
クマノミは誰でも撮る被写体で、「もう飽きた」という方もいるかもしれません。しかし、この画面構成はとても面白いですよ。顔を模様のように切り取り、はみ出しているわけではないけれど全体を捉えているわけでもない、それでもクマノミの顔だとわかる。眼だけにキッチリとピントがきて、しかも後ろに白帯をうまく入れているので目の輪郭がクリアで透明感が強調されています。あれだけチョコマカ泳ぐクマノミで、よくぞ撮りました。
水墨
Kenji Cheow/マレーシア
オリンパスOM-D E-M1 M.ZUIKO DIGITAL ED60㍉F2.8マクロ オリンパス Z-240 f3.2 1/320秒 ISO200 フィリピン・アニラオ 水深18㍍ 2018年12月
審査員作品評
高砂淳二
水中写真なのか魚拓なのか、これはまた不思議で斬新な作品の登場です。バックに明るい水面を入れて白く飛ばしたのでしょうか。モノクロにしたことで、ゼブラバットフィッシュの形や模様の面白さだけが残されています。撮影者の表現力も素晴らしいし、「水墨」というタイトルも良いですね。
Caress
Chang Chia-Chi/台湾
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED60㍉F2.8マクロ オリンパス Z-330 f10 1/250秒 ISO200 フィリピン・アニラオ 水深5㍍
審査員作品評
福永友保
魚が卵の世話をしているところでしょうか。でも全体がわかるように撮るのではなく、スポットライトで逆光気味に一部分だけを浮かび上がらせ、「そこに生命がある」ことを強調しています。今にも孵化しそうな卵に、優しく触れるヒレの動きをドラマティックに捉えましたね。
Sugar Candy
藤田貴美子/兵庫県
ニコンD850 AF-S VRマイクロニッコール105㍉ f/2.8G+SMC1 ノーティカムD850 Z-330 f16 1/250秒 ISO64 沖縄県・石垣島 水深10㍍ 2019年10月
審査員作品評
福永友保
この作品で注目すべき効果的なテクニックは、バックの葉がアウトフォーカスになっていることです。もしピントが来てしまっていたら、作品全体から感じられる柔らかさ、暖かなムードが出てこないのです。全体をパステルカラー調に仕上げた上で、このファンタジー世界のじゃまにならない程度の大きさにウミウシを配置しているところも見事です。昨年の準グランプリを受賞された方だそうですが、すでに自分の表現方法を確立しているのだろうと思います。