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ゼロから始める水中写真~TG-6編
第3回:撮影モードはどれが最適?
解説/水中写真家・清水 淳

第3回:撮影モードはどれが最適?

水中写真を上手に撮らせてくれるコンパクトデジタルカメラとして超人気のカメラ「TG-6」。ビギナーのフォト派ダイバーに向けて、TGシリーズの開発にも着手してきた水中写真家・清水 淳先生より手取り足取りのアドバイスを聞く4回集中連載の第3回。今回は撮りたいものを見つけた時に、とっさに撮影モードをセレクトできるように、それぞれの特徴をお伝えします。

写真・文/水中写真家 清水 淳

5つの撮影モードを理解して使い分けよう

5つの撮影モードを理解して使い分けよう

TG-6は水中撮影を考えた時に最高の撮影機材と言える。調達コスト、取り回しやすいボディサイズ、水中専用の5つの撮影モードと3種類の水中オートホワイトバランスの搭載、他社製品を含め豊富なアクセサリーが用意されていること……。
挙げればキリがないが、そのTG-6を水中で最大限に性能を発揮して使うコツは「5つの水中専用モードを理解して使い分けること」。
OLYMPUSのカメラに搭載される水中モードは他社のそれとは違い、カメラの構造や搭載される電子パーツの性質をフルに発揮できるようにデザインされています。さらに様々な撮影環境での実写テストを積み重ねて多くのユーザーに満足していただけるよう水中専用に調整が施されています。そして撮影者の個性や思い描く表現手法に応えられるよう調整幅が準備されています。
5つのモードの使い分けをわかりやすく、ポイントを押さえて解説していくのでぜひ参考にしてください。
なお、水中撮影モードを選ぶためには、ダイヤルが水中モードの時、十字キーの左ボタンを押すと、この水中モード一覧が表示されます。

水中スナップモード

撮影モードの一番左、スノーケラーマークのアイコンをセレクトします

撮影モードの一番左、スノーケラーマークのアイコンをセレクトします

スノーケラーマークの水中スナップモードは、フラッシュを使わないワイド撮影に使います。水中景観撮影だけでなく、ムービー撮影にもこのモードが使えます。
自然光で撮影するためにあらかじめ水中ワイドモードより露出を明るく調整されています。イルカ、クジラ、マンタ、サメなど被写体が大きくて被写体までの距離がある場合の撮影や自然景観には、このモードを使うのが正解です。内蔵フラッシュによるマリンスノー(海中浮遊物)の映り込みを防ぎたい場合にも有効です。
ズーム位置はユーザー決定なのでズームレバーを引いたり押したりして、好きな画角にセットすることが必要。内蔵フラッシュは初期設定がAUTOになっていますが、OFFにセットして撮影します。

水中スナップモード

撮影モード:水中スナップモード
焦点距離:25mm(35mm換算)
露出補正:±0.0EV
ホワイトバランス:水中浅瀬
仕上がり:水中
シャッター速度:1/250
絞り値:F8.0
ISO:100
撮影地:モルディブ

太陽の光が豊富に得られる浅い水深で、スノーケル撮影。ある時間になるとシマハギが集まるポイントがありました。グチャっているところを狙うことに。浮遊物が目立たないよう順光になるようにアプローチします。自然光撮影の場合逆光で撮影すると、画面全体が白っぽくなり発色も弱いカットになりがちなので、光を背にするようにするのがコツです。

水中ワイドモード

左から2番目、魚の3尾の群れのアイコンを選びます

左から2番目、魚の3尾の群れのアイコンを選びます

フラッシュを使うワイド撮影に使います。被写体にフラッシュ光を当てて水中で失われる発色を整え、鮮やかな水中写真を得ることができます。
内蔵フラッシュで撮影すると浮遊物が映り込む場合があります。浮遊物の乱反射がひどい場合にはフラッシュ補正機能が搭載されているのでフラッシュ発光量を下げて対処します。
フラッシュを補正するには、撮影画面で十字キーの真ん中にあるOKボタンを押すと画面右に表示されるライブコントロールを上下ボタンを使って選択します。その後、十字キーの左右ボタンで画面下に出てくる補正量を増やしたり減らしたりすればOKです。フラッシュを減らしたい場合はマイナス方向で選びます。
外部フラッシュを使用すると浮遊物の写り込みが少なくなります。

水中ワイドモード

撮影モード:水中ワイドモード
焦点距離:28mm(35mm換算)
露出補正:-1.7EV
フラッシュ補正:-0.7EV
ホワイトバランス:水中標準
仕上がり:水中
シャッター速度:1/60
絞り値:F3.2
ISO:200
撮影地:モルディブ

水中では水と空気の屈折率の違いで本来のカメラが持つ画角よりだいぶん狭くなるのでワイドコンバージョンレンズを使用しました。背景のブルーを鮮やかで濃い目に仕上げるために露出補正を大きくマイナス側にセット。
露出補正は十字キーの上ボタンにプラスマイナスのマークがあります。ここを押すと画面に-2.0~+2.0の数値が出ますので、マイナス側の数値を少しずつずらしてみましょう。
フラッシュ光はやや多めに当てて(前の項目のフラッシュ補正をプラスにして)魚の赤色を強調しました。

