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【短期集中連載】耳・鼻・のどのトラブルを解決!
Vol.1 耳にまつわるダイビングトラブル

月刊『マリンダイビング』の人気連載「耳鼻咽喉科領域の潜水医学」(北島尚治著)が加筆・修正され、同タイトルの書籍として発売された!
そこで、3回にわたってダイバーが陥りやすい耳・鼻・のどのトラブルの防止策、対処法を紹介していきたい。

■監修/北島尚治(医学博士) ■構成・文/本誌・後藤

☆本文中の※印は、『耳鼻咽喉科領域の潜水医学』(北島尚治著、水中造形センター刊)より引用していることを表します。

(イラスト1)

耳ぬきは早め早めに

耳が抜けず無理やり潜って、激痛

最もやってはいけないこと

耳が抜けないのにほかの人に迷惑をかけたくない一心で無理やり潜ったり、何とかなると思って潜ったり……。経験がある人もいるのでは?
耳ぬき(耳管通気)をすべきところでしないということは、当然負担がかかる部分が出てくることを意味する。それが痛みとなって表れるのは当然。ひどい場合は、鼓膜穿孔が起こり(鼓膜が破れる、穴があく)、中耳腔内の粘膜や血管が破綻し、やがて外リンパ瘻などを起こす(※)。

耳ぬきスキルをマスターせよ

では、なぜ耳ぬきができないのかというと、多くはバルサルバ法をはじめとする耳ぬきスキルがしっかり身についていないため。つばをのみ込む「嚥下運動」だけで耳ぬきができることが好ましいが、できない場合は、バルサルバ法、フレンツェル法、トゥインビー法といった、OW講習で教わる耳ぬきスキルを習得しておくことだ。注意したいのは勢いづけて息むよりはゆっくりと時間をかけて、鼓膜を内側から押すようなつもりで行うこと。
それでも耳ぬきができない場合は、「狭窄耳管」(きょうさくじかん)「開放耳管」などが疑われるので耳鼻科医に診てもらうようにしよう。

ダイビングの耳ぬき基本の“き”

どうしても耳ぬきができない

「耳管が細いから」はほぼ都市伝説

「私、耳管が人に比べて細いからできないのよ」と、私は体が繊細であるとか、か弱いのよとかと言いたげな方もいたりするのだが、おそらく多くのの人は正しく耳ぬきができていないだけ。それ以外の人は本当に耳管が細い……というより、先ほど出てきた「狭窄耳管」、または「開放耳管」だからかもしれない。
「狭窄耳管」は、鼻炎や副鼻腔炎などで生じた耳管粘膜の炎症性腫脹(耳管炎)が瘢痕化(ばんこんか)したり、耳管筋の機能不全、萎縮などにより耳管に狭窄をきしたりした状態をいう(※)。
「開放耳管」は体重減少や脱水、ホルモンの変化、自律神経失調などで耳管を取り巻く組織からの耳管への圧が減少し、耳管が常時開いている状態のこと。これに加えて耳管の構造自体がもろくなって耳管閉鎖不全が生じた場合などもある(※)。こうした疾患は、ダイビングにも大きく影響し、命の危険を招くこともあるため、耳鼻咽喉科医のもとで治療する必要がある。
とはいえ、前述したように耳ぬきのスキルができていない可能性のほうがはるかに大きいので、インストラクターに相談して耳ぬきの練習をしたり、北島先生のようなダイビングに詳しい耳鼻咽喉科の医師に耳ぬきスキルができるよう相談してみるといいだろう。

連日ダイビングで耳が抜けなくなった

ダイブクルーズや海外ツアー参加者にあるある例

ダイブクルーズや海外ダイビングツアーなどで4~5日間潜るプランでよく聞くのが、これ。最初の2~3日は問題なく耳ぬきができていたのに、後半になってなかなか耳が抜けづらくなってきたというパターン。一日に3~5本も潜る人にも表れる現象だ。
このようなダイビングのことを反復ダイブというが、反復ダイブは「耳管機能障害」を助長するという例は以前から報告されている(※)。
一日に何ダイブも、しかもそれを連日となると、何度も耳ぬきを行うことになる。たいていの人がバルサルバ法などで耳管を広げており、つばをのみ込んで耳管を広げるよりもどちらも力がかかる。局所疲労を起こしてしまい、「耳管開大機能」を一時的に低下させてしまうというわけだ(※)。潜り過ぎたなと思ったら、耳も休ませてあげよう。

ヘッドファーストで耳ぬきができない

耳ぬきをするには難しい体勢

耳ぬきがなかなかできない人にはフィートファースト、フィートトゥギャザー(つまり足をそろえて足から先に潜降していく方法)での潜降を勧めている。特に講習で潜降方法を学ぶのはこれがスタンダードだ。というのは、頭を下にするヘッドファーストは、そもそも耳ぬきをするには大変な体位だからだ。
物理的にもヘッドファーストの場合、鼓室粘膜容量がフィートファーストよりも大きくなり、耳ぬきがしづらい状態になることがわかっている(※)。
流れがある海域ではヘッドファーストでの潜降を推奨されるけれど、もともと耳ぬきがしづらい方は無理せず足から潜るフィートファーストでいこう!

