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沖縄でダイビングする前に知っておきたい
ショップ選びの新基準「SEAKERレンタル」

沖縄のダイビングショップ選びの新基準

沖縄では、ダイバーやスノーケラーの漂流事故が毎年のように発生しています。前編では、スマホや従来の遭難用発信機が「安全の前提」になりにくい理由と、高性能位置情報発信機「SEAKER」が成立した背景を解説しました。
今回は「SEAKER」がもたらす安全運用の変化、ダイバー自身が考えるべき安全の視点について、(一社)マリンレジャー振興協会(AMP)事務局長の成田隆一さんに引き続き話を伺います。(以下、成田さんの語りでお届けします)

※2026年3月現在の情報です。

漂流事故は「重大ミス」で起きるとは限らない

ダイビング事故というと、初心者のミスや判断の誤りが原因だと思われがちです。しかし、実際の漂流事故は必ずしもそうではありません。沖縄の海では
•潮流の変化
•風向きの変化
•ボートとの距離
•エントリータイミング
といった複数の要素が重なることで、ダイバーが想定より遠くに流されてしまうことがあります。経験豊富なガイドがいても、自然条件のすべてを完全に予測することはできません。多くの漂流事故は、
一つの大きなミスではなく、小さな条件の積み重ね
によって発生します。
そのため近年、ダイビング安全の考え方は事故が起きないことを前提にするのではなく
事故が起きても迅速に対応できる仕組みを整える
という方向へ変化しています。

スマートフォンが使えない理由

スマホは陸上では有能だけれど……

スマホは陸上では有能だけれど……

漂流事故の話になると、よく聞かれるのが「スマートフォンを持っていれば連絡できるのでは?」という疑問です。しかし実際には、海面でスマートフォンが十分に機能するとは限りません。
その大きな理由の一つが、波による通信の不安定さです。
海面では体が常に上下するため、通信状態が安定しません。携帯電話は通信が継続していることが前提の仕組みですが、波の影響で電波が断続的に途切れてしまうことがあります。その結果
・瞬間的につながる
・しかし要件を伝える前に通話が切れる
という状況が発生します。掛け直しても同じことが繰り返されるため、結果として十分な連絡ができないケースも少なくありません。
さらに海上では
・携帯基地局からの距離
・海水による機器トラブル
・濡れた状態での操作困難
などの問題もあります。つまり、「持っていれば使える可能性がある」ことと「安全の前提として成立する」ことは別なのです。

SEAKERが変えた安全の考え方

「SEAKER」は操作もシンプル

「SEAKER」は操作もシンプル

こうした背景から注目されているのが、高性能位置情報発信機「SEAKER」です。
「SEAKER」の特徴は
・免許不要
・低消費電力
・長距離通信
という点にあります。従来の高出力発信機は、電波法の関係で免許や申請が必要になることが多く、ダイビングショップがレンタル装備として提供することは難しいケースがありました。
一方、SEAKERは低出力設計のため免許が不要です。そのため
・ショップがレンタルできる
・ダイバーが手続きなしで使用できる
・初心者でも同じ条件で装備できる
という形で運用することが可能になりました。これは単なる装備の違いではありません。安全対策を個人の準備から運営側の標準装備へ引き上げる可能性を持っています。

常時ONが可能にした「見守り型」の安全運用

「SEAKER」を携行しているダイバーをトラッキングできます

「SEAKER」を携行しているダイバーをトラッキングできます

「SEAKER」のもう一つの特徴は、低消費電力であることです。これにより、エントリー時から電源を入れたまま運用することができます。この仕組みによって、安全ダイビングの考え方は大きく変わりました。従来は流されてから探すという考え方でした。
しかし現在は
・想定より速い潮に乗り始めた
・ルートから外れ始めた
・危険海域に近づいている
といった変化を早い段階で把握することができます。その結果
・ガイドの呼び戻し
・ボートのポジション変更
・潜水計画の修正
など、事故になる前の対応が可能になります。これは救助ではなく、事故を未然に防ぐ「海の見守り」という考え方です。