水中マクロモード

撮影モードの真ん中にある魚がアップになったアイコンが水中マクロモード

撮影モードの真ん中にある魚がアップになったアイコンが水中マクロモード

通常のマクロ撮影に使います。
ズーム位置が望遠側最大時に、ハウジング・レンズ前面より被写体まで10cm〜無限遠までピントが合います。デフォルト設定でフラッシュON、ズーム位置望遠側最大になっています。フラッシュOFFも選択可能。マクロ撮影であればオールマイティなモード。被写体まで10cmまで近づけるのでそれ以上に近づきたい極小の被写体の場合は、水中顕微鏡モードを選択します(次の項参照)。
ピント合わせはAFターゲット1点で合わせます。AFターゲットは25分割にしたターゲット選びができるモードで、水中マクロモード、水中顕微鏡モード/AF撮影時にOKボタンを長押しすると呼び出せます。呼び出したら十字キーの左右ボタンで、ピント合わせをしたいターゲットの位置(例えば中央とか、目に来るあたりの位置)など自由に選択することも可能です。

水中マクロモード

撮影モード:水中マクロモード
焦点距離:100mm(35mm換算)
露出補正:±0.0EV
フラッシュ補正:±0.0EV内蔵
ホワイトバランス:水中標準
仕上がり:水中
シャッター速度:1/200
絞り値:F6.3
ISO:200
撮影地:沖縄/慶良間

内蔵フラッシュ光が被写体へ十分行き渡るように被写体まで50cmくらいの距離まで近づくと綺麗に撮れます。内蔵フラッシュは小さな発光量しかないので、被写体まで手を伸ばせば届く程度での距離まで近づくことが最大のコツ。
背景が岩や砂にならないようにカメラを低く構えると背景が綺麗なブルーになり被写体の美しさが引き立ちます。

水中顕微鏡モード

右から2つ目、顕微鏡のイラスト付きのアイコンのところが水中顕微鏡モードです

右から2つ目、顕微鏡のイラスト付きのアイコンのところが水中顕微鏡モードです

極小の被写体の撮影に使用します。ウミウシ、カクレエビ、サンゴのポリプなどの撮影に重宝します。
被写体から30cm以上離れて撮影することはできません。
ズーム位置が望遠側最大時に、ハウジングのレンズ前面から被写体まで0cm〜30cmの間でピントが合います。デフォルトでフラッシュON、ズーム位置は広角側最大付近になっています。ズーム位置、フラッシュはON/OFFを選択可能。通常の水中マクロモードよりさらに被写体との距離を縮めたい場合に使用します。
カメラ単体ではレンズ前1cm、ハウジングに収納した場合はハウジング・レンズ面0cmでピントが合います。水中マクロモード同様、AFターゲットの位置の変更が可能です。

水中顕微鏡モード

撮影モード:水中顕微鏡モード
焦点距離:100mm(35mm換算)
露出補正:-0.7EV
フラッシュ:OFF(RGBlueSystem03PC使用)
ホワイトバランス:水中標準
仕上がり:水中
シャッター速度:1/100
絞り値:F4.9
ISO:800
撮影地:インドネシア/トランベン

綺麗な青色のホヤに潜んでいた小さなエビ。砂粒ほどの大きさ。肉眼ではエビの体に綺麗なピンク色の模様があることがわからなかった。水中撮影用のLEDライトを使用して発色の良さと視認性を確保しました。

水中HDRモード

撮影モードの一番右のアイコンをセレクト

撮影モードの一番右のアイコンをセレクト

輝度差のあるシーンでの撮影に使用します。HDRはHigh Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略称。
水面で泳いでいる被写体を水底から撮影する場合、水面の明るさに露出を合わせると被写体は暗くなります。逆に被写体に露出を合わせると水面は明るすぎてしまいます。
被写体も水面もどちらもイイ感じになるように明るさを変えて複数枚連写を行い、カメラ内で合成写真の処理を行うのがこのHDRモードです。現在はスマホに標準的に搭載されている機能。合成に多少時間がかかり、その間撮影ができないので、風景的な撮影に向いています。

水中HDRモード

撮影モード:水中HDRモード
焦点距離:18mm(35mm換算)Fcon-01使用
露出補正:-1.0EV
フラッシュ:OFF
ホワイトバランス:4200K(カスタム)
仕上がり:水中
シャッター速度:1/60
絞り値:F2.0
ISO:200
撮影地:メキシコ/カンクン

TG-6単体で撮影。純正のフィッシュアイコンバーターを使用
セノーテでの撮影。通常であれば自然光撮影なので水中スナップモードの守備範囲なのですが、この環境であれば水中HDRモードを使うといいです。水面より上の景色も白飛びせず、岩肌も黒つぶれしないでディテールが残ります。見た目により近く描写できるので思い出もくっきりと残せます。

イメージ

それぞれの水中撮影モードの特徴を理解していただけたでしょうか? 後は、被写体を見た瞬間にすぐにモードをセレクトできるように、アイコンの位置を覚えておくといいですよ。

水中写真家であり、水中撮影術のスーパー講師!
清水 淳先生プロフィール

清水 淳

写真家。しみずじゅん。1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影、研究、テストを行いながら、沖縄・那覇にて水中写真教室《マリーンプロダクト》を主宰。
カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーの開発アドバイザーやテスト撮影の要望、撮影に関する原稿執筆も多い。
マンツーマンで水中撮影を一緒に楽しむプライベートレッスンが好評でOM-1の使い方講習の要望が多い。
テクニカルダイビングを利用した新しい撮影ジャンルにも挑戦中。公益社団法人日本写真家協会会員

清水淳の公式ホームページ

清水淳のInstagram

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「感動の一瞬はこうして生まれた……水中写真家 作品探訪」連載
清水 淳さんインタビュー記事も併せてご覧ください。