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基礎からわかる! ダイビングスタート&スキルアップ術
第25回 オクトパスブリージング
第25回 オクトパスブリージング
気づいたらエアがない!
あってはならないことだが、ダイビング中に起こるかもしれない出来事の一つだ。
エアがなくてパニックに陥り、水を飲んでしまって溺水に至るケースもあるけれど、ダイビングで死なないためにも、しっかりと基本を覚えて実行できれば危険からは脱出ができる。
その緊急対処法の一つ、オクトパスブリージング。あなたはちゃんとできるかな?
エア切れになったら即、すべきこと
1
バディにサインを送る!
エアがなくなったら、まずはバディに「エア切れ」のハンドシグナルを送り、エア切れになったことを理解してもらうことが大切。
バディが万が一そばにいなかったら、すぐにガイドやインストラクターに知らせよう。
ハンドシグナルは、そう。
シムケンの“アイーン”に似た、ノドを刀手で切るようなサイン。

このとき、バディやガイド等がそばにいない!なんて非常事態もあるかもしれない。
周りのダイバーに「エア切れ」のハンドシグナルを送って、エアを分けてもらうという手もあるのだが、相手が超ビギナーで、ハンドシグナルの意味もわかっていないオバカさんの場合、ただふざけているだけかと思って笑われ、さらにいきなりオクトパスを奪うとパニックに陥られ、エアをもらおうと思っていた相手が急浮上……という不幸な事態にも陥るので、人を見て実行する余裕がほしい。でも、それができるぐらいならエア切れになんてならないか。
2
バディからオクトパスをもらう
(またはバディにオクトパスを渡す)
無事、バディがエア切れの意味を理解し、オクトパスを差し出してくれたら、もう大丈夫。
できるだけオクトパスをくわえやすい場所に近づいて、オクトパスを口にくわえ、パージボタンを押して中に入っている水をクリア(レギュレータークリアと同じことをするだけ)。
自分も、エアをくれたダイバーも落ち着いて2呼吸してみよう。

3
BCを排気しバディを腕をとって
て浮上準備
二人が落ち着いたことがわかったら、浮上の準備を。
BCのインフレーターの排気ボタンを左手に持って、まずはBCを排気。
そして、浮上スタートだ。
このとき理想的なのは、お互いが離れないように、お互い向き合ってお互いに右腕をとって(二の腕をつかんだり、手をつないだり)浮上していくこと。
かなり恥ずかしい感じではあるけれど、お互いの目を見て、安心感を与えながら浮上していくことも大切だ。

4
ゆっくり浮上
オクトパスブリージングをしていても、浮上中、水深3~5m台での安全停止をしたほうがベターだが、相手の残圧も少ない場合は二人がエア切れで緊急浮上となっても困るので、その限りではない。
気をつけたいのは浮上速度。毎分9mを維持して、急浮上しないように注意しよう。

ああ、勘違い! オクトパスブリージング
いきなりオクトパスを奪う
バディがいきなりオクトパスを奪ったために、奪われたダイバーがびっくりしてパニックになり、事故に至ったというケースもあるのだが、エア切れになった人は、傍若無人にエアを奪っていいはずがない。
ちゃんとハンドシグナルを送り、相手に納得してもらってからオクトパスをもらわないと、二次的なトラブルも起こりかねない。
でも、世の中にはそういう傍若無人なダイバーもたま~にいることも知っておくと、びっくりしたとしても、パニクらずにすむはず。
たまにバディじゃないのに、いきなりオクトパスを奪う人もいるので、ホント、気をつけて。
エアはまだあるから潜れる!は大間違い
これもたまに見かけるのだが、エア切れになった人がバディのオクトパスを吸いながら 粘って撮影をしていることがある。 いやいや、もうオクトパスブリージングをしていること自体が、通常のダイビングから離れた 危険な状態ですから!
バディのエアがあるから大丈夫、ではない。
プールで潜っているならまだしも、海ではいつ何時、何が起こるかわからない。
浮上中にものすごい流れに遭うことだってあるかもしれないし、浮上してから違う地点まで、波がある海面をひたすら泳がなくてはならなくなることもあるかもしれない。
そんなときのために、50bar(または700psi)を残して浮上することが望ましいとされているのだ。
くれぐれも、オクトパスブリージングをするハメになったら、バディ同士で浮上することが基本。
なお、ガイドやインストラクターと一緒に潜っている場合は、浮上する理由と浮上することをガイドにハンドシグナルで送ってから浮上すること。
ところで、本誌カメラマンがオクトパスブリージングで撮影しているところを見かけることもあるかもしれないが、
仕事で、どうしてもしかたなく行なっていることなので、温かく見守ってやってください。
エアが切れるってどういう状態?
残圧がなくなるってことはどういうことなんだろう?
たぶん、皆さんはエア切れを体験したことがない人が圧倒的に多いはずだ。 エアがゼロになると陰圧でタンクに水が入ってしまう(サビの原因になる)といって、 業者もとても嫌う現象なのだが、何よりもエアがゼロになると、ダイバーはどうなるのだろう?
当然のことながら、レギュレーターでエアを吸おうとすると、エアは来ない。残圧計を見ると、針はゼロを指したままだろう。
ただたいていのレギュレーターは、残圧が少なくなってくると、エアが吸いにくくなるという構造になっている。普通に吸っていたエアが突然来なくなるということはまずないはずなのだ。
吸いにくいと感じたらまずは残圧計を確認して、エアの残量を確かめよう。この時点でエアは20を切っていると思われる。 やはりバディやガイドに、残圧計を見せ、残圧の数値をハンドシグナルで知らせて、バディやガイドからオクトパスを渡してもらって、浮上段階に入ること。
残圧が50を切ると不安……はまだ早い
「50barを残してダイビングを終わらせること」と教わっているダイバーが50を切ったときの不安感といったらないだろう。
教え方、考え方の違いでしかないのだが、確かに50を残して浮上したほうが、浮上後万が一何かが起こったときでも安心だ。
でも、50を切ったからといって、即、危険というわけではない。
水深20mで残圧が50を切った場合、毎分9mの浮上速度で浮上すると、2分ほどかかることになる。
平均空気消費量が毎分12㍑の人は、10㍑のタンクを使っていたとすると計算上では約5barがあれば浮上できることになる。
全然余裕だ。計算上は。
水中で冷静に計算するのは難しいけれど、残圧が50を切ったからといってむやみに焦るのは禁物なのだ。
だからといって(浅瀬ならエアは長く続くからといって)
残圧ゼロギリギリになるまで潜るのだけはやめましょうね!

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