秋冬も沈船&洞窟で絶好調!
東伊豆・熱海
東伊豆の入り口に位置する熱海は、東京から2時間ほど。「沈船」「洞窟」2つのエキサイティングスポットを一気に味わえることで知られるエリアです。「洞窟」は11月から4月末までの期間限定だけにお得感、特別感も満点です。実際にこの目で確かめようと「マリンダイビングWeb」の編集デスク・後藤が取材。透明度抜群の絶好調の海が待っていました♪
※2023年11月現在の情報です。
期間限定「小曽我洞窟」を潜りたい!
都心から2時間で洞窟ダイビング
《ダイビングサービス熱海》のボート乗り場を出発
写真/後藤ゆかり
11月1日にオープンした熱海の「小曽我(こそが)洞窟」に潜りたい!と「マリンダイビングWeb」の編集デスク・後藤が11月某日、熱海に向かいました。東京都心から車で2時間強。もし新幹線を使ったら2時間弱。とにかく近くて便利な海辺のリゾートです。
当日の朝は10℃を切る寒さながらも、熱海に到着するとぽっかぽかの陽射しでテンションが上がります。《ダイビングサービス熱海》の代表でガイドも兼任している豊嶋康志さんは2日前からドライスーツに換えたそうですが、インナーは薄着。筆者はウエットスーツでも問題なしでした。
「小曽我洞窟」は2本目に潜ることが多い
曾我浦大橋の下の大曽我よりやや北が小曽我。隣の湾との境に洞窟はあります
写真/後藤ゆかり
お目当ての「小曽我洞窟」は例年11月1日~4月30日に期間限定オープン。それ以外の期間はエビ網漁で使われています。スポットは港からボートで10分足らず南へ行った、曽我浦大橋の下にあり、岩肌に大きく開いたアーチがダイバー垂涎の洞窟です。ダイビングスポットとしては最大水深10mちょっとなので、たいて「沈船」やほかのスポットを潜ってから2本目に潜るスタイルになります。水深が浅い分、潜水時間もやや長くなります。今回の私のログでは最大水深11.7m、平均水深7.2m、潜水時間48分でした。
洞窟の入り口には探検気分を盛り上げる魚群
入り口にびっしりとクロホシイシモチの魚群が
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
ボートは洞窟の入り口から50mぐらい離れたところにあるブイに係留しました。エントリーすると青い! 水面にはワーッとキビナゴが群れていて、光を浴びるとキラッキラ光っています。ここだけでもいい!と思ってしまいますが、目的は洞窟。泳いで行くと、穴の入り口にどっさり小さな魚たちが群れています。クロホシイシモチやイシモチのほかに回遊魚の幼魚も交ざっているようでした。
神秘的な“青と光”を楽しむ
振り返ると光射す青の窓が浮かび上がっています
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
入り口は深くても水深8mぐらいの縦穴で、ダイバーが2~3人一緒に入って行けるぐらいの横幅です。洞窟の中に入って数~10mぐらい泳いだら振り返ってみてください。暗闇に浮かび上がる明るいブルーの窓が神秘的です。
洞窟内の暗闇にも潜む生きものたち
洞窟の出口に近いほうにタコが潜んでいました
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
奥に進むと光が届かない暗闇に。水中ライトだけが頼りです。両側にそそり立つ壁にはそんな暗闇なのに、腔腸類でしょうか、赤、黄、オレンジ、白色の生物が点在しています。岩の隙間で豊嶋さんが止まりました。なんと、タコが隠れているではないですか! 吸盤の付いた脚をもそもそ動かしながら、水中ライトの光から身を隠そうとしているようです。
洞窟の長さは40mぐらい
出口にぼわんと青い光が見えてきました!
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
ドキドキの暗闇ですが、意外にすぐに再び明るい青色の出口が見えてきます。洞窟の長さは実は40mぐらいと長くないので、暗闇にいるのはほんの一瞬です。でも青い光が見えてきた時の安堵感がまた洞窟ダイビングならではの楽しさといえます。出口付近にもイシモチ類の魚群がいますが、入り口ほどではなかったようです。
洞窟の外もおもしろい
かわいいミナミハコフグの幼魚にも会えました♪
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
「小曽我洞窟」は洞窟外の海底の砂紋(さもん)も見どころのひとつではないでしょうか
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
洞窟を出ると、砂地に点在する根を回りながらフィッシュウオッチングとなります。ちっちゃなコケギンポやエビの仲間が岩の上下に潜んでいたり、イソギンチャクに季節来遊魚なのか越冬して既に定着しているのかミツボシクロスズメダイの群れがいたり。豊嶋さんが止まったところにはかわいいミナミハコフグの幼魚も! そして、向かったところにはまた洞窟。「あれ? もうひとつ洞窟ってあったっけ??」と勘違いしてしまうぐらい、戻っただけなのですが、逆コースは全然違ったイメージです。冒険気分たっぷりなダイビングを楽しみつつ出口に近づくと、魚群が迎えてくれて、なかなか感動的です。
そして、洞窟を出て最後、ボートに戻る時に通る砂地ですが、砂の色が白っぽくて、砂紋がとても美しいんです。まるで南の島みたい!と一人で盛り上がりながら砂地に映る自分の影を楽しんでいた次第。
熱海は北風、北西風に強いので、冬でも潜れない日はほとんどないのが魅力。「小曽我洞窟」がオープンしている間に潜りに行って、ご自分なりの楽しみ方を見つけてくださいね!
