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水中写真家・清水淳のビギナーズ水中撮影テクニック 第6回
TG-6の水中マクロモードをマスター!
大型の生物の撮影には「水中ワイドモード」を選択することを前回までにお話しさせていただきましたが、今回は小さな被写体を狙った水中撮影に向いている「水中マクロモード」を解説します。伊豆半島や紀伊半島で撮影するのに一番選ばれるモードだと考えられます。
水中マクロモードにセット
TG-6では水中マクロモードを選択するとカクレクマノミのイメージ写真が現れる
TG-6には5種類の水中撮影モードが搭載されています。いろいろな環境で、そのシーンに最適なカメラの設定を悩まずに一発で呼び出してセットできる、頼りになる機能なので正しく理解して使いたいもの。
水中マクロモードにセットすると、ズームの画角は望遠側最大に自動でセットされます。要するにズームを効かせて被写体を大きく写す設定になるのです。 露出については、内蔵フラッシュ光を被写体に照射させ明るさを確保する設定になります。
水中マクロモードにセットすると、内蔵フラッシュは強制発光モードがデフォルトとなる
フラッシュが届く範囲を理解して被写体により近づこう
被写体に内蔵フラッシュが届くように近づく
TG-6の内蔵フラッシュはとても小さなものですが、フラッシュ光が被写体に十分照射されるまで、自動感度アップをする機能も搭載されます。しかしどんなにTG-6が頑張ってもフラッシュ光が効く範囲は限られていて、水中の場合1mが精一杯と理解していただきたい。
要するに被写体に近づくことが最も重要で、上手なマクロ撮影を行う最大のコツになります。近づけば近づくほど、鮮やかに色彩が再生されるのですが、被写体には慎重にアプローチすることもポイントになります。
内蔵フラッシュの位置を確認して被写体を配置
内蔵フラッシュで撮影する場合、フラッシュの位置を意識すると良い。TG-6の左上にフラッシュが位置しているので写真の左側が明るくなりやすい。主要な被写体を右端に配置するより左側に配置させたほうが鮮やかに仕上がります。
マクロ撮影ならLEDライトもオススメ
内蔵フラッシュの照射をやめて、外付けのライトで撮影する手法もおすすめです。最近、高性能になった撮影用LEDライトでの撮影は、被写体を見つけやすいし、明るく見えるのでピント合わせも楽になります。見たとおりに撮影ができるので、最近私は、「マクロ撮影ならLEDライト」と決めているほどです。
ここで重要なアドバイスがあります。外部フラッシュと撮影用LEDライトをMIXして使わないこと。フラッシュとライトでは光源の色温度、パワーに違いがあり過ぎるのでどちらかに決め打ちして使いましょう。小さなペンライトなどは併用しても問題はありません。というか点灯しても役に立たないというか……(苦笑)。
実際にマクロモードで被写体を撮影
作品 1「ブルーバックにヤシャハゼ」
撮影モード:水中マクロモード
焦点距離:100mm(35mm換算)
露出補正:±0.0EV
フラッシュ:ON/±0.0EV(内蔵)
ホワイトバランス:水中標準
仕上がり:水中
シャッター速度:1/200
絞り値:F6.3
ISO:200
ブラケット:MPBK-03
レンズホルダー:MPLH52
拡大鏡:UMG-01
撮影地:沖縄/慶良間
水中マクロモードを選択。基本設定は内蔵フラッシュONなのでそのまま狙っていただければOKなのですが、少しだけ購入時の設定にチューニングを施したい。
メニューボタンからレンチマーク、撮影確認を3秒くらいにセットします。購入時は0.5秒なのでほぼ確認ができないためです。マクロはピント合わせが大切なのでジックリ確認したいところ。
撮影確認
メニューからレンチマークに入り撮影確認を3〜5秒にセット。
もっと長くチェックしたい場合は再生ボタンを押し確認。
生物の撮影ではピントは目に合わせます。被写体を画面の中で配置するとピントを合わせたいポイントが画面の中央部ではないことがほとんどです。今回のヤシャハゼの作品でも中央部からやや斜め右上に目があります。このような場合に使い裏技が「A Fターゲット選択」。
OKボタンを長押しするとグリッドが出てきてAFターゲットの位置を記してくれる。十時キーを操作して好みの場所へ移動させます。完了したらOKボタンを押すだけ。これでピント合わせがグーンとしやすくなります。
AFターゲット選択/基本位置
水中マクロモード、水中顕微鏡モード時にOKボタン長押しでこのAFターゲット選択が表示される
AFターゲット選択
十字キーで自由にターゲットを移動可能。選択が終了したら再度OKボタンを押す
フード付き拡大鏡をそろえたい
拡大鏡UMG-01
シニアの目になったら必需品。シニアでなくてもフードがついているので明るい環境でも視認性が高い。視度調整機能付き
水中マクロ撮影が好きな方にまずそろえていただきたいアクセサリーは、フード付き拡大鏡。視度調整が可能な「UMG-01」がお勧めで、私も愛用しています。
シニアの目でも、マスクにぴったりとこの拡大鏡を押して当てて覗くようにモニターが見られます。微妙なピント合わせが楽に行えます。
右手グリップを付ける
右手グリップがあると便利
そして右手グリップ。グリップを持つのではなく右手をグリップと本体の間に入れてカメラをホールドします。右手に力を入れずに撮影が可能になりますので、レリーズ操作が容易になりピント合わせにも役に立ちます。
このセットだけでかっこいい作品が撮れるようになるまで、他のアクセサリーは追加しないでおきましょう。TG-6は薄暗いシーンでも補助光なしでピント合わせができます。できるだけコンパクトな仕様がお勧めです。
リングライドがお勧め
ピント合わせにも慣れて、内蔵フラッシュだけでまずまずの作品が撮れるようになったら、撮影用LEDを使った撮影にチャレンジしましょう。静止画の撮影はもちろん、水中撮影にチューニングされたLEDライトならムービー撮影も楽しめます。
いろいろなタイプのLEDライトがありますが、私が愛用しているライトは小さなLEDライトをケーブルで電源供給して2灯システムが簡単に構築できるタイプ。多機能で高性能なのですが、調達コストもそれなりになります。ビギナーが操作に困らずに大光量で発色も良いものとなると、リングライトがお勧めです。超接近戦には不利な部分もありますが、通常のマクロ撮影なら均一に光を照射できて失敗することが少ないのです。ライトの向きの調整が必要ないので、操作はパワーONのみ。ただしライト撮影時に忘れてはならない大切な設定があります。それは内蔵フラッシュを発光禁止にセットすること。これを忘れると暗い写真になってしまいます。
なお、内蔵フラッシュを使った撮影では光量調整をフラッシュ補正で行いますが、ライト撮影の場合は露出補正で明るさの調整を行います。
水中マクロ撮影成功への道~まとめ
水中マクロ撮影での成功へメソッドは、
①水中マクロモードにセットする。
②被写体を掴める距離まで十分に近づく。
③ピント合わせは確実にA Fターゲット選択を利用する。
④LEDライトを主光源にする場合は、内蔵フラッシュ発光禁止
この4項目を厳守すれば難しくないはずです。
次回もお楽しみに!
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「感動の一瞬はこうして生まれた……水中写真家 作品探訪」連載
清水 淳さんインタビュー記事も併せてご覧ください。
清水 淳(しみず じゅん)
PROFILE
1964年生まれ。
水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。
また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。
カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。
執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビングWeb/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公益社団法人日本写真家協会会員。
▶清水淳オフィシャルサイト