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Fromスタッフ2020.04.26

アマビエのモデルになった海の生きものは何?
ダイバー的「アマビエ」考

こんにちは、「マリンダイビングWeb」編集長の鴫谷です。皆さん、「STAY HOME」をいかがお過ごしですか?

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、SNSを中心に話題となっているのが、災いを予言し、疫病から人々を守る妖怪と言い伝えられている「アマビエ」。厚生労働省の新型コロナウイルスに関するウェブサイトにアマビエのイラストが使われたり、SNSではアマビエの姿を描いて新型コロナの収束を願う「アマビエチャレンジ」が話題となったりと、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

「アマビエ」は、江戸時代後期の1846年に肥後国(今の熊本県)に現れたという妖怪。当時の瓦版によると、


毎夜、海中に光る物体が出没していたため、役人が赴いたところ、それが姿を現した。役人に対し「私は海中に住むアマビエと申す者なり」と名乗り、「これから6年の間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描き写した絵を人々に見せるように。」と告げ、海の中へと帰って行った。


と記されています。

アマビエ
拙い手書きのイラストですいません。。。

では、この「アマビエ」、正体はいったい何なのか、ダイバー的に考えてみました。

その1:リュウグウノツカイ

ネット上などでもちらほらと見られるのが、「アマビエ=リュウグウノツカイ」というもの。確かに長い髪や、魚の鱗がついているような胴体など、その姿かたちを見ると、リュウグウノツカイの特徴が。残念ながら瓦版に描かれたアマビエはモノクロなので、その色はわからないのですが、もし髪の部分が赤だとすれば、まさにリュウグウノツカイに当てはまりそうです。なによりリュウグウノツカイには、古くから「天変地異、特に地震の前兆」とする言い伝えが各地に存在しており、アマビエの逸話とも通じるところがあります。

またリュウグウノツカイは日本各地の多くの人魚伝説の元になっているともいわれており、江戸時代、肥前国(長崎および佐賀)に現れ、「我は龍宮よりの使者・神社姫である。向こう7年は豊作だが、その後にコロリという病(コレラ)が流行る。しかし我の写し絵を見ればその難を逃れることができ、さらに長寿を得るだろう」と告げたという「神社姫」は、その姿かたちからリュウグウノツカイではないかといわれていますが、アマビエの逸話にそっくり。「アマビエ=リュウグウノツカイ」はかなり有力な説といえるのではないでしょうか。

リュウグウノツカイ

その2:アシカやアザラシ

ただし「アマビエ」についての記録は、前述の江戸時代の瓦版にあるもの1件だけのようで、アマビエよりも古くから記録がある「アマビコ」という妖怪を誤って記したものというのが定説となっています。アマビコは、「天日子」、「尼彦」、「海彦」などさまざまな記述があり、日本各地に現れて豊凶と疫病の流行を予言し、「私の姿を描き拝むと、難を逃れる」と伝えたとされています。これもアマビエの逸話にそっくりですね。

アマビコについての記録には、多少描写が異なるものも多いのですが、共通しているのは、「猿のような顔」「毛むくじゃら」「足が3本」ということ。たとえば肥後国(今の熊本県)に出現したといわれる尼彦の絵を見ると、そのシルエットはアザラシにそっくり。それらを踏まえると、アマビコはアシカやアザラシ、オットセイ、トドなどの海獣類が元となっていると考えることもできます。つまりは「アマビエ=アシカやアザラシなどの海獣類」という説もありかもしれません。

⇒【連載】海のいきもの アシカとアザラシ

アシカ

その3:ダイオウイカ

元々UMA(未確認生物)が好きな自分が、「アマビエ」の絵を見て真っ先に頭に浮かんだのが、ヨーロッパに伝わる海の怪物「シー・モンク」。1546年にデンマークのシェラン島沖で発見されたのが最初といわれており、修道僧のような顔に、全身が鱗で覆われ、足は複数あるように描写されています。「シー・ビショップ」や「ビショップ・フィッシュ」という名称でも記録が残っているようです。

このシー・モンクの元となったといわれているのがダイオウイカ。確かに、足が複数ある海の巨大な生物で、謎に満ちた存在というと、ダイオウイカがイメージされます。イカの口は「カラスのくちばし」と「トンビのくちばし」を合わせたような鋭い形をしていることから「カラストンビ」と呼ばれていますが、アマビエのくちばしのような描写と一致。また、ダイオウイカが姿を現すのは天変地異の前触れという説もあり、その点もアマビエの伝説と共通します。「アマビエ=ダイオウイカ」という可能性もあるのではないでしょうか。

ダイオウイカ

と、思いつくままにいろいろと書きましたが、きっとアマビエは、それ以前のいろいろな伝説が混ざって生まれた存在なのではないでしょうか。昔から海は「畏怖」や「経緯」の対象で、そこから生まれた江戸時代の伝説が、令和のこの世の中に再び注目されるというのもおもしろいですね。

まとまりのない話になりましたが、皆さんの「STAY HOME」の暇つぶしになれば幸いです。ゴールデンウイークもダイビングに行けないのは残念ですが、おうちで少しでも海を感じながら過ごしてくださいね。

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