アレルギー性鼻炎で耳ぬきしにくい

たかがアレルギー性鼻炎ではない。風邪も同様

アレルギー性鼻炎というのは急になるものではない。花粉に反応する人は花粉の季節になると症状がひどくなるもの。症状を抑えるために治療をしたり、薬を服用したりしているのだが、たいしたことがないから潜ってしまおう!という方が少なくないような気がする。でも、北島尚治先生によると、ダイバー患者の8割以上にアレルギー性鼻炎が認められたという。その方々は十分な治療もせず潜り続けていたためにトラブルが起き、通院することになったのだとか。
アレルギー性鼻炎の症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりといったものが挙げられるが、これらが耳管機能を阻害することが知られている。これは風邪のときも同様。耳ぬきができずに、さらに症状を悪化させては元も子もない。こういうときはダイビングをやめる勇気も必要だ。

ダイビング後、耳から液体が

ダイビングは中止して、早く耳鼻咽喉科へ

ダイビング中、耳の中に水が入るのが当たり前だが、ダイビングが終わって浮上すると、海水とは違うネバネバとした液体が耳からたれてきた……。
これは耳だれ、耳漏(じろう)と呼ばれるもので、外耳・中耳から分泌される液体。急激な痛みを伴う場合もあり、できるだけ早く耳鼻咽喉科で診てもらう必要がある。
ダイビングの場合、こうした耳漏は外耳炎を疑うが、血液が混じっている場合は中耳炎も疑う。
外耳炎の起炎菌となるものはいろいろあるけれど、ダイバーによくあるのは緑膿菌。外耳道をていねいに消毒し、携行鎮痛剤で痛みをコントロールすることになるが、自力でやろうとせず耳鼻咽喉科医に診てもらうこと。
中耳炎の場合の治療も抗生物質などの薬の投与などが必要なので、できるだけ早く医師に診てもらうこと。いずれも治療中はダイビングはお休み。治るまでの我慢だ。

ダイビング後、耳鳴りが止まらない

たいていは数時間で消えるが…

ダイビング後、耳の中がゴロゴロする、耳鳴りがするといった症状を訴える人は少なくない。たいていは数時間もすれば消えてしまうのだが、何日経っても消えないという場合は要注意。原因はまだわかっていないのだが、ダイビング後の耳鳴りや難聴は内耳気圧外傷を発症している可能性が大だ(※)。気圧の変化が何らかの要因になっているといえる。
こんな場合はできるだけ早く耳鼻咽喉科で診てもらうこと。発症するまでに何日も時間がかかる場合もあるのでご注意を。
内耳気圧外傷が重症化すると内耳窓破裂(外リンパ瘻)を引き起こしたりするリスクもある。重症化すると治療期間も長引いてしまうため、治療は早くから行うのが鉄則だ。
中耳炎の場合の治療も抗生物質などの薬の投与などが必要なので、できるだけ早く医師に診てもらうこと。いずれも治療中はダイビングはお休み。治るまでの我慢だ。

ということで、耳のトラブルがなぜ起こるのか、その症状は? 治療方法は?が詳しく書かれている耳鼻咽喉科医・北島尚治先生の『耳鼻咽喉科領域の潜水医学』。併せてご覧いただきたい。

耳鼻咽喉科領域の潜水医学

判型:B5判 全116ページ
本体価格:2,800円+税
(株)水中造形センター刊

新刊発売!
世界初 耳・鼻・喉の潜水医学書

耳鼻咽喉科領域の潜水医学
耳ぬき傷害などのダイビングトラブルにどう対応するか
医学博士 北島尚治 著

本誌で2017年11月号から2019年12月号まで掲載していた同タイトルの連載を加筆・修正、一冊の本にまとめた。ダイビングのことを知らない多くの耳鼻咽喉科医にも読んでほしいという北島先生の願いから、内容は医学生向けのテキストにもなるほど細かく難解に見えるが、ダイビング時やダイビング前後に耳・鼻・のどにトラブルを抱えている、抱えたことのある方には大いに役立つこと間違いなし!
耳鼻咽喉科領域のみの潜水医学書はこれまで日本にはもちろん海外にも存在していなかった世界初のもの。
今回ピックアップしているトラブルについても、起きる理由や対処法、治療法などが詳細に解説されている。ダイバーなら読んでおきたい。

ご購入はこちら

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耳ぬき傷害などのダイビングトラブルにどう対応するか
医学博士 北島尚治 著
耳鼻咽喉科領域の潜水医学

判型:B5判 
全116ページ
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(株)水中造形センター刊

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