「沈船」の見どころベスト3
日本最大級の沈船スポット
「沈船」の中ほど。前にも後ろにも船体が続いています
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
ダイバーの間では、熱海といえば「沈船」。この沈船、37年前の1986年、水深30m付近の砂地に沈んだ砂利運搬船で、船名を「旭16号」といいます。全長81m、最大幅18mと、日本にあるレックダイビングスポットでは最大級。とても貴重な沈船スポットです。それが東京都心から約2時間、港から5分足らずで潜れるのだからありがたい! しかも、秋から冬にかけては海中の浮遊物が減り、透明度がグッと良くなる傾向に。81mの船体が丸ごと見えることはありませんが、見えちゃうんじゃない!?というほど遠くまで見渡せることがあります。これは、潜らない手はありませんね!
見どころ1 冒険気分満点
老朽化しているので船内体験はできないのですが、一部スイムスルーできる部分も。ワクワク感がたまならない!?
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
「沈船」というと宝探しのイメージもあるかもしれませんが、熱海の「沈船」の場合、もともとが砂利運搬船でしたので、お宝は期待できません。でも、甲板の上のウインチや階段などが残されていますし、船内をのぞくこともできて、冒険気分が味わえることは間違いなしです。
見どころ2 魚影が濃い!
取材時は沈船の周りにびっしりとクロホシイシモチやイシモチの群れが付いていて、それを狙ってタカベ群やイナダが高速で泳ぎ回っていました
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
サクラダイやキンギョハナダイ、それにアカオビハナダイもびっしり。華やかです
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
37年もの間、海に沈んでいるため「沈船」の内外には驚くほどたくさんの魚たちが集まっています。体長7~8cmのクロホシイシモチが多いのですが、キンメモドキやイシモチも。イシモチの仲間といえば口内保育をすることで知られますが、初夏に産卵、ハッチアウトして夏の終わり頃から群れが大きくなり、11月は“満開”状態でした。冬には減るものの、まったくいなくなることはありませんのでご安心を。それにしても船内を埋め尽くす勢い。それを狙ってハタの仲間も潜んでいますし、回遊魚も回ってきます。今回もタカベが大群でいて、それを追ってイナダも回ってくるので、にぎやかでした。タカベは群れるとウメイロモドキみたいな美しさです。
また、ウインチや甲板の周りにはハナダイの仲間がびっしり! 伊豆半島に多いサクラダイの群れもいっぱい。メスが多いのは当たり前ですが、オスが固まっているところもあったりして、ハナダイ好きにはたまりません。あと、温暖化の影響なのか、今までは珍しかったアカオビハナダイが勢力を増していて華やかです。
見どころ3 ソフトコーラルが見事!
ソフトコーラルも船体にびっしり付着。いろいろな種類のものが大きく育っています
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
フォト派はワイドレンズで狙える「沈船」ですが、ソフトコーラルも色とりどり。とても大きく成長しているウミトサカもあって、とてもフォトジェニックです。ハナダイの魚影などとともに撮るといいですよ。
「沈船」はアドバンス以上のダイバーにオススメ
潜降・中性浮力のスキルは必須
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
「沈船」は浅いところでも水深18m。オープンウォーターダイバーが潜れる最大水深ですから、アドバンス以上のスキルを身につけたダイバー向きです。
ダイビングボートからは基本的にジャイアントストライドエントリーとなります。着水後は素早く移動して、ボートが係留しているブイのロープへ。ロープ下の船首が集合場所となります。
流れがほとんどない時はフリー潜降もできますが、少しでも流れている時はガイドから「ロープにつかまりながら潜降してください」と注意があります。その場合は必ずロープにつかまりながら潜降してください。たいてい沈船と反対方向に向かう流れなので、ロープを離すと戻れなくなったりして、大変なことになりますよ。
潜降後は船の上や横を泳ぎます。中層を泳ぐことになりますので、中性浮力スキルは必須です。
今回ご一緒したゲストの林政則さん・克海さん親子はふたりともとても上手で、いいモデルさんになっていただいてしまいました。この場を借りてお礼を言います。ありがとうございました!
熱海随一のフォトジェニックスポット「ソーダイ根」
ミツボシクロスズメダイが群れ群れ!
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
熱海の冬場は一日2ボートダイビングの希望者が多数なので、たいてい「沈船」「小曽我洞窟」を潜ることになりますが、3ボートする場合や、強風&荒れた海況のため「小曽我洞窟」まで回り込めない場合によく利用するのが、「ソーダイ根」です。
港からボートで7分ぐらい。巨大なすり鉢状の海底にドロップオフや色とりどりのソフトコーラルが群生する大きな根が点在。サクラダイをはじめハナダイの仲間も多くて、華やかな水中写真が撮れることウケ合いです。クダゴンベやニシキフウライウオなどもいるのでマクロ派にももちろんオススメ。フォトジェニックな海なのです。
冬も開催される熱海海上花火大会
《ダイビングサービス熱海》では船上で花火が鑑賞できます
写真/豊嶋康志(ダイビングサービス熱海)
熱海は海上花火大会で一般の観光客にも人気です。うれしいのは夏だけでなく12月頃まで開催されていますが、2023年度は12月までどころか2024年2月の開催も決定! 一般的に観賞するのは陸からとなりますが、《ダイビングサービス熱海》では花火大会開催日に花火船を出してくれるので、より間近で見ることができます。
協力/ダイビングサービス熱海
ライター/後藤ゆかり(MDWデスク)