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水中写真家・清水淳のビギナーズ水中撮影テクニック 第3回
TG-6で自然光ワイド撮影を極める

水中写真家・清水淳のビギナーズ水中撮影テクニック

前回はTG-6での自然光ワイド撮影の概要を説明しましたが、今回はTG-6の便利な機能を活用してさらに完成度を高めるテクニックを、清水淳先生に紹介していただきましょう。

水中撮影しやすいカメラにチューニング

ワイド系撮影でのカメラ設定で、押さえておきたいポイントがあります。TG-6を購入したままの状態からより水中撮影をしやすいカメラにチューニングを施していきます。今回は目も開けられないほどの明るい夏の海で、カッコイイ半水面撮影を狙いましょう。

●色空間の設定

カラー設定を「AdobeRGB」にセット

カラー設定を「AdobeRGB」にセット

水中でワイド撮影時には色空間→Adobe RGBにセットします。そうするとブルーの抜けとグラデーションが良くなります。この設定はモードが変わると初期設定のsRGBにリセットされてしまうので、撮影スタート時にメニューから色空間の確認が必要になります。本来は色域設定をアウトプットするデバイスにフィットさせるメニューですが、裏テク的に使うのです。Adobe RGBとsRGBの二つの設定で撮影して比べるとよくわかります。

●モニターの輝度調整

セットアップモードで、モニター画面の輝度をアップします

セットアップモードで、モニター画面の輝度をアップします

明るい撮影環境では、モニター画面が見にくくなります。そこでモニター画面の輝度を上げるテクニックもあるので試してみてください。バッテリー容量の問題で、初期設定ではモニターの明るさをフルパワーに設定していません。+7まで上げることが可能です。

●罫線の表示

設定画面のBで、罫線表示「方眼」を選びます

設定画面のBで、罫線表示「方眼」を選びます

メインの被写体を画面のどこに配置させるか? いわゆる構図の調整なのですが、モニター上に方眼や黄金分割のラインを表示させると、意識しなくても水平にカメラを構えたり、効果的場所に被写体を配置することが可能です。購入時の初期設定はOFFなので、この機能はぜひ使っていただきたいです。
全ての撮影現場で構図づくりに役立ちますので、半水面撮影なら水平線を罫線に合わせる努力をしましょう。

実際に半水面を撮ってみましょう!

リゾート/ビーチでの半水面

作品 「リゾート/ビーチでの半水面」
撮影モード:水中スナップモード
焦点距離:25mm(35mm換算)
露出補正:±0.0EV
フラッシュ:OFF
ホワイトバランス:水中ホワイトバランス標準
仕上がり:水中
シャッター速度:1/320
絞り値:F8.0
ISO:100
撮影地:モルディブ
ブラケット:MPBK-03
レンズホルダー:MPLH52

半水面の撮影が大好きな私ですが、TGでの半水面撮影は簡単ではありません。 ハウジング前面にあるレンズの直径が短いために、なかなか水面のラインをレンズの中心に合わせるのが難しい。波があると至難の技に近いのです。
画角を広げたくなるシーンなのでワイドコンバージョンレンズを付けたくなるのですが、ワイドコンバージョンレンズとハウジングの間に、もう一つ水面が生まれてしまい不自然な仕上がりなるので、ワイドコンバージョンレンズは使えません。
水面ギリギリでの撮影になりますが、水中ホワイトバランスは3つの水中ホワイトバランスの中から選び好みのタイプを選びます。今回は水中ホワイトバランス標準がはまりました。

ホワイトバランスは水中ホワイトバランス標準が今回ははまった

ホワイトバランスは水中ホワイトバランス標準が今回ははまった

表現したいものに正確にピントを合わせる

半水面の撮影で気をつけたいのが水面のラインと地平線のバランス。水面のラインが大きく曲がるとバランスが悪く、スッキリとしない作風になります。メニューから表示罫線選択を呼び出し、モニター上に水平が合わせやすい罫線を表示させます。方眼と黄金分割が選べますが私は方眼が好み。

半水面のピント合わせは、表現したいものに正確にピントを合わせることがポイントです。陸上に合わせるのか?水中にあるものに合わせるのか? あらかじめ決めることが大切です。なんとなく撮影するとレンズ前の波にピントが合って他がボケたりするので数パターン試してみることも必要。

この作品の場合は陸上のリゾートにピントを合わせて、水中は水底のキラキラ模様に成り行き的にピントが来れば良いと判断したので、あらかじめ水面からカメラを出してリゾートにピントを合わせ、半押ししたままゆっくりとカメラを水中に沈めていき、半水面になったらシャッターをそのまま押し切る。これが半水面の基本的メソッドです。ものすごく明るい環境なのでモニター画面が見にくくなります。そこでモニター画面の輝度を上げるテクニックを使うのです。ぜひ試して見ていただきたい。バッテリーの消費は激しくなりますが。

自然光ワイド撮影の撮影モードは「水中スナップモード」で。

自然光ワイド撮影の撮影モードは「水中スナップモード」で。これは前回の連載をご覧ください

使用機材はこちら

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次回もお楽しみに!

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「感動の一瞬はこうして生まれた……水中写真家 作品探訪」連載
清水 淳さんインタビュー記事も併せてご覧ください。

水中写真家 作品探訪 清水淳さん

清水淳

清水 淳(しみず じゅん)
PROFILE

1964年生まれ。
水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。
また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。
カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。
執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビングWeb/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公益社団法人日本写真家協会会員。
▶清水淳オフィシャルサイト