沖縄で実用化された通信インフラ

沖縄本島周辺にもELTRESの受信網を構築

沖縄本島周辺にもELTRESの受信網を構築

「SEAKER」が実際に使える仕組みとして成立した背景には、通信インフラがあります。使用されているのは、ソニーが開発したLPWA通信技術「ELTRES」です。
この通信の特徴は
・海上でも長距離通信が可能
・低消費電力
・ピンポイント位置特定
という点にあります。AMPは総務省の予算を活用し、この通信の受信局を沖縄の主要海域に整備してきました。現在は
・八重山全海域
・粟国を含む慶良間全海域
・久米島
・沖縄の本島近海海域(一部海域を除く)
などで運用されています。この受信網によって
・ダイバーの位置を継続追跡
・漂流時の迅速な位置特定
が可能になりました。

ダイバーが考えるべき安全

「SEAKER」の利用イメージ

「SEAKER」の利用イメージ

ここまで紹介してきたように、安全ダイビングの考え方は変化しています。かつては
・技術
・経験
・判断
が安全の中心でした。もちろんそれは今でも重要です。
しかし現在は「安全を仕組みとして設計する」という考え方が加わっています。
例えば
・位置情報装置
・安全管理システム
・通信インフラ
などです。自然相手のレジャーである以上、リスクを完全にゼロにすることはできません。しかし合理的な仕組みを組み込むことで、リスクを管理可能なものに近づけることはできます。

ショップ選びの新しい視点

ショップ選びチェックリスト

ショップ選びチェックリスト

ダイバーがショップを選ぶとき、
・ガイド経験
・船の設備
・器材
などを見ることが多いと思います。そこにもう一つ、新しい視点が加わりつつあります。
それが、安全インフラをどう活用しているかです。
例えば「SEAKERをレンタルできますか?」と聞いてみる。
それは単に装備の有無を確認するだけではありません。そのショップが
・安全をどう考えているのか
・どこまで準備しているのか
を知る一つの手がかりになります。

「中立的な第三者機関」AMPの役割

一般社団法人マリンレジャー振興協会(AMP)は、人命を最優先に考え、命と環境を軸に官民をつなぐ中立の要として活動しています。特定の製品を販売する団体ではありません。その役割は、
・技術的な合理性の整理
・制度や法制度との連携
・現場で実際に成立する安全設計の体系化
・業界と行政、そしてダイバーをつなぐ架け橋
といった 中立的な第三者機関としてのパートナーシップ構築にあります。
ダイビング安全の議論では、特定の機材や企業の立場だけでなく、「実際に現場で機能する安全設計かどうか」という視点が重要です。その検証の中で導き出された結論の一つが、「SEAKERは現時点で合理性の高い選択肢の一つである」という評価です。

マリンダイビングフェア2026で直接確かめてほしい

AMPは、2026年開催予定のマリンダイビングフェアに出展を予定しています。会場では
✔ なぜスマートフォンでは代替できないのか
✔ なぜ常時稼働が安全につながるのか
✔ なぜ沖縄でSEAKER運用が可能になったのか
といった、現場での実際の運用背景を紹介する予定です。安全設計は、文章だけでは理解しにくい部分もあります。だからこそ、ぜひ実物を見て、現場の話を聞いてみてください。安全は机上の理論ではなく、現場で成立する仕組みとして理解することが重要だからです。

マリンダイビングフェア2026は4月3日(金)~5日(日)、
東京・池袋サンシャインシティで開催!

▼詳細はこちら
https://marinediving.com/mdf/

安全は「運」ではなく「設計」

ダイビングは自然相手のアクティビティです。
だからこそ「たまたま事故が起きなかった」という状態だけでは、本当の意味での安全とは言えません。重要なのは、安全がどのように設計されているかです。
「SEAKER」はその一つの方法に過ぎません。しかし
・技術
・制度
・運用
が組み合わさることで、海の安全は確実に前進しています。
沖縄の海を安全に楽しむために。その取り組みは、これからも続いていきます。
次に沖縄で潜るとき、「SEAKERはレンタルできますか?」と聞いてみてください。

(一社)マリンレジャー振興協会のホームページ

情報・画像提供/(一社)マリンレジャー振興協会
構成/後藤ゆかり(MDWebデスク)